
マンションのリフォームを考えるにあたって、「そもそもどこまでリフォームしていいもの?」「プランを考える上で注意しておくことはある?」という疑問があるのではないでしょうか。
分譲マンションでは、所有するマンションの一室を「専有部」、住む人全員が共有する部分を「共用部」に分けられ、「共用部」は原則としてリフォームができません。
また、ご自身の所有する一室内でも、マンションの構造等の問題で、リフォームができない部分もあります。
今回、筆者は中古マンションをリフォームし販売を手掛けるあなぶきホームライフの丸岡さんの協力の下、マンションのリフォームプランを考える機会がありました。
その中で学んだ、マンションリフォームで「できないこと・できること」、これからマンションリフォームをする方に知っておいてほしいことを、実際のプラン例とともにまとめています。
<マンションリフォーム初心者の筆者が考えたプラン>
※横にスクロールできます


(実現したかったこと)
・キッチンを「アイランド型」にする
・トイレの位置移動(寝室の間→リビング横)
・玄関にコートや大きい荷物も置けるような「玄関収納」を造る
・寝室やキッチンの収納も増やす
・LDKを広くする
しかし考えた上記のプラン、すべてが「ボツ」となりました・・・。その理由も記事の中で説明します。
マンションリフォームでできないこと
まずはマンションリフォームで「できないこと」をまとめました。
[×] PS(パイプスペース)の移動
マンションの各住戸にはPS(パイプスペース)と呼ばれる配管が通る空間があります。PSは上下階で繋がっており、動かすことができません。
▼浴室・洗面室・トイレ・キッチンの近くにパイプスペース(PS)があり、PS内部には排水管が通っています。
このため、間取り変更をともなうリフォームにもやや制限がでる場合があります。
[×] キッチンやお風呂など、水回りの大幅な移動
キッチン・お風呂・トイレ・洗面など水回りを大幅に移動するリフォームは、マンションの構造上、困難であることが多いです。
理由は、配管の問題。上記のPS(パイプスペース)の位置が決まっているため、PSから遠ざかる移動には限界があります。また、1箇所のPSの排水量は限られるため、すべての水回り設備を1箇所のPSまわりに集中することもできません。
そのほかにも、マンションの柱や梁の位置によって移動が難しい場合もあります。
▼筆者が考えた水回りの間取り変更プラン
Before
After
PSのことを何も考えず間取りを考えていたため、「現実的ではない」プランとなってしまっていました。
水回りの移動は、多少の移動は可能だとしても、壁や床を壊して配管を延長させる工事が発生しますのでコストがかかります。費用を抑えてリフォームをしたい場合は、水回りの移動は避け、既存の位置をできるだけ活かすリフォームにするといいでしょう。
[×] 窓サッシ・玄関ドアのリフォーム
マンションの「共用部」にあたる窓サッシや玄関ドアの交換は、基本的にはできません。
※カバー工法という方法で交換できる場合もありますが、管理組合の承認が必要です。
もちろん、窓を大きくするリフォームもマンションでは不可能です。
一方、断熱性を上げたい場合などに有効な「内窓の設置」は、マンションでも可能な場合が多いです。ただしマンションによっては管理規約で禁じているところもありますので、いずれにしても窓周りのリフォームをご検討の際は、工事に取り掛かる前に必ず管理組合に確認を取りましょう。


