
ファッション好きの方に人気のウォークインクローゼット。お気に入りの衣装がゆったりと収納でき、とっておきの衣装部屋のようなスペースでコーディネートを楽しめます。また家族全員の衣類をまとめて管理するために、大きなウォークインクローゼットがほしいと考えている方も多いのではないでしょうか。
新築住宅やリフォームでウォークインクローゼットをつくるとき、使い勝手を大きく左右するのが「間取り」です。最適なウォークインクローゼットの間取りは、家の広さやライフスタイル、自分たちの持っている物の量などによって変わります。
そこで今回はウォークインクローゼットの間取り計画で意識したい「広さ・レイアウト・設置場所」の3つのポイントについて詳しく解説します。素敵な間取りの実例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.ウォークインクローゼットとは?
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/1407 / http://www.8044.co.jp/gallery/421
ウォークインクローゼットとは、人が歩いて入れる通路のある、小部屋のような収納スペースのこと。衣類をたくさん収納できるのはもちろん、収納の中で着替えをしたり、スーツケースや季節物のような大きい物を収納できたりするのが特徴です。
またウォークインクローゼットに出入り口を2つ以上設ける場合、通り抜けできることから「ウォークスルークローゼット」とも呼ばれます。
ウォークインクローゼットの注意点は、広いスペースが必要になることです。そのためあまり物の量が多くない方の場合は、壁面クローゼットで十分なこともあります。壁面クローゼットはその名の通り壁の一面を利用してつくる収納で、人が入るスペースはありません。
間取り図での表記
ウォークインクローゼットは、間取り図では「WIC」と表示されるのが一般的。「WCL」と表示されるケースもあります。
CL:クローゼット
WIC(WCL):ウォークインクローゼット
WTC:ウォークスルークローゼット
SIC(SCL):シューズインクローゼット
2.ウォークインクローゼットに必要な広さ
ウォークインクローゼットの間取りを考えるとき、1つ目のポイントが「広さ」です。狭すぎると収納量が足りず、広すぎると他の居室を圧迫してしまうため、ちょうどいい広さで計画しましょう。
ちょうどいい広さの目安は「家族の人数=畳数」といわれています。そのため2〜4畳くらいでウォークインクローゼットをつくることが多いでしょう。
日本では多くの住宅が「1間(=約1.82m)」を基本単位として建てられています。そのため、よく設計されるのが「幅1間×奥行き1間」で、ちょうど2畳の正方形のウォークインクローゼットです。
ただし2畳のウォークインクローゼットは約2人分の衣類を入れられる広さなので、家族の人数や荷物の量によっては狭いことも。幅や奥行きをさらに広げた、3畳や4畳のようなウォークインクローゼットもよく見られます。
3.ウォークインクローゼットのレイアウト
2つ目のポイントが、ウォークインクローゼット内部のレイアウトです。広さや形が同じでも、通路幅や棚の位置、扉の有無などによって使い勝手は変わります。
[1]通路幅は60cm以上
ウォークインクローゼットは人が入れる空間があるのが大前提。このとき通路幅は、最低でも60cmはとるとよいでしょう。
なぜ60cmを目安にするかというと、大人の肩幅がおよそ50cmだから。50cmギリギリだと肩にハンガーなどが当たってストレスを感じるため、60cmくらいとるのがおすすめです。
例えば正方形2畳のウォークインクローゼットの真ん中に60cmの通路をとると、両サイドに60cm前後の棚を設けられる計算になります。
[2]収納したい物や広さに合わせてハンガーパイプや棚を設置する
ウォークインクローゼット内には、ハンガーをかけるためのパイプや、収納ボックスやカバンなどをそのまま置くための棚などを設置します。どこに設置するかは、収納したい物や広さ次第。
レイアウトは主に「I型・II型・L型・コの字型」の4種類に分けられるので、参考にしてみてください。
I型
出典:https://www.artreform.com/example/2799/
壁一面のみにハンガーパイプや棚を設置したのが、I型のレイアウト。コンパクトなスペースでも、ウォークインクローゼットを叶えることができます。通路を広くとってその場で着替えたい方や、棚の反対側にスーツケースなどを直置きできる空きスペースを確保したい方にも適したレイアウトです。
