
アスベストとは、かつて建材として広く使用されていた天然の鉱物繊維です。断熱性や耐火性に優れている一方で、健康被害を引き起こす可能性があります。そのため、現在はアスベストを含む建材の製造や使用は禁止されており、近年の法改正ではリフォーム工事前にアスベストの調査を行うことが義務化されました。
しかし、アスベスト調査は10万〜20万円かかるケースが多く、業者に依頼する費用は自己負担となります。仮に調査でアスベストが発見された場合は、除去工事の費用も支払わなければなりません。施主の経済的な負担が大きくなることから、補助金を設ける自治体が増えています。施主は条件を満たせば、補助金を利用することが可能です。
本記事では、リフォーム時のアスベスト調査・除去工事で使える補助金についてわかりやすくまとめています。申請の流れや注意点も解説していますので、住宅をリフォームするときの参考にしてみてください。
目次
1.リフォーム時のアスベスト調査は義務
アスベストは人体に悪影響を及ぼす物質です。2006年9月以前に建設された建物における、以下の条件を満たすリフォーム工事に対しては、調査に加えて労働基準監督署への報告も義務化されています。
- 解体する場所の床面積が80㎡以上の工事の場合
- 請負代金の合計額が100万以上(税込)の改造・補修工事の場合
この調査や報告はリフォーム会社にて対応するもので、怠った場合、罰則を受けるのはリフォーム会社です。しかし、調査せずに工事を始めてしまうと、建材にアスベストが含まれていたときには、工事に関わる人や施主家族、さらには近隣住民にも健康被害が及んでしまいます。
該当する工事を行う際には、必ずリフォームをする前にアスベスト調査を行い、結果に応じて適切な対応をするようにしましょう。


2.アスベスト調査で使える補助金
国土交通省では、民間建築物に対するアスベスト調査などに対して、補助金制度を創設しています。アスベスト調査の補助金の概要は以下のとおりです。
- 対象建築物:吹付けアスベスト等※1)が施工されているおそれのある住宅・建築物
- 補助内容:吹付け建材中のアスベストの有無を調べるための調査に要する費用
- 国の補助額:限度額は原則として25万円/棟(民間事業者等が実施する場合は地方公共団体を経由)
※1)アスベスト含有調査で補助対象としているのは、吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールです。
出典:厚生労働省|石綿 総合情報ポータルサイトTOP「補助金制度」
この補助金は、アスベスト調査の補助金制度を用意している自治体経由で受け取ることができます。自治体によって制度の有無や補助金額・条件が異なるため、事前に確認することをおすすめします。下記では、アスベスト調査の補助金における例をご紹介します。
2-1.自治体の補助金制度の例
(1)東京都(板橋区)
対象となる人 | 区内に建物等を所有する法人または個人 |
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対象となる建築物 | 板橋区内にあるアスベスト調査を行う建築物や工作物など |
補助額 | 5万円(調査1回あたり) |
(2)大阪府(堺市)
対象となる人 | 建築物の所有者で市税を滞納していない者 |
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対象となる建築物 | 吹付けアスベストを使用しているおそれがある建築物 ※この要綱又は同一事業に関する他の補助金の受けている棟を除く |
補助額上限 | 25万円(調査1回あたり) |
出典:堺市|建物に使われている吹付け材のアスベストの分析調査及び除去等工事への補助金のご案内
3.アスベスト除去工事で使える補助金
国土交通省では、民間建築物に対するアスベスト除去、囲い込み、封じ込めといった除去工事にも補助制度を創設しています。アスベスト調査と同様に、補助金制度を用意している自治体経由で受け取ることができます。アスベスト除去工事に使える補助金の概要は、以下のとおりです。
- 対象建築物:吹付けアスベスト等※1)が施工されている住宅・建築物
- 対象とする費用内容:対象建築物の所有者等が行う吹付けアスベスト等の除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用(建築物の解体・除去を行う場合にあってはアスベスト除去に要する費用相当分)
- 国の補助率: 地方公共団体の補助額の1/2以内(かつ全体の1/3以内)
※1)アスベスト含有調査で補助対象としているのは、吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールです。
出典:厚生労働省|石綿 総合情報ポータルサイトTOP「補助金制度」
下記では、アスベスト除去工事で使える補助金の例として、2つの自治体をご紹介します。
3-1.補助金制度の例
(1)東京都(千代田区)
対象となる建築物 および助成限度額 |
※吹付けアスベスト除去工事費用の3分の2を補助 |
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(2)大阪府(豊中市)