[×] ベランダ・バルコニーのリフォーム
マンションのベランダ・バルコニーは、避難経路の確保や外観の統一性維持などの目的で「共用部」にあたるため、個人でのリフォームは原則できません。
ベランダやバルコニーに物干し竿を設置するだけでも、管理組合に届出が必要だったり、物干し竿の設置場所や形状を指定されたりする場合もあります。
管理組合の承認が下りればリフォームできることもありますので、個人の独断で進めることはせず、一度管理組合に相談しましょう。
また、ベランダやバルコニーの防水層が劣化しており、雨漏りの危険がある等の場合、こちらも個人で修繕や補修を依頼する必要はないため、管理組合に連絡しましょう。
マンションリフォームでできること
一方、マンションリフォームでできることも知っておくと、リフォームプランを考える際に役立つはずですので、以下でまとめています。
[○] 壁がなかったところに壁を作る
壁がなかったところに、新たに壁を作ることは可能です。
部屋数を増やすため、1部屋の間に壁を作り、部屋を分割するリフォームはよくあります。
壁ではなく、開閉可能な扉を設置することも可能です。扉であれば、空間を仕切るか繋げるか自由自在ですので、家族の人数にあわせて調整することができるでしょう。
▼隣り合うキッチンと洗面室の間に壁を設置した例
今回のリフォームプランでは最終的に、もともとドアで繋がれていたキッチンと洗面室を壁で仕切ることにしました。
理由は、ドアがあったことでキッチン背面がデッドスペースとなっており、収納棚や冷蔵庫を置くスペースが狭かったためです。壁を作ることで、収納スペースが増え、キッチンの位置は変えていないにもかかわらず空間に余裕ができました。
[○] キッチン・お風呂・トイレ・洗面など水回りの交換
キッチン・お風呂・トイレ・洗面など水回りの設備を交換することは可能です。
15年以上使用した水回りは交換の時期ですので、最優先で考えることをおすすめします。給湯器も10年以上経つと寿命により故障しやすくなるため、同時に交換しましょう。
配管や部品の劣化を修復するという目的はもちろんのこと、10年、15年も前の設備と比べると、性能も格段に良くなっていますので、生活がより快適になるはずです。
中古マンションを購入した場合も、水回りだけは新品に交換したいという場合も多いですね。
※ただし、水回りの場所を移動させたい場合は、上記の通り制限があります。または全く出来ないことも。詳しくは「できるかどうか確認が必要なリフォーム・水回りの移動」をご覧ください。
[○] 壁紙クロス・フローリングの張り替え
壁紙クロスの貼り換え、フローリングの張り替えなど、内装の張り替えも可能です。
内装を変えることで見た目の印象がガラッと変わります。
ただしマンションの管理規約によっては、床材の選択肢が限られることがあります。
ほとんどのマンションでは、管理規約で「遮音規定」が定められており、遮音性能の高いフローリングのみ使用可能とされているからです。
自然素材として人気のある「無垢フローリング」ですが、フローリング自体の遮音性能は十分ではないため、使用ができるかどうかを確認する必要があります。


できるかどうか確認が必要なリフォーム
マンションの構造や管理規約などの問題で、できるかどうか確認が必要なリフォームもあります。
[△] 壁の撤去をともなう間取り変更
壁を撤去して広い空間にしたい!という場合、マンションの構造によっては、壁が取り払えないこともあります。
取り払えない壁というのは、「耐力壁」と呼ばれる、建物を支える壁のことです。
どのマンションにもこの「耐力壁」は存在する可能性がありますが、特に「壁式構造」という「壁(面)」によって建物を支える構造のマンションでは、「耐力壁」が室内にある可能性が高く、取り壊すことができません。そのため、壁式構造は間取り変更が難しいといわれます。
一方、「ラーメン構造」と呼ばれる「柱や梁(線)」で支える構造もあり、こちらは室内の壁のほとんどが後から造られた取り壊せる壁であることが多いです。そのため間取り変更の自由度が高いといえます。
壁が撤去できたら、フローリングやクロスを張り替えることで、初めから一つの部屋だったかのように空間を繋げることも可能です。
このように構造によって、壁の撤去をともなう間取り変更リフォームができない場合があるので、事前に確認をしておきましょう。


[△] 水回りの移動
マンションによっては、水回りの移動が全くできない場合もあります。
例えば、床下の空間が全くなく、コンクリートの中に配管が埋まっているケースは、配管を動かすことができないため、移動ができません。
また、キッチンのレンジフードが動かせない可能性もあります。レンジフードを移動させるには排気ダクトを繋ぎなおす必要がありますが、マンションの構造によっては難しい場合があるためです。


[△] ガスコンロのIHへの変更
キッチンのガスコンロをIHに変えることが難しい場合もあります。
これは、一戸あたりの電力供給量が限られているためです。IHへの変更は、電気容量を上げる必要がでてくる可能性があり、管理組合への確認が必要です。


