
近年、光熱費の節約に効果的であるとして、内窓に注目が集まっています。内窓を設置することで断熱性能がアップするのか、光熱費はどれくらい節約できるのか、など設置する前に実際の効果が気になっている方も多いでしょう。
そこで本記事では、内窓の効果や光熱費への影響について、事例とともに詳しく紹介します。内窓の導入に興味を持っている方や光熱費を節減したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.内窓とは
内窓とは今ある窓の内側に、もう1枚取り付ける室内用の窓のことです。窓が二重になるため、「二重窓」や「二重サッシ」と呼ばれることもあります。
内窓は既存の窓の室内側に新しく窓枠を設置し、取り付けを行います。
窓枠はアルミ製や木製、樹脂製などがあり、インテリアににあわせて色や質感にこだわることも可能です。
ガラスの種類については、通常の透明ガラスだけではなく、型ガラス、フロストガラス、和紙調のガラスなどさまざまなパターンを選択できます。複層ガラスや防犯ガラスなど、機能を追加することも容易です。
1-1 二重ガラス(ペアガラス)との違い
内窓と混同されがちなものとして「二重ガラス(ペアガラス)」があります。
二重ガラスは、一つの窓枠にガラスが空気の層を挟んで二重になっているものです。
内窓は独立した窓が二重になっているのに対し、二重ガラスは窓枠は一つになっており、見た目は一重の窓とほとんど変わりません。
二重窓(二重サッシ) | 二重ガラス(ペアガラス) |
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二重ガラスを用いた内窓を設置すれば、両方の効果が相乗され、さらに効果を高められますよ。
2.内窓を設置して得られる効果
内窓を設置する主な理由として断熱効果を期待する方が多いですが、ほかにもさまざまな効果が得られます。
以下では内窓を設置することで得られる効果について、詳しく紹介します。
2-1 断熱効果
内窓を設置すると、高い断熱効果を得られます。
熱が家の内外に出入りする際、主な出入り口となるのは窓です。窓からの熱の出入りは、冬に約50%の熱が逃げ、夏に約74%の熱が入るとされています(アルミフレーム(複層ガラス)の窓の家の場合/YKK AP製品利用時)。
そのため、家の断熱性能は窓のタイプによって大きく左右されます。
【窓からの熱の流入出比率の算出条件】解析No:00033(2021.7.1算出)
●使用ソフト:AE-Sim/Heat(建築の温熱環境シミュレーションプログラム)/(株)建築環境ソリューションズ ●気象データ:「拡張アメダス気象データ」2010年版 標準年/(一社)日本建築学会 ●住宅モデル:2階建て/延床面積 120.08㎡/開口部面積 32.2㎡(4~8地域)「平成25年省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説Ⅱ住宅」標準住戸のプラン ●躯体:平成28年省エネルギー基準レベル相当 ●窓種:アルミ(複層ガラスA8未満) ●環境条件: 冬:外気温:2.6℃、室温:20℃ 2月14日 5〜6時(日平均外気温最低日)、東京 夏:外気温:34.8℃、室温:27℃ 8月5日 14〜15時 (日平均外気温最大日)、東京
※熱の流入出の数値はYKK AP算出です。
情報引用元:YKK AP「窓の教科書:暑さや寒さをやわらげる “断熱窓”」
熱の出入りを抑えるには、内窓の設置が効果的です。既存の窓と内窓との間にできる空気層が、断熱性能を発揮してくれます。
遮熱タイプの複層ガラスを使った内窓や、熱を通しにくい樹脂製の内窓を採用することで、より高い断熱性能が期待できます。
2-2 防音効果
内窓は、外窓との間に空気の層ができるので、防音効果も期待できます。
壁や屋根と比べて窓は防音性が低く、室内外の音は主に窓ガラスを通じて伝わります。そこに内窓を設置することで、外から入ってくる音を低減することができます。
家の目の前が交通量の多い道路や電車が通っているような場合には、内窓を設置して騒音を軽減することをおすすめします。
同時に、内窓は室内の音を外へ漏れにくくします。小さい子どものいる家庭や、音楽の練習をしたい方は特に、ご近所への迷惑防止のため、内窓設置をご検討ください。
2-3 防犯効果
内窓は、防犯にも効果的です。
空き巣被害の多くは、窓ガラスを割って穴から鍵を開け、室内に侵入するケースです。内窓を設置することで、ガラスを割る手間が増え、進入しづらくなります。
より防犯効果を高めるためには、ハンマーで叩いても割れにくい防犯ガラスを使った内窓を設置するのがおすすめです。
2-4 結露の軽減
内窓を設置することで、結露の軽減にもつながります。
結露は、室内外の温度差が大きい場合に発生しやすくなっており、多くの住宅で使われているアルミフレームは熱伝導率が高いため、結露しやすいのが難点です。結露はカビやダニの原因となるため、発生をできるだけ避けたいものです。
既存の窓と内窓を新設することで窓と窓の間に空気の層ができるため、断熱性能がアップして結露防止につながります。結露を拭き取る手間が減って掃除の手間が軽減できます。
2-5 UVカット
内窓に使うガラスをUVカット仕様のものにすれば、UVカット効果もできます。内窓を設置する際、組み込むガラスはさまざまな種類から選択可能です。夏の日差しが強く遮熱性を高めたい場合は、遮熱タイプの複層ガラスを選んだり、防犯ガラスを選んだりするようにしましょう。
二枚のガラスの間にフィルムを挟んだ防犯ガラスは防犯性能とともに、UVカット効果の高さも期待できます。どちらも80%以上の紫外線カット率があるため、内窓ガラスとして採用するのがおすすめです。
内窓のガラスやサッシを厳選することで、防犯やUVカット等の効果も持たせることができますので、導入時に検討してみましょう。
3.内窓設置の光熱費への影響は?
