
しゃがむ動作が必要な和式トイレ。小さな子どもや高齢者、妊婦、体が不自由な方にとっては使いづらさを感じることがあります。
和式トイレの上からかぶせるだけで洋式トイレのように使えるアタッチメントもありますが、座ったときの安定感がなく、内側の掃除がしにくいなどのデメリットも。衛生的で使い勝手のいい洋式トイレにリフォームしたいという方も多いでしょう。
トイレを和式から洋式にリフォームする際にはまとまった費用がかかりますが、場合によっては補助金制度が使えることも。住宅だけでなく店舗やオフィス向けの補助金もあるので、ぜひうまく活用しましょう。
今回は和式トイレを洋式トイレにリフォームする際に使える補助金、リフォームの実例や進め方など詳しくご紹介します。
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目次
1.【一般住宅向け】トイレを和式から洋式にリフォームする際の補助金等
まずは一般住宅の和式トイレを洋式トイレにリフォームする際に使える補助金制度をご紹介します。
1-1.介護保険における住宅改修費の支給
おすすめの人:要支援・要介護認定を受けている人
介護保険のなかには、介護やバリアフリーのために住宅を改修すると、工事費の一部が支給される制度があります。和式から洋式トイレへのリフォームも対象となっており、支給額は最大18万円です。
ただし介護保険を利用するには要支援・要介護認定を受けている必要があり、誰でも利用できるわけではありません。また、ご本人が入院中または施設に入居中の場合は、対象外です。
介護保険における住宅改修費の支給 |
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条件 ・要支援・要介護認定を受けている ・入院や福祉施設への入居をしていない など |
対象となるリフォーム (1)手すりの取り付け (2)段差の解消 (3) 滑りにくい床材への張り替え (4)引き戸等への扉の取り替え (5)洋式便器等への便器の取り替え (6)1〜5のために必要な工事 |
補助金額 工事費用20万円までの7〜9割(自己負担割合による) |
申請のポイント ・着工前の申請が必須 ・まずはケアマネージャーに相談する |
1-2.自治体の補助金
おすすめの人:何かしらの補助が受けられないか考えている人
お住まいの地域によっては、要支援・要介護認定を受けていない方でも利用できる補助金があることも。また介護保険と併用可能な補助金もあるので、介護保険を利用する方も他に使える補助金はないか確認しておきましょう。
各自治体の補助金情報は、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会の「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」で検索できます。
【自治体による補助金の例】 |
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東京都足立区「住宅改良助成制度」 東京都中野区「自立支援住宅改修等給付事業」 |
1-3.子育てグリーン住宅支援事業
おすすめの人:家の断熱化もしたい人
2024年に人気だった「子育てエコホーム支援事業」の後継事業として「子育てグリーン住宅支援事業」が開始されました。
和式から洋式トイレへのリフォームが直接対象として設定されているわけではありませんが、節水型の洋式トイレを選ぶことで「エコ住宅設備の設置」として補助金の対象となります。
注意点は、トイレのリフォームだけでは申請ができないこと。断熱仕様の窓や玄関ドアへの交換や、外壁や床などの断熱改修と同時に行う必要があります。
子育てグリーン住宅支援事業(リフォーム) |
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条件 ・令和6年11月22日以降に着工したリフォームであること ・補助金額が5万円以上 |
対象となるリフォーム 【下記2種類以上の実施が必要】 (1)開口部の断熱改修 (2)外壁・屋根・天井または床の断熱改修 (3)エコ住宅設備の設置 【(1)〜(3)を2種類以上実施すると対象】 (4)子育て対応改修(ビルトイン食洗機・宅配ボックスなど) (5)防災性向上改修(防犯安全ガラスへの交換) (6)バリアフリー改修(手すり設置、段差解消など) (7)空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置 (8)リフォーム瑕疵保険等への加入 |
