
近年、宅配ボックスを設置するマンションが増えています。宅配ボックスは、受取人が不在でも荷物が受け取れる点が最大の魅力で、入居者や配達員に利便性と防犯性の向上など多大なメリットのある設備です。
そのため、宅配ボックスはライバル物件との差別化の効果が期待でき、マンションのオーナーにも大きなメリットをもたらします。ぜひ賃貸マンションへの設置を検討しましょう。
本記事では、マンションに宅配ボックスを設置するメリットについて詳しく解説します。宅配ボックスの種類や設置時の注意点も紹介するので、参考にしてください。
目次
1.マンションに宅配ボックスを設置する2つのメリット
マンションに宅配ボックスを設置するメリットは、利便性や防犯効果を高め、ひいては入居率を上げられることです。下記では、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
1-1.物件情報に「宅配ボックスあり」と表記でき、入居率アップが見込める
近年の需要に伴い、不動産ポータルサイトでは物件を検索する条件に「宅配ボックスあり」という項目が設けられています。
「2023年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)((株)リクルート調べ)」によると、次引っ越す際に絶対にほしい設備の総合6位に挙げられており、女性のみの回答では半数以上が「絶対に欲しい」と答えています。

宅配ボックスを設置することで、ポータルサイトの検索結果に表示される機会が増え、「宅配ボックスあり」表記で物件を探している人へのアピールにつながります。
特に共働き世帯や単身者にとって、不在時でも荷物を受け取れる宅配ボックスは利便性が高く、物件選びにおいて重要なポイントの1つです。
宅配ボックスの普及率は年々増加しているものの、全てのマンションが導入しているわけではありません。宅配ボックスを設置することで、競合物件との差別化ができ、入居率の向上が期待できます。
1-2.防犯効果が高められるためトラブル防止につながる
宅配ボックスの設置は、マンションの防犯対策としても有効です。近年、配送業者を装った侵入犯罪が増加傾向にあります。侵入犯罪を防ぐためには、対面で荷物を受け取らないことが大切です。置き配も非対面で荷物を受け取れますが、部屋の前まで配達員が来るのは変わりません。
置き配は盗難やイタズラのリスクもあり、宅配業者と入居者の間で「荷物を受け取った・受け取ってない」などのトラブルも発生しやすくなります。一方で、宅配ボックスを設置すれば、宅配業者の出入りが減るため、不審者の侵入リスクが大幅に抑えられます。
また、宅配ボックスは鍵をかけられるので、盗難やイタズラなども発生しにくくなるでしょう。
2.マンションに設置可能な宅配ボックスの主な種類
マンションに設置できる宅配ボックスは、大きく機械式と電気式に分けられます。また、それぞれに屋内設置型と屋外設置型があるので、設置場所に合ったものを選びましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
機械式 |
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電気式 |
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下記では、機械式と電気式の宅配ボックスの特徴について詳しく解説します。
2–1.機械式
機械式の宅配ボックスは、ダイヤルやプッシュボタンで暗証番号を入力し、施錠・開錠を行うタイプです。シンプルな操作で、誰でも簡単に使いやすい仕様になっています。また、電気を使わないため配線工事が不要で、導入コストが比較的安い点がメリットです。
故障のリスクが低く、メンテナンスのコストも抑えられます。その他、停電時でも問題なく使えるため、安定した運用が可能です。
一方で、配達員が誤った暗証番号を書いたり、入居者が通知書を紛失したりすると、鍵を開けられなくなってしまいます。機械式の宅配ボックスを導入すると発生しやすいトラブルなので、事前に対処法を明確にしておくことが大切です。
2-2.電気式
電気式の宅配ボックスは、タッチパネルやテンキーなどを使って施錠・開錠を行うタイプです。受取人専用の鍵や暗証番号が必要なため、機械式よりもセキュリティ性に優れています。また、荷物の受け取り管理がデジタル化されており、宅配業者や入居者の利用履歴が記録される点も特徴の1つです。
これにより、宅配ボックスの不正利用や荷物の紛失などのトラブルリスクをさらに抑えられます。ただし、配線工事が必須のため、導入コストとランニングコストが機械式の宅配ボックスよりも高くなる点がデメリットです。
