キッチンは、レイアウトや配置で使いやすさが大きく変わってきます。使いやすいキッチンを実現するための考え方についてご説明させていただきますので、リフォームのプランを考える際の参考にしてください。
また、キッチンのリフォームをご検討中の方は「キッチンリフォームの失敗例12パターンと対策の全ポイント」も参考にしてください。
目次
1.使いやすいキッチンレイアウトの基本
使いやすいキッチンにリフォームするためには、レイアウトや配置をしっかり考えておく必要があります。まずは、使いやすいキッチンレイアウトの基本を解説していきます。
1-1.調理の流れを考えた配置
調理の流れを考えると、冷蔵庫から食材を取り出し、洗って、刻んで、加熱調理して、配膳するという一連の流れになります。
また食事後は食器を下げて、食器を洗い、食器棚に戻すという流れです。つまり、右利きの人の場合は、上の図のように冷蔵庫、シンク、調理台、コンロを右回りに配置するのが基本となります。左利きの人は左回りに配置するとよいでしょう。
1-2.キッチンの「ワークトライアングル」
使いやすいキッチンレイアウトのポイントとして、「ワークトライアングル」という考え方があります。
ワークトライアングルとは、「シンク」「加熱調理機器」「冷蔵庫」の3点を結んだ三角形のことです。キッチンの作業効率を上げるには、この三角形の各辺の距離が適切であることが大切と考えられています。各辺の適切な距離(長さ)は以下の通りです。
- シンクから加熱調理機器まで:120~180cm
- シンクから冷蔵庫まで:120~210cm
- 加熱調理機器から冷蔵庫まで:120~270cm
三辺の合計は360cm~600cmが良いとされています。
1-3.通路幅とキッチンの寸法
上記でご説明させていただいた通り、使いやすいキッチンにするためには通路幅とキッチンの高さや寸法を考える必要があります。
キッチンの通路幅は1人で利用するならば90cm程度、2人で利用することを考えている場合は1m20cm程度の幅を確保するようにしてください。
キッチン内では動きが出るので、使いやすいレイアウトのためにはこれくらいの通路幅が必要になります。
またキッチンの高さはキッチンを最もよく利用する方の身長で計算するとよいでしょう。最適なキッチンの高さは以下の計算式が目安になります。
カウンターの高さ=身長÷2+5 cm(160cmの場合は160÷2+5=85cmが目安です)
2.2つのキッチンスタイル「壁付け型」or「対面型」
キッチンスタイルには「壁付け型」「対面型」の2つのタイプがあります。
キッチンレイアウトを考える際は、まずこの2種類のどちらのタイプにするか選びましょう。
2-1.壁付け型キッチン
壁付け型キッチンは、キッチン正面が壁に接しているタイプのことです。日本の多くの住宅で採用されているキッチンスタイルで、キッチンスペースをコンパクトにまとめられます。
壁付け型キッチンの主なメリットは以下です。
- 壁に向かって集中して作業できる
- キッチンがコンパクトな分リビング・ダイニングを広く取りやすい
- 「クローズドキッチン」なら煙や油汚れ、においが他の空間に広がりにくい
クローズドキッチンは、キッチンを完全に独立させて設置するタイプを指します。
一方で、壁付け型キッチンは壁に向かって作業するため、どうしても家族とコミュニケーションが取りにくくなってしまうというデメリットがあります。
2-2.対面型キッチン
対面型キッチンは、リビングやダイニングなどの空間に向かって作業を行うキッチンを指します。対面型キッチンは2種類に分けられ、カウンターがフラットなオープンタイプと、カウンターの腰掛けで手元を隠すセミオープンタイプがあります。
対面型キッチンの主なメリットは以下です。
- リビングにいる家族をコミュニケーションを取りやすい
- 小さな子どもがいても目が届きやすく安心できる
- テレビや会話など何かをしながら作業できる
- 開放感がある
一方で対面型キッチンには、煙やにおい、油汚れが他の空間に広がりやすい、来客の際にキッチンが視界に入りやすいというデメリットがあります。
3.主なキッチンレイアウト6種類の特徴
代表的なキッチンレイアウトとしては上の図にあるような6種類があります。それぞれのレイアウトにメリットとデメリットがありますので、それらを理解した上で、ご自宅にあったキッチンレイアウトを取り入れるとよいでしょう。
3-1.壁付けI型キッチンレイアウト
シンクと調理器、冷蔵庫を横一直線に並べたものがI型キッチンレイアウトで、最も一般的なレイアウトです。動線が長くなりがちなため、規模の大きなキッチンには向かず、コンパクトなキッチン向きです。キッチン幅が広い程移動距離が長くなり、作業効率が落ちて使いにくくなってしまうので、最大でも270cm程度にするのが良いでしょう。
最もよく見られるレイアウトですが、家族のほうを向いて調理を行うことができない点がデメリットとなります。最近は家族とコミュニケーションを取りながら料理したいというニーズが多いので、他のタイプが選ばれることが多いです。また、横一列に冷蔵庫が置けない場合は、冷蔵庫のレイアウトによっても使い勝手が変わってくるので注意が必要です。
