
自宅のリフォーム検討中に、リフォーム業者からアスベスト調査が必要と言われ、戸惑う方もいるでしょう。建物のリフォーム前に有資格者によるアスベスト(石綿)調査・分析を行うことは、2021年4月から義務付けられています。
この記事では、アスベスト調査について、どのようなリフォームが調査対象になるのか、どのくらいの費用が必要かなどを解説します。
正しく法規制を知り、安心してご自宅のリフォーム工事をすすめましょう。
目次
2021年4月より義務化。アスベストの事前調査とは?
アスベストの事前調査は、建築物の解体やリフォーム工事を行う前に、アスベスト含有建材の有無を確認する作業です。2021年4月以降の一定規模以上の建築物解体・改修工事では、この事前調査が義務化されています。
危険な有害物質であるアスベストがリフォーム工事中に飛散することを防ぎ、作業者や住民の健康被害リスクを低減させるための法規制です。アスベストの事前調査では、専門資格を持つ調査者によって工事対象となるすべての部材についてアスベストの使用状況を調べ、リフォーム業者が調査結果記録を3年間保存することが義務となっています。
さらに、アスベストが含まれている建材があった場合は、除去工事計画を労働基準監督署へ届け出たうえで、リフォーム工事の際に飛散防止の対策が必要になります。

アスベスト調査対象は建築年と工事規模で決まる
アスベスト調査は、建物の築年数と、リフォーム工事・解体工事をする規模によって、対象かどうかが判断されます。はじめに、調査対象となる建物の条件を確認しましょう。
2006年9月以前に建設された建物が対象
アスベスト調査の対象となるのは、2006年9月以前に建設された建物です。これは、日本でアスベスト建材の使用が原則禁止となったのが2006年9月だからです。これより前に建造された建物には有害なアスベストが含まれている可能性があります。
また、2022年4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートし、主に以下の工事がアスベスト調査の対象になりました。
- 延べ床面積:80㎡以上の建築物の解体工事
- 請負金額:100万円以上の改修工事
個人が所有する一戸建てやマンションも義務の対象です。自宅のリフォームがこれらの条件に当てはまらないか必ずチェックしてください。
多くの住宅リフォームでアスベスト調査が必須に
アスベスト調査は多くの住宅で必須と考えられます。前述したとおり、2006年9月以前の建物はアスベスト調査対象ですが、2024年9月現在では築18年以上の建物が当てはまります。築20年前後と考えると、このあたりの築年数で住まいのリフォームを考える方は多いでしょう。
また、リフォーム工事で工事費用が100万円を超えてしまう住宅も多い状況です。
実際に、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会による「住宅リフォームに関する消費者実態調査」では、一戸建て・マンションのリフォーム実施者のうち、リフォーム費用が100万円以上と回答した人はそれぞれ75.1%、69.7%にもなります。
出典:2023年度 住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査結果報告書(住宅リフォーム推進協議会)
自宅のリフォームでアスベスト調査が必要な可能性は高いと考えておいた方がいいでしょう。
アスベスト調査の流れ
アスベスト調査は、主に「書面調査」「目視調査」「分析調査」の3段階で進められ、最後に「調査結果の報告」が行われます。
ここでは、各段階の具体的な流れについて解説します。
[1]書面調査
書面調査では、建物の設計図書などの書類から、アスベスト含有の可能性を確認します。建物の竣工年、使用建材の種類、過去の改修履歴などをリフォーム業者が確認します。
書面調査にあたって、設計図書などの書類を提供する必要がありますが、新築時・入居時に工事業者から受け取っているはずです。もし、紛失してしまった場合は、新築工事をした業者や購入時の不動産会社に問い合わせてみましょう。
[2]目視調査
書面調査で2006年9月1日より前に着工されている建物と分かった場合、目視調査が行われます。書面調査の情報を基に調査者が現場を確認し、天井裏や壁の中などの建材についてロット番号を調べ、アスベスト含有建材にあたるかどうかデータベース照合する調査です。
[3]分析調査([1][2]で調査完了できなかった場合のみ実施)
書面調査と目視調査でアスベストの有無が判断できない場合、分析調査が行われます。分析調査では、アスベスト含有の可能性がある建材から少量のサンプルを採取し、定性分析あるいは定量分析という調査をおこないます。
- 定性分析…顕微鏡を使用してアスベスト繊維の有無を確認する調査
- 定量分析…アスベストの含有率を測定する調査
分析調査には別途費用がかかるため、どこまでの調査をするかはリフォーム業者と相談しましょう。
[4]調査結果報告
