
防音室を作りたいときには、自宅の1室を防音施工するのが一般的です。
しかし「居住空間を分けたい」「防音室にできる部屋がない」などの理由で、防音リフォームをできない場合もあるでしょう。
そのようなときには、防音室を増築する選択肢があります。
そこで本記事では、防音室を増築するメリットとデメリットを比較しながら、費用相場や注意点まで解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
1.防音室を作る前に知っておきたい『遮音』と『吸音』の違い
一般的に室内外の音を防ぐことを『防音』といいますが、実は『遮音』と『吸音』の2つの方法があります。
まず、遮音は音を遮断することです。防音性の高い建材や内装材を使って空気中に伝わる音を絶ち、室内の音が漏れないように遮断します。
一方で吸音は音を吸収することをいい、室内に反射する音を吸収して音の広がりを防ぎます。室内外の熱を伝わりにくくする断熱施工と同じように、グラスウールやウレタンフォームなどの断熱材を壁や床に充填するのが一般的です。
「それなら高断熱の家なら防音対策は不要なのでは?」と思うかもしれませんが、吸音だけでは防音性は不十分。音を絶つ遮音と組み合わせてこそ、防音が成り立つのです。
以上の点を踏まえて、この先のメリットやデメリット、注意点などに目を通してみてください。
2.防音室を増築するメリットは?自宅の一室を防音室に改修する場合と比較
まずは自宅に防音室を増築する場合と、部屋一室を防音室に改修する場合のメリットとデメリットを比較してみましょう。
①防音室を増築する場合
メリット | デメリット |
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防音室を増築するメリットは、防音したい音に合わせた空間を作れることです。
音源にはいくつか種類があり、それぞれ音響特性(周波数特性)が異なります。たとえば楽器でも、鍵盤楽器、弦楽器、電子楽器、オーディオはそれぞれ音質が異なり、音の伝わり方も違います。そういった音の特性に合わせた天井高や広さに設計・施工を行えるのが、増築最大のメリットです。
音源に合わせた音響施工もできるので、心から音楽や趣味を楽しめるでしょう。また、住宅とは別で出入口を設ければ、防音室と生活空間を完全に分離できます。
しかしその一方で、いくつかデメリットもあります。
まず、増築では新たに建物を作ることになるため、改修よりも工期が長く、費用も高額です。さらに建ぺい率や容積率の問題で施工自体ができないこともあり、10㎡(約5畳)を超える増築なら『建築確認申請』が必要になるなど、課題点もあります。
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②部屋の一室を防音改修する場合
メリット | デメリット |
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部屋一室の防音改修には、工期や費用面のメリットがあります。増築よりも費用を抑えられるケースが多く、工期も増築ほどかかりません。
さらに床面積が増えないので増築のように規制を受けることがなく、建築確認申請も不要です。
組立式の簡易的な防音室ならば、引っ越し先に持って行ったり、解体したりすることもできます。
しかし防音改修は防音材の厚みで室内が狭くなるため、防音したい音源に合わせた施工ができないことも。増築よりも防音性は劣る可能性があります。
また、防音室にするために一室を空けなければならないので、家族の生活にも影響するでしょう。
このように、増築と改修はどちらもメリットもあればデメリットもあるため、自分たちが求める防音性や自宅の状況などから、どちらが適しているのかをよく考える必要があります。
▼部屋の一室を防音改修する方法について、詳しくは以下の記事もご覧ください。


3.防音室増築の費用相場と工期
1章で説明したように、防音したい音源によってそれぞれ適した防音方法が異なります。
では、具体的にどのくらいの費用と工期がかかるのでしょうか。
ここでは、楽器や部屋の広さごとの防音室増築の費用相場を見てみましょう。
4畳 (約7㎡) |
6畳 (約11㎡) |
8畳 (約15㎡) |
|
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ピアノ、管楽器 (70~110dB) |
250万円~ | 260万円~ | 280万円~ |
ドラム (80~120dB) |
不可 | 350万円~ | 380万円~ |
オーディオルーム (80〜90dB) |
210万円~ | 220万円~ | 240万円~ |
表を見てわかるように、防音すべき音(dB)が大きくなるほど防音対策が必要になるため、必然的に費用も高くなります。出入口や住宅の解体有無によっても費用が変わってくるでしょう。
また、工期も費用と同様に工事規模や住宅の状態によって変わりますが、1か月〜3か月ほどはかかります。詳細な費用と工期を知りたい方は、リフォーム会社に相談してみてください。
4.防音室を増築する際の注意点
ここでは、防音室を増築する時に注意しておきたいことを4つ解説します。
後悔のない増築を行うためにも、注意点を知った上でよく検討しましょう。
①建築確認申請が必要かどうか確認する
2章の増築のデメリットでお伝えしたように、10㎡を超える増築を行うときには、建築確認申請が必要です。書類の作成や行政からの許可が出るまでに時間がかかるだけではなく、申請にあたって15〜20万円ほどの代行費用もかかります。
また、住宅の建ぺい率や容積率が上限ぎりぎりになっている場合は、増築面積に制限が出ることや、そもそも増築自体ができない可能性もあります。建築確認申請の必要性や増築の可否も含めて、リフォーム会社に相談してみるとよいでしょう。
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②防音室を増築する目的を明確にする
前述のように、施工内容は防ぎたい音源によって若干変わってきます。
そのため、「防音室を作りたい」と漠然とした希望を伝えただけでは、満足のいく防音性能や音響が得られない心配があります。
リフォーム会社への相談時には「何のために」「どのくらいの」防音をしたいのかを、しっかりと伝えたうえで、必要な施工方法を提案してもらいましょう。
③熱や湿気がこもりやすいので空調で対策する
防音室は音を防ぐために、高気密・高断熱仕様になっています。
しかし防音室には住宅のように換気システムが導入されていないため、熱や湿気がこもりやすくなってしまうのが難点です。
音漏れを防ぎつつも快適な空間にするためには、空気清浄機や除湿機、空調機器などを取り入れましょう。
ただし壁への穴あけが必須なエアコンは、防音性を低下させる恐れがあります。リフォーム会社と相談のうえ、適切な熱・湿気対策を考えてみてください。
④防音工事の実績がある業者に依頼する
防音室の増築は、業者選びが最も大切だと言っても過言ではありません。
なぜなら防音施工は、リフォームや建築の知識だけでは不十分だからです。防音だけに特化すると、「音漏れはなくなったものの、室内での音が悪くなった」ということも起こり得ます。
そのため防音室を増築するときには、リフォームや建築の知識に加えて、遮音と吸音、そして音響の知識がバランスよくある業者に依頼することが重要です。
希望をしっかりとヒアリングし、自宅を調査したうえで適切な防音方法を提案してくれるリフォーム会社に依頼しましょう。
増築か改修か迷っている場合は、両方の見積もりを詳細に出してもらい、じっくり比較検討できるようにしてもらえるとより安心です。
5.まとめ
本記事では、防音室を増築するメリットやデメリット、費用、注意点などをお伝えしてきました。
予算や庭の広さ、建ぺい率、容積率などの課題をクリアできるのならば、改修よりも増築のほうが快適な防音室を実現できるでしょう。
しかし増築するデメリットの比重のほうが大きいのであれば、自宅の一室を防音室へと改修したほうがいいかもしれません。
自分たちの希望、予算、自宅の状況などから、増築と改修、どちらが適しているのかを細かく配慮し、提案してくれるリフォーム会社を探しましょう。