
木造住宅に住んでいて、隣家との音の問題で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。子供の楽器練習、愛犬の鳴き声、あるいは映画鑑賞時の音響設備の音漏れなど、生活音はさまざまです。
この記事では、木造住宅の防音性能の実態から、手軽にできる対策、さらには本格的な防音リフォームまで、幅広く紹介します。最新の木造住宅の防音技術や、遮音等級の見方なども解説するため、快適な住環境づくりにぜひお役立てください。
目次
1.木造住宅はどの程度音漏れするの?築年数によって変わる?
木造住宅では実際どの程度の音漏れがするのかは、気になるところです。ここでは、日常生活でよくある騒音の例や防音性にかかわる遮音等級について紹介します。
また、近年の新築木造住宅の防音性についても紹介するのでぜひ参考にしてください。
1-1.身近にある騒音の例|音漏れはどのくらい気になる?
木造住宅に住む場合に気になるのが、近所への音漏れについてです。騒音として気になるかならないかは本人の主観に依存する部分も大きいのですが、実は住宅のつくりによっても聞こえ方はだいぶ変わってきます。 次の表は近隣住民からどの程度の音量が聞こえるかを目安として示したものになります。
騒音レベル | デシベル | 身近な例 | 日中聞こえる | 夜間聞こえる |
---|---|---|---|---|
極めて うるさい |
120デシベル | ドラム音 | ○ | ○ |
110デシベル | 車のクラクション | ○ | ○ | |
100デシベル | 電車通過時のガード下 | ○ | ○ | |
90デシベル | カラオケ店 | ○ | ○ | |
80デシベル | ピアノ音 | ○ | ○ | |
うるさい | 70デシベル | 近い位置での大きな声 | ○ | ○ |
60デシベル | トイレの洗浄音 テレビの音 |
× | × | |
普通 | 50デシベル | 冷房の吹き出し音 | × | × |
40デシベル | 昼間の住宅地 | × | × | |
静か | 30デシベル | ささやき声 | × | × |
20デシベル | 時計の針 | × | × |
狭小住宅で隣家との距離が近い場合などは、木造の場合は日中でも隣の家のテレビの音などはかすかに聞こえてくるかもしれません。どの程度の音が気になるかは人それぞれかもしれませんが、木造住宅を選ぶ際の一つの基準にしていただければと思います。
また同じ木造であっても、造りや防音の状態によって聞こえ方は異なってきますので、その点は注意が必要です。
1-2.近年の新築木造住宅は防音性が高まっている
近年の新築木造住宅は、高い防音性能を持っています。戸建て住宅への憧れがあるものの「木造なら防音性は低いのでは」と懸念を抱く方も多いでしょう。
しかし、この認識は最新の木造住宅には当てはまりません。現代の新築木造住宅では、高気密・高断熱化が進んでおり、これが防音性能の向上にもつながっています。
例えば、壁や床に防音材を充填したり、二重構造の壁や窓を採用したりすることで、外部からの音の侵入や内部からの音漏れを大幅に軽減しています。また、床材や壁材自体も防音性能を考慮した選択をすることもできます。
子供の楽器演奏や愛犬の鳴き声など、特定の音に対する対策も可能です。例えば、楽器練習用の部屋には追加の防音処理を施したり、ペットの居室には吸音材を効果的に配置したりするなど、個別のニーズに応じた対策が取られています。
防音性能の向上はリフォームでも可能です。


2.建物の防音性は「遮音等級」も確認しよう
建物の防音性能を客観的に評価する指標として「遮音等級」があります。
新築を購入する人で音漏れが気になる場合は、事前にカタログにてサッシやフローリング材の遮音等級を確認すると良いでしょう。ただし、リフォームの場合はどこまで工事するか(断熱材の変更、床張り替え、サッシの入れ替えなど)によって遮音等級も変わります。気になる人は、打ち合わせの段階で相談するようにしましょう。
遮音等級を表す値
遮音等級は、日本建築学会が定めるD値とL値との二つの基準から成り立っているものです。
家の中・外の遮音性を表すのは「D値」
D値は壁の遮音性能を表し、隣接する空間の間で、壁がどの程度「空気音」を遮断できるかを示します。数値が高いほど遮音性能が高いです。戸建て住宅の場合、外壁のD値が高ければ、道路からの騒音や隣家の生活音を効果的に遮断できます。
上下階の遮音性を表すのは「L値」
一方、L値は床の衝撃音遮断性能のことです。上階から下階へどれだけ「固体音」が伝わるかを示し、数値が小さいほど遮音性能が優れています。戸建て住宅では、二世帯住宅や2階に子供部屋がある場合など、上下階の音の伝わりが問題になる状況で重要になります。
