
「朝晩の冷え込みが厳しくなり、リビングで過ごすのが辛くなってきた」「新築した家の床が思いのほか冷たい」といったときには、床暖房の後付けリフォームを検討するのも解決策のひとつです。
この記事では、床暖房の後付けはどんな家でもできるのか、費用はどのくらいかかるのかなどを解説します。必要な費用や後付けするメリット・デメリット、床暖房の種類と選び方、実際の導入事例なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.床暖房はリフォームで後付けできる?
既存の住宅に床暖房を後付けできるのか、気になる方が多いようです。結論からいうと、基本的には戸建て・マンションに関係なく、床暖房は後付けできます。ただし、マンションの場合は、状況によっては導入が難しいことも。詳しくは「6.マンションで床暖房後付けする場合の注意点」をご覧ください。
床は新しいものに張り替えないといけない?
床暖房を後付けするときには、必ずしも新しい床に張り替えが必要なわけではありません。床暖房の施工方法には「直張り」と「張り替え」の2種類があり、直張りであれば張り替えは不要です。
直張り | 既存の床の上に床暖房の設備を直張りする |
---|---|
張り替え | 既存の床を剥がして床暖房を設置し、新たに床を張り直す |
ただし、直張りは床を重ね張りするぶん、既存の床より高くなってしまい、段差が生じてしまう可能性がある点は理解しておきましょう。
2.床暖房の設置リフォームにかかる費用
床暖房の後付けリフォームにかかる費用の目安は、以下のとおりです。
部屋の面積 | 電気式の設置費用 | 温水式(電気/ガス)の設置費用 |
---|---|---|
6畳 | 30万〜55万円 | 33万〜65万円 |
8畳 | 32万〜71.5万円 | 40万〜93.5万円 |
10畳 | 37万〜80万円 | 49.5万〜100万円 |
12畳 | 50万〜84万円 | 65万〜110万円 |
20畳 | 70万〜110万円 | 76万〜160万円 |
※温水式で給湯器などを増設する場合は、別途20万〜100万円必要
基本的には、設置が簡単な電気式が温水式よりも安くなり、また施工面積が広いほうが工事単価も下がります。温水式で給湯器などを新たに設置する場合は、その費用が発生する点も注意しましょう。
また、直張りは張り替えよりも安くなります。これは、張り替えに備えての既存の床の撤去・処分が不要であるためです。
床暖房のランニングコスト
床暖房のランニングコストの目安は次のとおりです。
床暖房の種類 | 1カ月あたりのランニングコスト(10畳、1日8時間使用、床温約30℃の場合) |
---|---|
電気式床暖房 | 約7,800円*¹ |
温水式床暖房 | 約4,500円*² |
*¹ 電気式床暖房:Panasonic Youほっとの場合
*² 温水式床暖房:Panasonic You温すいの場合
このように、初期費用は電気式が安い一方、ランニングコストは温水式が低くなります。初期費用とランニングコストのどちらを抑えるかはご家庭の事情によって異なるため、よく考えて検討しましょう。
※表内の電気代は、1日8時間連続使用、外気温約7℃、室温約20℃一定状態で30日運転、新電力料金目安単価税込31円/kwh(2022年7月22日改定)で計算されています。電気代は変動しており、高騰によりもっとかかる可能性もあるため、費用は目安としてください。
3.床暖房の設置リフォームにかかる工事期間
床暖房の後付けリフォームにかかる工事期間は、工法により異なります。
工法 | 工事期間の目安 |
---|---|
直張り | 3〜4日 |
張り替え | 4〜5日 |
張り替えは、既存の床の撤去や下地づくりに時間がかかるため、直張りよりも長くなります。
4.床暖房のメリット・デメリット
床暖房を後付けするメリット・デメリットをご紹介します。
床暖房のメリット
床暖房には、以下の3つのメリットがあります。
- 足元からまんべんなく部屋を温められる
- 空気が汚れず乾燥しにくい
- 基本的にメンテナンスが不要
それぞれ詳しく解説していきます。
足元からまんべんなく部屋を温められる
床暖房のもっとも大きなメリットは、足元が温められることです。エアコンやヒーターでは温風が足元に届きにくく、温まるのに時間がかかりますが、床暖房なら床全体を同時に温められます。