3-2.L型キッチンレイアウト
I型キッチンの次に利用が多いのが、シンク、加熱機器、調理スペースがL字に並んだL型キッチンレイアウトです。L型キッチンは動線が三角になるため、ワークトライアングルを短く出来るという特徴があります。ただし、設置にはI型よりも広いスペースが必要になるため、スペースはLDKでも最低16畳以上にしたほうが良いでしょう。
デメリットとしては壁に向かって調理する場合が多いので、他の人とのコミュニケーションを図るには工夫が必要なのと、I型よりも場所を取る分、食器棚の設置スペースが確保しにくいという点があります。
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3-3.コの字型(U字型)キッチンレイアウト
他のキッチンと比べると独立した空間になりやすく、好みがわかれるキッチンです。動線が短く、作業効率が高いので専門家や料理好きには好まれます。
一方で設置するのにスペースが必要なのと、複数人で一緒に料理をするには不向きな面もあります。
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3-4.Ⅱ型キッチンレイアウト
シンクと調理スペースを分けて広く利用出来るキッチンになります。横の移動距離を少なくでき作業スペースを広く使えるうえ、「火まわり」「水回り」を分離することで、収納がしやすいのがメリットです。
一方で振り返って作業することが多くなります。そのためシンクの真後ろにコンロを持ってくると危険なので注意が必要です。
3-5.アイランド型キッチンレイアウト
アイランド型キッチンは囲むように作業が出来るのが特徴です。家族や仲間で一緒に調理や片づけが出来るので、ホームパーティーなどがしやすいキッチンです。
一方でキレイなキッチンを保つには収納がカギになります。存在感があるので、すこしでも散らかると目立つため、来客の際は気を付けなければなりません。
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3-6.ペニンシュラ型キッチンのレイアウト
ペニンシュラ型キッチンは、料理をしながらリビング・ダイニングにいる家族とコミュケーションできるのが特徴です。ダイニング側に椅子を設置してカウンターを設けることが出来、そこで軽食をとるといった使い方も可能なため人気のキッチンです。
このキッチンのデメリットは、煙や匂いなどの影響がリビング・ダイニングにも行きやすく、水はねや油はねの懸念もあることです。コンロの前に一部壁を造作したり、換気扇を付けることで改善することが必要です。
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4.使いやすいキッチンにするための冷蔵庫の配置
実は冷蔵庫の配置によって、使い勝手は大きく左右されます。冷蔵庫の配置をどのように考えれば良いか、見ていきましょう。
4-1.キッチンに冷蔵庫を配置する際に考えるべきこと
「1-1調理の流れを考えた配置」でも説明したとおり、キッチンで一番重要なのは料理をするときの流れです。
冷蔵庫とシンクや調理台は近い方が使いやすく、作業スペースやコンロの近くに食器棚があると効率も良くなります。その流れの中に冷蔵庫の配置があるということをまずは覚えておいてください。
4-2.冷蔵庫の配置のセオリー
冷蔵庫はキッチンの入り口付近に配置するか、それともキッチンの奥に配置するか、どちらが良いでしょうか?使いやすいキッチンにするためには、キッチンの入口付近に配置するのが基本的な考え方です。
冷蔵庫が奥にあると、誰かが冷蔵庫にモノを取りに来た際にキッチンの中を通らなければなりません。料理をしている最中ですと、どうしてもキッチンが混雑してしまいます。キッチンにいる人とキッチンに来る人の動線ができるだけ重ならないようにするためにも、冷蔵庫は入口に配置するのが基本になります。
4-3.冷蔵庫を配置する際の注意点
冷蔵庫は配置してみてから使いにくい事に気がつくことが非常に多いです。冷蔵庫の配置を考える際は、次の2点を注意して考えてください。
冷蔵庫のドアの開き
冷蔵庫の開く方向に壁や棚などがないか、確認が必要です。両開きの冷蔵庫を配置する場合は、両サイドにゆとりがないと完全に開かないこともあります。
大型の冷蔵庫を配置する場合は、冷蔵庫の両サイドに少しゆとりを持たせておくようにしてください。
キッチンや食器棚との距離
前述した「ワークトライアングル」が狭すぎても広すぎても使いにくくなってしまいます。リフォームのプランを見るときもできれば確認しておきたいポイントです。
5.使いやすいキッチンにするための食器棚の配置
冷蔵庫同様に食器棚も配置について悩みどころです。キッチンの形や使い方によって正解が変わってきますので、ここでは食器棚を配置する際の考え方についてご説明します。
5-1.キッチン内の動線を考えた配置
