家族のライフスタイルが異なると、入浴時間もそれぞれ異なります。追い焚き機能が付いていないお風呂では、最後の人が入る頃にはお湯が冷めて不便な思いをするかもしれません。
そんなときに検討したいのが、お風呂の追い焚き機能を後付けするリフォームです。
この記事では、お風呂の追い焚き機能を後付けするリフォーム方法や、後付け工事にかかる費用、注意点を紹介します。あわせてどれくらい光熱費が削減できるかもシミュレーションしていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.お風呂に追い焚き機能の後付けは可能
結論から述べると、お風呂に追い焚き機能の後付けは可能です。ただし「追い焚き対応の給湯器に交換」+「配管工事」の2つが必須となります。
現在使用している給湯器がいくら新しくても、追い焚き機能に対応していなければ交換が必要です。
さらに、追い焚きをするためには、お湯を循環させる配管を浴槽から給湯器まで通す配管工事が必要になります。使用中の浴槽に追い焚きのアダプターを設置するための工事も必須です。
一口に追い焚き機能といっても、給湯器の種類やタイプによってリフォームできる範囲が異なりますので、ひとつずつ解説します。
自然循環方式
自然循環方式とは、水流の力でお湯を循環させる方法です。
浴槽にお湯を循環させる穴が2つ付いており、下の穴から冷めたお湯を吸い取り、上の穴から温めたお湯を吐き出します。
水流の力を頼りにしているため、浴槽内のお湯の温度にムラが生じやすくなるのが特徴で、上が熱く下がぬるくなるため、浴槽内のお湯をかき混ぜる必要があるでしょう。
強制循環方式
強制循環方式とは、ポンプの力で水を吸い込んだり吐き出したりして浴槽内の温度を上げる方法です。
特徴としては、浴槽の穴がひとつであること。強制的に対流を起こすため、浴槽内のお湯に温度差が生じにくくなります。
また強制循環方式は「オートタイプ」「フルオートタイプ」の2種類に分けられるため、それぞれの特徴を解説します。
オートタイプ
まずオートタイプはボタンひとつでお湯張り、保温、追い焚き、足し湯ができるタイプです。
保温設定時間の間は、お湯の温度が下がると自動的に設定温度まで追い焚きをしてくれます。保温設定時間が切れた、もしくはスイッチを切ったあとでも、ボタンを押せば追い焚きや足し湯が可能です。
フルオートタイプ
一方フルオートタイプは、オートタイプの機能に加え、水位が下がると自動で足し湯をしたり、配管を自動洗浄するなど機能が充実しているのが特徴です。
その分価格も上がるため、予算やライフスタイルに合わせてタイプを選ぶとよいでしょう。
2.お風呂に追い焚き機能を付けるリフォーム費用
先ほども触れましたが、追い焚き機能を後付けするには「給湯器の交換」「配管工事」が必須です。この2つに加えて、お湯を循環させるアダプターを設置するために浴槽に穴を開ける必要があります。
必要な工事 |
費用の目安 |
---|---|
約30〜60万円 |
|
+約10〜50万円 |
|
+約60〜150万円 |
ただし、すべての浴槽に穴を開けられるとは限りません。
ユニットバスの場合、エプロンがなく壁と一体化しているタイプは、そもそも追い焚き機能の後付けが難しくなります。在来工法の場合、ホーローや木、石などFRP(ガラス繊維強化プラスチック)素材以外の浴槽は対応が困難です。
上記のように穴を開けられない、または穴を開けると浴槽が破損する可能性がある場合は、浴槽を交換しなければならないケースも。またユニットバスの場合、穴を開けられなければユニットバスごと交換する必要があるなど、お風呂の状態によって工事にかかる費用が異なります。