3.マンションに宅配ボックスを設置するときにかかる費用相場
マンションに宅配ボックスを設置する場合、機械式と電気式で費用相場が異なります。導入コストだけでなく、ランニングコストも考慮したうえで、マンションに適したタイプを選ぶことが大切です。
3-1.機械式の場合:50~70万円程度
機械式の宅配ボックスの導入費用は、50万〜70万円が相場となります。内訳としては、本体価格が40万〜60万円、設置費用が10万円程度です。床や壁に固定するだけの製品であれば、自分で設置することで依頼費用を節約できます。
また、機械式の宅配ボックスは電気を使わないため、設置後の維持費は故障時の修理代のみです。低コストで導入しやすく、ランニングコストもほとんどかからない点が魅力といえます。
3-2.電気式の場合:90~110万円程度
電気式の宅配ボックスの導入費用は、90万〜110万円が相場となります。内訳としては、本体価格が80万円〜100万円、設置費用が10万円程度です。加えて配線工事費用が必要であり、遠隔管理対応モデルはインターネット接続工事費用も発生します。
新規で宅配ボックスを設置する場合は1日程度で終わりますが、入れ替えの場合は3日程度をみておくと良いでしょう。設置後の維持費は、月5,000〜8,000円程度が相場となります。インターネットを利用する場合は、さらに1万〜1万5,000円ほどの保守管理費用が必要です。
4.マンションに宅配ボックスを設置するときの4つのポイント
マンションに宅配ボックスを設置するときの場所や商品選び等にはいくつかのポイントがあります。
- 宅配ボックスはS・SSサイズの利用頻度が多い
- 宅配ボックスは全戸数の約4割が目安
- 宅配ボックスはエントランスに設置するのが一般的
- 宅配ボックスの設置で使える補助金は4種類
(参考)マンションで個人の宅配ボックスを設置することは可能?
マンションの宅配ボックスは、所有者や管理組合で導入するものです。個人で宅配ボックスを導入したい場合は、管理会社(ない場合はオーナー)や管理組合(分譲賃貸の場合は貸主)に相談しましょう。場合によっては宅配ボックスの導入や共用部に個人の宅配ボックスを設置することを検討してくれるかもしれません。
ただし、導入を検討してくれる場合でも実現までに年単位の時間がかかります。そのため、まずは宅配便ロッカーやコンビニなど、宅配ボックスがなくてもスムーズに荷物を受け取れる方法を考えておきましょう。
4-1.宅配ボックスはS・SSサイズの利用頻度が多い
宅配ボックスで最も利用頻度が高いのは、Sサイズ(小型)やSSサイズ(超小型)です。理由として、宅配される荷物の多くが小型(衣類、書籍、日用品、化粧品など)であることが挙げられます。
そのため、マンションに宅配ボックスを設置する際は、S・SSサイズは多めに、MサイズやLサイズは補助的に用意するのが理想的です。目安としては、全体の7~8割をS・SSサイズ、2~3割をM・Lサイズにすると、利用率が高くなり、ボックス不足による不便を減らせます。
ただし、大きいサイズの宅配ボックスに子どもが閉じ込められてしまうトラブルが発生しているので、Lサイズ以上は非常脱出ボタンがついている製品を選ぶと安心です。
また、冷蔵・冷凍機能付きの宅配ボックスを導入すると、生鮮食品や医薬品の受け取りにも対応できるため、より利便性が向上します。特に高齢者や子どもが多いマンションは食材宅配サービスの利用率が高く、冷蔵・冷凍機能つきの宅配ボックスがあると重宝されるでしょう。
4-2.宅配ボックスは全戸数の約4割が目安
マンションに設置する宅配ボックスの数は、全戸数の約4割が目安とされています。全世帯が同時に宅配ボックスを利用するわけではなく、一定のボックス数があれば十分に対応できるためです。
例えば、100戸のマンションの場合、40個程度の宅配ボックスを設置するのが理想的です。ただし、住民のライフスタイルやネット通販の利用頻度によっては、これより多くのボックスが必要になることもあります。特に共働き世帯や単身者が多いマンションでは、日中に不在となるケースが多いため、宅配ボックスの需要が高くなります。
万が一、ボックスの数が足りなくなった場合に備えて、追加で設置できるスペースを確保しておくと、将来的なニーズにも対応しやすいです。
4-3.宅配ボックスはエントランスに設置するのが一般的
マンションの宅配ボックスは、エントランスに設置するのが一般的です。これにより、宅配業者は移動距離を最小限に抑えられ、入居者は外出帰りに荷物を受け取れるようになります。また、エントランスは防犯カメラが設置されているケースが多く、防犯対策も十分です。
