
高齢になり階段の上り下りがつらくなってきたり、築年数が経って住まいが老朽化してきたり、階段のリフォームを考え始めるタイミングはさまざまです。
ひとくちに階段のリフォームといっても、工事内容によって費用相場や工期は異なります。また、工事内容によっては、家全体のリフォームを行う時に一緒にやった方が良い場合もあります。
今回は階段のリフォームをテーマに、工事内容や費用相場、リフォームの注意点などを解説します。実際の施工事例を写真付きで紹介するので、階段リフォームを検討中の方は参考にしてください。
目次
1.【工事内容別】階段リフォームの費用相場と工期
階段リフォームは、工事内容によって費用相場や工期が異なります。一般的な階段リフォームの費用相場や工期を工事内容別に表にまとめました。
工事内容 | 費用相場 | 工期の目安 |
---|---|---|
滑り止めシートの貼り付け | 約1万円 | 1日 |
手すりの設置 |
5~20万円 | 1日 |
階段の下に収納スペースを作る | 7~10万円 | 3日 |
階段の床部分の交換 |
9~25万円 | 1~2日 |
階段の勾配や幅の変更 | 20~50万円 | 1~2日 |
階段の位置の変更 |
40~300万円 | 1~2週間 |
階段用昇降機の設置 | 約100万円 | 1~3週間 |
それぞれのリフォーム内容を細かく見ていきましょう。
1-1.すべり止めシートの貼り付け
階段にすべり止めシートを貼り付けると、転倒のリスクを軽減することができます。テープにはさまざまな種類がありますが、シールではなく建築用接着剤で貼り付けるものや、ビスでしっかり固定できるものを選びましょう。
また、厚みやクッション性のあるすべり止めシートだと階段の上り下りの際に足が引っかかる可能性があるため、薄くて耐久性の高いシートがおすすめです。暗くなると足元が光る蛍光塗料や蓄光材を使用したものもあるので、希望に合わせて選びましょう。
1-2.手すりの設置
階段に手すりを設置することで、落下や転倒といった事故のリスクを軽減できます。手すりの太さは一般的には32~35mmが目安といわれていますが、小さな子どもがいる場合、しっかり掴めるようあまり太すぎないものを選ぶと良いでしょう。
階段の手すりは、使う際に意外と強い力が加わります。DIYで設置するのではなく、リフォーム業者などのプロの手できちんと設置してもらいましょう。手すりの設置は1日でできるので、階段の安全性を高めるためにもリフォームに取り入れることをおすすめします。
1-3.階段の下に収納スペースを作る
階段下に収納スペースを作る場合、工事内容は階段下の壁の撤去や棚・扉の設置、収納内部の湿気対策が主です。階段下収納は、ストレートタイプかコの字型タイプか、階段の形状によって収納の大きさが異なります。大体の目安は以下の通りです。
階段の形状 | 収納の広さ |
---|---|
ストレートタイプ | 側面の長さ:140~180cm 奥行き:7.5~8cm |
コの字型タイプ | 側面の長さ:120~140cm 奥行き:7.5~8cm |
工期は3日ほどとそこまで長くないので、デッドスペースの活用におすすめです。
1-4.階段の床部分の交換
階段の床部分の交換とは、既存の床板を剥がさずに上から新しい部材を重ねて貼る「カバー工法」を指します。また、傷んだ箇所のみ修復したい場合は、表面の塗装のみ行うパターンもあります。
カバー工法を行うことによって劣化を修繕できるほか、見た目の美しさも復活します。工期は1~2日ほどで、費用相場も9~25万円と比較的安価です。
1-5.階段の勾配や幅の変更
階段の規格に関する法律が定められる以前に建てられた住宅は、階段が急勾配になっていたり、幅が狭くなっていたりする場合があります。リフォームで勾配を緩やかにし幅を広くとることで、落下や踏み外しのリスクを軽減できます。
工事内容は階段の段数を増やし、床部分の幅を広げる方法が一般的です。階段の位置や住宅の状態によっては、既存の階段を一度解体しなければいけないケースもあります。費用相場は20~50万円程度です。
1-6.階段の位置の変更
階段の位置や向きを変更するリフォームは、階段だけでなく床や壁、柱など住宅の一部を解体する大がかりなものです。そのため費用相場も40~300万円と高く、工期も1~2週間と長期にわたります。
ただしこれはあくまでも目安で、階段を新たに設置する場所や手を加える範囲によって費用や工期は異なります。
階段の位置変更は建て直しに近いリフォームなので、家全体の間取りを変えるような規模の大きいリフォームの際に一緒に行うことが多いといわれています。
1-7.階段用昇降機の設置
階段用昇降機を設置するリフォームは、そこまで大がかりなものではありません。階段の床面に金具をつけ、レールを固定し、昇降機(椅子)をはめ込み動作調整を行います。ストレートタイプの階段だけでなく、コの字型の階段にも設置可能です。
ただし、階段用昇降機を設置するには階段に一定の横幅があることが条件となります。ストレートタイプだと横幅最低70cm、コの字型タイプでは最低75cmの横幅が必要です。また、階段のそばに一般的な100Vのコンセントがあることも条件です。
費用相場は約100万円と高額ですが、高齢者や障がいのある方、ケガや病気で階段の上り下りが困難な方も無理なく利用できる点は大きなメリットでしょう。
2.階段リフォームをする際の注意点
階段をリフォームする際の注意点として、以下の3つが挙げられます。
- 建築基準法上による規定を確認する
- 安全性を重視する
- 工期の確認と生活の準備をする
2-1.建築基準法上による規定を確認
階段リフォームの際に注意しておきたい点として、建築基準法上の階段の各パーツのサイズがあります。階段は上り下りのしやすさや安全面などを配慮し、横幅や蹴上げ、踏面などのサイズが法律で定められています。そのため好きにサイズを決めるのではなく、建築基準法の規定を守ったうえでリフォームをしなければなりません。

