
台風の強風で窓ガラスが割れてしまうと、破片によるケガだけでなく、室内に吹き込む風圧で屋根が飛ぶなど、大きな被害につながる可能性があります。割れた窓ガラスは自力で修理するのは難しく、被害規模によっては仮住まいが必要になることも考えられます。
被害を防ぐには、台風前に十分に対策しておくことが重要です。
本記事では、台風で窓が割れる原因や、自分でできる窓ガラス対策・リフォームによる本格的な対策まで具体的に解説します。いざというときに備え、万全の準備をしておきましょう。
目次
1.台風の脅威と対策の重要性
日本では夏から秋にかけて多くの台風が接近し、毎年のように各地で被害が報告されています。たとえ上陸しなくても、勢力を保ったまま接近することで、大雨や暴風による深刻な被害が出ることも少なくありません。
また、近年は地球温暖化の影響もあり、今後さらに強力な台風が増える可能性も指摘されています。
なかでも注意したいのが、台風の強風による飛来物や風圧で、窓ガラスが割れてしまうケースです。破片によるケガだけでなく、屋内へ風が吹き込むことにより、屋根が吹き飛ぶなどの重大事故につながることもあります。
実際、2018年の台風21号では、飛来物により多くの窓ガラスが割れ、関西を中心に大きな被害をもたらしました。こうした事態を防ぐためにも、事前にしっかりと台風対策をしておくことが重要です。
2.台風で窓に起こりうる被害
住宅のうち、窓ガラスはとくに台風による被害リスクが高い部分です。ここでは、具体的にどのような被害が起こりうるのか、主な4つのパターンを紹介します。
2-1.飛来物によるガラス破損
台風によってもっとも多く発生するのが、飛来物によるガラスの破損です。台風により巻き起こる暴風は、木の枝といった軽い物だけでなく、プランターや瓦など重い物も飛散させる力があります。これらの飛来物が窓に衝突すると、衝撃の大きさによってはガラスが一瞬で割れてしまいます。
とくに、窓の近くに物を置いていると被害が拡大する可能性があるため、台風の前には窓周りを片づけておくことが大切です。
2-2.風圧による建物・窓の損傷
窓やサッシは建築基準法により耐風圧性が定められており、地域や立地条件などに応じたものが建築時に採用されます。しかし、近年は想定を超える勢力の台風が増えており、設計基準を上回るリスクも否定できません。
とくに掃き出し窓のような大きな窓は中央部が圧力に弱く、破損の可能性が高まります。
さらに、窓が開いたままだと気圧差によってガラスが割れることもあるため、台風の接近時には必ず窓を閉め、すき間風が吹き込まないよう確実に施錠しておくことが大切です。
2-3.ガラス破損による二次被害
窓ガラスが割れると、破片による怪我だけでなく、雨風が吹き込むことによって室内の被害が一気に広がるおそれがあります。
たとえば窓から強風が吹き込むことで、天井を押し上げて屋根が破損したり、壁や床が水浸しになったりすることで深刻なダメージを与えるケースも。
そうすると、屋根や内装を修復しても、壁内や床下にたまった湿気がカビやシロアリの原因になり、家全体の寿命を縮めることになりかねません。
台風被害に遭う前に窓を守ることが、家全体を守ることにつながるのです。
2-4.雨による水漏れ
台風時には、ガラスが破損しなくても、横殴りの雨はサッシの隙間から侵入することで水濡れ被害にあうことがあります。
とくに気密性の低い古いサッシや、引き違い窓の重なり部分、ゴムパッキンやコーキングの劣化箇所などは、台風の風圧により隙間ができて雨が侵入しやすいため要注意です。
とくに近年の住宅に多い軒や庇のないデザインは、窓が直接雨を受けやすく、水の侵入リスクが高まります。
3.自分でできる窓の台風対策
ここでは、台風前に自分でおこなえる窓への簡易的な対策を紹介します。
3-1.養生テープを貼る
窓ガラスの対策をしたい場合、養生テープの活用が有効です。養生テープとは、建築現場などで使われる、粘着力が弱いことから剥がしやすく、跡が残りにくいテープのことです。
これを窓に米印状に貼り、その上で四辺を縁取るように貼るのが一般的です。この方法は、ガラスが割れた際に破片の飛散を抑える応急処置として効果があります。
ただし、ガラス自体の強度を上げるものではないため、あくまで一時的な対策として考えましょう。