ここでは、それぞれどの程度の費用が必要なのか見ていきましょう。
給湯器の交換+配管工事
浴槽に問題なく穴を開けられ、給湯器の交換と配管工事のみで済む場合、およそ30~60万円が必要です。
構造的に配管工事がスムーズにできない場合には、別途部材が必要となり、追加で費用が必要となるケースがあります。
浴槽交換も必要な場合
浴槽が古かったり特殊だったりするケースだと穴が開けられず、浴槽の交換が必要になる可能性があります。
その場合は上記の給湯器交換+配管工事の費用に加えて、浴槽本体の費用と工事費用がかかります。
さらに在来工法の浴室(昔ながらのタイル貼りの浴室)の場合、タイルに浴槽が埋め込まれているタイプか、タイルの上に浴槽が据え置きされているタイプかによって費用が異なりますが、プラスで10~50万円程度の追加費用を見ておくとよいでしょう。
浴槽の交換費用について、もっと知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
ユニットバスごと交換が必要な場合
ユニットバスで浴槽に穴が開けられない場合は、浴槽のみの交換は構造的に不可能です。
そのためユニットバスごと交換することになりますが、その場合、給湯器交換+配管工事に60~130万円程度の追加費用が必要になります。
ユニットバス交換の詳しい情報を知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。
3.お風呂に追い焚き機能を付けるリフォームの期間
お風呂に追い焚き機能を後付けするリフォームの工事期間は、戸建てかマンション等の集合住宅かによって異なります。
工事中は自宅のお風呂が使えないため、どの程度の期間を見込んでおくべきか、確認しておきましょう。
戸建ての場合【2~4日】
戸建ては工期が2~4日と、短期間で済むケースが多いようです。
浴室付近の外壁や基礎部分にコア抜き工事(穴を開ける工事)をし、給湯器から浴槽まで配管を通します。
給湯器と浴室の距離が近い場合は短期間で施工できるケースが多いのですが、構造的に難しい、あるいは浴槽やユニットバスの交換が必要な場合は、上記の工期よりも長くなります。
マンション等集合住宅の場合【5~7日】
マンション等の集合住宅のお風呂に追い焚き機能を後付けする場合、間取りにより工期が異なりますが、5~7日程度は見ておくべきでしょう。
なぜ戸建てよりも工期が長くなりやすいのか、例を提示して説明します。
例えば下記図面のように部屋の中央付近に浴室があると、玄関先のメーターボックス(MB)付近にある給湯器との距離が遠く、配管を通すのに時間が必要です。
また浴室と給湯器との間に洋室を挟む間取りの場合は配管を床下、あるいは天井裏から通すかのどちらかの方法を検討します。
床下から通すとフローリングの張り替えを、天井裏からは天井クロスの張り替えが必要になるのですが、後者の方が短い期間で済むため、今回の説明は天井裏からの方法とします。
壁と天井に数箇所穴を開け、給湯器から配管を引っ張り、浴室に追い焚き管を接続し、天井クロスの張り替えという一連の流れだと5~6日で仕上がるでしょう。
さらにユニットバスを交換するケースでは1日程度工期が延びるため、7日は必要です。床下から通す場合や、条件が悪く配管工事が難航する場合はさらに工期延長が考えられます。
「もっと短く追い焚きリフォームを終わらせてほしい」などの希望がある場合は、配管を床下や天井裏に隠さない、露出配管であれば4日程度で終わらせられることもあるようです。
業者によって方法が異なるため、実際にどのくらいの期間で終わらせられるかは見積もりとあわせて確認するのが良いでしょう。
4.お風呂の追い焚きリフォームでどれくらい節約できる?