補助金額 必須工事3種類すべてを実施:1戸あたり最大60万円 必須工事のうち2種類を実施:1戸あたり最大40万円 ・節水型トイレ(掃除しやすい):1台あたり2.3万円 |
申請のポイント ・補助金額5万円以上になるようにプランニングする |


1-4.長期優良住宅化リフォーム推進事業
おすすめの人:中古住宅を購入してリフォームを検討している人、耐震性能や断熱性能など家の性能向上も検討している人
長期優良化住宅リフォーム推進事業を利用するのもひとつの手段です。こちらも和式トイレ向けのリフォームというわけではありませんが、子育て世帯向け改修工事として「トイレの拡張」が補助の対象となっています。子どものトイレトレーニングをしやすくするため、トイレを広くして和式トイレを洋式トイレにリフォームするなどの場合に検討できます。
注意点は、トイレリフォームだけでは要件を満たさないこと。住宅の性能向上を目的とした事業なので、耐震性や断熱性などの基準をクリアしなければなりません。中古住宅を購入して、耐震や断熱と合わせてトイレリフォームもする場合などに検討されるとよいでしょう。
長期優良住宅化リフォーム推進事業 |
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条件 ・工事前にインスペクションをする ・維持保全計画やリフォーム履歴を作成する ・工事後に一定の性能基準を満たす(省エネ対策、耐震性、躯体構造等の劣化対策) |
対象となるリフォーム 【性能向上リフォーム】 (1)省エネ対策、耐震性、構造躯体等の劣化対策、維持管理・更新 (2)バリアフリー改修工事、インスペクションで指摘を受けた箇所の補修工事、テレワーク環境整備改修工事、高齢期に備えた住まいへの改修工事 【三世代同居対応改修工事費】 キッチン・浴室・トイレ・玄関の増設工事 【子育て世帯向け改修工事費】 対面キッチンへの交換、ユニットバスの大型化、トイレの拡張、キッズスペースの設置など 【防災性の向上・レジリエンス性の向上改修工事】 玄関ドアの耐震化、河原交換、雨樋交換など |
補助金額 長期優良住宅の認定なし:1戸あたり最大80万円(130万円) 長期優良住宅の認定あり:1戸あたり最大160万円(210万円) ※()内は三世代同居対応改修工事の実施、若者・子育て世帯、既存住宅の購入者 |
申請のポイント ・認定を受けた補助事業者にリフォームを依頼する |


2.【店舗・企業向け】トイレを和式から洋式にリフォームする際の補助金等
事業所や企業でもトイレを和式から洋式トイレにリフォームする際に、補助金が交付される可能性があります。当てはまる補助金がないかチェックしてみましょう。
2-1.自治体の補助金
観光地向けの補助金
観光客の満足度アップのために、和式トイレを洋式トイレにリフォームすることで自治体から補助金が交付されることがあります。例えば次のような制度です。
【観光地向けの補助金の例】 |
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香川県「観光客の利便性・満足度向上事業(観光施設等のトイレの洋式化)」 |
店舗向けの補助金
また、次のような店舗リフォームの補助金が利用できるケースもあります。実施の有無や条件は自治体によって異なるため、詳しくは自治体の窓口にお問い合わせください。
【店舗リフォームの補助金の例】 |
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西東京市「小規模店舗等バリアフリー改修工事費助成制度」 |
2-2.障害者作業施設設置等助成金
身体に障害のある方に働いてもらうとき、事務所のトイレが和式のため使えなかったり、車椅子で入るのが難しかったりすることもあるでしょう。その際は障害者作業施設設置等助成金が使えるかもしれません。詳しい要件や申請方法については、各都道府県の独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構にお問い合わせください。
障害者作業施設設置等助成金 |
