
築20年以上の家にお住まいの人は、外壁のひび割れや劣化が気になっているのではないでしょうか。
特に近年、豪雨の被害にあっている地域を取り上げるニュースも多く、「我が家の外壁は大丈夫だろうか」と心配になっている人もいると思います。
しかし、耐久性や防水性が高い外壁材はどれなのか、価格はどのくらいなのか、わからないことも多いでしょう。
この記事では、7種類の外壁材の特徴や価格、メンテナンス方法を解説します。窯業系サイディングや金属系サイディング、モルタルなど、それぞれの長所短所を比較し、最適な外壁材を見つけましょう。
1.外壁材の種類と特徴・価格を徹底解説
外壁材は主に7種類があります。
それぞれの特徴や費用相場、耐用年数などを解説していきます。
1-1.窯業系サイディング
窯業系サイディングの窯業とは陶磁器を指します。窯によって高温で熱した板状の外壁材で、日本の家屋では人気の種類です。
出典:https://www.8044.co.jp/gallery/142
窯業系サイディングのメリットと費用、代表的な商品
メリットは価格の安さと、デザインが豊富な点です。
窯業系サイディングの単価相場は1平方メートルあたり4,000〜6,000円で、30坪程度の住宅だと150〜300万円が費用の目安となります。他の素材と比べると1平方メートルあたり1,000〜10,000円程度安いです。
デザインは、木目調や石目帳のほか、レンガ風などもありラインナップが豊富な点もメリットと言えるでしょう。
窯業系サイディングの耐用年数は20〜30年程度が多いです。
代表的な商品としてはニチハ株式会社の「モエンエクセラード」があります。窯業系サイディングは、安い材料を使いたい人に適しています。
窯業系サイディングの劣化・メンテナンスについて
窯業系サイディングの主な劣化症状は、表面のひび割れや塗装の剥がれ、チョーキング現象が起こる(表面が粉状になる)などです。
一般的に7~15年程度で塗り替えが必要となります。窯業系サイディングに限らず、全ての外壁材メンテナンスに共通することですが、塗り替え費用は1平方メートルあたり1,500〜5,500円程度、使用する塗料によって異なります。
セルフメンテナンスとしては定期的な洗浄・掃除、目視点検が大切です。
1-2.金属系サイディング
金属系サイディングは断熱材の表面に金属メッキを施したサイディング材です。外壁で使う材料としては最も軽い点が特徴です。
出典:https://www.yutoriform.com/products/outer/outerwall/case/07
金属系サイディングのメリットと費用、代表的な商品
メリットは価格が安く、重量が軽くて耐震性が高い点です。価格は他の外壁材に比べて500〜12,000円程度安いです。耐用年数は20年〜40年と比較的長めですが、サビに弱いというデメリットもあります。
金属系サイディングの単価相場は1平方メートルあたり3,500〜7,000円で、30坪程度の住宅だと150〜230万円が費用の目安となります。
代表的な商品としてはアイジー工業株式会社の「アイジーサイディング」があります。金属系サイディングは、耐震性が高い軽量な素材を使いたい人に適しています。
金属系サイディングの素材の一種であるガルバリウム銅板を使った外壁リフォームについては、「外壁をガルバリウム鋼板に変えるデメリットや費用をチェック」で詳しく解説していますので、あわせてチェックしてください。
金属系サイディングの劣化・メンテナンスについて
金属系サイディングの主な劣化は、表面塗装の劣化や腐食、変形などです。
一般的に10年〜15年程度で塗り替えのメンテナンスが必要ですが、環境によっては早まる場合もあります。特に、海岸部では塩害対策としてフッ素系塗料を使用すると良いでしょう。
1-3.木質系サイディング
木質系サイディングは木材を使用した板状の素材です。ぬくもりを感じる独特のデザインが特徴です。
出典:https://www.daiken-rs.jp/case_reform/slug-83885a22379aa5b0758267d5eb62299b
木質系サイディングのメリットと費用、代表的な商品
メリットはデザイン性が高い点です。温かみのある自然の木材の色調は木質系サイディングでなければ表現できません。
デメリットは、価格が比較的高いこと、頻繁なメンテナンスが必要なことと、耐用年数が短い点です。 耐用年数は15〜30年です。
木質系サイディングの単価相場は1平方メートルあたり6,000〜9,000円で、30坪程度の住宅だと170〜240万円程度が費用の目安となります。
