
外壁材の1つであるALCパネルに興味があるものの、正確にはどのような建材なのか分からないという方は多いかもしれません。
ALCとは、遮音性の高い特殊コンクリートのひとつです。気泡入りであることが通常のコンクリートとの大きな違いになります。1920年代にスウェーデンで開発された素材で100年以上の歴史があり、世界中で幅広く使用されています。
今回はALCパネルの特徴とサイディングなど他の外壁材との違い、メリット・デメリットを解説します。ALCパネルの費用相場や施工方法、外壁材として採用する場合の注意点なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.外壁で使うALCパネルの特徴
ALCとは「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の略で、高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリートを意味します。内部に細かい気泡が多く含まれているのが特徴で、一般的なコンクリートに比べて非常に軽く、音を伝えにくい性質と高い断熱性能を持っています。
パネルの内部に補強材を組み込むことで強度を持たせており、定期的に適切なメンテナンスをすることで、耐久性は60年以上といわれています。
ALCの主原料は珪石・セメント・生石灰・発泡剤のアルミ粉末で、高温高圧養生という製法でつくられています。無機質の原料から製造されているため火に強く、耐火構造の建物に多用されています。
1-1.ALCパネルには2種類の厚みがある
ALCパネルは、大きく分けると2種類に分けられます。厚形パネルともいわれる厚さが75mm以上のパネルは、鉄筋コンクリート像や鉄骨造などの耐火建築物に使用されていることが多いです。
一方で35mm以上75mm未満の薄形パネルは、主に木造や鉄骨造などに使われており、厚さが50mmのタイプは鉄骨造、35mmや37mmはおもに木造住宅などに採用されています。
メーカーによって多少ALCパネルの厚さは異なりますが、建物の構造によって使い分けられています。
一般的に住宅に使用されている外壁建材であるサイディングの厚さは14~18mmのものが多く、ALCパネルは薄形であっても35mm以上です。ALCパネルが、非常に厚い外壁材であることが分かるでしょう。
1-2.ALCとサイディングの見た目の違いや見分け方
ALCとサイディングには、厚みの違いがあることが分かりました。しかし施工してしまうと厚みが分からなくなり、判別が難しいのではないかと思う方も少なくないでしょう。
まずは、窓と外壁材の関係性をチェックしてみてください。ALCは厚みがあるため、外壁よりも窓(出窓を除く)が内側にあることが多く、外から見ると窓が少しくぼんでいるような外観になります。
出典:https://www.yutoriform.com/products/outer/outerwall/case/03
少し窓がくぼんでいるのがわかりますね。
ALCパネルもサイディングも、工場で製造された外壁材です。建築現場で施工するため外壁材と外壁材のつなぎ目に目地があり、目地には専用のシーリング材が充填されています。
サイディングは縦の長さが約3000mm、横幅は455mmのタイプがほとんどです。一方でALCパネルは長さは6000mm以下、横幅は2400mm以下とメーカーによって大きさが異なります。
また、目地を確認することでも判別できるでしょう。ALCは、サイディングボードよりパネルの幅が狭く、目地が多いことが特徴です。
一方でサイディングは、高さ3m(1階・2階の境目あたり)の位置に水平方向(まれに垂直方向の場合もある)の目地があるのが特徴になります。
ただし、最近では判別しづらいデザインも増えているため、外壁材の判別が難しいときは、業者に確認してもらいましょう。
2.外壁にALCを使うメリットとデメリット
ALCパネルを外壁材として使用するメリットがある一方で、デメリットもあります。
ここでは、代表的なメリットと、注意すべきデメリットを紹介します。ALCパネルを設置してから後悔しないためにも、よく理解しておきましょう。
メリット | デメリット |
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ALCパネルは細かい気泡があるため、重量はコンクリートの1/4程度と軽く、地震に強い点がメリットです。また、気泡部分に空気を含むため断熱性・遮音性にも優れています。さらに万が一、火災が起きた場合も原料が無機質なため有毒ガスや煙が発生せず安心です。他にも、先述したように耐用年数が60年以上と長い点もメリットといえるでしょう。