近年の高性能な木造住宅では、壁や床に効果的な防音材を使用したり、二重構造を採用したりすることで、L-55やL-50といった高い遮音等級を達成可能です。
3.お金を掛けずに自分でできる防音の工夫
あまりお金を掛けずに防音対策をしたいという方も多いかと思います。近所の騒音を防ぎたいという場合もあるでしょうし、逆に近所に迷惑を掛けないようにしたいという場合もあるでしょう。
騒音を完全に無くすのは難しいですが、少しでも騒音を防ぐためにご自身でできる方法をご紹介致します。
3-1.家具の配置を見直す
家具の配置を見直すことで防音に効果があるケースがあります。簡単にできるものをご紹介致します。
TVやスピーカーなど音の出る家電は壁から離す
音は壁を伝って響きやすくなります。もし可能であれば壁から50cm以上離すとよいでしょう。
壁際には大きめの本棚やタンスを置く
本棚やタンスが音を遮断する役割を担ってくれます。さらに、本棚や棚に荷物がある方が防音の効果は高まります。
3-2.床にカーペットやマットなどを敷く
一階と二階で世帯を分けている二世帯住宅の場合や、階下に音を響かせたくないといった場合は、床に何かを敷くことで音が響くのを防ぐことができるようになります。
特に音が気になる部分を見つけて試してみてください。
床にカーペットやラグを敷く
防音用のカーペットでなくとも、普通のカーペットが1枚敷いてあれば下に響く音は軽減されます。
タイルカーペット
部屋の形に合わせてカットできるので、使いやすく、汚れてもその部分だけ取り替えることが可能です。値段の安価なものもありますが、防音効果を考えるのであれば専門店で相談しながら決めるとよいでしょう。自分でできる防音アイテムの中ではお勧めです。
コルク
振動は防ぎますが、吸音効果は少ないのがコルクの特徴です。
小さいお子様がいらっしゃる場合はケガ防止対策としても利用しやすいです。汚れ防止という点からも小さいお子様がいらっしゃるご家族には人気となっています。
ラグ
サイズに合わせて気になる部分にだけ引くことができるのがラグのメリットです。吸音性も高いので、オーディオ等の音にも効果があります。 防音カーペットでも足りない場合は、カーペットと床の間に遮音・防音マットを敷きましょう。
防音マットは硬いゴムのような手触りで、樹脂製のマットになります。吸音性があるので空気中を伝わる音も軽減するうえ、振動自体も軽減します。ただ、効果は高いのですが、床と防音カーペットの間に敷く場合、色移りやにおいを気にする方もいらっしゃるようです。
スピーカーの下に布を敷く
音が出る家電はどうしても接地面から音が伝わってしまいます。布を敷くだけでも騒音がかなり解消されます。
椅子の脚にカバーを付ける
椅子は日常的に出し入れをするので、思った以上に騒音の原因になっています。脚にカバーを取り付けるだけで騒音を防止することができます。
3-3.その他の工夫
その他にも、性能の良いカーテンや防音フィルム・テープを活用することで、防音対策となります。
防音性能が高いカーテンを利用する
本格的に防音したい場合は遮音カーテンを購入するのも一つの方法です。遮音カーテンでなくとも、お持ちのカーテンを利用すれば、音が直接出入りするのを防ぐ効果があります。
窓ガラスに防音フィルムを貼る
ガラスに貼るだけの防音フィルムを利用するのもよいでしょう。窓、特に通常のガラスは騒音が入ってきやすいので、気になる方は対策を取るとよいでしょう。
ドアに隙間テープをはる
窓やドアに防音対策をしても、隙間から音が出入りしてしまうことがあります。音漏れする隙間にテープを貼ることで、隙間からの騒音を減らすことができます。閉めるときに少し力が必要なくらいの厚さのテープの方が、防音の効果は高いといえます。
4.リフォームでできる防音対策
自分でできる対策は手軽でいいのですが、やはり限界があります。しっかり音漏れを防ぎたい場合は、壁や窓、ドアなどの防音リフォームを検討しましょう。
防音リフォームの予備知識
防音を考える際にまず知っていていただきたいことは、「騒音の原因によって対策方法は全く違う」ということです。
例えば以下の点について少し考えてみてください。
- 自分が出す音を防ぎたいのか、入ってくる音を防ぎたいのか
- どのような種類の音か
これらを考えたうえで、現状のお部屋にあった防音方法を考えてみましょう。
4-2.壁の防音
壁は厚みがあるせいで、壁から音が侵入してくるというのはそれほど問題にはなりません。壁自体からの侵入より、換気口やドア、窓の開閉口から音が伝わることが多いでしょう。
