
リフォーム業者などを装って住宅の下見をした上で強盗に入ったり、リフォーム業者の点検を名乗って訪問し、費用をだまし取ったりという事件が増加しています。
その多くはSNSで募集した闇バイトなどを使った「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の形で行われており、犯行の全体像が分かりづらくなっているのが特徴です。
2025年3月には、トクリュウ型のリフォーム詐欺を行う準暴力団のトップが逮捕され、大きく報道されました。
報道を聞いて、「先週来た屋根の点検って、もしかして…」「これから家のリフォームをしようとしているけど、変な業者に当たってしまわないか心配…」そんな不安を抱える人も多いでしょう。
この記事では、リフォーム業者を装った詐欺や強盗の下見について、手口と被害に遭わないための対策を解説します。
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目次
リフォーム業者の訪問販売が前兆?急増するトクリュウ型詐欺・強盗事件
訪問販売型の悪質リフォーム業者によるトラブルは以前からありましたが、近年現れたのが、リフォーム業者などを装って生活情報を探り、強盗を企てる事件です。こういった強盗事件で大きく話題になったのが「匿名・流動型(トクリュウ)犯罪」で、2024年の警察白書でも、「匿名・流動型犯罪グループに対する警察の取組」が特集されました。
参考:令和6年警察白書「特集 匿名・流動型犯罪グループに対する警察の取組」
同白書ではトクリュウ型犯罪の一つとして、悪質なリフォーム業者による詐欺も取り上げられています。

[1]リフォーム業者を装った強盗の下見
2024年の夏ごろから増えてきた緊縛強盗事件には、リフォーム業者・修理業者などを装って、付近の下見をしていた事例が見られます。
例えば横浜市の事件では、1ヶ月ほど前~数日前の間に「水道を調べたい」という不審な業者が付近の住宅を訪れていたことが報告されています。
参考:横浜 青葉区の男性死亡事件 現場周辺で不審な人物 関連捜査(NHKニュース・2024年10月17日報道)
緊縛強盗事件の多くは高齢者世帯の戸建て住宅で起きており、複数人で押し入って現金や貴金属を奪い取るという手口です。
当初は関東地方が中心でしたが、関西・中部・九州などでも同様の手口の事件が起きており、全国的な広がりが見られています(2021年9月~2024年3月の間に22都道府県で78件発生)。
参考:令和6年警察白書「特集 匿名・流動型犯罪グループに対する警察の取組」
[2]悪質リフォーム業者による「点検商法」
高齢者の住宅などをリフォーム会社として訪問し、屋根の傷みやシロアリ被害の点検を装って屋根や柱を破損して、それを修理することで高額な工事費をだまし取る詐欺も古くからよくある手法です。
近年はトクリュウ型犯罪の資金獲得活動としてこういった点検詐欺が利用されています。
参考:令和6年警察白書「特集 匿名・流動型犯罪グループに対する警察の取組」


悪質リフォーム業者や業者を装った訪問の特徴と対策
悪質リフォーム業者や業者を装った訪問販売では、以下のような特徴が行動をとることがあります。
[1]事前連絡やアポイントなしに訪問する
「近くで屋根の工事をしている者ですが、お宅の外壁の剥がれが目につきましたので、ついでに無料で点検しますよ」などと、突然訪問してくるのが特徴です。
特に、近隣でリフォームをしているときに、その会社を装って訪問してくることがあるので注意しましょう。「近くで工事をしている者ですが、お手洗いを貸していただけますか?」など言って家に上がり込もうとする事例もあるようです。
犯罪の下見目的なら、家に上がり込んで貴重品の場所や間取りを確認したり、屋根に上がって侵入経路を探したりといった行動に繋がります。
対策としては、とにかく事前アポイントのない業者を家に入れないことが挙げられます。
本当に屋根や外壁に傷みがあったとしても、修繕業者は自分で手配しましょう。
[2]有名リフォーム会社を名乗るが身分証が無い
