
家のリフォームを検討する際、「水回りの移動ができるのかな?」と気になる人も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、家の構造によって状況はまちまちですが、配管や排気のルートが確保できれば水回りの移動は可能です。ただし、戸建てだと自由度が高い一方、マンションは制限が多くなるのが一般的です。また水回りの移動は、床下や壁の中の配管をつなげるため、費用が高くなる傾向もあります。
そこでこの記事では、実際に水回りを移動したリフォーム事例を紹介し、注意点を解説していきます。水回りの移動リフォームにかかる費用も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.リフォームで水回りの移動は可能。だが例外や制限はある
リフォームで水回りを移動は、以下の2点をクリアできれば可能です。
- 排水がスムーズに流れるよう、配管に十分な傾斜(勾配)が付けられる
- 排気や換気の道筋(ルート)が確保できる
水回りの配管は、排水がスムーズに流れるよう、坂道のように傾斜(勾配)をつけてあげる必要があります。十分な勾配を付けられなければ汚物が詰まってしまうため、水回りの移動距離には限界があります。
キッチンやお風呂などの水回りでは、排気や換気設備の移動も必要です。排気や換気用のダクトは、上下に折り曲げての設置はできないため、梁(はり)などの障害物があると、移動が難しくなることがあります。
またリフォームするのがマンションなのか一戸建てなのかによっても、水回りを移動できる・できないの条件や難易度は異なるので解説します。
1-1.マンションでは制限が大きい
マンションでは、給水管や排水管を通すパイプスペース(PS)は共用部分となっているので、自由に移動ができません。パイプスペース(PS)は上下階の配管を縦につなぐ縦管が通るスペースです。
水回りを移動するときにはパイプスペース(PS)を起点に距離を考える必要があるので、移動場所の制限は戸建てに比べ大きくなります。
▼とあるマンションの一室のパイプスペース(PS)※赤枠部分
PSまわりに水回り設備が配置されています。
また、水回り設備につながる排水管がどこから伸びているのかによっても、移動のしやすさは大きく異なります。ただし個人で確認することは困難ですので、リフォーム会社に見てもらう必要があります。


1-2.一般的な戸建ては比較的自由度が高い
戸建ての場合も水回りの難易度は構造によって違います。一般的な在来工法の木造は比較的移動させやすい一方、ツーバイフォーの木造や、鉄骨造・RC(鉄筋コンクリート)造は移動に制限がかかるケースが多くなるでしょう。
また床下や、2階であれば1階の天井裏に十分なスペースがなかったり、高さが低かったりする場合も、移動範囲が制限されやすくなります。
ただし床下や天井裏の高さが十分かどうかは個人で判断することは難しいため、リフォーム会社に見てもらうのが確実です。
2.【箇所別】リフォーム事例と移動の難易度
それでは、実際に水回りの移動リフォームをしたキッチン・トイレ・お風呂・洗面室の事例を紹介します。それぞれの水回り設備を移動する難易度も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
2-1.キッチン
キッチンは大幅な移動は難しいですが、多少の移動であれば実現させやすいでしょう。
<キッチンを移動したリフォーム事例>
※横にスクロールできます


※横にスクロールできます


出典:https://www.8044.co.jp/gallery/1693
壁付けだったキッチンの位置を、90度反転させる形で対面キッチンへと変更した事例です。この事例のように、向きは変えるものの場所自体は大きく移動しないリフォームは、問題なくおこなえるケースがほとんどです。
キッチンの大幅な移動は難易度が高い
キッチンの大幅な移動は、配管の勾配をとれるかどうかに加え、排気ダクトがつなげられるかも大きな課題になるため難易度が高いです。
キッチンの排気ダクトは天井を通りますが、たとえば今の場所と移動先の間の天井に梁(はり)が通っている場合、新たに梁に穴をあけてダクトを通すことはできないため移動は難しくなります。キッチンの排気は油も吸い込んでいるので、梁に沿って折り曲げてしまうと、油がへこみに溜まってしまうためです。
なお、最近のマンションは天井が高く、梁が天井の中に隠れていることも増えてきました。 その場合は、ダクトによる移動の制限は少なくなります。
希望の位置に移動できるかどうか、一度マンションのリフォーム経験が豊富なリフォーム会社に見てもらいましょう。


