
SNSの普及にともなって、空間のおしゃれさや心地よさを基準に店選びをする方がとても増えています。開店時や劣化してきた店内を修繕するときに、集客や売上を高める効果も求めてリフォームを行うオーナーも少なくありません。
しかし、その際に心配になるのが費用面ではないでしょうか。
安定した経営を続けるためには、リフォームだけに大きな固定費を割くわけにはいきません。
そこで本記事では、店舗リフォームにかかる費用目安を実例とポイントを交えながら紹介しつつ、費用を抑える方法や注意点なども解説します。
店舗リフォームで起こりやすいトラブルもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.【目的別】事例で見る店舗リフォームのポイント
修繕、集客、業務効率化と、店舗をリフォームする理由はそれぞれです。
具体的に店舗リフォームでは何を意識したらいいのか、リフォームの目的別に、事例とポイントを詳しく見ていきましょう。
1-1.【設備のリニューアル】老朽化を解消してイメージアップ
設備の老朽化は、顧客に対して衛生面や安全面の不安を与える要因になってしまいます。
とくに飲食店ではそれが顕著に表れやすく、口コミで店舗の劣化具合や汚れなどを指摘されると、客足が遠のいてしまうことも。味や接客などの評価をしてもらうためにも、店舗リフォームによって店内の雰囲気を刷新し、お客さまと従業員ともに気持ちよく過ごせる空間に整えましょう。
事例①:築100年の店舗をレストランにリノベーション
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貸店舗として利用されていた築100年の古民家の1階を、レストランへとリフォームした事例です。色あせが目立っていた天井を再塗装し、和食屋を連想させる黄緑の壁は洋の要素を加えるためにクリーム色の壁紙へと交換。
落ち着きのある空間でゆっくりと食事を楽しめるように、同一トーンでまとめて店内に統一感を出しています。
古民家の趣を感じられる、くつろぎの洋風レストランへと生まれ変わりました。
出典:https://freshhouse.co.jp/case/27636/
事例②:事務所の内装を一新
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ひと昔前の雰囲気が漂う事務所を、現代風のオフィスへとリフォームした事例です。
床は全面カーペットに敷き替えてオフィス感を演出し、社員一人ひとりがより作業に集中できるように、それぞれの机にはデスクトップパネルを設置。
社員のモチベーションが上がる、きれいで落ち着きのあるオフィスへと生まれ変わりました。
出典:https://www.daiken-rs.jp/case_reform/slug-c68b83f10e0020ba6b4a034fb9e65dbc
事例③:シートを貼ってカウンターが復活
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傷が目立つカウンターに、化粧シートを貼ってイメージを一新した事例です。
カウンターやテーブルが劣化したときには本体ごと交換するイメージがありますが、小さな傷や色の剥がれがある程度なら、シートを貼るだけで簡単にリフォームできます。
この事例も既存カウンターの上にダークブラウンのシートを貼っただけで、高級焼肉店を連想させる落ち着いた雰囲気になりました。
1-2.【外観・内装の刷新】競合店との差別化やイメージチェンジに
冒頭でもお伝えしたように、最近では空間のおしゃれさや心地よさを基準に店選びをする方が増えています。とくにZ世代や若者世代からは、写真を撮ったときに映える店内が好まれる傾向があるようです。
実際に「その空間で過ごすことに価値がある」と顧客が納得すれば、競合店より価格を少し上げたとしてもリピート率が下がる心配はなく、収益アップにもつながります。
料理の味や接客、技術力ももちろん重要ですが、まずは店舗へと足を運んでもらうきっかけ作りのために、競合店との差別化を図れるような店舗リフォームが重要になります。
事例①:ドアを開けるのが楽しくなるピアノ教室に
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劣化してきたピアノ教室の外観を、ヨーロッパ風の外観へとリフォームした事例です。
白い外壁の上からレンガ調のサイディング材を張り、ドアやポスト、看板などもすべてデザインを一新。雨の日に生徒さんが濡れないように玄関前に屋根を取り付けるなど、気遣いも忘れません。
レッスンに行くのが楽しみになる、音楽の都パリを連想させるおしゃれなピアノ教室が完成しました。
出典:https://www.yutoriform.com/products/full/remodeling/case/store/05/