全ての調査が完了したら、調査結果をまとめた報告書が作成されます。報告書には検出された箇所・危険性レベル・アスベストの種類などが記載されます。調査結果は、飛散防止工事の方法を検討する際に利用され、リフォーム会社の手元に3年間の保存するよう義務付けられています。
また、アスベストが検出された場合、工事開始14日前までに労働基準監督署への届け出が必要です。これはリフォーム会社にて対応してもらえます。
◯設計図面など必要な情報の提供
◯調査結果の説明を受けて、どこまでのリフォームをするかの判断
◯その他必要な判断
パートナーとなるリフォーム会社と情報共有しながら進めましょう。
アスベスト調査の費用は10~20万円が相場
アスベスト調査費用は、建物の規模や調査の範囲によって変動しますが、一般的な住宅リフォームの場合、相場は10~20万円程度です。内訳は以下の通りです。
書面調査 | 20,000円~30,000円 |
---|---|
目視調査 | 20,000円~50,000円 |
分析調査 | 30,000円~50,000円 |
なお、広範囲のリフォームなどで分析調査の必要な検体が多い場合は、さらに費用がかかることには注意が必要です。
例えば、壁・天井材ならせっこうボード、外壁材なら吹付塗料にアスベストが含有されている可能性があります。鉄骨造の住宅であれば、耐火性能を確保するため柱や梁を覆う耐火被覆材も分析調査の対象になるでしょう。
また、自治体によってはアスベスト調査・除去工事に対する補助金制度を設けているところもあります。例えば、東京都では各地域により補助金の補助要件や補助額が定められています。お住まいの地域が補助金の対象かどうか、確認してみてください。
(例)東京都文京区|アスベスト調査費助成
文京区では、条件を満たせば分析調査費用(消費税額を除く)の1/2かつ10万円又は20万円を限度に、アスベスト調査費が支援されます。
補助要件 | ●助成対象となる建築物 民間の戸建住宅又は集合住宅等(集合住宅、事業所、工場、店舗、駐車場)※平成18年8月31日以前に建築された建築物であること ●対象建材 吹付け材、耐火被覆材、保温材、断熱材、仕上げ塗材 ●助成対象者 区内に建築物を有する者、区内にある分譲集合住宅の管理組合、区内に建築物を有する中小企業者 |
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補助額 | 分析調査費用(消費税額を除く)の1/2かつ以下の限度額 戸建住宅:10万円 集合住宅等:20万円 |


アスベスト調査の注意点
リフォーム業者のなかには悪質なところもあります。ここでは、業者に依頼する際の注意点を解説します。
相見積もりで優良業者の選定を
リフォーム工事をする際は、アスベスト調査の費用を含め、必ず複数の業者から相見積もりを取りましょう。いくつかの業者の提示価格と対応を比較すると、信頼できる業者を選定しやすくなります。
丁寧な業者であれば、以下の見積書のようにアスベスト除去が必要なケースとそうでないケースの両方を想定した2種類を提案してもらえることもあります。アスベスト除去の際の飛散防止措置や産業廃棄物の処分方法の違いにより、金額が大きく異なるからです。
一方で、自社の利益を優先する業者からは、見積もりを安く見せるためにアスベスト調査費や除去工事費用を省いて契約を勧められることがあるかもしれません。アスベスト調査、およびアスベストが含まれる建材が見つかった場合の除去工事は法律で義務化されていますので、必要な工事の項目が入った見積もりで検討するようにしましょう。
見積もりを確認する際は価格の安さだけで判断せず、アスベスト調査・除去工事の抜けがなく誠心誠意で対応してくれる業者を選定してください。
調査せずに解体・改修をしない
アスベスト調査を省略して解体・改修工事を行うと、健康被害のリスクが高まります。アスベストは目に見えないほど微細な繊維状の物質で、空気中に飛散すると人体に深刻な影響を与える恐れがあるからです。
空気中に飛散しているアスベストを吸引すると、肺などに残留し、石綿肺や肺がん、悪性中皮腫といった病気の原因となります。恐ろしいことにこうした疾患は潜伏期間が長く、気づかぬうちに進行してしまいます。
このような健康リスクから、アスベスト調査を怠ると法律違反として最大で30万円の罰金を支払うことになるため、調査を怠らないよう注意が必要です。法律違反にならないためにも、必ずアスベスト調査を実施してから解体・改修工事を行うようにしましょう。
まとめ
リフォーム時のアスベスト調査は、多くのリフォームが当てはまると考えられる必要不可欠な工程です。アスベスト調査の費用相場は、一般的に10~20万円ほどで、費用には、書面調査、目視調査、必要に応じて行われる分析調査が含まれます。
個人のリフォームにおいては少なくない費用負担であるものの、健康被害や罰則のリスクを避けるため、必ず実施するとともに、信頼できる業者を選定しましょう。資格を持つ調査者が在籍しており、実績がある企業かどうかを確かめることが、安心できるリフォーム工事につながります。
リフォームガイドでは、アスベスト調査を怠らない優良会社を選んでご紹介いたします。ぜひお気軽にご相談ください。