II型
出典:https://freshhouse.co.jp/case/8494/
両サイドにハンガーパイプや棚を設置して、真ん中に通路を設けたのがII型のレイアウト。I型よりも単純計算で2倍の収納スペースを確保できます。また手前と奥の二箇所に出入り口をつくり、ウォークスルー型のクローゼットにするのもおすすめ。突き当たりに窓を設けて風通しをよくするか、鏡を置いて身支度スペースをつくるのもよいでしょう。
L型
出典:https://www.artreform.com/example/7804/
I型の突き当たりにも棚を追加したのが、L型のレイアウトです。幅が狭くII型にするのが難しいウォークインクローゼットでも、たくさんの荷物を収納できます。コーナー部分の物は出し入れしにくいため、使用頻度の低い物を置いたり、出っ張った柱の形を活かしてコーナー部分ができないようにするなどの工夫をするとよいでしょう。
コの字型
出典:https://www.artreform.com/example/847/
出入り口以外の三面にハンガーパイプや棚を設置したのが、コの字型のレイアウト。4種類のなかで、最も大容量の収納が確保できるレイアウトです。おしゃれ好きでお手持ちの衣類が多い方や、住まいのスペースに余裕がある方、家族みんなの荷物を収納したい方などに向いています。
ハンガーパイプと棚の組み合わせ方
〇スタンダードな組み合わせは「棚+ハンガーパイプ」
最もスタンダードなのは高所に枕棚があり、その下にハンガーパイプが設置されたウォークインクローゼットです。ハンガーパイプから床までの距離があるので、丈の長いコートやワンピースも収納しやすくなります。
〇衣類の収納量を増やすならハンガーパイプを増やす
もっと収納量を増やしたいなら、ハンガーパイプを上下二段に設置するのもおすすめ。上段に大人の衣類、下段に子供の衣類といった使い分けもできます。
〇小物が多い・畳む収納はすべて棚にする
またバッグや帽子などの小物や、畳んだ衣類を収納するために、壁の全面に棚を設置するプランも。可動式の棚なら、収納したい物にあわせて一段ごとに高さを変えることもできます。
[3]扉の有無について検討する
ウォークインクローゼットのプランニングで意外と重要なのが、出入り口に扉をつけるかどうか。それぞれメリット・デメリットがあるので、好みや使い方に合わせて決めましょう。
扉あり
ウォークインクローゼットの出入り口に扉があると、収納内部が外から見えないように隠せるのがメリット。リビングや廊下など、来客も通る場所にウォークインクローゼットをつくるなら、扉があったほうがよいかもしれません。また扉を閉めることで、衣類の日焼けやホコリを防ぐ効果もあります。
ウォークインクローゼットの扉としてよく採用されるのは、開き戸と引き戸です。
・開き戸
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/340
扉を前後に押したり引いたりして、弧を描くように開くタイプ。扉1枚分のスペースで設置できるので、左右の壁面に余裕がないときにも採用しやすいでしょう。
ただし扉が開くときの軌道には物が置けません。扉を開くときに前後に体を動かさなければならないので、高齢者や車椅子の方など使いづらく感じることもあります。
・引き戸
出典:https://www.artreform.com/example/685/
左右にスライドして開閉するタイプ。開き戸と違って扉が前後に動かないため、高齢者や車椅子の方も使いやすく、扉の周辺に家具の配置もしやすくなります。開けっぱなしにしていても、風でバタンと閉まることがなく安心です。
ただし扉を引き込むスペースが必要なので、壁面幅に余裕がないと設置が難しいでしょう。
扉なし
扉のないウォークインクローゼットのメリットは、通気性がよくなること。隣接した部屋とあわせて空気を循環させることで、大切な衣類にカビが発生するのを防ぎます。
また扉を開け閉めせずに出入りできるので、朝のバタバタしているときの身支度も楽々。外から収納内は見えてしまうので、すっきり整理整頓することや、家族しか入らない部屋に出入り口をつくることなどで対応しましょう。
出典:https://www.artreform.com/example/879/
メリット | デメリット | |
---|---|---|
扉あり | ・収納内部が外から見えないように隠せる ・衣類の日焼けやホコリを防ぐ効果も |
・窓がついていないと通気性が悪い ・開き戸は、扉が開くときの軌道に物が置けない |
