
浴槽剥がれや変色、黄ばみやヤケ、ひび割れなどのちょとした劣化が目について、「まだお風呂を交換したいわけではないけど、きれいにしたいだけのときはどうしたらいいんだろう」とお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
浴槽のリフォームというと、交換を考えがちですが、浴槽の状態によっては塗装という選択肢もあります。交換に比べて工期や費用が押さえられるだけでなく、浴槽の寿命を伸ばして永く大事に使うことができる、注目のメンテナンス方法です。
この記事では、浴槽塗装のメリット・デメリット、費用相場、注意点から業者選びのポイントまで、浴槽塗装に関する全ての情報を紹介します。浴槽の劣化でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.浴槽塗装とは
浴槽塗装は、経年劣化した浴槽をよみがえらせる補修工事の1つです。

浴室の劣化でよく見られる黄ばみやヤケ、傷などは、専用のパテや塗料を使って修復すれば、新品のような美しさを取り戻せます。塗装する場合は好みの色や模様を選べるため、浴室全体のイメージを一新することも可能です。
浴槽の塗装には、大きく分けて「再生コーティング」と「保護コーティング」の2種類があります。
再生コーティングは、アクリルウレタン樹脂系の有色塗料を使用し、劣化した浴槽を美しく再生させる工法です。一方、保護コーティングは、新しい浴槽を水あかやカビから守るための予防的な処理です。透明なフッ素系樹脂塗料やシリコン系塗料、ガラス系塗料を使用するため汚れが付きにくく、掃除が楽になります。
浴室は比較的狭い空間のため、浴槽の印象を変えるだけでも大きな効果が期待できます。浴槽の劣化でお悩みの方や、浴室の雰囲気を変えたい方にとって、浴槽塗装は費用対効果の高いリフォーム方法といえるでしょう。
2. 浴槽塗装のメリット・デメリット
浴槽塗装には、費用面や施工面で多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点もあります。
メリット | デメリット |
---|---|
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浴槽塗装のメリット
浴槽塗装の主なメリットは、費用を抑えられること、好みの色に変更できること、そして環境に優しい工事ができることです。
■費用を抑えられる
浴槽塗装は、浴槽交換と比較して費用を大幅に抑えられます。また、浴槽本体を取り外す必要がないため工期が短く、付帯工事も最小限で済みます。ただし、浴槽の下地や土台に腐食が見つかった場合は、費用がかさむこともあるため、理解しておきましょう。
■好みの色に変えられる
浴槽塗装では、単なる補修だけではなく、好みの色や質感に変更できます。シャーベットカラーや大理石調、木目調など、豊富なカラーバリエーションの中から選択が可能です。
古い浴槽の場合、時代遅れのデザインを現代的なものに一新できる点は大きなメリットです。また、浴室全体の雰囲気を考慮した色選びができるため、統一感のある空間をつくることもできます。
■廃材が出ず、環境にやさしい
浴槽塗装は、既存の浴槽を生かした工事のため、廃材がほとんど発生しません。これは環境面での大きなメリットであり、処分費用も抑えられる点も魅力といえるでしょう。
浴槽交換の場合、古い浴槽の撤去や処分に多額の費用がかかることがありますが、塗装ではこの費用が発生しません。また、工事に伴う騒音も最小限で済むため、集合住宅に住んでいる方や近隣への配慮が必要な方にも適しています。
浴槽塗装のデメリット
浴槽塗装には、施工業者の選択肢が限られること、耐久性に関する課題、そして機能面での制約といったデメリットがあります。
■対応できる業者が少ない
浴槽塗装は高度な技術を必要とする工事です。特に耐久性を確保するためには、塗膜を適切な厚さで均一に施工する必要があり、この技術を持つ業者は限られています。吹き付け塗装の場合、塗料の垂れや塗膜の剥離を防ぐための専門的な技術が不可欠です。
そのため、一般的な塗装業者では対応できないことが多く、信頼できる業者を見つけることが困難な場合があるでしょう。業者選びの際は、施工実績と技術力の確認が極めて重要です。
■塗装がはがれることもある
浴槽塗装の最大の課題は、経年による塗膜の剥離です。これは塗装という工法の特性上、完全には避けられない問題です。浴槽の素材によって塗料との相性は大きく異なりますが、ステンレスやホーロー製の浴槽では塗料の付着力が弱い傾向があります。
