
築古の家にこれからも住もうとする時、
「大規模なリフォームをするなら、建て替えてしまったほうがいいのでは?」
「それともリフォームのほうがかなり安いのだろうか?」
という疑問にぶつかるのではないでしょうか。
一生に二度もない大きな決断ですので、判断は慎重になりますよね。
基本的には、リフォームのほうが解体費用や廃材処分費用がかからない分、建て替えるより安いです。
ただ、リフォームでは劣化部分をひとつひとつ修復していくため、作業効率が悪くなります。そのため家の状態によっては建て替えたほうが手っ取り早く、場合によっては安く済むこともあります。
また、リフォームか建て替えどちらが良いかは価格の安さで判断できるものではありません。
例えば、「今後どのくらいの期間住み続けるのか」、「そもそも建て替えができる建物なのか」など、リフォームか建て替えかを選ぶうえで考えるべきことはたくさんあります。
こちらの記事では、リフォームと建て替えとの違いを徹底比較するほか、リフォームと建て替え両者の費用相場も詳しく解説しています。
ご自身のお住まいがリフォームと建て替えどちらに適しているか判断するために、ぜひ参考にしてください。
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目次
1.【築年数別】「リフォーム」と「建て替え」どっちがお得?建物の状態/費用で考える
建物の築年数が古く、リフォームと建て替えどちらにすれば良いか悩んでいる、という方は多いのではないでしょうか?
こちらの章では、築30・40・50年それぞれの建物がリフォームもしくは建て替えのどちらに適しているか解説していきます。
築30年 | 内装や水回り中心のフルリフォームがおすすめ |
---|---|
築40年 | スケルトンリフォームがおすすめ |
築50年 | 基本的に建て替えがおすすめ |
工事を検討している建物の築年数だけでなく、劣化状況にも応じてリフォーム/建て替えのどちらにするか決定しましょう。
1-1. 築30年:全面リフォームがおすすめ
築30年の建物は、内装や水回り中心のフルリフォームを行うのがおすすめです。
劣化状況は建物によって異なりますが、築30年であれば設備交換や内装貼り替えなどのリフォームで対応が可能です。
具体的には、水回り等設備の交換、内装の張り替え、外壁塗装などです。
また、費用の面でも築30年の物件はリフォームの方がお得になります。
反対に、築30年ほどの物件であれば構造部分の劣化も少なく、解体や廃材処分など工事にかかる費用がかさんでしまうため、建て替えはおすすめできません。
リフォーム | 建て替え |
---|---|
1500~2000万円 | 2500~3500万円 |
建て替えの状態が著しく悪い場合は、スケルトンリフォームで柱や基礎のみを残して耐震性を上げたほうが良い場合もあります。
1-2. 築40年:スケルトンリフォームがおすすめ
築40年の建物は、スケルトンリフォームがおすすめです。
築40年の建物は、建築基準法が改正される前の「旧耐震基準」の建物であるため、耐震工事が必要です。
基礎のみを残して一から作り直すスケルトンリフォームでは、耐震工事が可能なほか、新築同様の仕上がりにすることができます。
費用の面でも、築40年の物件はリフォームの方がお得になります。
リフォーム | 建て替え |
---|---|
1500~2000万円 | 2500~3500万円 |
ただし、建物の構造躯体が激しく劣化・腐敗していた場合は建て替えをおすすめします。基礎の状態はご自身で判断せず、リフォーム会社に必ず確認してもらいましょう。
1-3. 築50年:基本的に建て替えがおすすめ
築50年の建物は、建て替えorスケルトンリフォームがおすすめです。
築50年の建物は、建築基準法が改正される前の「旧耐震基準」の建物であるほか、柱や構造躯体の老朽化が進んでいる可能性が高いため、建て替えが基本になります。
ただ、構造躯体の状態が良好であれば、スケルトンリフォームを行うことも可能です。
築50年の建物は、リフォームと建て替えで費用に差が生じないことがあります。その場合は、建て替えを選ぶことでリフォームよりも建物の寿命が伸びるため、おすすめです。
リフォーム | 建て替えにした場合 |
---|---|
1800~3000万円 | 2500~3500万円 |
築年数で完全に判断するのはNG!建物の状況はプロに確認してもらおう
1章では、築年数別にリフォーム・建て替えのどちらが適しているかを解説しましたが、築年数はあくまで基準であり、「リフォームが適している」「建物が適している」と決定づけるものではありません。
リフォームと建て替えどちらにすべきかの最終判断は建物の状態の確認が必要で、判断を誤ると建物の損傷・倒壊につながる恐れがあるからです。
また、築年数の古い物件の中にはリフォームや建て替えができない・制限がある場合もあります。(参照:2-4.工事での制限の違い)
建物の状態についてはご自身で判断せず、必ずリフォーム会社に見てもらうようにしましょう。
2.「リフォーム」と「建て替え」何が違う?徹底比較
リフォーム | 建て替え | |
---|---|---|
費用 | 1500~3000万円 | 2500~3500万円 |
工事にかかる期間 | 1~4.5か月 | 4~8か月 |
建物の寿命 | 30~40年(築40年目安) | メンテナンス次第で50~60年 |
工事での制限 | 建物の状態によってはリフォーム不可/構造によっては希望通りの間取り変更が不可 | 建て替えできない/面積を小さくしなければいけないケースもある |
ご自身の住まいに合っているのはリフォーム・建て替えのどちらか理解し、満足度の高いリフォームを叶えるために、ぜひ参考にしてください。
