
「次世代省エネ建材の実証支援事業」は、最高400万円(戸建の場合)もの補助金を受け取れる可能性がある断熱リフォームを補助する事業のひとつです。
この事業は、「断熱リフォームをしたいけれども、工事費用が高額になると言われた」「少しでも安く断熱リフォームする方法を知りたい」と悩んでいる人におすすめの制度です。
今回は、「次世代省エネ建材の実証支援事業」について概要や要件を詳しく紹介。実際にどれくらい費用を抑えられるのかもシミュレーションしてみましたので、参考にしてみてくださいね。
※2024年度は、一次公募期間(2024年5月7日〜8月30日)と二次公募期間(2024年9月9日〜11月29日)がありましたが、両方とも予算到達により、予定より早く受付が終了しました。
目次
1.事業の概要
「次世代省エネ建材の実証支援事業」とは、以下のような次世代省エネ建材の効果の実証を支援する経済産業省の補助金事業です。
次世代省エネ建材とは
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既存住宅(中古住宅)の省エネリフォームの促進が期待できて、工期短縮もできる高性能断熱材
(硬質ウレタンフォームや押出法ポリスチレンフォームなど) -
快適性向上に貢献する蓄熱・調湿材
1-1.補助金が使える工事と補助額
次世代省エネの実証支援事業は、3つに区分されています。
どのような内容か順番に解説します。
【外張り断熱】
対象となる工事 | 外気に接する外壁すべてを外張り断熱工法などで改修する工事 |
---|---|
必須製品(必ず導入する) | 断熱材(外壁) ※製品の事業登録の有無は問わない |
任意製品(必須製品と同時に改修することで補助対象となる) | 断熱材(天井/床)・窓・玄関ドア・高効率換気システム ※上記は製品の事業登録の有無は問わない 断熱パネル・潜熱蓄熱建材・調湿建材 ※上記は事業登録されている製品のみ |
補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
補助金の上限額 | 1〜4地域:400万円/戸 5〜8地域:300万円/戸 |
建物区分 | 戸建住宅 |
外張り断熱は戸建住宅のみが対象となり、補助上限額は住宅のあるエリアによって異なります。
対象エリアの詳細は国土交通省の地域区分新旧表からご確認ください。
【内張り断熱】
対象となる工事 | 断熱パネルもしくは潜熱蓄熱建材を用いて室内側から断熱改修する工事 |
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必須製品(必ず導入する) | 断熱パネル、潜熱蓄熱建材 ※事業登録されている製品 |
任意製品(必須製品と同時に改修することで補助対象となる) | 断熱材・窓・防災ガラス窓・玄関ドア・調湿建材 ※事業登録されている製品 |
補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
補助金の上限額 | 戸建住宅:200万円/戸 集合住宅:125万円/戸 |
補助金の下限額 | 戸建・集合住宅とも:20万円/戸 ※先進的窓リノベ2024事業、子育てエコホーム支援事業と併用する場合のみ15万円/戸 |
建物区分 | 戸建住宅・集合住宅 |
内張り断熱は戸建住宅だけでなく、集合住宅も対象になります。ただし下限額が設けられており、一定規模の工事が必要となる点には注意しましょう。
【窓断熱】
対象となる工事 | すべての開口部を窓(防火・防風・防犯仕様)や玄関ドアを使用して改修する工事 |
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必須製品(必ず導入する) | 窓(防火・防風・防犯仕様)・玄関ドア ※事業登録されている製品 |
任意製品(必須製品と同時に改修することで補助対象となる) | 断熱材・断熱パネル・潜熱蓄熱建材・調湿建材 ※事業登録されている製品 |
補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
補助金の上限額 | 150万円/戸 ※窓・玄関ドアと任意製品を併用して改修する場合は200万円/戸 |
建物区分 | 戸建住宅 |
窓断熱は戸建住宅のみが対象となり、すべての窓と玄関ドアを改修しなければならない点に注意しましょう。
1-2.補助金がもらえる人の条件
補助金をもらうためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
①改修する住宅に常時居住している
上記を証明するために、同一住所が記された本人確認書類の提出が求められます。
ただし、新たに中古住宅を購入したなどで交付申請時には居住しておらず、改修後に居住を予定しているケースもあるでしょう。
そのような場合は、実績報告書提出時に居住していることを示す住民票の写しを提出することを条件に申請が認められます。
②改修する住宅を所有している
交付申請時に所有しておらず、申請後に所有を予定している場合は、実績報告書提出時に住宅を所有していることを示す登記事項証明書の写しを提出することを条件に申請が認められます。
なお改修をおこなう住宅を購入予定で、契約に断熱改修工事が含まれている場合は、事前契約とみなされ補助対象外となる点に注意しましょう。(次世代省エネの実証支援事業においては補助金交付決定後に契約・発注・着工することが条件とされているため)
1-3.その他の要件
次世代省エネの実証支援事業の補助金を受け取るには、改修工事後に実績報告書の提出が必要です。外張り断熱については、効果測定がおこなわれます。
1-4.補助金申請期間
・一次公募期間…5月7日~8月30日
・二次応募期間…9月9日~11月29日
※2024年10月7日受信分で予算額が上限に達したため、2024年10月4日17:00をもって、二次公募の受付は終了。
2025年度の予想は?