「冷え性で冬は足が冷えやすい」「ストーブだと顔がほてってボーっとしてしまう」という方は、床暖房にリフォームすれば悩みを解消できるかもしれません。
空気が汚れず乾燥しにくい
空気を汚染せず乾燥の心配もない床暖房は、体にやさしく使いやすい暖房器具です。
石油ファンヒーターは、換気を怠ると頭痛や吐き気などの体調不良をともなう可能性があり、またエアコンは肌の乾燥やドライアイを引き起こす原因となりがちです。
お肌が乾燥しやすい方やお子様のいるご家庭には、床暖房がおすすめです。
基本的にメンテナンスが不要
床暖房は、日頃のメンテナンスが基本的には不要です。エアコンやヒーターのように掃除や給油の手間がないため、時間の節約になります。
床暖房本体の寿命も30年以上と長く、非常に耐久性の高い機器であるため、一度設置すれば長年使用できることもメリットです。
床暖房のデメリット
床暖房のデメリットとしては、主に次の4つです。
- 初期費用が高くなりがち
- 温まるのに時間がかかる
- 家具の買い替えが必要になる可能性がある
- 段差ができることもある
それぞれ詳しく解説していきます。
初期費用が高くなりがち
床暖房のランニングコストはほかの暖房器具とさほど変わりませんが、設置時の初期費用は大きくなりがちです。たとえば6畳の部屋に電気式の床暖房を入れる工事費は、30万〜55万円が目安ですが、エアコンであれば10万程度で済むでしょう。
見栄えをよくするために、直張りではなく張り替えを選ぶならさらに費用がかかりますし、温水式を導入するなら別途熱電気が別途必要になることも。床暖房の設置の際には、まとまった出費が必要になる点は、デメリットといえるでしょう。
温まるのに時間がかかる
また、床暖房の温まり具合は部屋の広さや室温によって異なりますが、おおむね一時間程度かかります。ほかの暖房機器に比べると、温まりきるのに時間がかかるのがデメリットといえます。
朝の出勤前の忙しい時間だけ部屋を暖めたいようなケースでは、使い勝手が悪いと感じるかもしれません。
家具の買い替えが必要になる可能性がある
床暖房を設置した床面には、足のない家具は置けません。これは、家具を直置きすると、床との間に熱がこもってしまうためです。
そのため場合によっては、家具の買い替えが必要になる可能性があります。ただしお気に入りの家具がある場合は、その場所を避けて床暖房を設置するなど方法はあるので、まずはリフォーム会社に相談してみましょう。
段差ができることもある
床暖房の後付けで直張り工法を選んだ場合、既存の床に新たに床を重ねるため段差ができてしまいます。
段差は1.2cm~1.5cm程度で、リフォーム時には段差部分にはスロープ状の見切りと呼ばれる部材をつけ、極端な段差にならないよう配慮し施工します。しかし違和感は生じますし、場合によっては、お年寄りや小さな子どもがつまずいて転倒する可能性もあるでしょう。
見栄えや段差が気になる場合は、張り替え工法を選ぶことをおすすめします。
5.床暖房の種類「温水式」と「電気式」を比較
床暖房には、電気式と温水式の2種類があります。それぞれの特徴やメリットデメリットを紹介しますので、どちらの床暖房がご自身の環境に適しているか比較してみてください。
電気式床暖房 | 温水式床暖房 | ||
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イメージ | ![]() |
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特徴 | 床に電熱線などの初年帯を組み込んだパネルを設置して床を温める | 電気やガスによる熱源機で温めた水を、床下に通したチューブから床板パネルに循環させる | |
工事期間 | 上張り | 3~4日 | |
張り替え | 4~5日 | ||
メリット |
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デメリット |
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初期費用をなるべく抑えたいという人は電気式、コストはかかっても効果を十分に感じたい人は温水式がおすすめです。
現場のプロに聞く!電気と温水どちらがいい?
