
二世帯住宅へのリフォームは通常のリフォームよりも規模が大きくなるため、費用が高くなりがちです。リフォーム費用を少しでも抑えるために、補助金制度を利用したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、二世帯住宅のリフォームで活用できる補助金制度を詳しく解説します。補助金制度を活用する際のポイントやリフォーム費用を抑える方法も紹介するので、二世帯住宅化のリフォームを検討するときにはぜひ参考にしてください。
目次
1.【2025年度版】二世帯住宅のリフォームで活用できる補助金制度
二世帯住宅へリフォームする際は、国や自治体が提供する補助金制度を活用できる可能性があります。おもな補助金制度を、以下の表にまとめました。
制度名 | 最大補助額 | 概要 |
---|---|---|
子育てグリーン住宅支援事業 | 60万円/戸 | 省エネ改修と子育て支援を目的とした補助金制度 |
長期優良住宅化リフォーム推進事業 | 160万円/戸 ※三世代同居対応改修工事を 行う場合は最大50万円の加算 |
既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームや 子育て世帯向け改修に対する支援事業 |
自治体の補助金制度 | 補助金制度による |
なお、二世帯住宅へのリフォームでは、通常の改修工事を対象としている他の補助金制度を活用できるケースもあります。以下の記事で解説しているので、参考にしてください。それでは、順番に解説していきます。
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1-1.子育てグリーン住宅支援事業
「子育てグリーン住宅支援事業」は、子育て世帯や若者夫婦世帯の省エネ改修などに対して補助を受けられる制度です。補助対象は、18歳未満の子どもがいる、もしくは夫婦のどちらかが39歳以下の世帯に限られます。
「子育てグリーン住宅支援事業」は通常のリフォームだけでなく、二世帯住宅へのリフォームにも活用できます。概要は、以下のとおりです。
対象リフォーム | 【以下のうち2つ以上の改修工事が必須】 ①開口部の断熱改修 ②外壁・屋根・天井または床の断熱改修 ③エコ住宅設備の設置 【①~③を2つ以上実施すると対象となる工事】 ④子育て対応改修(ビルトイン食洗機・宅配ボックスなど) ⑤防災性向上改修(防犯安全ガラスへの交換) ⑥バリアフリー改修(手すり設置、段差解消など) ⑦空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置 ⑧リフォーム瑕疵保険等への加入 |
---|---|
補助金額 | ・Sタイプ(①~③をすべて実施):上限60万円/戸 ・Aタイプ(①~③のうち2つを実施):上限40万円/戸 |
申請受付期間 | 2025年3月31日~2025年12月31日 ※予算400億円に達した段階で終了 |
申請条件 | ・グリーン住宅支援事業者と工事請負契約等を締結し、リフォーム工事をすること ・リフォームする住宅の所有者等であること ※1申請あたり対象となるリフォーム工事カテゴリー(①~⑧)の合計補助額が5万円未満の場合は補助対象にならない |
「子育てグリーン住宅支援事業」の対象工事には、断熱改修やバリアフリー改修が含まれています。シニア世代が快適に暮らせる二世帯住宅を実現したい場合は、とくに利用したい補助金制度ではないでしょうか。


1-2.長期優良住宅化リフォーム推進事業
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、既存住宅の長寿命化や省エネ化などの性能向上や、子育て世帯向けのリフォームに対して支援される制度です。二世帯住宅へリフォームする際に条件を満たせば、最大50万円加算されます。概要を、以下の表にまとめました。
対象リフォーム | 【性能向上リフォーム工事】 ① 劣化対策や耐震性、省エネ対策など特定の性能項目を一定の基準まで向上させる工事 ② ①以外の性能向上リフォーム(バリアフリー改修工事・インスペクションで指摘を受けた箇所の補修工事・テレワーク環境設備改修工事・高齢期に備えた住まいへの改修工事) 【三世代同居対応改修工事】 キッチン・浴室・トイレ・玄関の増設工事 【子育て世帯向け改修工事】 若者・子育て世帯が実施する子育てしやすい環境を整備するための工事 【防災性・レジリエンス性向上改修工事】 自然災害に対応する改修工事 |
---|---|
補助金額 | 上限80~160万円/戸(対象費用の3分の1) ※以下の改修を行う場合は最大50万円の加算 ・三世代同居対応改修工事を実施する場合 ・若者、子育て世帯が改修工事を実施する場合 ・既存住宅を購入し改修工事を実施する場合 |
申請受付期間 | 2025年5月20日~2025年12月22日 |
