
築年数が経ち、家が古くなるにつれ、住まいの耐震性が心配になってきたという方は多いのではないでしょうか。あるいは、耐震診断の結果が悪く、リフォームの必要性を感じている方もいるでしょう。
耐震リフォームを行う際、ぜひ活用したいのが補助金制度です。各自治体が運営する補助金制度では、耐震リフォームにかかった費用の何割かが交付金として戻ってきます。
今回は耐震リフォームの補助金をテーマに、補助金制度の概要をわかりやすく解説します。また、耐震リフォームに対する減税措置についても説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.耐震工事・リフォーム補助金制度
耐震リフォームをする際に利用できる補助金制度は、全国一律ではなく各自治体(市区町村)が運営しています。そのため、自治体ごとに適用条件や補助金額が異なり、なかには制度自体がないところもあります。また補助金制度を利用する際に、施工会社に制限が設けられているケースも少なくありません。
耐震リフォームの補助金制度について詳しく見ていきましょう。
1-1.耐震補助金の対象となるおもな条件
耐震補助金の対象となる住まいには、条件があります。この条件は主に住宅の「築年数」「構造」「建物の用途」によって決められています。
築年数は「旧耐震基準で建てられた木造住宅」が対象となるケースが多いです。1981年年5月31日以前に建てられた住宅がこれにあたります。「構造」は木造軸組み工法で建てられた2階以下の住宅が対象となります。「建物の用途」は居住を目的とした戸建て住宅が対象となりますが、賃貸住宅などでで所有者と居住者が異なる場合は、所有者が耐震診断を受けることが条件です。
1-2.「耐震改修工事」だけでなく「耐震診断」への補助金がある場合も
自治体の補助金制度では、「耐震改修工事」に対するものだけでなく、「耐震診断」の補助金が設けられていることもあります。
耐震改修をするかどうかの判断材料として、住まいの状態や耐震性を確認する耐震診断は必須です。自治体指定の業者の耐震診断を受けることが耐震改修への補助金を受ける条件となっていることも多いので、耐震診断を受ける前に、お住まいの自治体の補助金制度を確認しておきましょう。
1-3.耐震リフォーム補助金の相場
耐震リフォームの補助金の相場は、「工事費用の〇割まで」と設定されている場合が多いです。また、補助金額には限度額が設けられています。自治体によっては段階的改修でも補助金を受けられるケースもあるので、各自治体の制度をよく確認しておきましょう。
仮に150万円で耐震リフォームを行い、6割の補助を受けられる場合、補助金は90万円になります。
1-4.【2024年度】自治体における耐震リフォーム補助金の例
5つの自治体の耐震リフォーム補助金の条件や割合、限度額を以下にまとめました。(2024年度3月時点)
自治体 | 助成条件 | 補助率 | 限度額 | 工事施工者 |
---|---|---|---|---|
東京都渋谷区 |
|
耐震(簡易)改修工事費の5割 |
高齢者等の住宅以外の木造住宅:100万円 高齢者等の住宅:150万円 |
要件なし |
静岡県静岡市 |
|
補強計画+補強工事にかかる費用の8割 | 100万円 | 要件なし |
愛知県名古屋市 |
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耐震改修工事費用の4/5以内 | 一般世帯:100万円 非課税世帯:150万円 |
要件なし |
北海道帯広市 |
|
【対象工事費】 |
30万円 |
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自治体によって助成条件や補助の割合、上限額は異なります。自分の住んでいるエリアの自治体の公式HPなどをよく確認しましょう。
1-5.自治体が実施する耐震リフォーム補助金を確認する方法
居住エリアの自治体の耐震リフォーム補助金を確認する際は、近くの市役所・区役所のウェブサイトを調べたり窓口に直接問い合わせたりする方法が確実です。
ただし、分かりにくい場合は、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が運営する「住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」を活用すると便利です。耐震リフォーム補助金制度だけでなく、省エネルギー化やバリアフリー化など、各自治体が提供するさまざまなリフォームに関する補助金制度を検索できます。
また、耐震リフォームに対応しているリフォーム会社が補助金制度について詳しいこともありますので、相談してみるといいでしょう。
2.耐震リフォーム補助金申請の流れ
耐震リフォーム補助金を申請するフローは以下の通りです。
- 耐震診断を受ける
- 耐震改修工事の見積もりをもらう
- 補強計画の設計書・計画書を作る