また、電気式と温水式の床暖房について、リフォーム会社さんにさらに詳しくお聞きしました。
一般的にガス(温水式)のほうが部屋全体が温まり暖房効果を感じやすいですが、家の構造によっては費用が大幅に膨らむことも。
ご自宅の構造によって設置コストや仕上がりが大きく変わりますので、見積もりを取る際にリフォーム会社に相談されるといいと思います。
ガス(温水式)が高くなる理由は、専用の熱源機(給湯器)が必要なのと、電気式は大工が施工できますが、温水式は温水パネルを貼るメーカー(Rinnaiやノーリツなど)の施工が必要になるため、人件費も高くなるからです。
また、マンションの場合、ガス(温水式)だと外の給湯器から配管を設置するため床をすべて剥がすフルリフォームのような施工になり、かなり高額になります。電気の場合は、設置したい部屋のみ床を張り替えるだけで大丈夫です。
ただし、電気代が高騰している(2023年6月の取材日時点)ため、ランニングコストを考えて総合的なコストも考えるほうが良いです。
床暖房の代表的なメーカー
リフォームに対応している床暖房の代表的なメーカー3社をご紹介します。
直張り | 既存の床の上に床暖房の設備を直張りする |
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Panasonic | 電気式の「Youほっと」、温水式の「You温すい」を販売。木質床材3種類、全23色柄から選べる。 |
リンナイ | ガス温水式床暖房を販売。フローリング以外にも、タイルや畳などの仕上げ材が使用できる。 |
ダイキン | 温水式床暖房を販売。床暖房とエアコンを組み合わせる工事もできる。 |
それぞれ特徴が異なるので、じっくり比較して選んでみてくださいね。
6.マンションで床暖房後付けする場合の注意点
マンションは集合住宅であるため、戸建てと違って自由自在にリフォームすることはできず、一定の制約が設けられているのが一般的です。ここでは、マンションで床暖房を後付けするときの注意点を解説します。
[1]管理規約で床暖房設置ができない場合がある
マンションでは、管理規約で専用部分のリフォームについて、さまざまな制約を設けています。もし管理規約に床暖房の設置が許可されていない場合、後付け工事はできません。
まずは管理規約をチェックして、不明な場合は管理組合に確認することが重要です。
[2]電気容量を確認する(電気式の場合)
マンションでは、各住戸で使える電気容量が決まっています。中古マンションでは30アンペア以下の物件も多く、電気式の床暖房を稼働するには容量が足りない場合があります。
万が一電気容量が足りない場合は、容量を増やすための工事が必要です。しかし、それには管理組合の許可が必要になったり、そもそも容量を増やせなかったりするケースも少なくありません。
まずは、電気容量に余裕があるかどうかを事前に確かめることが重要です。
[3]屋外に床暖房周辺器具のスペースが確保できるか確認する(温水式の場合)
温水式床暖房では、屋外に熱源を置いておくスペースが必要です。後付けリフォームに際しては、周辺機器を含めたスペースをバルコニー等に確保ができるか確かめましょう。
[4]使用できる床材が限定される
既存の床を張り替えて床暖房を設置する際、マンションでは床材に関して管理規約で規定があるケースが多いため、選べる床材が限られる傾向があります。
お好みの色や質感の床材にできない場合もあるので、床材にこだわりのある方はどんな床材が選べるのか、最初にリフォーム会社に確認することをおすすめします。
マンションのリフォームは、他にも集合住宅ならではの注意点があります。詳しくは以下の記事で紹介していますので、あわせて確認してください。




7.床暖房リフォームの費用を抑えるには?