申請条件 | ・リフォーム工事前にインスペクション(建物状況調査)を実施すること ・維持保全計画及びリフォーム履歴を作成すること ・住戸面積や居住環境の要件を満たしていること ・リフォーム後に一定の性能基準を満たすこと ・三世代同居対応改修工事を行う場合は、リフォーム後にキッチン、浴室、トイレまたは玄関のいずれか2つ以上がそれぞれ複数箇所あり、住戸内で行き来できること |
出典:国土交通省「令和7年度長期優良住宅化リフォーム推進事業」
「三世代同居対応改修工事」を行う場合は補助金額が最大210万円となるため「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、二世帯住宅へのリフォームに適した補助金制度といえます。


1-3.自治体の補助金制度
各自治体によって、独自の補助金制度が設けられているケースもあります。二世帯住宅へのリフォームで活用できる自治体の補助金制度の例は、以下のとおりです。
自治体 | 制度名 | 補助金額 | 概要 |
---|---|---|---|
神奈川県横須賀市 | 2世帯住宅リフォーム 等補助金 |
上限30万円/戸 (対象費用の2分の1) |
市内の一戸建て住宅に住む親世帯が、市外から転入する子世帯と同居または近居するためのリフォームに対する補助金制度 ※先着10件(予算上限に達し次第終了) |
埼玉県飯能市 | 他世代同居・近居住宅 リフォーム事業補助制度 |
・上限40万円/戸(市内業者) ・上限10万円/戸(市外業者) |
多世代同居・近居を目的としたリフォームに対する補助金制度 |
兵庫県の該当市町 |
三世代同居対応 |
上限40~135万円/戸 | 三世代同居を目的としたリフォームに対する補助金制度 |
出典:横須賀市「2世帯住宅リフォーム等補助金~市外から転入する子ども家族を応援!~」
出典:飯能市「飯能市多世代同居・近居住宅リフォーム事業補助制度について」
出典:兵庫県「三世代同居対応改修工事推進事業」
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が提供している「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」では、自治体独自の補助金制度などを調べられます。また「(自治体名) 二世帯住宅 リフォーム 補助金」などでネット検索することでも確認できます。
2.二世帯住宅のリフォームで補助金制度を利用する際のポイント
二世帯住宅へのリフォームで補助金制度を活用する際は、以下4つのポイントを押さえましょう。
2-1.補助金事業に登録しているリフォーム業者に依頼する
二世帯住宅へのリフォームで補助金制度を活用する場合は、補助金事業に登録しているリフォーム業者へ依頼しましょう。多くの補助金制度は、登録事業者を通じて申請する必要があるためです。
例えば「子育てグリーン住宅支援事業」を利用しようと思っても、未登録の業者では申請できません。補助金制度の活用を考えている場合は、リフォーム工事の契約を結ぶ前に、利用したい補助金事業に登録しているリフォーム業者かどうかを確認しましょう。
2-2.補助金の受け取り方法をリフォーム業者へ確認しておく
補助金の受け取り方法は利用する補助金制度によって異なるため、事前にリフォーム業者へ確認しておきましょう。補助金は、おもに直接リフォーム業者に支払われるケースと、施主に支払われるケースの2パターンがあります。
例えば「子育てグリーン住宅支援事業」は、工事完了後に申請して交付が決定すれば、リフォーム業者(登録業者)へ補助金が支給されます。
補助金を差し引いてリフォーム費用を支払うのか、リフォーム費用を全額支払ったあとに補助金が還付されるのかなども、リフォーム業者へ確認しておくと安心です。補助金の受け取りまでの期間もリフォーム業者へ確認して把握しておくと、資金計画が立てやすくなります。
2-3.早めに申請手続きを行う
二世帯住宅へのリフォームで補助金制度を活用する場合は、早めに申請手続きを行いましょう。各補助金制度には申請の受付期間が設定されているものの、予算の上限に達した段階で受付を終了するケースがあるためです。
なお、申請の受付期間ではなく、先着件数が設定されている場合もあります。例えば、横須賀市の「2世帯住宅リフォーム補助金」は先着10件のみが対象です。
二世帯住宅へのリフォームが決まったら、利用する補助金制度で必要な書類などを準備しておき、すぐに申請手続きができるようにしましょう。
2-4.補助金制度の要件を細かく確認しておく
補助金制度を利用する際は、申請前に要件を確認しておきましょう。各補助金制度は要件が細かく決められており、満たさなければ補助金を受け取れません。
例えば、横須賀市の「2世帯住宅リフォーム等補助金」を利用する場合、指定された時期までに工事完了後の実績報告と補助金の請求をする必要があります。対象のリフォームや居住状況などの要件も、確認しておかなければなりません。