内窓を設置することで、光熱費はどれくらい節約できるでしょうか。
建物の断熱性能などによっても異なりますが、一般的な住宅に内窓を設置した場合、冷暖房にかかる光熱費は1ヶ月1,500円~2,000円程度削減できると言われます。
月々の削減額は小さなものかもしれませんが、家は長く住み続けるものです。この削減額も10年では18~24万円という大きな違いに繋がります。
参考に、YKK AP社の断熱窓の効果をご紹介します。断熱効果の高い樹脂窓+二重ガラスの内窓を設置した場合の10年間の冷暖房費シミュレーションです。

※YKK APの商品を使用した場合
【年間冷暖房費の比較 算出条件】
●住宅モデル「平成25年省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説Ⅱ住宅」標準住戸のプラン 2階建て/延床面積:120.08㎡/開口面積:25.2㎡(1~3地域)32.2㎡(4~8地域) ●使用ソフト AE-Sim/Heat(建築の温熱環境シミュレーションプログラム)/株式会社 建築環境ソリューションズ ●気象データ「拡張アメダス気象データ」2010年版 標準年/(一社)日本建築学会 ●想定生活者 4人家族(夫婦+子供2人) ●想定冷暖房機器「平成25年省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説Ⅱ住宅」に準拠 ●空調設定 暖房:22℃ 冷房:25℃・60% ※但し室温が暖房は設定温度以上、冷房は設定温度以下の場合、冷暖房機器は運転しない。●電力量単価 27円/kW(h 税込)(/ 公社)全国家庭電気製品公正取引協議会 新電力目安単価※年間電気代(エアコン)は上記算出条件に基づいた結果であり、保証するものではありません。
●算出検証日2018年5月17日●算出対象地域:東京都
節電効果は長く続けるほどお得になるだけでなく、内窓に取り付けるガラスの種類によっては、さらに効果の高い断熱性を手に入れることができます。
固定費の光熱費がこれだけ抑えられると、家族の旅行などのイベント費や貯蓄に回すなど、有意義な使い方ができそうですね。
4.内窓のリフォーム事例
実際に内窓を設置するリフォームを行った方は、どのような効果を得られたのでしょうか。以下では、効果別にリフォーム事例を紹介していきます。お部屋の雰囲気に合わせて仕上がりにすることも可能なので、ぜひ参考にしてみてください。
4-1 断熱効果を上げる施工事例
マンション角部屋の寒さ対策
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マンションの角部屋は窓が広く、外気温の影響を受けやすい傾向にあります。冬場に寒さを感じることも多いため、すべての窓に内窓を設置しました。ウッド調のものを採用するなど各部屋の雰囲気に合わせながら、冷暖房効率も改善しました。
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/80
外開き窓にも内窓をプラス
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入居前の中古マンションで全15ヵ所に内窓を取り付けています。特にリビングの腰窓は左右の窓が外開きで中がFIXと、内窓の取り付けが非常に難しい工事でしたが、きれいに仕上がりました。
ある程度築年数が経過したマンションでも、断熱性を高められます。
出典:http://cube-renovation.co.jp/works/13460/
3-2 防音効果が上がった事例
線路沿いでも騒音を軽減して快適に
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線路沿いの物件に内窓を設置すると、非常に大きな防音効果を得られます。
線路沿いのマンションのため、ペアガラスの内窓を取り付けることによって電車が通過する際の騒音を小さく抑えられるようになりました。フレームは白色で、インテリアの雰囲気を壊しません。
出典:https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=2398
騒音効果と合わせて窓の隙間も解消
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線路脇に位置するご自宅で騒音に悩まされていたほか、隙間風もあり健康面も考えてすべての窓に内窓を設置しました。防音効果に加えて断熱効果もバッチリです。
出典:http://cube-renovation.co.jp/works/20989/
3-3 結露(防カビ)対策となった事例
エコカラットと合わせて結露対策
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結露が発生しやすく防カビ対策として内窓を設置する方も多いです。玄関に付いた小窓に内窓を設置し、加えて壁にエコカラットを貼り詰めることで防カビ対策を実現しました。
出典:http://cube-renovation.co.jp/works/23275/
すでにカビが発生した部屋のリフォーム
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結露とカビがすでに発生している状態のお部屋で、アレルギーにお悩みだったこともあり健康のためにリフォームを実施しました。内窓の設置に加えて壁はエコカラット、床も対策できるフローリングに貼り替え、結露・防カビ対策と共に長年の汚れを一新しています。
出典:http://cube-renovation.co.jp/works/11552/
5.まとめ
内窓は断熱効果が高く、設置することで月々の節約に繋がります。また、光熱費だけでなく防音効果などのさまざまな効果も期待できるリフォーム方法です。光熱費を今よりも抑え、快適かつ安全に暮らしたいと考えている場合は内窓の設置をおすすめします。
内窓の設置を含めたリフォームを検討する際は、あなたの課題をしっかり解決してくれるリフォーム会社に依頼することが重要です。リフォーム会社の得意不得意を把握している専門のコンシェルジュが、あなたのリフォームの希望を丁寧にヒアリングして、ぴったりのリフォーム会社を選定するリフォームガイドにぜひご相談ください。