2-1.費用の違い
リフォーム | 建て替え |
---|---|
全面リフォーム(スケルトンなし):1500~2000万円 スケルトンリフォーム:1500~3000万円 | 2500~3500万円 |
基本的には、リフォームのほうが解体費用や廃材処分費がかからない分、建て替えるより安くなります。また、リフォームは予算に合わせて優先順位を決め、箇所を絞って工事が可能です。
さらに建て替えは、新築同様の手続きが必要なため、税金や登記費用など諸費用が発生するほか、固定資産税や不動産取得税など各種税金もかかります。
ただ、家の状態によってはリフォームで劣化部分を1つ1つ修復するよりも、建て替えた方が手っ取り早く、費用も抑えられる場合もあります。
【リフォームが適している例】
工事を検討している建物の状態が良好で、費用をなるべく抑えたい
【建て替えが適している例】
大規模な修繕が必要な建物で、リフォームと建て替えの見積もり費用にあまり差がない
リフォーム・建て替えそれぞれにかかる費用は2章で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
2-2.工事にかかる期間の違い
リフォーム | 建て替え |
---|---|
1~4.5か月 | 4~8か月 |
リフォームは、規模の大きさによって工期が異なりますが、半年以内に完了するものがほとんどです。また、工事内容によっては住みながら工事をすることも可能です。
建て替えは解体作業が必要なため、半年以上工事が行われることが多いです。建て替えの場合は工事完了までの仮住まいが必須です。
【リフォームが適している例】
- 工事を終えたい時期が決まっている
- 工事にあまり時間がかけられない
【建て替えが適している例】
工事に多少時間がかかっても待つ余裕がある
2-3.建物の寿命の違い
リフォーム(築40年の建物の場合) | 建て替え |
---|---|
30~40年 | メンテナンス次第で50~60年※ |
※出典:https://www.mlit.go.jp/common/001011879.pdf
建物の寿命は、現在の建物の状態やどのような家に建て替えるのか・メンテナンスの頻度によって異なりますが、建て替えるほうが今後の建物の寿命は長くなると考えられます。
基礎以外を解体して一から作り直すリフォームを行った場合、築40年の建物の寿命はあと30~40年が目安となります。
一方建て替えは、工事の完了後も定期的なメンテナンスを行うことで、50~60年が寿命の目安となります。(基礎・躯体以外の部位の期待耐用年数の目安より)
ご自身の年齢からあと何年住むのか、将来売却や相続の予定はあるかなど、それぞれのご事情に照らし合わせて家の寿命も考えるといいでしょう。
以下にシチュエーション例をご紹介いたします。
シチュエーション別・建物の寿命で考える「リフォーム」と「建て替え」
【リフォームが適している例】
- 次の世代が建物を住み継ぐ可能性が低い
- 将来の家族計画が十分に描けていない
【建て替えが適している例】
- 次の世代が建物を住み継ぐことが決まっている
- 将来の家族計画が明確である
2-4.工事での制限の違い
リフォーム | 建て替え |
---|---|
建物の状況によってはリフォーム不可/希望通りの間取り変更が不可 | 建て替えができない/面積を小さくしなければいけないケースもある |
リフォームと建て替えどちらの場合でも、工事に制限がかかることがあります。
以下は、リフォームや建て替えが不可もしくは制限がある状態の一例です。
【リフォームができない・制限があるケース】
①建物の構造により、希望通りの間取り変更が不可
建物の構造によっては、希望通りに間取り変更ができない場合があります。
例えば、木造の「ツーバイフォー(2×4)工法」という工法でつくられた建物は、壁で家全体を支える構造のため、希望通りの間取りにすることができない可能性があります。
リフォームを希望する建物がどのような構造なのかは事前に確認しておきましょう。
②建物の構造躯体が著しく劣化しており、リフォーム自体が不可
建物の基礎が激しく劣化・損傷している場合は、リフォーム自体ができません。
基礎の強度が不十分なままリフォームを行うと、建物の倒壊に繋がる恐れがあります。
工務店やリフォーム会社に建物の状態を見てもらい、リフォームできるかどうか判断してもらいましょう。
【建て替えができない・制限があるケース】
古い住宅の場合、建築基準法の改正に伴い建て替えができないor敷地面積を小さくしなければならない場合があります。
具体的には、現在の法律上災害時に消防車・救助車が通れる広さを確保するため、住宅の敷地が「幅4m以上の道路に2m以上接していないといけない」という規定があり、建物の状態によっては建て替え不可・敷地面積を小さくしなければならなくなります。
①法令によって建て替えができない
建物が2m以上道路に接していなければ、建て直し自体が不可能となります。
②建て替えは可能だが敷地面積を小さくしなければならない
建物が2m以上道路に接していても、道路の幅が4m未満であった場合は、セットバック(土地の境界線から一定の間隔を確保し、建物を建てること)をする必要があります。
なお、リフォームまたは建て替えを検討している建物が上記の条件に当てはまらないかどうかは必ず把握し、建物に合った工事計画を立てるようにしましょう。
【リフォームが適している例】
- 再建築不可でそもそも建て替えられない
- (セットバックが必要な場合)建物の面積はそのままで工事をしたい
【建て替えが適している例】
建物の損傷があまりにも激しくリフォームができない