また、同じように手すりに関しても以下のように義務づけられています。
- 手すりの設置を義務づけ
- 手すりのない側は側壁その他これに代わるものとすること
上記の規定に則ってデザインやサイズなどを決定する必要があるということを覚えておきましょう。
2-2.安全性を重視する
階段をリフォームする際、滑りにくさや階段の暗さなど、安全性を考慮することも忘れてはいけません。
階段の床材はフローリングやカーペット、コルクなど滑りにくい素材を利用しましょう。人造大理石などを使う場合は、踏面の部分に木材を使うと滑りにくくなります。また、段差が多く勾配のある階段は足元が暗くなりがちなので、足元に照明器具を増やしたり、採光のための窓を設置したりすると良いでしょう。床材自体を明るいトーンにするだけでも効果が期待できます。
2-3.工期の確認と生活の準備
階段のリフォーム期間中は、階段や2階以上のフロアを使うことができません。そのため、リフォームに着工する前に生活の基盤を整えておく必要があります。
1~2日で終わる工事は問題ありませんが、工期が長引く大がかりなリフォームの場合、仮住まいが必要になるケースもあります。リフォーム期間中の生活が不便にならないよう、前もって準備をしておきましょう。
3.階段のリフォーム事例
実際に行った階段のリフォーム事例を、写真と一緒に見ていきましょう。
3-1.手すりの設置
※横にスクロールできます


段差が高く上り下りが危ないため、手すりを設置した事例です。同時にすべり止めも貼り付けたので、安全性も上がっています。
出典:https://freshhouse.co.jp/case/1413/
3-2.カーペットの張り替え
※横にスクロールできます


階段床部分のカーペットの張り替えの事例です。美観を維持できるだけでなく、雰囲気も一新しています。リフォーム費用は29万円ほどでした。
出典:https://www.8044.co.jp/gallery/319
3-3.勾配を緩やかに
急勾配で上り下りが大変だった階段を、安全性やバリアフリーを考慮し緩やかになるよう掛け直した事例です。家全体のリフォームも同時に行い、段差の解消や間取り変更など住みやすさにこだわりました。
出典:https://www.8044.co.jp/gallery/365
3-4.階段スペースをLDK内に組み込み
※横にスクロールできます


築30年の住宅のリフォーム事例です。限られたスペースで無駄のない間取りをつくるため、玄関近くにあった階段スペースもLDK内に組み込みました。階段下をあえて見せることで開放感を演出しています。
出典:https://www.8044.co.jp/gallery/987
3-5.階段を吹き抜けLDKの中央へ
※横にスクロールできます


玄関に入ってすぐの場所にあった階段を、LDKの中央に架け替えた事例です。吹き抜けと階段をうまく活用することで、子どもが遊べるアスレチックもできました。
出典:https://freshhouse.co.jp/case/18649/
4.自分で出来る階段リフォーム
滑り止めやキズ防止にシートを張るなど、ご自身でのリフォームをお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。接着剤や両面テープで貼り付けられる素材を用いてのリフォームは、キチンと採寸と裁断ができれば、DIYでの対応が可能でしょう。
階段の踏み面で使うすべり止め用のマットやシートを貼るだけなら、作業はそう難しくありませんし、ホームセンターなどに素材やデザインの違うさまざまな製品がそろっています。すべり止めは階段に付く傷の防止にもなります。価格も1mあたり1000円前後から入手できます。
階段は、住まいにおいて使用頻度も高く、転んだり滑ったりしないよう特に安全に配慮する必要がある場所です。ほんの少しの凹凸や段差でも躓きの要因となりますし、階段での躓きは大けがに直結しかねません。本格的なリフォームをお考えなら、仕上がりの際の安全性なども考慮してプロに相談されることをお勧めいたします。


5.まとめ
生活の導線としての役割を持つ階段。リフォームするとなると様々なケースや安全面など多くの点に配慮が必要となるでしょう。費用や工期もそれなりに必要なケースも多くなると思います。家族の意見など、ご自身の希望や予算をじっくりと検討し、新しい階段を手に入れてください。