なお、ガムテープでも代用できますが、剥がすときに窓や壁を傷めたり、跡が残ったりすることがあるため、使いやすさを考えるなら養生テープを用意しておくと安心です。
3-2.段ボールを窓に固定する
テープを貼る前に、段ボールを窓に当てておくとより効果的です。窓の内側に段ボールをあて、養生テープやガムテープなどでしっかりと固定しておきましょう。
そうすることで、万が一ガラスが割れた場合でも、テープのときだけと比較して破片の飛び散りをより防げます。
ただし、これもあくまで応急的な対策であり、ガラスそのものの破損を防げるわけではないことを理解しておきましょう。
3-3.飛散防止フィルムを貼る
飛散防止フィルムは、窓ガラスの破片が室内に飛び散るのを防ぎ、怪我や二次被害のリスクを防ぐためのアイテムです。
ホームセンターやネット通販で手軽に入手でき、自分で貼り付けるのも簡単なので、DIY感覚で対策ができるのが魅力です。テープや段ボールと違い、一度貼ってしまえば台風時以外もそのまま使用できるのもメリットです。
ただし、フィルムの厚みや仕様によって性能に差があるため、飛来物への耐性はよくチェックしておきましょう。また、経年劣化により性能が落ちるため、定期的な貼り替えも必要です。
「熱割れ現象」に注意
窓の種類によっては、フィルムを貼ることで「熱割れ現象」が起きる場合があります。これは、窓ガラスの直射日光が当たる部分と陰になっている部分の温度差によりガラスが割れてしまう現象で、フィルムが熱を吸収しやすいことも一因になるといわれています。
とくに家具やカーテンで窓の一部が覆われている場合は要注意です。
対策としては、窓の前に家具や家電を置かない、カーテンやブラインドによって熱がこもらないようにするほか、そもそも熱を吸収しにくいUVカット性の高いフィルムを選ぶことが重要です。
3-4.厚手のカーテンを閉める
万が一、台風で窓ガラスが割れてしまった場合に備えて、厚手のカーテンを閉めておくことも有効な対策です。
カーテンには直接的にガラスの破損を防ぐ効果はありませんが、万一割れてしまったときに、破片を受け止めることで、室内への飛散を軽減できます。
3-5.ネットを設置する
窓の外側にネットを設置する方法も、飛来物対策として有効な手段のひとつです。防風ネットを張ることで、木の枝や瓦などが直接窓にぶつかるのを防ぎ、ガラスの破損リスクを軽減できます。ネットは園芸用ネットや防鳥ネットでも代用が可能です。
ネットは窓にぴったり貼り付けるのではなく、張り方が重要です。庇から垂らして地面に固定する、または窓の上部から斜めに設置するなどし、飛来物を受け止めたときにネットがたわんでもガラス面に触れないように注意しましょう。
3-6.窓周辺を整理する
台風前には、ベランダや庭にある植木鉢やおもちゃなどの飛ばされやすい物はもちろん、物干し竿や自転車なども室内や物置に片付けておきましょう。
移動できないものであっても、地面に伏せておけるものはあらかじめ倒しておくと、風にあおられて飛ばされるリスクを減らせます。
また、窓や網戸、シャッターが確実に施錠されているかも要チェックです。強風で開いたり、破損したりすると、大事故につながる原因になります。
4.リフォームでできる窓の台風対策方法
テープや段ボールなどでの対策は、あくまで一時的なものであり、強風や飛来物によるガラスの破損を完全に防ぐことは困難です。長期的に安心できる住環境を整えるためには、窓まわりのリフォームによる対策が有効です。
ここでは、戸建て住宅を中心に、窓の台風対策として検討できるリフォーム方法について紹介します。
4-1.雨戸の設置
窓を物理的に覆って守る雨戸の設置は、もっとも基本的な台風対策リフォームになります。雨戸を閉めておけば、飛来物が直接窓に当たるのを防げるため、ガラスの破損リスクを大幅に減らせます。
ただし、窓の種類や周辺スペースの関係で、設置が難しい場合もあります。掃き出し窓などの大きな窓には、別の方法と併用するのも一つの選択肢です。設置可能かどうかは、事前に業者に相談して確認しておきましょう。
4-2.シャッターの設置
シャッターの設置も雨戸と同様に、窓を外側から守るための有効な方法です。
電動タイプや手動タイプなどさまざまな種類があり、近年では新築やリノベーション時に導入するケースも増えています。
台風時に閉めておけば、飛来物によるガラスの破損を防ぐ効果が高く、さらに雨戸よりも気密性が高いため、防音や断熱、防犯といった効果が期待できるのもポイントです。