信頼を得るために、「○○リフォームの者ですが…」と、実在する有名企業や、実在しそうな会社名を名乗ることがあります。しかし、実際に会社から派遣された人間かどうかを確認するために、身分証の提示を求めると、「車の中に忘れてきた」「今、手元にない」などと言って、提示を拒否します。
身分証を提示できたとしても偽物である可能性もあるため、不審に感じた場合は、来訪者には一旦帰ってもらって、会社に直接電話をして確認しましょう。
[3]リフォーム箇所以外の場所も不自然にチェックする
リフォームの相談で訪問したにも関わらず、リフォーム箇所とは関係のない場所を不自然なほどチェックするのも特徴です。例えば、家の周囲をうろついたり、窓やドアの鍵の状態を確認したり、家の間取りを把握しようとしたりします。
彼らは、これらの情報をもとに、侵入経路や逃走経路を事前に確認している可能性があります。また、家の周囲に防犯カメラやセンサーライトが設置されているかどうかも調べているかもしれません。
家の周囲を不自然にうろついているようなら、特に注意が必要です。
[4]不自然な質問がある
リフォームとは関係のない質問をして、家族構成や生活パターンを探ろうとします。
例えば「ご主人の帰りが遅いようですが、お仕事は何をされているのですか?」「親類やご近所の方がよく遊びに来られたりしますか?」「SNSはやっていますか?」など、個人情報に深く関わる質問をしてくることがあります。
これらの質問は、強盗にとって、犯行の計画を立てる上で非常に重要な情報となります。
リフォーム業者からこのような質問をされた場合は、警戒心を強め、安易に答えないようにしましょう。
不審な訪問があったときの対策
もしも、不審な訪問者があった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
ここでは、具体的な対策方法を4つご紹介します。
[1]家の防犯策を強化する
まずは、家の防犯策を見直してみましょう。玄関ドアや窓に補助錠や防犯アラームを設置したり、防犯フィルムを貼ったりすることで、物理的な侵入を防ぎやすくなります。
また、センサーライトを設置したり、家の周りに防犯用の砂利を敷いたりして、敷地内に人が入ったときにすぐに気付ける対策をとるのも効果的です。さらに、防犯カメラを設置すれば、犯行の抑止力になるだけでなく、万が一のときの証拠となります。
防犯リフォームについて、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。


[2]生活パターンを変えてみる
生活パターンを把握されないようにすることも重要です。毎日同じ時間に外出したり、新聞や郵便物を長時間放置したりするのは避けて、一時的にでも帰宅時間を変えてみるなどの工夫をしてみましょう。生活パターンを悟らせないよう、遠隔で家の明かりをオン・オフできたり、カーテンを開閉できたりする仕組みを導入するのも効果的です。
また、SNSに旅行や外出の予定を書き込むのは危険です。犯人は、SNSの情報から留守の時間帯を把握している可能性もあります。
[3]貴重品の保管場所を変更する
下見で貴重品の保管場所の目星をつけられてしまっている可能性がありますので、現金や貴金属、ブランド品などの場所を移動しておきましょう。
特に、貴重品を寝室に置くのは危険です。犯人が最初に狙うのは、寝室のタンスやクローゼットです。
貴重品の保管場所を分散したり、金庫を利用したりするのも有効な手段です。
[4]警察への通報、地域に情報共有する
不審な訪問者があった場合は、すぐに警察に通報しましょう。
通報することで、パトロールを強化してもらえたり、事件の早期解決に繋がったりする可能性があります。
また、近隣住民と情報を共有することも大切です。 地域の防犯意識を高めることで、犯罪が起こる前に防ぐことができます。
安全にリフォームするためのリフォーム業者の選び方
これからリフォームをしようとしているときも、業者選びには十分注意しましょう。リフォームの打ち合わせで得た情報を強盗犯に横流ししたり、リフォーム会社を装って集客する強盗犯がいる可能性もあります。