2-2.トイレ
戸建ての場合、給排水管がつなげられれば、移動自体は可能です。トイレを2階に移動・増設する工事も条件が満たされれば可能です。
ただしマンションの場合、構造によってはトイレの移動に大きく制限があることがあります。
<トイレを移動したリフォーム事例>
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出典:https://www.anabuki-renovation.com/results/reform/1051/
マンションを3DKから1LDKへと大胆な間取り変更リノベーションするのにあわせ、水回りも大幅に場所を変えた事例です。部屋の中心寄りにあったトイレは、玄関を入ってすぐの位置へと移動しました。もともと浴室があった場所で、パイプスペースからの距離も近かったため移動は問題ありませんでした。
汚水用の配管があると移動しにくい(マンション)
マンションの場合は、トイレの汚水とその他の雑排水(生活排水)を流す配管が分かれているケースが少なくありません。その場合は、汚水を流す配管付近から動かすことができないため、移動させにくくなります。汚水と雑排水がわかれているケースは東京以外のマンションでよくみられます。
反対に、汚水と雑排水の配管が同じであれば、ほかの配管につなげられる可能性があるので比較的移動は簡単です。こちらは東京のマンションでよくみられます。
どちらのタイプかの正確な判断は、やはりプロに見てもらうのがおすすめです。
壁排水であると移動しにくい
トイレには、便器の下から床下に排水管が出ている「床排水」と、トイレの背面から壁側に排水管が出ている「壁排水」の2種類があります。壁排水のトイレはパイプスペースに近い可能性が高く、その場合は遠くに動かすのは難しいのが一般的です。
壁排水かどうかは、壁・床どちらに配管が伸びているかを見れば見分けがつきますので、一度確認してみましょう。
2-3.お風呂
ユニットバス(システムバス・組み立て式の浴室)であれば、移動は比較的簡単なことが多いです。
<お風呂を移動したリフォーム事例>
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出典:https://www.8044.co.jp/gallery/418
一戸建ての2階の中央に集中していた水回りを、すべて北側に移設した事例です。浴室を移設したことで排水がしづらくなったので、浴室の床の高さを上げて勾配を確保しました。移設距離が長く勾配に問題がある場合、このような工夫で解消することも可能です。
在来浴室の移動は難易度が高い
お風呂場の移設リフォームは、もともとのお風呂が昔ながらのタイル張りの在来浴室だと難易度が高くなります。
それは在来浴室だと、排水管がモルタルで固めてられていることが理由です。そうなると排水管に勾配を付けながら移動させる分、さらにモルタルを厚くして床高を上げなければなりません。新しい浴室も在来浴室を希望すると、加えて新たに防水処理も必要になるため、コストパフォーマンスが悪くなってしまいます。
そのため在来浴室の移動リフォームは、できるだけ避けるのが無難です。
2-4.洗面台
洗面台は、ほかの水回りと比べて移動させやすいことが多いです。ただし、とくにマンションで例外もあります。
<洗面台を移動したリフォーム事例>
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出典:https://www.8044.co.jp/gallery/278
スケルトンリフォームするのにあわせ、回遊性を高める間取りにするために、洗面台の位置を変更した事例です。もともと水回りが集約されていたスペースを、動線を考慮する形で配置を整理。もともと浴室があったスペースに洗面室を移動し、キッチンと自由に行き来できるようにしました。
配管がでている壁が動かせない場合は移動が困難
洗面台の配管は床からでているのが一般的ですが、ときどき壁から出ているケースもあります。その壁が「耐力壁」と呼ばれる、建物の構造上動かせない壁だった場合、移動が困難になることがほとんどです。
3.水回りの移動リフォームでかかる費用
水回りの移動をする場合、どれくらいの費用がかかるのかは、リフォームの規模によって変わります。基本的に水回りの移動をおこなうときには間取り変更をともなうことが多く、費用は高額になりがちです。
たとえば3LDK(約70㎡)のマンションをフルリフォームする場合だと、間取り変更ありとなしでは次のように費用が異なります。
間取り変更なし | 380〜620万円 |
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間取り変更あり | 840〜1120万円 |
出典:https://www.reform-guide.jp/topics/naisou-fullreform-hiyou/
https://www.reform-guide.jp/topics/mansion-renovation-hiyou/
差額は少ない場合でも220万円、多ければ740万円にも及びます。
移動する水回りに今まで使っていた設備を移設すれば費用を抑えやすくなりますが、新しいものに交換するならそれだけ費用はかさみます。また一戸建てで水回りを1階から2階に移動したい場合は、パイプスペースを新たに作る必要もあるでしょう。
▼キッチンの移動リフォーム費用についてはこちらの記事をご覧ください。


水回りの移動リフォームができるリフォーム会社はどうやって探せばいいの?
水回りの移動をともなうような大がかりな間取り変更リフォームは、給排水だけでなく、ガスや電気、換気ダクトの工事などフルリフォームに慣れ経験豊富な会社を探さなければなりません。
とはいえどの会社が水回りの移動にまで対応してくれるのか、自力で調べるのは大変です。そのようなときには、ぜひリフォームガイドにご相談ください。リフォームガイドでは、専任のコンシェルジュが希望のリフォームを伺ったうえで、実現できる会社を迅速にご紹介いたします。
複数社から見積もりを取り比較検討できるので、リフォームにかかる費用を抑えることも可能です。依頼する業者以外へのお断りのご連絡もコンシェルジュがおこないますので、負担なく相談を進めていただけます。まずはお気軽にお問い合わせしてみてくださいね。
4.まとめ
水回りを移動するリフォームは、配管に十分な勾配がとれ、排気や換気のルート確保に問題がなければ可能です。
ただしマンションなのか一戸建てなのか、また構造はどうなっているのかなどによってその難易度は異なります。そのため希望する水回りの移動リフォームが可能なのかは、リフォーム会社に実際に確認してもらわなければ判断できません。まずはリフォーム会社に相談してみるとよいでしょう。