事例②:美容室のイメージチェンジ
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昔ながらの美容室を、現代風のヘアサロンへとリフォームした事例です。
デザインを一新するために内装材はすべて解体し、床、壁紙、天井はすべて落ち着いたトーンのものへと交換。照明にもダウンライトやスポットライトを採用し、雰囲気づくりを重視しています。
髪を切りに来たお客さんの気分が上がる、スタイリッシュな店内へと生まれ変わりました。
出典:https://www.daiken-rs.jp/case_reform/slug-fdfaf03a0068336ed2490dfde595156e
事例③:大胆な壁紙で生活感のないコインランドリーに
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スケルトンリフォームによって、スタイリッシュなコインランドリーを作った事例です。
コインランドリーといえば壁一面に洗濯機と乾燥機が並んだ生活感が漂う場所ですが、この事例ではそのイメージを覆し、大胆な柄の輸入壁紙と照明でカフェバーのような空間に仕上げています。
洗濯物を洗うためだけではなく、その空間で過ごすために週何度でも通いたくなるコインランドリーが完成しました。
出典:https://www.daiken-rs.jp/case_reform/slug-33d675a976c8ad34aa7940d501821bfb
1-3.【コストダウン】省エネや動線改善で利益率アップ
省エネ化や動線計画が必要なのは、住宅だけではなく、店舗も同様です。
設備の交換や配置の変更によって設備効率や業務効率がよくなれば、売り場生産性(面積当たりの売上高)の向上にもつながります。
事例①:ショールームスペースを作って受注率アップ
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造作家具会社の事務所をリフォームし、事務所兼ショールームにした事例です。
受注メインの造作家具会社は顧客との打ち合わせスペースさえあれば営業可能ですが、家具取り付け後のイメージをより伝えやすくするために、リフォームを機にショールームを配置しました。
自社で製造した造作家具を使ってさまざまな物をディスプレイすることで、受注へとつなげ、収益アップを目指します。
出典:https://www.artreform.com/example/4195/
事例②:イメージアップとともに客席拡張で収益性アップ
フレンチレストランをリフォームし、客席を広げた事例です。
リフォーム前は厨房スペースに比べて客席が狭かったので、リフォームを機に客席部分を拡張。席数が増えたことで、収益アップにつながります。
食事だけではなくその空間で過ごす時間も特別に感じる、隠れ家感のあるレストランが完成しました。
事例③:スロープを付けて車椅子でも一人で来院できるクリニックに
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段差があったクリニックの入口に、スロープを造作した事例です。
病院は高齢者や体が不自由な人が訪れることが多く、とくに車椅子の方だと段差がある病院では介助が必須。介助者または事務員の手を借りなくてはなりません。
そこでこの事例では入口部分の段差を解消し、さらに他の患者も靴の着脱がしやすいように足場を上げて、患者の安全性と快適性を考慮したリフォームを行いました。
出典:https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=2536
2.【タイプ別】店舗リフォームの費用目安
店舗リフォームでは修繕、集客、業務効率化を考えることも大切ですが、事業を続けていくためには売上と固定費のバランスも考えなくてはなりません。
さらに金融機関から融資を受けてリフォームをする場合は、見込み売上やリフォーム費用を記入した事業計画書の提出も必要になります。
融資を受けるときやその後に安定した経営を続けていくためにも、まずは店舗リフォームにどのくらいの費用がかかるのか、目安を頭に入れておきましょう。
業態タイプ | 費用目安(坪単価) |
---|---|
小規模店舗 | 20~40万円 |
サロン(美容院、エステなど) | 20~50万円 |
飲食店 | 30~50万円 |
オフィス | 15~30万円 |
外装工事 | 150~250万円前後 |
なぜ同じ店舗リフォームでも費用差があるのか、以下に詳しく説明します。
2-1.小売店など小規模店舗でのリフォーム
アパレルショップや雑貨店、ネイルサロン、整体のような小規模店舗のリフォームでは、内装材の交換やレジ台の設置、棚やハンガーラックの取り付けが中心です。