基本的にはリフォームを依頼している業者が把握しているものの、自分でも確認しておくと万が一の漏れが防げます。
3.二世帯住宅のリフォームで補助金制度を利用する流れ
リフォームで補助金制度を利用する場合、基本的に業者(登録事業者)が代理で申請します。ただし、スムーズに補助金を受け取るためには、利用する制度の基本的な流れを理解しておいたほうがよいでしょう。
例えば、二世帯住宅のリフォームで「子育てグリーン住宅支援事業」を利用する際の大まかな流れは、以下のとおりです。
- 登録事業者の選定
- 工事請負契約の締結
- リフォーム工事開始
- リフォーム工事完了
- 引き渡し・工事費用の精算
- 補助金の交付申請
- 補助金の交付決定
- 補助金交付・受取
「子育てグリーン住宅支援事業」は、申請時期がリフォーム工事完了後です。そのため、工事請負契約から工事が完了するまでの間に必要書類を準備しておくと、スムーズに申請できます。
事前に申請する補助金の流れを把握しておき、すぐに申請できるようにしておきましょう。
4.二世帯住宅のリフォーム費用を抑える方法
二世帯住宅へのリフォームは大規模な工事になるため、費用が高くなりがちです。補助金制度の活用以外にも、以下のような方法でリフォーム費用を抑えられる可能性があります。
4-1.複数のリフォーム業者に見積もりを依頼する
複数のリフォーム業者へ見積もりを依頼すれば工事費の目安がわかるため、適正金額でリフォームする助けになります。最低でも2~3社に相見積もり依頼し、費用を比較してみましょう。1社のみで見積もりを取った場合、リフォーム費用が高額でも気付かない可能性があります。
ただし、費用だけでリフォーム業者を決めてしまうと、相性が合わないこともあるでしょう。リフォーム業者との相性や提案力は仕上がりに影響するため、複数の業者に見積もりを取って、総合的に考えてから決めましょう。
4-2.水回り設備・内装のグレードを抑える
水回り設備や内装は、グレードによって大きく費用が異なります。そのため、選ぶグレードを抑えることで、リフォーム費用を安くできる可能性が高まります。
とくに、システムキッチンやユニットバスはグレードによる価格差が大きいです。最初にハイグレードのものを選んでいた場合は、標準グレードにすることで数十万円安くなるケースもあります。
リフォーム業者によっては、独自に標準仕様を設定している場合があります。「標準仕様」の見積もりが出てきた場合でも、仕様の内容も確認して、必要な機能が備わっているかを契約前に確認しておきましょう。
4-3.減税制度を利用する
補助金制度だけでなく、以下のような減税制度も活用できれば、リフォーム費用を抑えられます。
- リフォーム促進税制(同居対応リフォーム)
- 住宅ローン減税
[1]リフォーム促進税制(同居対応リフォーム)
リフォーム促進税制は、耐震やバリアフリー化など特定のリフォームを行った場合に、所得税の控除を受けられる制度です。対象リフォームのなかに「同居対応リフォーム」があり、以下の要件を満たせば、二世帯住宅へのリフォームで所得税の控除を受けられる可能性があります。
- 同居対応リフォームを行う方が所有かつ居住している建物
- リフォーム後に、調理室・浴室・トイレ・玄関のうち2箇所以上でそれぞれ複数ある
- 建物の床面積が登記簿表示で50㎡以上
- 同居対応リフォームの工事費用が50万円を超えている
- 2025年12月31日までにリフォームが完了し、居住していること
- その年の合計所得金額が2,000万円以下であること
二世帯住宅へのリフォームを検討している場合は、補助金制度と併せてチェックしてみてください。
[2]住宅ローン減税
二世帯住宅へリフォームする場合は大規模な工事になるため、費用が高くなる可能性があります。その場合は、住宅ローンで資金調達するのも1つの選択肢です。二世帯住宅へのリフォームで住宅ローンを利用する場合、条件を満たせば住宅ローン減税を活用できます。
住宅ローン減税は、毎年の住宅ローン残高の0.7%にあたる金額が、最大10年間所得税から控除される制度です。10年以上の住宅ローンを組んで一定のリフォームを行った場合、所得税の控除を受けられます。ただし、子世帯がローンの返済者になる場合は住宅ローン減税を利用できない点には注意しなければなりません。
5.まとめ
今回は、二世帯住宅へのリフォームで活用できる補助金制度を紹介しました。国や自治体が用意している補助金制度をうまく使えば、リフォーム費用を抑えられます。ただし、多くの補助金制度は登録事業者を通じて申請しなければならないので、注意してください。
補助金制度を利用する際は、事前に要件などを細かく確認しておくと、スムーズに申請を進められます。なお、導入する設備のグレードを抑えたり減税制度を利用したりすることでも、リフォーム費用を抑えられるので、補助金制度と併せて利用を検討してみてください。
本記事で紹介した補助金制度や減税制度を活用して、快適な二世帯住宅へのリフォームを実現させましょう。