扉なし | ・通気性がよくなり、カビが発生するのを防ぐ ・朝のバタバタしているときの身支度も楽 |
・外から見えるのでクローゼット内の整理整頓が必要 |
4.ウォークインクローゼットの設置場所
3つ目のポイントは、ウォークインクローゼットの設置場所です。誰がどのような用途としてウォークインクローゼットを使いたいかによって場所を決めましょう。よくある設置場所は「寝室・LDK・玄関・洗面室」の4種類です。
設置場所 | メリット | デメリット |
---|---|---|
寝室 | ・起きてすぐに着替えられる | ・寝室の位置によっては、日中アクセスしにくい ・寝ている家族の隣で身支度をすることに |
LDK | ・家族みんなで使いやすい ・昼も夜もアクセスしやすい |
・生活感がでやすい ・来客から収納内が見えてしまうことも |
玄関 | ・帰宅後や外出前の身支度が効率アップ ・室内に汚れや荷物を持ち込まない ・コートや靴もしまえる |
・朝起きたときの着替えの動線が悪い ・外からの湿気やホコリが入りやすい ・来客から見えやすい |
洗面室 | ・乾燥機で乾かした衣類をまとめて収納できる ・入浴後の身支度がスムーズ |
・浴室からの湿気が気になる |
【寝室】起きてすぐに着替えられる
寝室の隣にウォークインクローゼットを設置すると、朝起きてすぐに着替えることができます。プライベートな寝室できちんと身支度をしてから、パブリックなリビングに移動したい方におすすめです。
また家族の生活時間帯がずれていると、誰かが寝ている横で身支度することになる場合があるので注意が必要です。
【LDK】家族みんなで使いやすい
家族全員で使うウォークインクローゼットは、リビングからアクセスしやすい場所につくるのがおすすめ。小さいお子様がいるご家庭では、食事などで洋服が汚れてしまったときもサッと着替えることができます。
【玄関】帰宅後すぐに着替えられる
玄関にウォークインクローゼットがあると、帰ってきたときにコートやカバンを置いて、部屋着に着替えてから家の中に入ることができます。外からの花粉やホコリなどを家の中に持ち込みにくく、また「リビングに脱いだコートやカバンが置きっぱなし」という悩みからも解放されます。
【洗面室】洗濯物の収納が楽になる
洗面室の近くにウォークインクローゼットをつくると、家事効率がアップ。洗面室で洗濯をして、部屋干しもしくは乾燥機で乾かして、そのままウォークインクローゼットに収納できます。また入浴前にわざわざ自室へパジャマや下着を取りに行く必要もありません。
5.ウォークインクローゼットの間取り実例
ここからはウォークインクローゼットの間取り実例を見ていきましょう。写真や間取り図もご紹介するので、ぜひ家づくりの参考にしてください。
[1]寝室に隣接するウォークインクローゼットがある間取り
寝室の隣に正方形のウォークインクローゼットを設けた事例です。もともと半分の収納でしたが、リフォームで2倍に広げることで収納力をアップしました。別階の子供部屋の隣にも大きな多目的収納を設けているので、お子様が成長して学用品や衣類が増えても安心です。
出典:https://www.artreform.com/example/858/
[2]寝室からLDKへ抜けるウォークインクローゼットがある間取り
広い寝室の隣にウォークインクローゼットをつくった事例です。ウォークインクローゼットには寝室側だけでなく、LDK側にも出入り口をつくってウォークスルー型に。どちらからもアクセスできて便利なのはもちろん、通り抜けるときに人の動きとともに空気も動いて湿気がたまりにくいメリットがあります。
出典:https://freshhouse.co.jp/case/13076/
[3]洗面室の近くにウォークインクローゼットがある間取り
リビングに隣接する和室を、ウォークインクローゼットへリフォーム。親子2人で使うため、大容量の靴や服が入るようにプランニングしました。ミントグリーンのキリン柄のクロスを選んで、気分の上がる場所にしたのもこだわりです。
洗面室が隣にあるので、洗濯動線もばっちり。ただし洗面室とウォークインクローゼットは直接つながっているわけではなく、廊下をはさんだ間取りになっているので、直接湿気が流れ込んでくることもありません。
出典:https://www.artreform.com/example/4755/
[4]帰宅動線が良い玄関続きのウォークインクローゼットがある間取り