床暖房のリフォームにかかる費用を抑えるために、できる工夫を紹介します。
[1]床暖房を部分的に設置する
床暖房の後付けにかかる費用は施工面積に比例するので、設置範囲を小さくすれば、トータルコストを抑えられます。
たとえばベッドやソファーなど大きな家具の下には床暖房を設置しなければ、それだけ費用を削減できます。
原則として、床面積の5~7割に床暖房があれば、部屋全体に対する暖房効果が得られるので、必要な箇所・不要な箇所を考えて、設置する箇所を絞りましょう。
[2]張替えではなく重ね張りにする
床暖房の設置方法には直張りと重ね張りの2種類があるとお伝えしましたが、既存の床に直張りするほうが費用を抑えられます。これは、直張りだと既存の床を撤去・処分したり、下地を整えたりする必要がなく、工期も短く済むためです。
ただし、直張りすると段差ができ、見栄えも悪くなります。どちらがよいかは最終的な満足度も含め、よく考えて決めましょう。
[3]補助金制度を活用する
温水式の床暖房の後付けに際して給湯器を導入する場合、補助金を活用できる可能性があります。対象となる可能性があるのは、以下の補助金事業です。
事業名 | 内容 | 補助額 |
---|---|---|
給湯省エネ2025事業 | 温室効果ガス削減に向けて、高効率給湯器の導入に対して支援する事業 | 6万円〜16万円(設置する給湯器の種類による) |
条件を満たせば、高性能な給湯器に対する性能加算や、既存の電気蓄熱暖房機・電気温水器の撤去費の加算なども受けられます。
この補助金を活用するには、本事業の補助事業者として登録を受けたリフォーム会社と工事請負契約を結ぶなど制約があります。まずは相談してみましょう。


8.床暖房以外の選択肢もある?
冬の寒さを改善するには、床暖房以外の選択肢もあります。ここではどのような方法があるのか、具体的に紹介します。
[1]無垢フローリングに張り替えるだけでも、床のヒンヤリは解消する
既存のフローリングが合板の場合、無垢フローリングに張り替えるだけでも床のヒンヤリを解消できる可能性があります。
合板フローリングは、複数の木材を細かく砕き、圧縮してつくられます。内部が密になっているため熱伝導率が高く、触れたときにヒヤッとした冷たさを感じるのです。
その点、木材をそのまま使用した無垢フローリングは、内部に多くの空洞があるため熱伝導率が低く、触れても冷たさを感じにくいことが特徴です。床暖房の導入が難しい場合は、無垢フローリングへの張り替えを検討してもよいでしょう。
[2]家の断熱リフォームも検討しよう
家自体の断熱性能が低いケースでは、床暖房を入れられなくても、断熱性を高めるリフォームをすることで暖かさを確保できる場合があります。
とくに、窓が単板ガラス(1枚のガラス)でアルミサッシの場合、外の寒さが直接部屋に伝わりやすくなります。内窓を付けて二重窓にするだけで冷気が伝わりにくくなり、エアコンやストーブだけでも部屋が十分暖まる可能性があるでしょう。
[3]戸建ては床下暖房という選択肢もある
戸建ての場合、床暖房を後付けするのではなく、床下暖房を入れるのも方法のひとつです。床下暖房とは、床下に暖房機器を設置して、暖かい空気を循環させる方法です。暖まった床下の空気が断熱層となり、またその熱が床に伝わることで、部屋が暖かくなります。
ただし、床下暖房が効果を発揮するのは、基礎断熱がされている場合に限ります。自宅の床下がどうなっているかわからない場合は、まずはリフォーム会社に見てもらいましょう。


9.床暖房を設置した事例
最後に、床暖房を後付けリフォームした事例を2つご紹介します。
リビングに床暖房を導入した事例
冬場、リビングの床が冷えることが気になり、改善を希望。電気式の床暖房を設置し、足元から暖かくなる快適空間を実現しました。
費用 | 83万円 |
---|---|
施工面積 | 不明 |
工期 | 4日間 |
断熱材と一体になった床暖房を設置した事例
リビングに、耐久性の高い電気式の床暖房を設置しました。断熱材と一体になった製品を選んだので、省エネにも配慮した仕上がりとなっています。
費用 | 165万円 |
---|---|
施工面積 | 29㎡ |
工期 | 10日(壁面収納工事含む) |
10.まとめ
床暖房は、基本的には戸建てでもマンションでも後付けが可能です。ただし、マンションは管理規約により設置の可否や、導入する床材の種類などに制限がある場合があるためあらかじめ確認しましょう。
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