また、熱湯を頻繁に使用したり強い洗剤で清掃したりすることで、塗膜の劣化が加速する可能性もあり、剥がれてしまった場合は再度対処する必要があります。適切な施工と日常的なケアが、塗膜の長寿命化には不可欠といえるでしょう。
■機能は元の浴槽と変わらない
浴槽塗装は、あくまでも見た目の改善を目的とした工事です。傷や汚れを隠し、新品同様の外観を取り戻せますが、浴槽の基本的な機能や性能を向上させることはできません。
例えば、保温性能の改善や、追いだき機能の追加、新しい設備の導入などは、浴槽の交換や浴室全体を改修する必要があります。
古い設備の機能面での不満がある場合は、別のリフォーム方法を検討しましょう。
3.浴槽塗装はできる?素材をチェック
ここでは、浴槽の塗装に向いている素材と向いていない素材を解説します。浴槽塗装の可否は、浴槽の素材によって大きく異なるため、まずは自宅の浴槽の素材を把握することが重要です。
浴槽塗装に向く素材
浴槽塗装に最も適している素材は、FRPと人工大理石です。FRPは軽量化したプラスチック製の素材で、塗料との相性が非常に良く、塗膜の密着性が高いのが特徴です。
また、人工大理石も樹脂製の素材であるため、塗料が定着しやすいという特徴もあります。
これらの素材では、メンテナンスも比較的しやすく、定期的にお手入れすることで美しい状態を保つことができます。
人工大理石浴槽画像出典:https://www.yutoriform.com/products/water/bathroom/case/06/
浴槽塗装に向かない素材
塗装が難しい素材として代表的なのが、ホーローとステンレスです。
ホーローは鉄やアルミニウムの表面にガラス質のコーティングを施した素材で、表面が非常に滑らかなため、塗料が定着しにくい特徴があります。
同様に、つるつるとした表面を持つステンレスも塗料との相性が悪く、塗膜の剥離が起こりやすい傾向があります。これらの素材での塗装は、特殊な下地処理や高度な技術が必要です。その加工を施した「カラーステンレス」であれば、ステンレスであっても塗装できる可能性があります。
また、耐久性も比較的短くなる可能性があります。ご自宅の浴槽がホーローやステンレスの場合は、十分な施工実績を持つ業者に、できるかどうか相談してみましょう。
4.浴槽の塗装費用
浴槽の素材別の塗装にかかる費用相場は以下のとおりです。
サイズ(幅) | 浴槽の素材 | |
---|---|---|
FRP | 人造大理石・ホーロー | |
90cm以下 | 9.8万円~ | 10.6万円~ |
90cm~120cm | 10.4万円~ | 11.2万円~ |
120cm以上 | 11万円~ | 11.8万円~ |
お風呂の設備が破損していたりかなり劣化している場合や下地の腐食等が見られる場合など、浴槽塗装だけでは解決できない場合は浴槽の交換を検討しましょう。
(参考)浴槽交換の費用感
浴槽交換にかかる費用相場は以下のとおりです。
浴槽タイプ | 費用 |
---|---|
タイルに埋め込むタイプ | 23~49万円 |
タイル上に据置くタイプ | 12~14万円 |
浴槽の交換には「埋込みタイプ」と「据置きタイプ」の2種類があります。
埋込みタイプ画像出典:http://www.8044.co.jp/gallery/97
据置きタイプ画像出典:https://freshhouse.co.jp/case/28519/
埋込みタイプは浴室の床に浴槽を埋め込んで設置する方式で、見た目がすっきりとして高級感がありますが、床下の防水工事が必要のため費用は比較的高くなります。
一方、据置きタイプは床の上に直接浴槽を設置する方式です。工事が簡単で費用を抑えられ、設置や取り外しも容易という特徴があります。ただし、デザイン面では埋込みタイプに比べるとやや見劣りするでしょう。
浴槽交換の見積もりの一例を紹介しましょう。
No | 項目・仕様 | 数量(式) | 単価(円) | 金額(円) |
---|---|---|---|---|
1 | 浴槽価格(FRPの一般価格) | 1 | 150,000 | 150,000 |
2 | 浴槽設置・下地補修 | 1 | 80,000 | 80,000 |
3 | 排水工事 | 1 | 50,000 | 50,000 |
4 | 浴槽解体・浴槽処分 | 1 | 50,000 | 50,000 |
5 | その他 | 1 | 30,000 | 30,000 |
小計 | 360,000 | |||
消費税 | 36,000 | |||
合計 | 396,000 |


5.浴槽塗装と浴槽の交換どっちがいい?
