介護リフォームで使える補助金は?制度の種類や申請方法、支給条件まで解説

親との同居や自分たちの高齢化などで自宅をバリアフリー化したいと思ったとき、心配になるのが費用面ではないでしょうか?とくに自宅全体をリフォームするとなれば、高額な費用がかかるので、補助金が使えれば非常に助かりますよね。

介護を目的としたリフォームなら、利用できる補助金がいくつかあり、工事内容によっては住宅系の補助金も使えるかもしれません。
しかし、そうした補助金制度は工事前の申請が必須。

リフォームの計画を進める前に、自分たちが使えそうな制度の内容や補助額を確認しておきましょう。


1.介護リフォームの補助金制度にはどんな種類がある?

介護リフォームといえば介護保険などの補助金をイメージしますが、利用できそうな制度は複数あり、それぞれ要件や補助金額、申請先も異なります。
まずは、補助金の種類を見ていきましょう。

介護リフォームに使える補助金は主に3種類

自宅のバリアフリー化で利用できる可能性があるのは、次の3つの補助金です。

  • 介護保険による住宅改修費の支給
  • 自治体独自の助成制度
  • 国の住宅系補助金制度

それぞれの概要と要件は、次章で説明します。


2. 介護保険を使った住宅改修制度

『介護保険による住宅改修制度』は、介護保険の要介護や支援認定を受けている人を対象にした補助金制度です。
限度額は20万円で、所得に応じて自己負担額が決まります。

2-1.介護保険による住宅改修の詳細

制度の詳細を見てみましょう。

内容
対象者 要支援1・2または要介護1~5の認定を受けた人
支援限度額
20万円(複数回に分けての利用も可)
自己負担額 工事費用の1~3割
対象改修工事 手すりの設置、段差の解消、扉の交換
滑りにくい床材への交換、和式から洋式便器への交換、
その他付帯工事
支給方法 償還払い(工事後に申請して払い戻し)、
または受領委任払い(事業者が代理受領)

参考:厚生労働省『介護保険における住宅改修』

介護保険による住宅改修は、全国共通で同じ基準になっています。

ただし注意したいのは、支援限度額は20万円となっていますが、限度額がそのまま支給されるわけではなく、自己負担割合によって実際に受けられる補助額が変動する点です。
自己負担額が1割なら最大支給額は18万円、2割なら16万円になります。

【支給が複数回受けられるケースも!】
介護保険による住宅改修は、1人につき生涯20万円が限度額です。
しかし、最初の改修から要介護度が3段階以上上がった場合や転居した場合は、20万円が再度利用できます。

2-2.介護保険を利用する流れ

介護保険による住宅改修を利用するときには、次の流れで手続きを進めます。

介護保険住宅改修費申請フロー

リフォームの計画段階で要介護・要支援認定を受けていない場合は、認定申請からのスタートになります。認定がなければ支給対象にならないため、注意してください。

また、申請についても、「施工前」「完成後」の2回に分けて手続きが必要なので、リフォーム会社への相談時に、補助金利用の旨を伝えておきましょう。

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3. 自治体独自の助成制度

介護保険の住宅改修に加えて、多くの自治体が独自の助成制度を設けています。

3-1.助成制度の内容例

多くの自治体が設けているのが、次のような助成制度です。

  • 住宅改修費(リフォーム費用)の助成
  • 高齢者向け住宅改修費の助成
  • 省エネ・エコリフォーム補助金
  • 近居、同居支援事業

自宅のバリアフリー化を目的とした制度もあれば、住宅の省エネ化や近居・同居などの要件を満たすことで利用できる制度もあります。
よくみられるのが、住宅の省エネ性を高める工事と同時に行えば、介護リフォームも補助申請ができる制度ですが、要件や補助額は自治体ごとにさまざま。事前確認が不可欠です。