エントランスにスペースがない場合は、階段下など空いている場所に設置する必要があります。屋外に設置せざるを得ないときは、故障を防ぐために必ず屋外対応型の宅配ボックスを選びましょう。
4-4.宅配ボックスの設置で使える補助金は4種類
マンションでの宅配ボックスの設置工事には、国土交通省の補助金制度が用意されています。
名称 | 対象となる宅配ボックス | 補助率/上限額 |
---|---|---|
子育てグリーン住宅支援事業 | 以下のすべてを満たすものであること
※宅配ボックス設置に対する支援は、住宅の断熱やエコ住宅設備への改修と併せて設置する場合に限る。 |
【補助額(宅配ボックス設置工事分)】 11,000円/ボックス(20ボックスまで) 【上限額】 |
防災・省エネまちづくり緊急促進事業 | 市街地再開発事業や優良建築物等整備事業等により整備される住宅の宅配ボックス | 【補助率】 補助対象事業の建設工事費の3%、5%、7% 【上限額】 |
住宅確保要配慮者専用賃貸住宅等改修事業 (社会資本整備総合交付金・スマートウェルネス住宅等推進事業等) ※2024年度の募集は終了しています |
住宅確保要配慮者専用賃貸住宅、居住サポート住宅に整備される宅配ボックス | 【補助率】 1/3(地方公共団体を通じた補助の場合は国1/3+地方1/3) 【上限額】 |
子育て支援型共同住宅推進事業 (社会資本整備総合交付金・スマートウェルネス住宅等推進事業等) ※2024年度の募集は終了しています |
子育て世帯の入居率が3割以上の既存の共同住宅(分譲マンション及び賃貸住宅)に整備される、以下のすべてを満たす宅配ボックス
|
【補助率】 補助対象工事費用×子育て世帯の入居率×1/3 【上限額】 |
5.マンションに宅配ボックスを設置する際に抑えておくべき3つの注意点
マンションに宅配ボックスを設置する際は、いくつか注意点があります。トラブルにつながるケースもあるので、事前に把握しておくことが大切です。
- 全ての荷物を宅配ボックスで受け取れるわけではない
- 受け取りトラブルが発生する可能性がある
- 長期間にわたって荷物が放置されるケースもある
5-1.全ての荷物を宅配ボックスで受け取れるわけではない
マンションに宅配ボックスを設置することで、不在時でも荷物を受け取れるため利便性が向上します。しかし、全ての荷物を宅配ボックスで受け取れるわけではありません。例えば、サイズオーバー・着払い・代引きの荷物や現金などが挙げられます。
サイズの制約や配送業者のルールなどにより、利用できないケースもあるので、事前に確認しておくことが重要です。また、マンションのオーナーは入居者に向けて、受け取れない荷物の注意書きを用意しましょう。
5-2.受け取りトラブルが発生する可能性がある
宅配ボックスは入居者の利便性が向上する一方で、受け取りのトラブルが発生するリスクもあります。例えば、配達員が宅配ボックスの暗証番号を誤って入力したり、操作方法が分からず荷物を持ち帰ってしまったりするケースが考えられます。
このようなトラブルが発生したときは、まず配送業者に連絡して状況を確認しましょう。その他にも、入居者自身が通知書を紛失したり、自身で設定した暗証番号を忘れたりして宅配ボックスを開錠できない場合もあります。鍵を開けられない際は、宅配ボックスのメーカーや保守点検会社に問い合わせてサポートを依頼することが求められます。
トラブルが発生したときにも冷静かつ迅速に対応できるよう、事前に状況別の対処法を確認しておきましょう。
5-3.長期間にわたって荷物が放置されるケースもある
マンションに宅配ボックスを設置する場合、入居者が受け取りを忘れたり、長期不在によって取り出されずに残ってしまったりするケースもあります。長期間にわたって荷物が放置されると宅配ボックスの1室が使えなくなってしまうので、利用ルールを明確にしておきましょう。
例えば、「一定期間(例:3日〜7日)以上経過した荷物は管理人が一時保管する」など、放置防止策を考えましょう。電気式の宅配ボックスでは、入居者にリマインダー通知を送ることもできます。
6. まとめ
マンションに宅配ボックスを設置することで、入居率アップや入居者の利便性向上につながります。ただし、宅配ボックスには種類やサイズが複数あるので、予算やマンションの戸数、設置場所などを考慮したうえで適切な製品を選ぶことが大切です。
とはいえ、各製品の細かい機能や自分の物件に設置できるかどうかを調べて判断するのは難しいでしょう。
どこに相談したらよいかわからない場合は、リフォームガイドに適切な会社選びをご相談ください。
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