ここからはお風呂の追い焚きリフォームをした場合、お湯の張り替えを行う場合と比べ、ガス代や水道代がどれだけ節約できるのか、下記条件をもとに計算してみました。
結果として、追い焚きした方がプロパンガスは約68円/回、都市ガスは約60円/回節約できる計算になります。
これまでお湯が冷める度に張り替えていたのであれば、追い焚きリフォームをすることでガス代と水道代が節約できるでしょう。
|
プロパンガス |
都市ガス |
---|---|---|
追い焚き |
約135円/回 |
約76円/回 |
張り替え |
約203円/回 |
約136円/回 |
差額 |
約68円/回 |
約60円/回 |
【比較条件】
- 追い焚きで20℃のお湯を40℃まで上昇
- お湯を張り替える
※両者とも湯量は200Lと仮定
※張り替え時の水道温度は17℃と仮定
※熱効率は一般的なガス給湯器と仮定し、熱効率を約80%とする
〇プロパンガス
ガス代:648円/㎥ ※1
熱量:24,000kcal/㎥ ※2
水道代:1Lあたり0.24円 ※3
〇都市ガス
ガス代:164.05円/㎥ ※4
熱量:10,750kcal/㎥ ※5
水道代:1Lあたり0.24円 ※3
都市ガスの正確な燃焼量はお住まいの地域によって異なりますので、各都市ガス会社にお問い合わせください。
※1 一般財団法人日本エネルギー経済研究所石油情報センター
※2 東京ガス|都市ガスについて
※3 東京都水道局
※4 東京ガス|ガス料金表
※5 公益社団法人神奈川県LPガス協会
【追い焚きで20℃のお湯を40℃まで上昇】
〇プロパンガス
200L×(40℃-20℃)÷(24,000kcal×80%)×648円=約135円
〇都市ガス
200L×(40℃-20℃)÷(10,750kcal×80%)×164.05円=約76円
【お湯を張り替える】
〇プロパンガス
湯沸かし料金:200L×(40℃-17℃)÷(24,000kcal×80%)×648円=約155円
水道代:0.24円×200L=約48円
計:約203円
〇都市ガス
湯沸かし料金:200L×(40℃-17℃)÷(10,750kcal×80%)×164.05円=約88円
水道代:0.24円×200L=約48円
計:約136円
5.お風呂の追い焚きリフォームに関する注意点
お風呂の追い焚きリフォームをする場合、いくつか注意点があります。知っておくことで「こんなはずじゃなかった」を防げますので、ぜひ参考にしてください。
マンションや賃貸物件は追い焚きのリフォームが不可の場合も
マンション等の集合住宅は追い焚きリフォームができないこともあります。
例えば給湯器の周囲がコンクリート造りで、マンションの管理規約によりコンクリートに穴を開けられない場合は施工が不可能です。また屋内に給湯器が設置されているタイプは排気が特殊なケースがあり、追い焚き機能付きの給湯器に変更できない可能性があります。
こちらは賃貸に多いのですが、浴槽と床が一体化しておりエプロンがない場合も配管工事が難しく、設置不可と判断されることも。壁を壊せば設置できるケースもあるのですが、大家さんによって設置の可否が分かれるでしょう。
まずはマンションの管理規約や、大家さんにお風呂の追い焚きリフォームが可能かどうか確認することをおすすめします。
リフォーム不可の場合は、追い焚きができるグッズを使用する手段もあります。ホームセンターやインターネット通販で気軽に購入できるため、リフォーム不可の場合は検討してみましょう。
浴槽によっては丸ごと交換になる
浴槽の状態や種類によっては、穴開けができず浴槽ごと交換になることもあります。
通常FRP製の浴槽は穴を開けやすいのですが、経年劣化により穴開け工事の際に破損することも。ほかにも在来工法で用いられるホーロー、石、木など特殊な素材の浴槽も、対応不可と判断されることもあるようです。
現地調査をしてみないと穴を開けられるかどうか判断できないため、まずは見積もりと同時に現地調査を依頼することをおすすめします。
工事期間中のお風呂を確保する必要がある
工事期間中はお風呂の使用ができないため、別の入浴手段を考えておきましょう。
近隣の銭湯を利用、あるいは親戚・友人宅のお風呂を貸してもらうなど、前もって代替案を考えておくことで、工事中の困りごとが減らせるでしょう。
配管のメンテナンスが必要
追い焚きの配管には使用済みのお湯が行き来するため、繰り返し使用することで水垢や皮脂などの汚れが溜まりやすくなります。
雑菌が繁殖する原因にもなるため、定期的に専用の洗剤を使用し、配管内の清潔を保ちましょう。
入浴剤は使用不可の場合も
入浴剤によっては配管を傷める成分が含まれているため、使用できないケースもあります。
また給湯器の種類によっても入浴剤の使用の可否が分かれるため、導入する給湯器がどちらのタイプか、取扱説明書をよく確認しておきましょう。
6.まとめ
お風呂に追い焚き機能を後付けするには「給湯器の交換+配管工事」は必須です。
およその費用と工期を提示しましたが、建物の構造や管理規約などの条件によっては、さらに上乗せでかかる可能性があります。「実際にどれくらいの費用や工期になるのか詳しく知りたい」と思う方は、リフォーム会社に相談してみましょう。
リフォームガイドでは、独自の厳しい審査をくぐり抜けた優良なリフォーム会社を紹介しています。「どのリフォーム会社に依頼していいか分からない」とお悩みの方は、ぜひリフォームガイドにご相談ください。