代表的な商品としてはプレイリーホームズ株式会社の「あづみのカラ松」があります。木質系サイディングは木材のぬくもりがある外壁にしたい人に適しています。
木質系サイディングの劣化・メンテナンスについて
木質系サイディングは、主に日光や雨による劣化、虫害、腐朽などが問題となります。一般的に3~10年程度で塗り替えのメンテナンスが必要です。
特に雨がかかりやすい部分や日当たりの良い箇所は劣化が早いため、注意が必要です。大きな損傷がある場合は、雨漏り防止のためにも部分的な張り替えや全面的なリフォームも検討しましょう。
1-4.樹脂系サイディング
樹脂系サイディングは樹脂素材を利用した板状の素材です。日本ではほとんど利用されていないものの、メンテナンスの手間が少ない外壁材として知られています。
樹脂系サイディングのメリットと費用
先述したように日本ではほとんど利用されておらず、家庭の外壁に使われることもほとんどありません。ただし、メンテナンス頻度が少ないためランニングコストを抑えることが可能というメリットがあります。
デメリットは施工できる業者が少なく、依頼先を探すのが面倒な点です。また、耐用年数はタイルやモルタルに比べると5年以上は短い傾向にあります。
樹脂系サイディングの単価相場は1平方メートルあたり7,000〜10,000円で、30坪程度の住宅だと150〜300万円程度が費用の目安となります。耐用年数は20〜30年です。
種類が少なく、施工業者によって使う製品が異なるため代表的な商品はありません。樹脂系サイディングはメンテナンスが面倒な人に適しています。
樹脂系サイディングの劣化・メンテナンスについて
樹脂系サイディングの主な劣化は、紫外線による変色や硬化、表面のキズなどです。一般的に10〜20年程度で塗り替えによるメンテナンスが必要となります。


1-5.モルタル(塗り壁)
モルタルとは、セメントと砂、水によって作る外壁材です。表面が平坦なため「塗り壁」という左官業者の手作業によって模様付けができます。
出典:https://www.8044.co.jp/gallery/381
モルタルのメリットと費用、代表的な商品
※モルタル外壁は新築時にしか設置できません。ただし、左官職人による「塗り壁」は、下地処理さえ行えば、元の外壁の種類を問わず施せます。
塗り壁のメリットは世界にひとつだけの模様が作れることです。左官業者による手作業で模様付けをするため他の家と違うデザインが作れます。
デメリットはひび割れしやすい点です。ひび割れを放置すると雨漏りが起こりやすくなります。
新築時のモルタル外壁の設置費用は、住宅を建てる際の費用に含まれるため細かい相場はありませんが、最低でも200万円は必要です。
メンテナンスやリフォームで塗り壁をする場合は単価相場が1平方メートルあたり1,500〜5,000円が必要で、30坪程度の住宅に塗り壁をする場合は、60〜120万円程度が目安となります。
耐用年数はモルタル自体が30年以上、塗り壁は10〜20年です。左官業者の技術力によって耐用年数が変化します。
代表的な商品としてはアイカ工業株式会社の「ジョリパット」があります。塗り壁は、他の家と違うデザインにしたい人に適しています。
モルタルの劣化・メンテナンスについて
モルタル外壁・モルタルの塗り壁の主な劣化症状は、ひび割れや剥離、白華(エフロレッセンス)などです。新築の場合は一般的に5〜10年程度、モルタル塗り壁は10〜20年で点検や補修が必要となります。
※白華(エフロレッセンス)とは、表面に斑点や白い粉が現れる現象のことです。
日々の清掃や定期的な塗装メンテナンスを行うことで、モルタル外壁の寿命を延ばすことができます。
モルタル壁の仕上げ方4種類
モルタル壁の仕上げ方には主に4種類あります。
リシン仕上げ:モルタル外壁用の安価な表面仕上げ材です。ザラザラした質感が特徴で、1960年代から80年代に普及し、新築住宅でよく使用されています。日本で最も一般的なモルタル下地仕上げ材です。
スタッコ仕上げ:セメントモルタルを塗り付けて凹凸のある表面を作る方法で、重厚で高級感のある外観を演出できます。耐久性に優れていますが、凹凸に汚れが溜まりやすい点には注意が必要です。
吹き付けタイル:複層仕上げ塗材を3回吹き付けるモルタル外壁の仕上げ法です。凸凹した見た目ながら滑らかな触感が特徴です。
左官仕上げ:職人がコテを用いて塗る伝統的な仕上げ法です。表面にコテの模様が残るため、個性あふれるさまざまなデザインを作れます。
それぞれの特性を活かして、建物の外観や用途に合わせて選択しましょう。
1-6.タイル