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条件 ・リフォームをしなければ対象者(身体障害者、知的障害者、精神障害者など)の雇入れや雇用継続が難しい |
対象となるリフォーム 【車椅子】車椅子対応トイレの改修や新設、スロープ、電動昇降機、エレベーター、扉の改修 【肢体不自由】手すりの設置、和式から洋式トイレへの改修、扉の改修、社用車の改造 【聴覚】パトライト、補聴システム 【視覚】点字ブロック、ディスプレイ、拡大読書器、画面読み上げソフト、画面拡大ソフト 【内部】オストメイト対応トイレへの改修、電磁波防護服 【制震障害】補聴システム、仕切りパネル |
補助金額 支給対象者1人につき最大450万円 1事業所につき1年あたり最大4,500万円 |
申請のポイント ・雇用期間や労働時間などの条件を確認する ・事業所のある都道府県支部に申請する |
参考/障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金
2-3.小規模事業者持続化補助金
個人事業主や小規模な法人のオフィスや店舗をリフォームするなら、小規模事業者持続化補助金を要チェック。リフォームに限らず、売上拡大のための経費を補助する制度です。和式トイレを洋式トイレにリフォームすることで幅広い世代の方が利用しやすくなり、滞在時間やリピート率アップから売上拡大につながることが考えられます。
小規模事業者持続化補助金 |
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条件 ・従業員数20名以下(商業・サービス業は5名以下) ・直近過去3年分の課税所得が年平均15億円以下 など |
対象となるリフォーム オフィスや店舗の改装、バリアフリー化工事など |
補助金額 通常枠50万円、特別枠200万円 ※最大50万円の引き上げあり |
申請のポイント ・経営計画書や補助事業計画書を作成し、売上拡大につながる計画をわかりやすく伝える ・商工会議所による審査を通過しなければならない |
2-4.災害・急病等危機管理対応事業
※同事業は所定の予算額に達したため、受付を終了しました。
訪日観光客が安心して旅行できる環境を整えるために実施されているのが、観光庁の災害・休業等危機管理対応事業。外国人観光客は和式トイレになじみがないため、観光案内所や観光地の店舗などを洋式トイレにリフォームすると、必要経費のうち1/2が交付されます。
災害・急病等危機管理対応事業 |
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条件 ・観光案内所や観光施設の設置や管理をしている方、観光地の店舗や事業所を運営している方など ・毎年一定数の訪日外国人旅行者が訪れること |
対象となるリフォーム 和式トイレの洋式化、非常用電源装置の設置、多言語案内機能の整備など |
補助金額 最大500万円 |
申請のポイント ・地方運輸局に事業計画書などを提出する |
参考/災害・急病等危機管理対応事業 | 訪日外国人旅行者の受入環境整備
3.トイレを和式から洋式にリフォームする費用相場&事例
和式から洋式へのトイレリフォームの費用相場は、30〜50万円程度です。シンプルな組み合わせトイレを選べば安く抑えられることもありますし、タンクレストイレなどグレードの高いトイレを選べばもっと高くなることもあるでしょう。


では実際にトイレを和式から洋式に変更したリフォーム事例と、その費用をご紹介していきます。
3-1.和式トイレを拡張し介護しやすくしたリフォーム事例
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出典:http://www.8044.co.jp/gallery/823
こちらは和式トイレを洋式トイレにリフォームするとともに、トイレを拡張し便器と洗面台を併設した事例です。玄関や居室の車椅子対応など幅広いリフォームを実施した結果、全体で316万円の費用がかかりました。そのうちトイレ交換と洗面台の取付工事の費用が32万円です。
補助金について
例えばこの事例で介護保険を利用する場合、工事費のうち20万円までが補助対象となります。1割負担の場合は、18万円が給付される計算です。トイレ交換と洗面台取付工事だけだった場合、自己負担は14万円です。