- 自治体に補助金を申請する
- 交付が決定したら工事の契約をする
- 着工
- 工事完了後に補助金を受け取る
まずは行政による耐震診断を受け、耐震改修の必要性を確認します。耐震改修が必要だと判断されたら、見積りをもらい、補強計画の設計書や計画書を作成します。設計書・計画書をもとに自治体に補助金申請手続きを行い、申請が通って補助金の交付が決まった後に着工となります。自治体によっては、施工会社がある程度指定されている場合がありますので契約前に確認しましょう。
無事に工事が終わり、施工業者にリフォーム代金を支払った後、完了報告書を自治体に提出し、耐震審査を受けます。審査に問題がなかったら、最終的に補助金を受け取ることができます。
補助金の申請を行う際は、申請が通るようなしっかりとした補強計画の設計書・計画書の作成が必須です。また、補助金制度の内容は毎年変わるので、申請前に最新の情報を確認しておきましょう。
3.耐震リフォームに対する減税措置
耐震リフォームには減税措置も適用されます。なかでも所得税と固定資産税に対する減税制度が代表的です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1.所得税の特別控除
所得税の特別控除は、主に以下の2つに分けられます。
- リフォーム促進税制
- 住宅ローン減税
住宅ローンを利用している場合は、ふたつを併用することも可能です。それぞれの概要を以下にまとめました。
リフォーム促進税制 | 住宅ローン減税 | |
---|---|---|
ローンの条件 | 住宅ローンの有無によらない | 返済期間が10年以上残っている 借入最大額は2,000万円 |
控除期間 | 1年 | 10年 |
概要 |
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|
この2つの減税制度は併用可能です。返済期間が10年以上ある住宅ローンを組んで耐震リフォームを行った人であれば、リフォーム促進税制と住宅ローン減税の両方に申請することができます。
3-2.固定資産税の減税
耐震リフォームを行った場合、固定資産税も減税されます。
固定資産税の減税は1982年1月1日以前からある住宅を対象に、耐震リフォーム費用が50万円(税込)を越えた場合に適用されます。その場合1年間、家屋の固定資産税額の2分の1が減税となります。固定資産税の減税措置を受けるには、耐震リフォームが完了してから3ヶ月以内に各自治体へ申告する必要があります。
また、独自の固定資産税の減税制度を設けている自治体もあります。お住まいの自治体に確認してみましょう。
3-3.その他
耐震リフォームは、ほかにも下記のような減税措置を受けられます。
措置名 | 概要 |
---|---|
贈与税の非課税措置 | 親や親族から住宅取得等資金を贈与により受けた場合、一定金額まで贈与税が非課税になる |
登録免許税の特例措置 | 耐震リフォームなどの改修工事が行った中古住宅を購入し居住する場合、登録免許税の税率が0.3%に軽減される |
不動産取得税の特例措置 | 改修工事を行った中古住宅を譲渡した際、宅地建物取引業者に課される不動産取得税が減額される |
4.耐震リフォームの補助金制度を利用する際に気をつけること
耐震リフォームの補助金制度を利用する際に気を付けるべき点を見ていきましょう。
4-1.内容、申請期間を確認する
耐震リフォームの補助金制度の内容は、毎年同じとは限りません。補助金の上限や適用条件などが変更になっている可能性もあるので、必ず最新の内容を確認するようにしましょう。
また、補助金の申請期間も自治体によって異なります。通年募集しているところなら良いのですが、申請期間が決まっている自治体は、期間内に申請を完了させる必要があります。なかには申請期間内でも予算を越えた時点で募集を締め切ってしまう自治体もあるので、内容を確認したらなるべく早く申し込むようにしましょう。
4-2.施工会社に制限があることも
自治体によっては、耐震リフォームの施工会社に制限を設けている場合があります。よくある例として、同じ市区町村内に営業所や支店を持つ企業のみ許可するケースが挙げられます。
施工会社に制限があるとと、地元企業からリフォーム業者を探さなければいけません。施工業者だけでなく、耐震診断の業者にも制限を設けている自治体もあるので、補助金の申請前によく確認しておきましょう。
5.まとめ
住宅の耐震性は、地震の多い日本では、ないがしろにできない部分です。耐震リフォームの補助金制度は多くの自治体で採用されており、補助金の割合が工事費用の5割以上のケースも少なくありません。
耐震リフォームを行う際は、ぜひ自治体の補助金制度や減税措置を活用してみましょう。
補助金の申請は複雑な部分もあるため、補助金を活用した工事に詳しいリフォーム会社に依頼するとスムーズです。業者選びに悩む際は、リフォーム業者の特徴を熟知したリフォームガイドに紹介をご依頼ください。