薄い陶器製のタイルを外壁に貼り付ける工法です。ガラスのように光沢がある外壁になる点が特徴です。
出典:https://freshhouse.co.jp/case/8584/
タイルのメリットと費用
メリットは耐用年数の長さと、デザイン性の高さです。耐用年数は30〜50年と、モルタルやサイディングに比べて長い傾向にあります。また、目地とタイル材によって作られる高級感は、他の素材では表現が難しいでしょう。
デメリットは工事の初期費用が高額な点です。タイルの単価相場は1平方メートルあたり10,000〜50,000円で、作業費用も高額になるタイル外壁は、30坪程度の住宅で150〜500万円程度が費用の目安となります。
種類が豊富で用途によって異なるため代表的な商品はありません。タイルは、耐用年数が長くて美しい外壁材にしたい人に適しています。
タイルの劣化・メンテナンスについて
タイル外壁の主な劣化症状は、タイルの剥離やひび割れ、目地の劣化などです。一般的に10〜15年程度で劣化しているタイルの張り替えや補修が必要となります。定期的な清掃と点検が重要で、特に目地の状態チェックが欠かせません。
目地部分の小さな剥離やひび割れは、専用の補修材で対処可能ですが、広範囲に及ぶ損傷の場合は、部分的な張り替えや全面的なリフォームを検討する必要があります。
タイルの工法2種類
タイル外壁の施工方法には、主に乾式工法と湿式工法の2種類があります。
乾式工法は、水を使わず建築物を施工する方法です。コンクリートなどの湿った材料を使用せず、養生期間が不要です。気候の影響を受けにくく、工期短縮が可能なのがメリットで、仕上げ材や下地材も水を使わずに施工できます。
湿式工法は、建設現場で水を使用する施工方法です。水を使用するため、天候の影響を受けやすく、施工後に乾燥期間が必要となります。これが工期に影響を与える特徴的な点です。
1-7.ALC
ALCとは気泡を内部に入れた軽量のコンクリートです。外壁のみならず屋根や床などでも利用します。
出典:https://www.yutoriform.com/products/outer/outerwall/case/01
ALCのメリットと費用、代表的な商品
メリットは耐用年数の長さと断熱性の高さです。耐用年数60年以上という、外壁に使う材料としては特に耐久性が高い特徴があります。
デメリットは防水性が低いことです。内部に気泡があるため水が浸透しやすくなっており、充分な塗装をしなければ水害に弱い傾向にあります。
ALCの単価相場は1平方メートルあたり7,000〜15,000円程度で、30坪程度の住宅だと150〜270万円程度が費用の目安となります。
代表的な商品としては旭化成建材株式会社の「ヘーベル」があります。ALCは耐久性を重視する人に適しています。
ALCの劣化・メンテナンスについて
ALCの主な劣化症状は、ひび割れや表面の劣化、目地部分の劣化などです。ALCは吸水性が高いため、定期的な撥水処理を行うことで耐久性を高めることができます。一般的に10年程度で塗り替えメンテナンスが必要です。また、コーキングが劣化している場合は、塗り替え費用とは別に補修費用25万円〜40万円程度かかります。


【比較表】外壁材の価格・耐用年数まとめ|安いのは窯業系サイディング
改めて外壁材の特徴を以下にまとめましたので参考にしてください。
種類 | 特徴 | 1㎡単価 | 工事費用 (30坪) |
耐用年数 |
---|---|---|---|---|
窯業系サイディング | 初期費用が比較的抑えられる | 4,000〜6,000円 | 150〜300万円 | 20~30年 |
金属系サイディング | 軽量で耐久性が高く、 初期費用も比較的低い |
3,500〜7,000円 | 150〜230万円 | 20〜40年 |
木質系サイディング | ぬくもりがあり断熱性に優れている | 6,000〜9,000円 | 170〜240万円 | 15〜30年 |
樹脂系サイディング | メンテナンスの必要がほとんどない | 7,000〜10,000円 | 150〜300万円 | 20~30年 |
モルタル(塗り壁) | セメントに砂を混ぜたもので 意匠性に優れている |
1,500〜5,000円 | 200万円~ (塗り壁は60〜120万円) |
約30年程度 (塗り壁は10〜20年程度) |
タイル | 生地によって特徴も変わる | 10,000円〜50,000円 | 150〜500万円 | 30~50年 |
ALC | 軽量で遮音性・耐久性が高い | 7,000〜15,000円 | 150〜270万円 | 60年~ |
2.目的別におすすめの外壁材をご紹介!