一方デメリットは、防水性の低さとコスト面があげられます。ALCはパネル状の外壁材のため、つなぎ目(目地部分)があり、この隙間を埋めるためにゴム状の素材「シーリング(コーキング)」の充填をします。しかしこのシーリングは劣化しやすいため、放置してしまうと雨漏りの原因になりやすいです。シーリング(コーキング)が劣化すると「打ち替え」や「増し打ち」と呼ばれる補修が必要になるため、メンテナンス頻度が高い=コストがかかる点もデメリットでしょう。
さらにALCは窯業系などセメントの外壁材と比べて性能が高い分、ALCそのものが高い=建築コストも多少高くなりがちです。ただし建築コストに関しては、どの外壁材と比べるかによっても高い・安いは変わってきます。
このあと、他の外壁材と比較して紹介するので合わせて参考にしてください。
3.ALCを他の外壁材と比較して確認
ここでは、ALCパネル以外に主な外壁材としてあげられる(1)サイディング、(2)モルタル、(3)タイルの3つと比較しながらALCの特徴を見ていきましょう。
3-1.サイディング外壁と比較した場合
サイディングとは、窯業系や金属系、木質系、樹脂系など使われている素材には幅があり、板状に成形された外壁材です。なかでも多く使われているのは窯業系で、国内の住宅用外壁材の80%を占めているといわれています。
耐用年数を比較すると、サイディングの耐用年数は20〜30年ですので、ALCパネルに軍配が上がるでしょう。
次に費用を比較してみます。サイディングは1平方メートルあたり3,000〜5,000円であるのに対し、ALCパネルは7,000〜15,000円と2〜3倍の価格です。なるべく建築コストを抑えて建てたい方には、サイディングが向いています。
また、ALCパネルと比べて、サイディングの方がデザインは豊富です。さまざまな種類の中から選びたい場合はサイディングにしましょう。
3-2.モルタル外壁と比較した場合
モルタルとは、セメントと砂を混ぜ合わせた外壁材です。
モルタルは材料の内部にセメントや砂が詰まっているため住宅全体が重くなり、耐震性が低下します。そのため、軽さや耐震性で考えるとALCパネルに軍配が上がるでしょう。また、モルタル塗り壁で左官仕上げの場合などは、職人が仕上げるのに時間がかかるため、ALCパネルの方が工期が短くなります。
しかし雨漏りのリスクはALCパネルの方が高いです。先述したようにALCパネルは防水性が低いですが、モルタルは職人が仕上げる塗り壁のため、つなぎ目が一切なく、ひび割れをしていなければ雨漏りの心配はありません。
3-3.タイル外壁と比較した場合
タイルとは、粘土を1,000℃以上の高温で焼いた板状の外壁材です。
まず、ALCパネルはタイル外壁と比べると費用が安いです。ALCパネルの価格は先述したように1平方メートルあたり7,000円〜が相場です。一方で、タイルはそのグレードによって異なりますが、10,000〜40,000円が相場といえます。工事の際の単価は1.5倍以上の差があるでしょう。
外観に関しては、タイル外壁はタイルならではの素材感が美しい点が魅力です。一方でALCパネルは凹凸が少なく、意匠性の面でいえば個性がある仕上がりにはなりにくいでしょう。
▼こちらも参考にしてください。


4.ALC外壁にする場合の費用相場
ALCの外壁に張り替えする場合の費用相場は、30坪程度の住宅で150〜250万円です。
ALCパネルに張り替える場合は、家を囲むように足場を設置して既存の外壁を撤去し、新しくALCパネルを設置することになります。
建物の高さや形状によっては、足場代が高くなることがあります。また工事現場から工事用トラックまで距離があり、搬出入に時間がかかる場合は工事期間が延び、その分人件費が高くなる可能性があるでしょう。既存の外壁材の撤去が難しく、作業に時間がかかる場合も同様です。
加えてALCパネルの性能やデザイン、外壁の張り替え面積の広さによっても費用は高くなるため、実際にかかる費用については、見積書を参考にするようにしてください。
このほかに、10年に1度程度は塗装メンテナンスが必要です。塗装メンテナンスにかかる費用も頭に入れておいてください。30坪程度の住宅で、70〜100万円を想定しておきましょう。
5.ALC外壁に張り替えする工期
ALCの外壁に張り替えする工事の期間は、1〜2週間が目安となります。
- 足場の設置:1〜2日
- 撤去・張り替え作業:5〜11日
- 足場の解体作業:1日