3-2.補助金情報収集の方法

自治体独自の助成制度を利用するには、情報収集が大切です。
次のような方法で、自分たちの地域の助成制度について調べてみましょう。

  • 市区町村のウェブサイトを見る
  • 補助金検索サイトで調べる
  • 検索エンジンで「介護リフォーム 補助金」と入力して調べる
  • 市区町村役場の窓口で相談する
  • リフォーム会社に相談する

すぐに情報を調べたいときには、市区町村のウェブサイトや『地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト』、検索エンジンで調べるのがおすすめです。
インターネットを利用すれば、さまざまな補助金・助成制度を一覧で調べられます。

ただし、ウェブには古い情報も紛れ込んでいるので、必ず最新情報をチェックしてください。

もっとも確実なのは、市区町村窓口への相談です。
リフォームの補助金は、建築課や都市整備課などが担当になっていることが多いので、直接足を運ぶか、電話で問い合わせをしてみてください。

リフォームの計画とあわせて確認したいときには、リフォーム会社に相談するとよいでしょう。

3-3.主要自治体の例

自治体独自の助成制度は、名称や制度内容、補助額はそれぞれ異なります。
お住まいの地域と同じ内容だとは限りませんが、参考程度に一例を見てみましょう。

【名古屋市:障害者住宅改造補助金の支給】

障害がある人や、要介護・要支援認定を受けた人を対象に、住宅改修費用が補助される制度です。

内容
対象者 ・身体障害者手帳の肢体または視覚障害の1級から3級の人
・身体障害者手帳の内部障害の障害の程度が1から2級の人
・介護保険の要支援、要介護の認定を受けた人 
など
支援限度額
介護保険の要支援、要介護の認定を受けた人:60万円
対象改修工事 居室や浴室、トイレなどの日常生活における困りごとを軽減し、安全性を確保するためのリフォーム

参考:名古屋市『障害者住宅改造補助金の支給』

名称には『障害者』とのみ記載されていますが、要介護・要支援認定者も対象です。

このように自治体独自の助成制度で多いのは、“障害のある方を対象にした補助金”ですが、要支援・要介護を受けた人も対象になる制度もあります。
高齢者や介護だけに絞らず、住宅改修費用の補助金を全体的に目を通してみてくてださい。

【さいたま市:介護予防のための住宅改修について】

高齢者の自宅での転倒リスクを防ぐために、住宅改修費用を助成する制度です。
要介護・要支援認定の有無にかかわらず、市内に居住する65歳以上の人が対象になります。

内容
対象者 ・市内に居住する65歳以上の高齢者
・さいたま市に1年以上居住している人
・『生活機能チェック』において、身体機能の低下に
 よる要介護状態等となる恐れが高いと判定された人 
など
支援限度額
・介護保険料第1~2段階:上限15万円(対象経費相当額)
・介護保険料第3段階以上:上限10万円(対象経費の2/3)
対象改修工事 手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材への交換、
扉の交換、和式から洋式便器への交換

参考:さいたま市『介護予防のための住宅改修について』

介護保険は要介護・要支援認定が必須ですが、自治体独自の助成制度は対象者とその範囲が広いものも多くあります。「要介護・要支援認定がないから」と諦めず、まずは自治体窓口や地域のリフォーム会社に相談してみるとよいでしょう。

【介護保険と市区町村の助成金制度の併用はできる?】

補助金制度は、併用できる制度とできない制度があります。
併用できるのは、対象工事が異なる、あるいは介護保険の上限を超えた部分について補助が出る制度などです。

ただし、同一工事での二重申請は不可の場合がほとんど。手すりの設置に介護保険を使うなら、自治体独自の助成金は対象外になります。
制度の併用を希望するなら、必ず事前に確認しておきましょう。


4. 介護リフォームで使える国の補助金制度

子育てグリーン住宅支援事業のように住宅の省エネ化を向上させる工事と組み合わせることで、国の補助金制度を利用できる場合があります。
介護リフォーム単体では申請できませんが、対象となる工事を一緒に実施すると、支給の対象になる可能性があります。