上述したように、外壁材にはさまざまな種類があるため、どの外壁材が自宅に適しているか判断に迷う人もいるでしょう。以下では、目的別に適した外壁材を紹介しますので、選ぶ際に参考にしてください。
2-1.コストパフォーマンス重視なら「窯業系サイディング」「金属系サイディング」
「窯業系サイディング」と「金属系サイディング」は、安価なだけでなく耐用年数も兼ね備えており、コストパフォーマンスのよい外壁材といえます。
2-2.デザイン性重視なら「木質系サイディング」「モルタル(塗り壁)」「タイル」
デザイン性の高さを重視するのなら「木質系サイディング」や「モルタル(塗り壁)」、「タイル」がおすすめです。
「窯業系サイディング」や「金属系サイディング」と比べると高級感があり、目を引く外観になります。
2-3.住宅の耐震性重視なら「金属系サイディング」
耐震性の高さを重視するなら「金属系サイディング」が最適です。外壁材のなかで最も軽量なため地震が発生しても外壁が崩れにくいでしょう。
【比較表】目的別おすすめ外壁材まとめ
以下に、目的別のおすすめ外壁材をまとめました。参考にしてみてください。
目的 | 適した外壁材 |
---|---|
工事費用を抑えたい | ・窯業系サイディング ・金属系サイディング |
耐久性を重視する | ・ALC ・タイル |
デザイン性を重視する | ・木質系サイディング ・モルタル(塗り壁) |
耐震性を重視する | ・金属系サイディング |
3.外壁材を選ぶ際の注意点
外壁材を選ぶ際には3つの注意点があります。
- 外壁材を選ぶ目的を明確にする
- 初期費用だけではなくメンテナンスも考慮する
- 相見積もりをして悪徳業者を回避する
「こんなはずではなかった」と、工事後に後悔しないためにも、依頼前にしっかり確認しておきましょう。
3-1.外壁材を選ぶ目的を明確にする
外壁材を選ぶ前に、何を重視するかを考えましょう。価格を重視するのか、デザインが一番大事なのかなど、目的によって使う外壁材は変わります。
外壁材は一度設置してしまうと簡単には交換できません。目的を明確にしなければ工事をしたあとに、後悔してしまう可能性があります。
3-2.初期費用だけではなくメンテナンスも考慮する
外壁の工事をする際は初期の工事費用にばかり注目してしまいがちです。しかし、10年や20年後のメンテナンスにも費用がかかります。
タイル外壁のように、初期費用が高額な代わりにメンテナンスはほとんどお金がかからない外壁材があります。
初期費用にばかり注目するのではなく、20年や30年後を見据えた長期的な視点で外壁材を選ぶようにしましょう。
3-3.相見積もりをして悪徳業者を回避する
工事業者を選ぶ際は「相見積もり」をしましょう。相見積もりとは複数の業者に同じ工事条件で見積もりを依頼する手法です。
相見積もりでは「価格が高すぎないか」、「工事内容が曖昧ではないか」の2つに注目しましょう。上記のどちらかが怪しいと感じたら依頼しないほうがよいでしょう。
4.外壁材を長持ちさせる方法
外壁材を長持ちさせるには、定期的な点検とメンテナンスが不可欠です。早期発見・早期対応が外壁の寿命を延ばし、大規模な修繕を防ぐ鍵となります。以下で具体的な方法を紹介します。
4-1.定期的に点検を行う
外壁材の長寿命化には、定期的な点検が欠かせません。日々の気候変動や自然の力にさらされる外壁は、経年劣化が避けられないためです。
具体的には、白カビやコーキングの劣化、チョーキング現象(表面が白く粉っぽくなる)、表面の傷やサビなどをチェックします。一般的な点検の目安は10〜15年ごとですが、使用している外壁材によって頻度が異なる場合もあります。
日常的にも外壁の状態に注意を払い、気になる点があれば早めに専門家に相談しましょう。
4-2.塗り替えや補修を適宜行う
点検で問題が見つかった場合、適切な補修や塗り替えが必要です。部分的な塗装や張り替え、カバー工法(重ね張り)、シーリングの打ち替えなど、外壁材の種類や状態に応じて方法を選択しましょう。大規模な補修や不安がある場合は、専門業者に依頼することをおすすめします。


4.まとめ
本記事では7種類の主要な外壁材(窯業系サイディング、金属系サイディング、木質系サイディング、樹脂系サイディング、モルタル、タイル、ALC)の特徴や価格、耐用年数を詳しく解説しました。
「窯業系サイディング」と「金属系サイディング」は、価格や耐久性のバランスが取れており、コストパフォーマンスのよい外壁材といえます。デザイン性の高さを重視するのなら「木質系サイディング」や「モルタル(塗り壁)」、「タイル」がおすすめです。耐震性の高さを重視するなら「金属系サイディング」が最適です。
また、外壁材を長持ちさせるためには、定期的な点検とメンテナンスが不可欠です。早期発見・早期対応が外壁の寿命を延ばし、大規模な修繕を防ぐことができます。