[△] エアコンの台数を増やす
エアコンもIHと同じく電気容量の問題、あるいは「エアコンスリーブ」の位置や大きさの問題で、台数を増やすことが難しい場合があります。
「エアコンスリーブ」とは、エアコンの配管・配線を室外機につなぐための壁の穴のこと、もしくは穴に取り付ける筒状の器具のことをいいます。部屋にエアコンを設置するには、この「エアコンスリーブ」がないといけません。居室内にエアコンスリーブがあったとしても、エアコンを設置したい場所と離れていたり、大きさが不十分の場合は設置ができない可能性があります。
もちろん、勝手に壁に穴を開けることはできません。
くわえて室外機が置けるスペースがあるかどうかも問題になります。
いずれにせよ、エアコンを新しく設置できるかどうかは、施工会社や管理組合に相談しながら進める必要があります。
[△] 床暖房の設置
床暖房の設置もできない場合があります。
床暖房には電気式とガス式の2種類あり、電気容量の問題(電気式の場合)や、床暖房対応の給湯器に交換できない(ガス式の場合)などが理由です。
また、これらの問題をクリアしても、コスト面で難しいと判断される場合も。
床暖房を後付けする場合、床暖房パネルの厚み分、床が高くなってしまう可能性があります。これをフラットにするには、設置箇所の床を下げてパネルを入れ、ほかの部屋と高さが合うようにする、もしくは室内全体の床を上げるといった追加工事が必要になり、コストがかかります。
さらにガス式の床暖房の場合は、給湯器から設置箇所まで、温水を巡らせるための配管を設置する必要があり、工事範囲が増え予想外の費用になることも。
床暖房を設置したい場合は、リフォーム会社に相談し、そもそも後付けができるかどうか、予算との折り合いがつくかどうかを確認しましょう。
もともとフルリノベーションをするつもり、という場合は、この機会に床暖房の設置を検討してもいいかもしれません。


[△] 断熱性を上げるリフォーム
マンションの一室の断熱性を上げるためには、下記のような方法があります。
・壁や床、天井に断熱材を入れる
・内窓を設置する
これらのリフォームは、すべて管理規約を確認してから進める必要があります。
また、壁や床に断熱材を施す場合、既存の壁・床を解体し、断熱材を入れて再び壁・床を造るという大規模なリフォームになるため費用がかかります。
大幅な間取り変更を考えている場合、築40年以上で配管の損傷が酷いマンションの場合は、この機会にすべて解体をして一から造りなおすスケルトンリフォームという方法で、断熱材の施工も同時におこなえるでしょう。
▼スケルトン状態の壁に吹付けタイプの断熱材を施工した事例(室外側の壁のみに施工)
(提供:あなぶき興産)
まとめ:マンションリフォームの豊富な経験を持つリフォーム会社に依頼することが重要
マンションリフォームでできること・できないことを解説しました。
「共用部」にあたる窓や玄関ドア、ベランダ・バルコニーなどは、個人ではリフォームすることができません。
そのほか、マンションによっては構造上できないリフォームや、技術的には可能でもコストの関係で現実的ではないリフォームもあります。
このように、マンションリフォームでは多くのルールや、構造上の制限があります。
そのため、マンションリフォームをするなら、マンションリフォームの豊富な経験を持つリフォーム会社に依頼することがとても重要です。
マンションリフォームに慣れている会社であれば、リフォームのできる・できないを的確に判断し、可能な範囲で最適なプランを提案してくれます。
反対に、マンションのリフォーム実績が少ない会社に頼んでしまうと、下記のような問題が生まれる可能性があります。
・工事中の配慮が足りず、近所や管理会社とトラブルになることがある
・解体後予想外の状態による対応が遅れ、予定していた完成時期から遅れる
・現場管理がずさんで、プランしていた色や素材と違った仕上がりになる
どの会社がマンションリフォームが得意か分からない・・・という場合は、『リフォームガイド』にご相談ください。リフォームガイドでは、リフォーム会社それぞれの特徴・強みを把握しており、お一人おひとりに合ったリフォーム会社をご紹介しています。
<最終的なリフォームプラン>
※横にスクロールできます


比較的使いやすい間取りだったため、間取り変更は無しのリフォームとなりました。(一部壁を設置)
間取りはほぼそのままですが、キッチンの吊戸棚と垂れ壁をなくしオシャレな照明を設置、内装を張り替え、クローゼットや扉の色も揃えることで雰囲気が全く変わっています。
▼こちらの記事もぜひあわせてご覧ください。