ただし、自治体の助成制度と同様に、介護保険と同じ箇所で重複して補助を受けられない点には注意が必要です。

【国の補助金制度は年度ごとに変わる!】

国の補助金制度は年度替わりかつ、申請期限や予算が決まっており、予算に達すると申請自体ができなくなります。
2025年の補助金制度は申請期間と着工期間に間に合わない可能性が高いので、これからリフォームを計画する方は、2026年の制度を利用することになるでしょう。

子育てグリーン住宅支援事業の後継事業としては「みらいエコ住宅2026事業」が発表されています。詳細は後日公開となるので、最新情報をチェックしましょう。

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5.介護リフォームで使える減税制度

補助金制度とあわせて活用したいのが、税金面の優遇です。
直接的に費用を抑えられるわけではありませんが、控除や減税を受けることで、実質的に負担を減らせます。

5-1. 所得税減税制度

自宅をバリアフリーリフォームすると、所得税の税額控除が受けられる可能性があります。

内容
対象者 1.50歳以上の人
2.要介護、または要支援認定を受けている人
3.障害のある人
4.上記2.3または65歳以上のいずれかに該当する親族と同居している人
控除上限額 20万円(対象工事限度額:200万円)
対象改修工事 一定のバリアフリー改修

所得税の減税制度は住宅ローン減税(控除)との併用ができないので、リフォーム費用を現金払いした場合に利用しましょう。

5-2. 固定資産税の減税制度

固定資産税は、所有している土地や建物に対してかかる地方税です。
対象となるバリアフリー改修を行ったうえで市区町村窓口に申告書を提出すれば、翌年度分に限り、減税が受けられます。

内容
対象者 ・65以上の人
・要介護、または要支援認定を受けている人
・障害のある人
控除上限額 翌年度分の固定資産税から1/3が減税
対象改修工事 一定のバリアフリー改修

上記は要件の一部であり、他にも築年数や工事費用、床面積などの細かい決まりがあります。自分が対象になるのか知りたいときには、『リフォーム促進税制(所得税・固定資産税)について』のページをご覧ください。
制度についてわかりやすくマンガ調でまとめられており、制度の適用可否や減税額(目安)をシミュレーションするページもあります。

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6.事例で見る補助金を活用した介護リフォーム

介護リフォームをすれば、さまざまな補助金や減税制度が利用できるとわかりました。
ここでは、補助金制度を活用しながら行ったリフォーム事例を紹介します。

6-1.在来浴室からユニットバスにリフォーム

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介護リフォーム_before
介護リフォーム_after

出典:イズホーム

昔ながらの在来浴室を、ユニットバスへとリフォームした事例です。
寒さと滑りやすさが心配な床材や、手入れが大変なタイル、そして段差のある浴槽をすべて取り払い、断熱性が高いユニットバスへと交換しました。

浴室の広さを確保するためにオーダーサイズを選び、浴室の各所には、くぼみのあって握りやすい手すり(ディンプルタイプ)を採用。
安全性だけではなく、快適性も高める介護リフォームになりました。

建物 戸建住宅
費用 約100万円
築年数 47年
工期 4日程度

6-2.アプローチをバリアフリー化

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出典:山商リフォームサービス

足元が不安定だったアプローチを、リフォームした事例です。

つまづきやすい石板はすべて撤去し、通路幅を拡張したうえで上からタイルを施工しました。
タイルといえば滑りやすいイメージがありますが、この事例では、滑り止め機能が高く、万が一転倒したときにも怪我がしにくい端部がR加工の素材を採用。デザイン性と安全性を両立させています。

手すりも設置したので、歩行や車いすでの自走も安心です。

建物 戸建住宅
費用 52万円
築年数 25年
工期 1週間

6-3.和式から洋式トイレにリフォーム

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出典:山商リフォームサービス

老朽化した和式トイレを、洋式トイレへとリフォームした事例です。
リフォーム時には段差を解消しフラットにし、バリアフリーに。便器にはお手入れがしやすいタンクレストイレを選んだので、掃除の頻度を減らせます。