上記の日数で工事が可能です。ただし、強風や大雨の際は工事が難しくなり工期が延びやすくなります。工事をする季節やタイミングにも注意しましょう。
6.後悔しない!ALC外壁に張り替えする際の注意点
ALC外壁に張り替えする場合には、以下の通り3つの注意点があります。
- 防水性が高い塗料を塗る
- 定期的な補修が必須
- ALCの施工実績が豊富な業者を選ぶ
ALCは耐久性が比較的高い外壁材ですが、間違ったメンテナンスや施工をしてしまうと、そのメリットを損なってしまうおそれがあります。
ALCへの張り替えを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
6-1.防水性が高い塗料を塗る
ALCパネルは気泡が水分を含みやすく防水性が低いため、パネルの表面を塗装して塗膜をつくり、水の侵入を防ぐようにしましょう。
防水性が高い塗料としては、シリコン塗料やフッ素塗料があります。
なかでもフッ素塗料は耐用年数が15〜20年といわれています。予算に余裕があれば、フッ素塗料を検討してみましょう。


6-2.定期的な補修が必須
ALCは交換まで60年程度の寿命がありますが、10年に1度程度は塗装メンテナンスをする必要があります。
塗装メンテナンスをせずに放置すると、雨漏りを引き起こしかねません。
塗料により耐用年数が異なるため、塗装が必要な時期は、前回塗った塗料によって変わります。シリコン塗料を使った場合は10〜15年後、フッ素塗料なら15〜20年後を目安に塗り替えをおこなってください。
6-3.ALCの施工実績が豊富な業者を相見積もりで選ぶ
ALCの外壁にする際に最も重要なのが「施工実績が豊富な業者を選ぶこと」です。
実績が多いかどうかは、業者のホームページを見たり、見積もり時にALC外壁の施工実績を確認するとよいでしょう。
施工実績が少ない業者は技術が不足していることがあり、雨漏りとまではいかなくても、十分な施工が期待できないことがあります。
業者を選ぶ際には以下の2つに注意してください。
- 相見積もりをする
- 訪問営業をしている業者は避ける
複数の業者に工事の見積もりを出してもらう「相見積もり」をしましょう。相見積もりで金額が高すぎたり、逆に安すぎる業者は避けるようにしましょう。
自宅に突然訪問し営業する業者には慎重になりましょう。言葉たくみに誘導して契約を結ばせる業者も多々あり、工事後に連絡が取れなくなるというケースもあります。訪問営業をしている会社は避けるようにしましょう。


7.ALC外壁補修の施工方法とは
ALCの補修方法としては以下があります。
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つなぎ目のコーキングを補修する
つなぎ目のコーキング材にひび割れや破断が見られる場合、外壁部分よりも雨水が浸透しやすくなっています。建物の内部に水が浸入することを防ぐためにも、コーキング(シーリング)材を打ち替えて補修しましょう。打ち替えの費用は1平方メートルあたり700〜1,200円程度です。 -
塗装の塗り替えをする
見た目だけでなく防水性を持たせるためにも、定期的に塗装によるメンテナンスを検討しましょう。費用は塗料のグレードによっても異なりますが、1平方メートルあたり2,300〜7,500円程度です。 -
新しい外壁材を重ねて張る
既存の外壁材を撤去せず、新しい外壁材を重ねて張る「カバー工法」があります。古い外壁材を撤去や処分する費用がかからないのがメリットでしょう。費用は使用する外壁材によっても異なりますが8,200〜24,000円程度です。 -
新しいALCパネルに貼り替える
ALCパネルに張り替えることで、外観は新築のようにきれいになり、建物の性能も向上します。先述していますが、ALCパネルは1平方メートルあたり7,000〜15,000円程度です。
8.ALC外壁を補修・塗装する工期
ALC外壁のメンテナンスでは塗装や補修作業をおこないます。全面的な塗装にかかる工期は12〜15日です。
- 足場の設置:1〜2日
- 高圧洗浄・下地補修:1日
- 塗装:9〜11日
- 足場の解体作業:1日
上記が目安となります。
9.まとめ
ALCを外壁に使うメリットとデメリットは以下となります。
メリット | デメリット |
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メリットとデメリットを検討してALCを使うかどうかを検討してください。
また、ALCは10年に1度は塗装メンテナンスが必要です。外壁の塗装に関してはこちらの記事をチェックしてみてください。