簡単にできる防音としては、防音ボードの利用がおすすめです。それ以外の方法としては、少し手間がかかりますが防音地下材と防音換気口を利用する方法があります。
防音地下材は、防湿遮音シートや遮音下地パネルなどを使って壁の防音対策を行いますので壁自体にリフォームが必要となります。実施の際は専門家に相談するのが良いでしょう。 また防音換気口を用いる場合は、換気口などの開口部に防音効果のある換気口を設置します。
いずれも費用と効果の兼ね合いがあるので、どの方法を取り入れるかは専門家に相談することをおすすめします。
4-3.窓の防音
窓から出入りする音はガラスよりもサッシの隙間からの方が多く、音漏れについても同様です。そのためガラスを交換するだけでは防音対策としては物足りません。
窓はガラスとサッシの組み合わせで構成されているので、両方の防音効果を高めることが有効です。より有効なのがサッシの隙間対策ということになります。ここでは2種類の窓リフォームの方法についてご説明いたします。
内窓の増設
窓の防音に最も効果的なのは、内窓を取り付けて二重窓にすることです。室内の壁紙や外壁に影響を与えずにリフォームができるため、取り付け自体も簡単に行うことができます。 デザイン性の観点では、防音性能に優れた窓への交換の方がすっきりとしますが、防音効果自体を重視されるならば内窓を取り付けるという選択をおすすめします。


窓の交換
防音性能に優れた窓に交換することもおすすめです。
既存の窓の上から新たなサッシをかぶせることで窓交換ができる「カバー工法」という方法で交換できますので、サッシも新しくなり、ガラス交換以上の防音効果が期待できます。ガラスも「合わせガラス」や「複層ガラス」など防音効果の高いガラスを選ぶことで防音対策になります。
窓自体の種類も豊富なので、現在の生活スタイルに合わせて自由に選ぶことができるというメリットがあります。 防音効果は二重窓にした場合よりは落ちるものの、簡単かつ窓際の美しさにもこだわりたい場合はおすすめです。


4-4.ドアの防音
玄関ドアも窓と同様、より性能の高い製品が開発されているため、最新のドアにすることで防音性能が高まることがあります。
また、ドアの開き方も防音性に影響します。元の玄関ドアが引き戸なら、開き戸に変更すると、隙間が減るので防音対策になると言えます。
さらに室内で各部屋同士の防音対策をする場合にも、防音ドアの採用が効果的です。通常のドアは換気のため意図的に隙間が設けられており、音漏れの主な原因となります。特に、家族間で生活リズムが異なる場合や、楽器演奏、映画鑑賞などの趣味がある場合、検討することができます。
防音ドアは、通常のドアよりも厚みがあり、内部に遮音材が入っています。さらに、ドア枠との隙間を最小限に抑える設計になっており、音の漏れを大幅に軽減してくれます。
4-5.屋根・天井の防音
屋根と天井の防音は、外への音漏れだけでなく、雨音や外部騒音の軽減、そして上階の音が下階に伝わるのを防ぐ効果があります。
従来、瓦やコンクリートなど重量のある屋根材が使用されていましたが、現在では軽量なスレートや金属屋根が主流となっています。軽量屋根材にすることで、重量屋根材に比べて遮音性が低いため、雨音などが室内に響きやすくなっています。
この問題に対処するためには、屋根裏に断熱材を施工する方法が効果的です。断熱材は音を吸収する性質があるため、外部からの音を軽減し、同時に室内の温度管理にもつながります。
5.防音性能の高い「防音室」を作ることも可能
本格的に防音対策を考えるのであれば、部屋自体を防音室にしてしまうというのが最も適した方法になります。
費用は、どの程度の防音対策を採用するか、部屋の広さ、施工業者によって大きく異なります。以下の金額は目安となりますので参考にしてください。
目的 | 費用目安 |
---|---|
防音書斎 | 30万~250万円 |
ホームシアタールーム | 150万~350万円 |
ピアノ防音室 | 240万~400万円 |
レコーディングスタジオ | 25万~450万円 |
防音室を作るには部屋の現状を調査し、その部屋と防音の目的に沿った対策をすることが大切になります。防音はリフォームの中でも特殊な部類にあたりますので、防音を専門に扱う会社にお願いするのが安心です。
6.まとめ
木造住宅は良い面もあるのですが、やはり防音面では気になることが多いのも事実です。防音を施すのであれば、まずは音漏れの箇所や種類を判断することが最も重要になります。音漏れの原因をしっかり把握していなければ、せっかく施した防音対策自体も効果が限定的になってしまいます。
本格的な防音を考えた場合は、専門の業者にお願いするのが安全で効果的です。それぞれの状況にあわせて適切な防音対策を行いましょう。