建物 戸建住宅
費用 52万円
工期 2日

6-4.玄関をバリアフリー化

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出典:山商リフォームサービス

介護が必要になった母親のために、賃貸スペースをリフォームして居室化した事例です。

玄関の間口が狭く段差もあったため、玄関ドアを間口の広い『親子ドア』へと交換し、車いすでも入りやすく、通行できる広さへと拡張。
段差を緩和したので、敷台を置けば車いすのまま室内へと入れます。

建物 戸建住宅
費用 約40万円
築年数 40年
工期 4日程度

7.介護リフォームの補助金を活用する際の注意点

介護リフォームの補助金制度には、頭に入れておきたい注意点がいくつかあります。
見落とすと申請ができなくなる恐れがあるため、事前にチェックしておきましょう。

7-1.工事前申請が必須!着工後は対象外になる場合も

補助金を利用するときに必ず注意したいのが、“工事前に申請を行うこと”です。
介護保険による住宅改修費や自治体の助成制度のほとんどは、着工前の申請が必須。見積書や図面、改修の理由書、住宅所有者の承諾書などの書類を自治体に提出し、承認を得てから着工しなければなりません。

申請前に工事を行うと事後申請をしても対象外になってしまうため、必ずリフォーム前に申請しましょう。

7-2.補助対象外になる工事がある

介護リフォームの補助金や助成金制度で対象となるのは、“利用者の安全や、介護のしやすさにつながる工事”です。
たとえば、手すりやスロープの設置、開き戸から引き戸への交換、滑りにくい床材への交換などは対象になりますが、内装デザインの変更や収納の増設などは対象外です。

劣化した箇所の修繕や暮らしの質を向上させるためのリフォームになると、補助金は支給されません。ただし、対象範囲は制度ごとに異なるため、リフォーム会社と自治体へ事前に確認しておきましょう。

7-3.補助金の入金までに時間がかかる

補助金制度の多くは、着工前と完成後の2回に分けて申請と審査を行うため、入金までに時間がかかります。
制度や申請のタイミングによっても変わってきますが、数週間から数か月かかるケースも少なくありません。また、書類や記載内容に不備があると、さらに時間がかかります。

補助金の使用用途や時期が決まっているなら、スケジュールには余裕をもって早めに書類準備をしておきましょう。

7-4.補助金に詳しい業者選びが大事

スムーズかつ確実に補助金制度を利用するためには、次のようなポイントを意識しながら業者選びを進めましょう。

  • 地域の補助金・助成金制度に詳しい
  • 工事計画書や理由書などを書き慣れている
  • 申請手続きを代行してくれる
  • 補助金が使える工事内容を提案してくれる

他にも、補助金を使ったリフォームの事例の多さや、口コミの内容などもチェックしておくと安心です。
さらに、『福祉住環境コーディネーター』のような専門資格をもつ担当者がいる会社なら、介護リフォームに適した提案もしつつ、補助金申請をサポートしてもらえるでしょう。


8.まとめ

利用者の生活の安全性や介護のしやすさを確保するためのリフォームには、介護保険や自治体、国が用意している補助金や助成金、控除・減税制度が利用できる可能性があります。
自分たちではなく親が要介護・要支援認定を受けている場合でも対象になることが多いので、そうした制度を利用することで費用負担を軽減できます。

しかし、工事内容や範囲、内容などは制度ごとに異なり、同じ箇所を重複して申請できないので、より補助額が大きい制度を利用することが大切です。
さらに制度の多くは着工前・完成後の2段階申請になっているため、介護リフォームの検討段階で、補助金を利用したい意向をリフォーム会社に伝えることも忘れないようにしてください。

補助金制度に詳しいリフォーム会社に相談すれば、制度の選択肢や工事内容もスムーズに決められます。

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