玄関から廊下を通ってリビングへつながる間取りでしたが、廊下部分を少し広げてウォークインクローゼットとして使えるようにリフォームしました。帰ってきたら靴を片付けてコートを脱ぎ、所定の位置に片付けながら自然とリビングへ向かうことができます。大容量の収納をつくったことで、玄関もリビングもすっきりです。
出典:https://www.artreform.com/example/814/
[5]ワークスペースを兼ねたウォークインクローゼットがある間取り
広々としたウォークインクローゼットのサイドにパイプスペースと棚を、突き当たりにはカウンターデスクを造作した事例です。こもり感のあるスペースで仕事に集中しやすく、壁に囲まれているのでテレビ会議なども安心して行えます。
収納とワークスペースを兼ねられるのも、人が入れるウォークインクローゼットならでは。在宅勤務の場所がなくてお困りの方、書斎として一部屋確保するのが難しい方も、ウォークインクローゼットを少し広めにとるのであれば実施しやすいかもしれません。
出典:https://www.artreform.com/example/823/
[6]リビングのアクセントになるウォークインクローゼットがある間取り
リビングの一角におしゃれな小上がりスペースとウォークインクローゼットを設けた間取りです。ウォークインクローゼットの壁は曲線でデザインし、出入り口もアーチの形にしました。
扉がついていなくても、このようなおしゃれなデザインなら生活感なし。曲線なので圧迫感を感じにくく、リビングのアクセントになっています。
出典:https://www.artreform.com/example/855/
6.ウォークインクローゼットに関するQ&A
最後に、ウォークインクローゼットに関してよくある疑問にお答えします。
ウォークインクローゼットがおすすめな人は?
ファッションが好きな方には、たくさんの衣類や小物をゆったりと収納できるウォークインクローゼットがおすすめです。一目で何があるか見渡せるのでスタイリングのアイデアが沸きやすく、全身鏡でチェックしながらコーディネートを決めることもできます。
また家族全員の服を一元管理したい方、小さな子供がいて一箇所でまとめて身支度をしたい方、洗濯や収納などの家事を楽にしたい方、スーツケースやクリスマスツリーなどの大型の荷物が多い方にも、ウォークインクローゼットが向いているでしょう。
ウォークインクローゼットが向いていない場合は?
ウォークインクローゼットの中には、人が通るスペースが必要です。敷地面積が限られており、他のスペースを圧迫してしまう恐れがあるときは、ウォークインクローゼットは向いていないかもしれません。
また衣類や荷物が少ない方が広いウォークインクローゼットをつくると、空間を持て余してしまう可能性があります。壁面クローゼットとどちらがいいか、よく検討しましょう。
ウォークインクローゼットをつくるときの注意点は?
ウォークインクローゼット内の湿気には注意が必要です。小窓を設けるか、出入り口を二つ設けてウォークスルー型にすると通気性がよくなります。衣類の量や広さによっては、換気扇との併用も検討しましょう。除湿機やサーキュレーターを使う場合は、収納内にコンセントがあると便利です。
またウォークインクローゼット内が暗いと使い勝手が悪く、衣類の汚れにも気づきにくくなります。自然光に近い「昼白色」のライトで、十分な明るさを確保するのがおすすめです。また照明器具が収納の邪魔にならないように、天井に埋め込むダウンライトなど、なるべく天井からの出っ張りが少ないタイプを選びましょう。
ウォークインクローゼットにリフォームする費用はどのくらい?
押入れをウォークインクローゼットにリフォームする場合は25万円前後から。使っていないスペースに簡易的なハンガーパイプや棚を設置するリフォームなら15万円前後から実施できることもあります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。


7.まとめ
ウォークインクローゼットはただの収納として使うだけでなく、間取り次第でさまざまな使い方ができます。とっておきの衣装部屋のようにしたり書斎を兼ねたりと、ライフスタイルに合わせて計画しましょう。収納の広さやレイアウトを考えるのをきっかけに、自分の持ち物の量を見直してみるのもよいかもしれません。
そして収納計画は、一箇所だけを完璧に仕上げるだけでは不十分なことも。ウォークインクローゼットだけでなく、他の部屋の押入れや引き出しなどを含め、家全体の収納をまとめて計画するのがおすすめです。
リフォームガイドでは収納に関してさまざまなお役立ち記事を公開しております。ぜひこちらの記事も参考にしてくださいね。