ただし、シャッターも設置スペースや窓の形状によって対応できないことがあります。とくに2階以上の窓に設置したい場合は、足場が必要になることもあるため、事前に見積もりや現地調査を依頼すると安心です。
4-3.強化ガラスへの交換
台風による飛来物に備える手段として、窓ガラスを強化ガラスに交換するリフォームは効果的です。
強化ガラスは、通常のガラスに比べて3〜5倍の強度を持ち、割れにくいのが特長です。万が一割れた場合でも、粒状に砕けるため、破片による怪我のリスクが軽減されます。
見た目は一般的なガラスとほとんど変わらないことから、透明性や採光性を損なうことなく安全性を高められるのもメリットです。2枚のガラスの間に樹脂膜を挟み込んだ合わせガラスタイプや、雨戸・シャッターと併用すると、さらに安全性が高まります。
4-4.二重サッシの取り付け
二重サッシは、既存の窓の内側にもう一枚窓を取り付けるリフォームで、防音や断熱といった効果に加えて、台風対策にも役立ちます。外側の窓が万が一割れても、内側の窓があることで飛散や風の吹き込みを抑えられるので、被害の拡大を防げるようになります。
窓ごと交換するよりも工事が比較的手軽で、費用や工期を抑えられる点も魅力です。内窓に飛散防止フィルムを併用すれば、さらに安全性が高まります。
とくに既存の窓にシャッターが付けられない場合などに、有効な選択肢となるでしょう。
マンションの場合の注意点
マンションなど集合住宅では、窓やバルコニーは共用部分とみなされるため、原則として勝手にリフォームできません。
ただし、内窓を設置する、飛散防止フィルムを貼るといった室内側の対策であれば、管理規約の範囲内で認められるのが一般的です。
窓ガラスやサッシの交換も、防犯性や断熱性の向上など正当な理由があれば、管理組合に相談のうえ許可が得られるケースもあります。事前に管理規約を確認しておくと安心です。
5.窓の台風対策リフォームの費用と工期
リフォームによる台風対策は、DIYに比べてコストと時間がかかるものの、長期的な安心と安全性を確保できるのが大きなメリットです。
ここでは、主なリフォーム方法ごとの費用相場や、工事にかかる時間の目安について紹介します。検討の際の参考にしてください。
5-1.リフォーム費用の目安
窓の台風対策にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
雨戸・シャッターの設置 | 手動式:約10万円〜25万円 電動式:約20万円〜50万円 |
ガラスの交換 | 強化ガラス:約6万円〜8万円/枚 合わせガラス:約5万円〜8万円 |
二重サッシの設置 | 約8万〜15万円/箇所 |
工事費用は、窓の数やサイズ、施工場所、製品の種類によって大きく異なります。とくに2階以上の窓や高所での施工が必要な場合は、足場の設置が必要になることもあり、その分費用がかさむ点に注意が必要です。
こうした条件をふまえて判断するには、複数の業者に相見積もりを依頼し、価格だけでなく工期や施工内容、アフターサービスの有無なども含めて比較検討することが大切です。
5-2.工期の目安
窓の台風対策リフォームは、1箇所のみであれば半日〜1日で完了するのが一般的です。雨戸やシャッター、二重窓などの設置工事も、施工がスムーズに進めば短期間で終わることが多いでしょう。
ただし、施工箇所が複数ある場合や、高所で足場が必要となるケースでは、数日〜1週間程度かかることも。
工事にかかる期間は対策範囲や現場の条件によって異なるため、見積もりの際に詳細なスケジュールを確認しておくと安心です。
6.窓の台風対策リフォームに使える補助金
窓リフォームについては、近年では国や自治体の補助金制度を活用できるケースが増えています。断熱や省エネを目的とした補助金が主流ですが、防災性の向上が含まれていることもあり、条件を満たせば費用負担を抑えながらリフォームを実施できます。
ここでは、窓まわりの台風対策に使える主な補助制度をご紹介します。
6-1.先進的窓リノベ2025
「先進的窓リノベ2025」は、断熱性の高い窓へのリフォームを支援する国の補助金制度です。もともとは省エネを目的とした制度ですが、強度や耐久性のある複層ガラスやサッシも対象になることがあり、台風対策として活用できるケースもあります。