本事業は例年、5月~11月末頃までの期間に、公募を2~3回に分けて行っています。ここ数年はリフォームの補助金が認知されてきており、本事業も公募期間中に予算額を達したため受付を終了するケースが見られています。
2025年度はすでに、「住宅省エネ2024キャンペーン」の後継となる事業の予算も閣議決定しているほか、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務付けられるなど、住宅の省エネ化を推し進める動きがさらに高まっています。
こういった動きから、本事業は2025年度も継続し、公募も早期に終了することが予想されます。活用を検討している場合は、次世代省エネ建材の実証支援事業公式サイトを定期的にチェックし、見逃さないようにしましょう。
2.実際にいくら得する?補助金活用シミュレーション
次世代省エネ建材の実証支援事業を利用すると、どれくらい工事費を抑えられるのかシミュレーションしてみましょう。
【CASE1】20坪の戸建住宅(2階建て)を外張り断熱した場合
工事内容 | 工事費 | 補助額 (対象経費の2分の1以内) |
---|---|---|
外窓の改修(15箇所) | 2,000,000円 | 1,000,000円 |
外壁(150㎡)を外張り断熱 | 2,200,000円 (うち外壁仕上げ材750,000円) |
725,000円 (外壁仕上げ材は補助経費対象外) |
1階の床(40㎡)に断熱材を施工 | 100,000円 | 50,000円 |
天井(66㎡)に断熱材を施工 | 240,000円 | 120,000円 |
足場代 | 100,000円 | ー |
諸経費(15%) | 696,000円 | ー |
小計 | 5,536,000円 | 1,895,000円 |
消費税(10%) | 553,600円 | ー |
合計 | 6,089,600円 | 1,895,000円 |
実際の負担額(費用-補助額) | 4,194,600円 |
※東京23区内(6地域)にある木造住宅
※要件を満たす製品を利用し、十分な省エネ効果が得られたとする
このケースでは全額自費であれば6,089,600円かかるところ、1,895,000円補助されため実際の負担額は4,194,600円に抑えられました。
【CASE2】3LDK(70㎡)のマンションを内張り断熱した場合
工事内容 | 費用(材工費) | 補助額 (対象経費の2分の1以内) |
---|---|---|
内壁に断熱パネルを取りつけ(100㎡) | 750,000円 (うちクロス150,000円) |
300,000円 (クロスは補助経費対象外) |
内窓を取りつけ(4箇所) | 360,000円 | 180,000円 |
諸経費(10%) | 111,000円 | ー |
小計 | 1,221,000円 | 480,000円 |
消費税(10%) | 122,100円 | ー |
合計 | 1,343,100円 | 480,000円 |
実際の負担額(費用-補助額) | 863,100円 |
※要件を満たす製品を利用し、十分な省エネ効果が得られたとする
このケースでは全額自費であれば1,343,100円かかるところ、480,000円が補助されたため実際の負担額を863,100円に抑えられました。
【CASE3】20坪の戸建住宅(2階建て)を窓断熱した場合
工事内容 | 費用(材工費) | 補助額 (対象経費の2分の1以内) |
---|---|---|
外窓をカバー工法で改修(12箇所) | 1,700,000円 | 850,000円 |
足場代 | 100,000円 | ー |
諸経費(10%) | 170,000円 | ー |
小計 | 1,970,000円 | 850,000円 |
消費税(10%) | 197,000円 | ー |
合計 | 2,167,000円 | 850,000円 |
実際の負担額(費用-補助額) | 1,317,000円 |
※要件を満たす製品を利用し、十分な省エネ効果が得られたとする
このケースでは全額自費であれば2,167,000円かかるところ、850,000円が補助されたため実際の負担額を1,317,000円に抑えられました。
費用の参考:省エネリフォームで快適な住まいへ (sii.or.jp)
3.補助金申請の流れ
次世代省エネ建材の実証支援事業の申請の流れを解説します。
3-1.業者にリフォームを相談する
次世代省エネ建材の実証支援事業の申請は、住宅の所有者がおこないます。申請には多くの資料が必要となるため、工事を請け負う業者がサポートもしくは主導してくれるのが一般的です。
ただし補助金事業に不慣れな業者だと申請に消極的だったり、スムーズに手続きが進まなかったりする恐れがあります。業者を探す際はホームページで補助金事業をサポートしていることを明記しているような、手続きに慣れた業者を探すことをおすすめします。
3-2.公募期間内に申請する
公式ホームページから申請書類をダウンロードして、必要情報を入力します。
作成が完了したら、公募期間内に指定の提出先にメールで申請します。
3-3.交付決定通知書の受け取り・請負契約の締結
交付決定通知書を受け取ってから請負契約を結びます。交付決定通知書を受領する前に契約・着工した場合は無効となるため注意しましょう。
3-4.工事完了・支払い
工事が完了したら業者に工事費を支払います。
3-5.完了実績報告書の提出
完了実績報告書を提出し、審査を受けます。外張り断熱については効果測定がおこなわれます。
3-6.補助金の受け取り
工事に問題がなく審査に通れば補助金が支払われます。
4.まとめ
「次世代省エネの実証支援事業」を活用して断熱リフォームをすると、戸建住宅で最大400万円、マンションでも最大125万円の補助金を受け取れます。コストを抑えて断熱リフォームをしたい人には、ぜひ検討してみていただきたい事業です。
しかし事業を利用するためには多くの書類を用意する必要があり、手続きも煩雑です。補助金事業に慣れたリフォーム業者のサポートがなければ、スムーズに進められません。
リフォームガイドでは、各種補助金事業に精通したリフォーム業者の情報を保有しており、ご希望にあった業者のご紹介が可能です。希望のリフォームの内容や活用したい補助金事業をお知らせいただければ、適切な業者をご紹介いたしますので、まずはお問い合わせしてみてくださいね。
その他、断熱リフォームで使える補助金をすべてこちらの記事でまとめています。ぜひ参考にしてください。