特別な設備が不要なため、リフォーム費用は20〜40万円/坪が目安になります。
ただし独自のデザインやディスプレイ・プロジェクターの配置などで凝った内装デザインを求めると、その分費用も高くなるため注意が必要です。
2-2.美容院・サロン店舗でのリフォーム
美容院ではシャンプー台の設置をともなう作業が発生するため、配管工事が必須。床下に触れる大がかりな工事になります。
またエステサロンでは配管工事は不要なものの、個室や建具の取り付けなどが必要になり、洗面台やトイレなどを充実させなくてはなりません。
デザイン費や建材費が高くなるため、リフォーム費用は20〜50万円/坪が目安になります。
2-3.飲食店店舗でのリフォーム
飲食店には厨房スペースが必須で、内装工事に加えて配管とガス工事も必要になります。
さらに厨房関連の設備導入や付帯工事費用も発生するため、リフォーム費用が高くなりがちです。カフェバーやこぢんまりとした店にするのなら費用は抑えられますが、店舗規模が小さくなると思うような収益が出せない心配があります。
居抜きか、1から作り直すかによっても費用は大きく変わりますが、30〜50万円/坪を目安に予算を考えましょう。
2-4.オフィス・事務所でのリフォーム
オフィスや事務所は、元の空間をそのまま活かした内装リフォームが一般的です。
そのためリフォーム費用は、15〜30万円/坪が目安となります。
ただし、電気設備や空調設備の交換のためにスケルトンリフォームをすると、費用目安は20〜40万円/坪にぐっと上がります。
建物の築年数や設備劣化具合などから、必要な工事を判断しましょう。
3.店舗リフォームでの注意点
店舗リフォームを行うときには、いくつか知っておきたい注意点もあります。
後悔しないためにも、ここでしっかりと頭に入れておきましょう。
3-1.工事中も賃貸料・賃金はかかる
店舗のリフォーム中も、営業時と同じようにテナント料がかかります。
さらに従業員への賃金は雇用形態にかかわらず、休業補償(休業手当)の形で平均賃金の60%以上(休日を除く)を支払わなければなりません。
しかし工事中は売上が0円になるため、リフォーム費用とは別にテナント料と従業員への賃金も含めて支出を考える必要があります。リフォーム期間が長くなるほど負担も大きくなるため、工期も含めてシミュレーションしておきましょう。
3-2.ローンが組めないケースがある
店舗リフォームを行う場合は、金融機関でローンを組む方も多くいます。
しかし赤字経営が続いている場合や、未経験業種で開業する場合には審査に落ちてしまうことも。融資が受けられなければ、リフォーム費用を自己資金から捻出しなくてはなりません。
工事費用を着手時と引き渡し時で分割払いができるリフォーム会社もありますが、それでも大きなお金が必要です。リフォームを計画するときには、万が一融資が受けられなかったときの資金調達方法も考えておきましょう。


3-3.競合他店のリサーチは必須
繰り返しにはなりますが、店舗リフォームでは内装デザインがとても重要です。
どのような内装デザインが人気なのかを、InstagramやXなどのSNSを使って調査しておきましょう。
参考にするのは競合店が好ましいですが、あまりにも似通ったデザインにするとトラブルを招くことや、顧客が他社へと流れてしまう心配があります。
そのためプランニング時には、トレンドにプラスαの形でオリジナル要素を加えることを意識してください。気に入ったデザインをベースに、リフォーム会社から提案をうけるのも一案です。
デザインと同時に清掃性やメンテナンス性なども、チェックしておくとよいでしょう。
3-4.使う人の目線で動線を考える
店舗リフォームはデザインも大切ですが、過ごしやすさや作業効率も重要です。
たとえどんなにおしゃれでも、清潔感が欠けている店内や通路が狭く顧客と従業員がぶつかるような店内ではくつろげません。
物を配置する場所の工夫や、顧客動線と従業員動線が交差しないように通路を作るなど、実用性も忘れず考えましょう。
4.店舗リフォームの費用を抑えるポイント
前述のように、事業を続けるためには予算決めが重要です。
ここでは、リフォーム費用を抑えるポイントを5つお伝えします。
4-1.リフォーム箇所に優先順位をつける
新しく店を始める、または今ある店舗を一新するとなると、やりたいことがたくさん出てきます。しかしあれもこれもと希望を詰め込みすぎると、あっという間に予算オーバーしてしまうでしょう。希望を叶えつつも費用を予算内でおさめるためには、優先順位決めが重要です。
たとえば飲食店ならば厨房や客席などの衛生面にかかわる部分、サロンならば印象を左右する水まわり部分のリフォームが優先です。
予算が厳しいときには、デザイン性よりも清潔感を優先することをおすすめします。
4-2.目的に合った居抜き物件を見つける