以下のポイントを参考に、信頼できる業者を選びましょう。
[1]飛び込みの訪問営業や電話営業は断る
飛び込みの訪問営業や電話営業は、強引な勧誘や、不必要な工事の契約を迫られる可能性があります。また、架空の会社を名乗って訪問してくる例もあります。
飛び込みで来た業者や電話で営業してきた業者は、まずは相手にせず、リフォームの必要があれば自分で会社を探すようにしましょう。
[2]会社情報や口コミなどを調べる
リフォーム会社を探す方法は、知人の紹介やチラシ、近くの店舗を訪れてみるなどいろいろありますが、必ずその会社について調べて、信頼できる会社か、自分のリフォームに合った会社かどうかを検討しましょう。
防犯の観点から特に意識したいポイントは下記の3点です。
- 建設業許可及びリフォームに付随する資格等を持っている
- 第三者機関で審査が通っている会社である
- 費用が極端に安くない
その他の観点も含めた、リフォーム会社の選び方について詳しくはこちらの記事をご覧ください。


[3]紹介サービスなどの審査を通過した、信頼できる会社に依頼する
信頼できるリフォーム業者選びという観点では、リフォーム会社の紹介サービスを利用するのも大変有効です。
リフォーム会社の紹介サービスでは、紹介する会社を審査してリストに掲載していたり、リフォーム内容に合った会社を選んで紹介してくれたりするのが一般的です。
紹介サービスを通じて紹介されたリフォーム会社なら、第三者機関による一定の保証があることになるので安心です。
ただし、サービスによって審査の厳しさには差がありますので、サービスごとの審査基準も確認したうえで申し込みましょう。
リフォームガイドの場合
リフォーム一括見積もりサービスの一つである「リフォームガイド」では、実在している会社かどうかはもちろん、反社会勢力との関係や財務状況までチェック。過去のお客様や取引会社などから良い評価を得ている優良会社のみを紹介しています。
さらに、専任のコンシェルジュがあなたのリフォーム内容に合った会社を選定するので、手間なく要望に合った会社のみを検討したい方にぴったりのサービスです。
<リフォームガイドの会社審査基準>
出典:リフォームガイドについて
会社検討中の打ち合わせ時も注意
リフォームの現場を見て見積もりをしてもらう現地調査や、見積もりを受け取るときには、リフォーム業者を家に招くタイミングがあります。
その時にも、会社名を偽って家に上がり込もうとしていないか、警戒しておきましょう。
●アポイントのある訪問のみを受け入れる
事前に連絡を取り、アポイントメントを取った上で訪問してくる業者のみを家に上げるよう注意しましょう。
事前連絡の際には、訪問日時や担当者の名前などをしっかりと確認しておきましょう。また、訪問時に、身分証の提示を求め、会社名や担当者の名前が事前情報と一致するかまで確認すると安心です。
少しでも不審な点があれば、一旦訪問者には帰ってもらって、会社に確認を取るようにしましょう。
●身分証を確認する
訪問してきた業者の身分証は必ず確認しましょう。名前、会社名が一致しているか、顔写真があれば本人と一致するかなどを確認します。また、身分証を提示する際に、名前や身分をすんなり名乗れないなど不自然な態度を取っていないか、周囲をキョロキョロ見回していないかなどにも注意が必要です。
もし、身分証の提示を拒否されたり、不審な点を感じたりした場合は、きっぱりと断りましょう。
まとめ
特に2024年の夏以降話題になっている強盗事件には、リフォーム会社を装った下見の可能性が指摘されています。
命を守るためにも、こういった下見の特徴を把握して、不審な訪問は断る、もしも家に上げてしまったときは防犯対策を強化するなどの対応が必要です。
また、実際にリフォームをするときには、依頼する会社は特に慎重に検討し、打ち合わせ時にリフォーム会社を家に上げるときにも注意を怠らないようにしましょう。会社選びにはリフォーム会社の紹介サービスなどを利用して、第三者機関の審査も参考にすると安心です。