浴槽の補修方法を検討する際、使用年数が重要な判断材料となります。
- 浴槽の使用年数が短い…浴槽塗装がおすすめ(大きな破損ではない場合)
- 浴槽の使用年数が長い…浴槽交換がおすすめ
まだ浴槽の使用年数が浅く、ツヤがなくなった程度であれば、費用を抑えられる塗装がおすすめです。浴槽塗装は、FRPや人造大理石、ホーロー製のいずれの場合も、浴槽交換と比べると比較的安価で済む可能性が高く、工事期間も数日程度と短いのが特徴です。
ただし、浴槽の破損などからお風呂設備そのものが損傷してしまっているような場合は、交換したほうがいいでしょう。リフォーム会社に状況を見てもらってアドバイスしてもらいましょう。
一方、長年使用している浴槽の場合は、耐久性の面から浴槽交換を検討しましょう。一般的に、浴槽は長期間使用すると劣化が進むため、定期的に交換リフォームを検討する必要があります。
浴槽交換には据置きタイプと埋込みタイプがあり、いずれも塗装と比べると費用が高くなりやすく、工期も約1週間程度かかります。
6.浴槽塗装のDIYはおすすめできない!その理由
浴室用の塗料はホームセンターなどでも数千円で手に入り、DIYできる!と勧める店も多いのですが、自分で浴槽を塗装するのはおすすめできません。なぜなら浴槽塗装は専門知識と技術が必要になるためです。
一見塗装だけなら簡単なようにも見えますが、プロである職人は、専用の塗料と塗装道具を使い、塗料を定着させるための下地づくりから塗装まで、培った知識と技術を使って施工しています。
また、塗装前の下地処理や既存の浴槽の汚れやサビへの対処など、塗装の寿命を左右する部分に関しても、それぞれ適切な処理を施すことで塗装後もきれいな状態を長持ちさせることができるのです。
また、毎日水をためる浴槽は、単に塗装しただけではすぐにはがれる場合もあります。そのため、きれいな仕上がりはもちろん、長持ちさせるという観点から見ても業者に任せましょう。
7.浴槽塗装業者の選び方の2つのポイント
浴槽を塗装するときには、確かな技術、適正価格で塗装してもらえる業者を選ぶことも大切です。
この章では、業者選びの際に念頭に置いておきたい2つのポイントをお伝えします。
[1]アフター保証のある業者を選ぶ
先に述べた通り、浴槽塗装は場合によっては剥がれてしまうこともあります。また、その他のアクシデントに備えてアフター保証がついた業者を選ぶことをおすすめします。
具体的には、塗装後の施工不良やトラブルが起こった場合に対応してくれるのか、保証期間はいつまで定められているのかを契約前にチェックしておくと安心できるでしょう。保証の内容は業者によって異なるため、業者と契約書を交わす前に、保証内容をよく確認しましょう。
[2]実績のある業者を選ぶ
浴槽塗装は特別な技術が必要な工事なので、実績のある業者を選ぶことが大切です。業者の公式ホームページなどで、過去の施工事例や写真を確認しましょう。また、問い合わせをしたときに、施工方法や費用について、きちんと説明してくれるかどうかもポイントです。
複数の業者に見積もりを依頼して、工事内容や対応を比較する中で各会社の対応を見極めましょう。
8.浴槽を塗装するときの注意点
浴槽の塗装リフォームで気を付けたい点をいくつかお伝えします。
どれもリフォーム前に知っておくべきポイントです。
ホーロー製の浴槽は追いだきが出来なくなることもある
ホーロー製の浴槽は、塗装を施すことで追いだき機能に支障が出る可能性があります。このような事態を避けるため、ホーロー浴槽の施工実績が豊富な業者を選び、事前に追いだき機能への影響について詳しく確認することが重要です。
特に冬場の工事を予定している場合は、追いだき機能の有無が快適な入浴に大きく影響します。慎重に検討しましょう。
家のお風呂に入れなくなる期間がある
浴槽の塗装工事中は通常2~4日程度、お風呂が使えなくなります。ただし、この期間は施工業者や塗装範囲によって変動することがあります。
工事開始前に業者から具体的な工期を確認し、その間の入浴手段として、近所の銭湯や日帰り温泉の利用、親戚宅への一時的な宿泊など、代替案を考えておきましょう。特に家族が多い場合は、全員の生活リズムを考慮した計画が必要です。
9.浴槽塗装に関するQ&A
ここでは、浴槽塗装についてよくある質問をまとめました。
Q1.浴槽塗装には、どんな塗料を選ぶと良い?
「F☆☆☆☆(エフフォースター)」とは、JIS・JASにて義務付けられた安全等級「Fスター」の最高等級です。
シックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒドなどの発散濃度が非常に低く、建築基準法の規制を受けずに使用できる建材です。
普段過ごす居室だけでなく、直接素肌が振れることが多い浴室でも、安全性の高い建材を使いたいところです。
また、施工中、家族や近隣にできるだけ迷惑をかけないようにするには、臭いが強くない塗料を選ぶといいかもしれませんね。
Q2.塗装を長持ちさせるポイントは?
入浴剤や水質の影響で浴槽が傷むとよく言われますが、浴槽にダメージが大きいのは「水をためっぱなしにする」ことです。長期間水を張った状態にすると、浴槽は水分を吸収して、素材が変質してしまいます。そうなると、変質した部分を削って、内側に一層成形してからの塗装となり、大掛かりな補修になってしまいます。
浴槽の水は毎日排水して一度乾かすようにするのが長持ちのコツです。
10.まとめ
浴槽のリフォームでは、浴槽の使用年数や使用状況に応じて「塗装」と「交換」を適切に選択することが重要です。塗装は、FRPや人造大理石、ホーロー製のいずれも交換と比べると比較的低コストで済みやすく、工期も数日程度と短いのが特徴です。
使用年数が浅くツヤの劣化が小さな傷が気になる程度であれば、コストを抑えられる浴槽塗装がおすすめです。しかし、長年使用している場合は、浴槽交換も検討するとよいでしょう。リフォームと塗装、両方に対応できる会社に相談しましょう。