食器棚の配置を考える際も、キッチン内の一連の動きを考える必要があります。「1-1.調理の流れを考えての配置」でもある通り食器棚を利用するのは、この2回になります。
- 作った料理を配膳する際
- 洗った食器を片付ける際
①の場合はコンロや調理台に近い方が良く、②の場合はシンクに近い方が便利です。可能なのであればシンクとコンロの間に配置して、どちらにも対応できるようにするとよいでしょう。
キッチンの形や冷蔵庫の配置も考慮する必要があるので、全体でバランスを取るのが良いでしょう。
5-2.食器棚を配置する際の注意点
キッチンの形や冷蔵庫の位置とのバランスで食器棚の位置は決まります。配置を考えるうえでの注意点を最後にまとめておきます。
- シンクやコンロとは近すぎず、遠すぎない位置にすること
- 食器棚の配置だけではなく、冷蔵庫の配置と一緒に考えること
- 冷蔵庫と食器棚の配置で迷ったら、まずは冷蔵庫の配置を先に考えること
食器棚と冷蔵庫を比べると冷蔵庫の方が開け閉めも多く、ドアの開き方によって置く位置に制限も出てきます。その点でも冷蔵庫の配置と一緒に考えることが重要です。
6.使いやすいキッチンにするための収納術
使いやすいキッチンにするための収納のコツは、キッチンを使っている時に最も便利になるようにすることです。収納のコツはまとめると以下の5点になります。
- よく利用するモノは目から腰の高さの範囲におく
- 使うモノと使う場所を近づけて配置する
- 配置を決めたらしっかりと守る
- 調理台にはモノを置かずに広々と使う
- 収納スペースの中も使いやすく整理する
詳細を知りたい方は以下の記事で詳しく解説しているので是非参考にしてください。
7.レイアウト変更を含むキッチンリフォームの事例
ここからは、レイアウト変更を含むキッチンのリフォーム事例を紹介します。
7-1.壁付けI型キッチン→対面キッチンを、壁を撤去して実現
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費用 | 249万円 |
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工期 | 3週間 |
独立キッチン前面の壁を一部撤去・開口し、セミオープンの対面キッチンへリフォームしました。
閉鎖的だった空間が開放的になり、作業中もご家族の顔を見てコミュニケーションを取れるようになりました。キッチン設備はハイグレードタイプの「LIXIL リシェルSi」を採用。設備機器自体の移動は行わなかったため、工事費用は抑えられています。
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/899
7-2.壁付けI型キッチン→対面キッチンへ
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費用 | 154万円 |
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工期 | 10日 |
壁付けのI型キッチンをセミオープンの対面キッチンへリフォームした事例です。元のキッチンは閉塞感があり作業スペースも少なかったですが、対面キッチンへリフォームすることで開放感が生まれました。キッチンの背後に十分な作業スペースが設けられている点もポイントです。
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/323
7-3.壁付けI型キッチン→ペニンシュラ型対面キッチン
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費用 | 310万円(洋室工事費用を含む) |
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工期 | 1ヶ月 |
壁付けのI型キッチンを、壁になっていた洋室を撤去することで、オープン型の対面キッチンへとリフォームしました。
元のキッチンは日光が入らなかったため暗い印象でしたが、対面型にリフォームしたことで日の光が入り、明るく開放的な雰囲気へと変わりました。間取り変更工事+キッチン交換で大掛かりな工事となっています。
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/1090
8.まとめ
キッチンは毎日使う場所だけに、使いやすさに妥協したくないところです。キッチン全体で使いやすくするには、個別の箇所で考えるのではなく、キッチンの中の動き全体と、キッチンの中にあるモノ全体で考える必要があります。
まずは基本をしっかりと理解してから、実践に繋げてください。キッチンリフォームについてもう少し知りたい方は「キッチンリフォームの失敗例12パターンと対策の全ポイント」も参考にするとよいでしょう。手間を掛けた分の効果は必ずあるはずです。
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