具体的には、窓ガラスの交換、内窓の設置、サッシの交換などについて、1戸あたり最大200万円の補助を受けられます。
なお、補助金を利用するには、対象製品や条件を満たしたうえで、制度に登録された「補助事業者」が工事をおこなわなければなりません。気になる方は、補助事業者に登録されているリフォーム会社へ相談してみましょう。
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6-2.子育てグリーン住宅支援事業
子育てグリーン住宅支援事業は、子育て世帯の住宅購入などを支援する制度ですが、リフォームに関しては年齢や家族構成にかかわらず、すべての世帯が対象です。
この制度では、断熱性能の向上や防災性の向上を目的とした窓リフォームも補助対象となっており、補助金額は最大で1戸あたり60万円です。ただし、窓まわりの改修だけでは対象にならず、必ず「開口部の断熱改修」「躯体の断熱改修」「エコ住宅設備の設置」のいずれかとセットでおこなう必要があります。
補助金を活用するには、「先進的窓リノベ2025」と同様に、「補助事業者」に登録された施工会社による工事が必要なため、まずは対応可能な業者に相談してみましょう。
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6-3.自治体の補助金
窓の台風対策リフォームには、国の制度だけでなく、各自治体が独自に実施している補助金制度を活用できる場合もあります。地域によって内容や条件が異なるため、まずは情報を確認することが大切です。
「住宅リフォーム支援制度検索サイト」では、自治体やリフォーム内容から使える補助金を探せるので、活用してみるとよいでしょう。
補助金は工事の内容や依頼する施工会社によって申請できるかどうかが変わるため、制度に詳しい会社を選ぶことがスムーズに進めるためのポイントです。一括見積もりサイトなどを活用し、複数社から相見積もりを取ると効率よく比較できるのでおすすめです。
7.窓が割れてしまった時の対処方法
台風の影響で万が一窓ガラスが割れてしまった場合、慌てずに対処することが重要です。ここでは、応急処置や修理の手配をする方法、火災保険が使えるケースについて紹介します。
7-1.割れた窓の応急処置
台風の最中に窓が割れた場合は、何よりも安全確保が最優先です。無理に片づけず、ガラスの近くを避けて安全な場所に避難しましょう。
状況が落ち着いてから、掃除機やほうきで飛び散った破片を丁寧に回収します。ガラスの破片で怪我をしないよう、靴や厚手の手袋を着用し、子どもやペットが近づかないようにしてください。
それから割れた部分を内側から段ボールや板などでふさぎ、養生テープや布テープでしっかりと固定します。雨風の侵入を防ぐため、すき間ができないように貼りましょう。
7-2.修理の手配
応急処置を終えたら、できるだけ早くガラス修理業者へ相談しましょう。被害の程度によってはガラス交換だけで済む場合もありますが、窓枠やサッシまで損傷していると、大掛かりな工事が必要になることもあります。
また、同じ被害を繰り返さないためにも、強化ガラスへの交換やシャッターの設置など、台風に備えたリフォームを検討するのもおすすめです。防犯や断熱など、複合的な効果も期待できるため、リフォーム会社に相談してみるとよいでしょう。
7-3.火災保険が使えるケース
台風で窓ガラスが割れてしまった場合、火災保険の「風災補償」で修理費用がカバーされることがあります。
保険の種類や契約内容によって適用範囲が異なるため、まずは保険証券を確認するか、保険会社に問い合わせてみることをおすすめします。
なお、申請には、被害状況がわかる写真や、修理の見積もり書が必要になるケースがほとんどです。破損した箇所は、片付ける前にスマホなどで写真を撮っておくと、保険請求がスムーズに進みます。
8.まとめ
台風に備えたDIYによる窓への対策は、応急的なものとしては有効ですが、強風や飛来物による被害を根本的に防ぐには限界があります。
安心して暮らせる住まいを目指すなら、窓の強化を目的としたリフォームが効果的です。その際、補助金制度を活用すると、費用負担を軽減しながら計画的に対策を進めることも可能です。
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