3-2.段差のある和式トイレをフラットな洋式トイレにリフォームした事例
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出典:http://www.8044.co.jp/gallery/127
段差があり使いづらかった和式トイレを、フラットな洋式トイレにリフォームした事例です。リフォーム前のトイレは全体的に老朽化が進んでおり、便器やタイルの目地に入り込んだ汚れが落ちず、使いづらさに加えて清潔感も保ちにくくなっていました。
タンクレストイレに変更し、和式特有の段差も解消。フラットで使いやすく、掃除も簡単になりました。リフォームにかかった費用は52万円です。
補助金について
この事例で介護保険を利用するなら、1割負担の場合は18万円が給付される計算。自己負担は34万円に抑えることができます。
4.補助金を使ってトイレを和式から洋式にするリフォームの進め方
最後に、補助金を使って和式トイレをリフォームする場合の流れやポイントを解説します。
※細かい流れはそれぞれの事業で指定がありますので確認が必要です。
4-1.補助金を踏まえて予算設定をする
まずはどのような補助金が使えそうかリサーチをして、補助金を含めた予算設定をしましょう。
リフォームの目的やご自身の状況により、利用できる制度が異なります。
- 要支援・要介護認定を受けていれば『介護保険における住宅改修』
- 家の断熱化も考えているのであれば『子育てグリーン住宅支援事業』 など
このように利用できそうなものをピックアップします。
介護保険を使ったリフォームを考えている場合は、担当のケアマネジャーへの相談も必要です。
4-2.トイレリフォーム・補助金活用リフォームが得意な会社を探す
補助金を使ってリフォームをするときは、申請書類の準備などリフォーム会社の協力が必要不可欠です。各種手続きをスムーズに進めるためにも、トイレリフォームや補助金の申請に慣れたリフォーム会社を選びましょう。トイレリフォームの経験が豊富な会社であれば、材料の大量仕入れでコストを抑えられる可能性もあります。
しかし数あるリフォーム会社の中から、どうやってトイレリフォームに強い会社を見つけたらいいのか分からない方も多いでしょう。「プロから見たおすすめの会社を教えてほしい」「2~3社まとめて見積りが取れたらいいのに」という方は、一括見積りサービスを利用するのもおすすめです。
トイレリフォームに詳しいリフォーム会社をご紹介!
リフォームガイドは、厳しい審査基準をクリアした優良リフォーム会社のなかから、あなたにぴったりの会社を紹介するサービスです。
- 余計な費用や手間をかけずにリフォーム会社を探せます
- 専属コンシェルジュが現地調査や見積もりのスケジュールも調整します
- もし気に入ったリフォーム会社がなければキャンセルや追加紹介もOKです
4-3.現地調査と見積もりを依頼する
リフォーム会社をピックアップしたら、現地調査と見積もり依頼をします。
現地調査なしで概算の見積書だけを提出する会社もあるようですが、家によってトイレの状態は異なります。たとえ概算見積もりが安かったとしても、後々追加工事が必要だと言われて結局他社より高くなるケースも往々にしてあります。このような事態を避けるためにも、必ず現地調査をしてもらいましょう。
4-4.リフォーム会社と契約し着工
見積り内容に納得できれば、リフォーム会社と契約します。そして、ほとんどの補助金は「工事開始前の申請」が必要なので、申請手続きも忘れずに行いましょう。
補助金の支給が認定されたら、いよいよ工事スタートです。工事が終わったらリフォーム会社から工事内訳書や図面などの書類を受け取って、補助金の窓口に完了報告をしましょう。書類に不備がなければ補助金が交付されます。
5.まとめ
小さな子どもや体が不自由な方にとって、和式トイレは使いづらさを感じるもの。新しい洋式トイレへとリフォームすることで使い勝手がよくなるのはもちろん、掃除がしやすくなったり節水できたりとさまざまなメリットがあります。
リフォーム費用に不安がある方は、補助金が使えないかチェックしましょう。対象は高齢者や障害者に限った話ではなく、何かしらの補助金が使える可能性があります。「うちの場合はどんな補助金が使えるだろう?」「補助金の内容がよく分からない」とお悩みの方は、ぜひリフォーム会社に相談してみてください。