新規開店の場合は、費用を抑えるために設備や内装などが残ったままになっている居抜き物件を選ぶのもひとつです。とくに飲食店で厨房スペースの確保や設備の入れ替えが不要になれば、設備費用や付帯工事費用分がなくなる分、費用がぐっと低くなります。
ただし居抜き物件が出ているということは、前の店舗が閉店または移転した証でもあります。立地や周辺環境、近隣トラブルなどの問題が関係している可能性もあるため、退去理由を必ず確認してください。
前店舗の退去理由がネガティブなものであれば、同じ場所で開店する自分の店舗も悪影響を受けかねません。
費用だけにとらわれず、その後の営業がうまくいくかも含めて慎重に検討しましょう。
4-3.厨房などの設備のグレードは必要最低限に
飲食店でオーナーがもっとも多く過ごす場所が厨房なので、「せっかくならばいい設備を入れよう」と思うかもしれません。実際に飲食店のリフォームにかかる費用の2〜4割は、厨房の改装費用が占めています。
しかし厨房の設備のグレードによって耐用年数や使い勝手が大きく変わることはないので、費用面を優先するのなら、グレードは必要最低限にとどめておくことをおすすめします。
費用を抑えるためには居抜き物件を選ぶのもひとつですが、前述のように、退去理由の確認と調査を忘れないように行いましょう。
4-4.補助金・助成金を活用する
店舗リフォームには、国や自治体の補助金や助成金が支給される可能性があります。
どのような制度があるのか、代表的なものを以下に見てみましょう。
補助金名 | 補助額(上限) |
---|---|
小規模事業者持続化補助金 | 200万円 (インボイス特例を満たすと上記に+50万円) |
事業再構築補助金 | 1億円 (企業規模や従業員数によって異なる) |
業務改善助成金 | 600万円 (賃金引上げ額と従業員数によって異なる) |
受動喫煙防止対策助成金 | 100万円 |
このように、店舗リフォームには補助金や助成金が用意されているので、これらを活用すれば費用負担を大きく軽減できます。
ただしどの制度も要件や補助額が細かく決まっているので、リフォーム会社や商工会議所などに相談して、自分がどの制度を活用できそうなのかを事前に確認しておきましょう。
参考:全国商工会連合会『小規模事業者持続化補助金(一般型)』
参考:『中小企業等事業再構築促進事業』
参考:厚生労働省『業務改善助成金』
参考:厚生労働省『受動喫煙防止対策助成金 職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業(財政的支援)』


4-5.相見積もりを取って、適切なプランが提案できる会社を選ぶ
店舗リフォームは住宅よりも自由度が高く、内装デザインや設備導入の幅も広がります。
予算内でできるだけ多くの希望を叶えるためには、複数社で相見積もりを取り、適切なプランを提案してくれるリフォーム会社を選ぶのがポイントです。
その物件や予算でできること、できないことまでしっかりと提案してくれる会社に依頼すれば、安心して工事を任せられるでしょう。
5.店舗リフォームで起こりやすいトラブル
最後に、店舗リフォームで起こりやすいトラブルを2つ説明します。
5-1.従業員への休業補償をしていなかった
3章の『3-1.工事中も賃貸料・賃金はかかる』で説明したように、リフォームの工事期間中に店を閉める場合も、従業員に平均賃金の60%以上を支払わなければなりません。
これは労働基準法によって定められているため、「経営が厳しいから」と自己都合で支払いを拒否するとトラブルにつながります。
従業員とのトラブルを避けて良好な関係を続けるためにも、必ず休業補償や手当は支払いましょう。
5-2.知らずに法律違反の改装を行っていた
店舗においても、建築基準法や消防法などの法律を遵守した工事を行わなくてはなりません。たとえば飲食店のリフォームでは、厨房の換気システムや避難経路の確保、内装材に耐火性素材を使用するなどのさまざまな制限があります。
法律を無視したリフォームはすべて違法建築とみなされるため、判明した場合は使用停止、さらには除去(取り壊し)命令が出ることも。
リフォーム会社の中には建築確認や完了検査を受けない悪質な業者もあるため、必ず優良業者に相談しましょう。
6.まとめ
店舗の内外装は顧客からの印象を大きく左右し、売上にもつながります。
しかし店舗は規模が大きかったり必要設備や付帯工事が多かったりするため、費用も高額になりがちです。予算内で理想に近い店舗を実現するためには、予算に合わせてさまざまな提案をしてくれるリフォーム会社を探すことが重要になります。
リフォームガイドではその重要な会社選びをお手伝いするために、専属のコンシェルジュがオーナーさまの希望や予算などから優良会社のみをご紹介します。「店舗リフォームで収益アップを狙いたい」「できるだけ費用を抑えて店舗をリフォームしたい」とお考えの方は、ぜひリフォームガイドをご活用ください。