対象となる人 | 調査対象建築物の所有者であり、当該建築物が本市の区域内に存すること |
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対象となる建築物 | 豊中市内で、多数の者が利用する民間の建築物(一戸建て住宅を除く) |
補助額上限 | 1敷地あたり100万円 ※吹付けアスベスト除去工事費用の3分の2を補助 |
4.アスベスト調査・除去工事の補助金を利用するときの申請方法
アスベスト調査・除去工事の補助金を利用するためには、自治体の条件を満たしたうえで申請書類を提出する必要があります。また、実際に補助金を受け取るまでに多くの工程があるので、事前に流れを把握しておきましょう。下記では、アスベスト調査・除去工事の補助金を利用するときの申請方法について詳しく解説します。
4-1.自治体に相談
補助金を利用する際は、まず自治体への事前相談が必要です。
対象となる建物や工事内容が補助金の条件を満たしているか確認し、必要な手続きについて説明を受けます。
4-2.補助金の交付申請
住宅が補助金制度の対象であった場合は申請書類を作成し、自治体へ提出しましょう。
必要書類は自治体によって異なり、種類もさまざまです。不備があると補助金の審査に時間がかかるため、事前相談で確認し、正確に揃える必要があります。
4-3.補助金交付の決定〜調査・工事の実施
補助金の審査に通った場合は、「交付決定通知書」が発行されます。交付決定通知書を受け取ることで、正式に補助の対象となる調査や工事を進められるようになります。
決定する前に業者と契約すると、補助金を受け取れなくなってしまうため注意が必要です。
必ず交付決定通知書を受け取ってから、業者に依頼するようにしましょう。
自治体によっては、業者を指定するケースもあります。調査結果によってアスベストの除去が必要と判断された場合は、認可を受けた専門業者で工事を実施します。
調査・除去工事が終ったときに作成される報告書は、補助金の申請手続きで必要な書類です。大切に保管し、なくさないようにしましょう。
4-4.自治体に報告書を提出
アスベスト調査・除去工事が完了したら、必要書類とともに報告書を自治体に提出します。自治体は提出書類にもとづいて審査を行い、適切に調査・除去工事が行われたかを判断します。報告書の提出に期限を設けている自治体もあるので、事前に確認しておきましょう。
4-5.補助金確定通知書の受け取り〜業者への支払い
提出書類に問題がなければ、「補助金交付通知書」が発行されます。自治体によっては、当初の見積もりから補助金額が変動しているケースもあるため、内容をしっかり確認しましょう。
補助金交付通知書を受け取った後には、業者に調査・除去工事代を支払う必要があります。
補助金は後払いとなるため、一時的に自己資金での支払いとなります。支払った後は請求書や領収書が発行されるので、補助金の請求に備えて大切に保管しておきましょう。
4-6.補助金交付請求〜受け取り
業者への支払いが完了したら、補助金の交付請求手続きを行います。必要書類として一般的に、補助金交付申請書や支払証明書、補助金確定通知書などが求められます。
提出期限が設けられているケースが多いため、早めに進めるよう心がけましょう。
自治体が提出書類を確認し、不備がなければ口座に補助金が振り込まれます。振込までの期間は自治体によって異なりますが、通常は数週間〜1ヶ月程度です。
5. アスベストに関する補助金を利用する際の3つの注意点
下記では、アスベスト調査・除去工事の補助金を利用する際の注意点について解説します。
5-1.自治体によって補助金額や条件が異なる
アスベスト調査・除去工事の補助金は、自治体によって金額や条件が異なります。申請しようとしたときに、「想定していた金額と違う」「条件が満たなかった」とならないように、リフォームの検討時点で自治体に相談し、補助金制度の内容を確認しておきましょう。
5-2.予算に達すると受け取れない可能性がある
多くの自治体では、補助金に年間の予算枠が設定されています。そのため、申請が予算の上限に達すると受付が締め切られ、補助金を受け取れない可能性があります。
事前相談の際に予算状況を確認し、早めの対応を心がけましょう。
5-3.業者を依頼する前に自治体へ相談する必要がある
アスベスト調査・除去工事の補助金を利用する場合、事前に自治体へ相談し、申請手続きを行ったうえで業者と契約を結びましょう。補助金の交付決定前に業者へ依頼し、調査や工事を開始してしまうと補助の対象外となることがあるため、注意が必要です。
また、一部の自治体では業者が決められているケースもあるため、業者を調べる前に確認することをおすすめします。
6.まとめ
今回は、リフォーム時のアスベスト調査・除去工事で利用できる補助金についてご紹介しました。アスベスト調査・除去工事には費用がかかるため、多くの自治体では補助制度を設けています。ただし、自治体によって補助金額や条件が異なるので、検討時に確認が必要です。
また、補助金の申請には多くの書類が求められ、正しい順番で進めなければなりません。補助金サポートを行っている施工業者を選ぶことで、アスベスト調査〜リフォームまでスムーズに行えるようになります。
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