
リフォームで屋根材を変更する方や新築住宅を建てる方の中で近年注目を集めているのが、「アスファルトシングル」です。アスファルトシングルは、軽量で耐久性も高く、シンプルでモダンな外観に仕上げられる屋根材です。
自分の家の屋根材として選ぶなら、どのようなメンテナンスが必要で費用相場はいくらなのか知っておきたいと思う方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、アスファルトシングル屋根の特徴と、メリット・デメリットを解説します。アスファルトシングル屋根とスレートやガルバリウム鋼板、瓦との違いや、費用相場、施工手順、耐久性、劣化のサインの見分け方も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.アスファルトシングル屋根の特徴
「アスファルトシングル屋根」は日本では歴史が短く、比較的新しい屋根といえますが、アメリカやカナダでは100年以上の歴史があり、広く普及している屋根材です。
アスファルトシングルとは、ガラス繊維の基材にアスファルトを浸透させた素材で、表面に石粒を付着させて着色したものです。カラーバリエーションが豊富で、洋風の家だけでなく、和風の家にも採用されています。
意匠性が高く軽量なため、葺き替えだけでなく、重ね葺き(カバー工法)にも対応できます。その上比較的低コストで施工できるのがメリットで、近年日本国内でも徐々にアスファルトシングル屋根が増えています。
2.屋根にアスファルトシングルを使うメリットとデメリット
アスファルトシングル屋根へとリフォームする前に、どのような特徴があるのか知っておきたいものです。ここでは、屋根にアスファルトシングルを使うメリット・デメリットを解説します。
アスファルトシングルのメリット | アスファルトシングルのデメリット |
---|---|
・デザイン性に優れている ・割れにくい ・さびない ・軽量で耐震性が高い ・防音性が高い ・初期コストを抑えられる |
・風で吹き飛びやすい ・カビやコケが生えやすい ・施工業者が少ない ・勾配が緩い屋根には不向き ・表面の石がはがれ落ちやすい |
2-1.メリット
屋根にアスファルトシングルを利用するメリットを具体的に解説していきます。
デザイン性に優れている
アスファルトシングル材はシート状で加工しやすいためさまざまなデザインが存在します。
石粒が付着しており凹凸があり、デザイン性が高い屋根材といえるでしょう。
割れにくい
シート状の素材なので、アスファルトシングルはひび割れの心配がありません。
瓦やスレート瓦は素材が硬いため、台風などで飛来物が飛んでくるとひび割れを起こすこともあります。
しかし、柔らかい素材のアスファルトシングルは衝撃に対して柔軟性があるため、割れにくいのも特徴です。
サビない
トタン屋根など金属屋根は、経年劣化によりさびが発生します。さびが発生すると雨が浸入して雨漏りを引き起こしたり、屋根内部を腐食させてしまったりすることも珍しくありません。
アスファルトシングルなら、金属素材ではないためさびる心配がありません。
軽量で耐震性が高い
アスファルトシングルはシート状で、屋根材の中でも特に軽量です。屋根が軽いほど住宅全体への負担が少ないため、耐震性は高くなります。
軽量な素材のため既存屋根の上から新しい屋根材をかぶせる「カバー工法」にも適しています。
防音性が高い
アスファルトシングル屋根は、ガラス繊維の表面に付着させた石粒が緩衝材になるため、防音性が高いのが特徴です。
ガルバリウム鋼板やトタン屋根など、金属製の屋根は他の素材に比べて防音性が劣り、雨音が室内まで響くことがあります。
しかし、アスファルトシングル屋根は石粒が音を吸収するので、雨音に悩まされることは少ないでしょう。
初期コストを抑えられる
アスファルトシングルは、比較的安価なこともメリットの1つです。
例えば日本瓦や洋瓦の初期コストの目安は、工事費込みで8,000〜1万5,000円/㎡、スレート屋根は5,000〜7,000円/㎡、ガルバリウム鋼板屋根は6,000~9,000円です。
一方でアスファルトシングル屋根は6,000〜8,000円/㎡と比較的安く、コストを抑えて新築したい方におすすめです。
2-2.デメリット
アスファルトシングルを屋根材として使う場合、5つのデメリットがあります。詳しくみていきましょう。
風で吹き飛びやすい
軽量なアスファルトシングルは、風で吹き飛びやすいというデメリットがあります。
屋根に張り付けられているため簡単に吹き飛ぶことはありませんが、劣化していると暴風や台風が来た場合にはがれやすいため、こまめな点検やメンテナンスが必要です。
カビやコケが生えやすい
表面に石粒が付着していて凹凸が多いため、アスファルトシングルは湿気がたまる性質があります。隙間に水滴が付着しやすく、カビが発生しやすいのです。
他の屋根材に比べてカビが生える頻度が高く、定期的なメンテナンスが必要になります。
施工業者が少ない
アスファルトシングル材が普及し始めてから年数が経過していないため、他の屋根材よりも取り扱っている業者は多くありません。
地域によっては、取扱いや実績のある施工業者を探すのが難しい場合もあります。
勾配が緩い屋根には不向き
アスファルトシングル屋根は、凹凸が多いため湿気がたまりやすい特徴から、屋根勾配が緩いと水はけが悪くなり、屋根の下地を腐食させてしまうため、屋根の形状によっては不向きな場合があります。
アスファルトシングル屋根にする場合は、3.5寸以上の勾配が推奨されています。自分の家の屋根勾配を調べるには、新築したときの設計図面を確認することができます。屋根勾配は立面図などに記載されています。図面の読み方が分からない場合は、業者に図面をチェックしてもらいましょう。
表面の石がはがれ落ちやすい
アスファルトシングル屋根は、ガラス繊維に石粒を付着させて着色しています。天然素材のような質感が魅力ですが、経年により表面の石粒(天然石)がはがれやすく、見栄えが悪くなることがあります。下地が露出してしまう前に、張り替えや重ね張り(カバー工法)、塗装を検討してください。
また、雨風によってはがれた石粒は庭やバルコニーを汚し、雨樋(あまどい)を詰まらせる原因になることもあります。屋根の点検やリフォームをする際は、雨樋の状態も確認してもらいましょう。
3.アスファルトシングルと他の屋根材の違い
屋根材には、アスファルトシングル以外に以下の種類があります。
- スレート
- ガルバリウム鋼板
- 瓦
それぞれの屋根材とアスファルトシングルの違いをみていきましょう。
3-1.スレートとの比較
スレート材とは、セメントに繊維素材を混ぜ合わせて板状に加工した屋根材です。
アスファルトシングルと比べて以下の特徴があります。
スレート | アスファルトシングル | |
---|---|---|
費用 | 5,000~7,000円/㎡ | 6,000~8,000円/㎡ |
耐用年数 | 20~30年 | 10~30年 |
メンテナンス頻度 | 10~15年 | 5~10年 |
メリット | ・価格が安い ・施工業者が多い ・劣化しにくい ・カビが生えにくい |
・軽量で耐震性が高い ・防音性が高い ・割れにくい ・さびない |
デメリット | ・割れやすい ・色あせしやすい ・防音性が低い |
・風で吹き飛びやすい ・耐久性が低い ・施工業者が少ない ・表面の石がはがれ落ちやすい |
3-2.ガルバリウム鋼板との比較
ガルバリウム鋼板とは、アルミニウムと亜鉛、シリコンから構成される亜鉛メッキ合板です。
アスファルトシングルと比べて以下の特徴があります。
ガルバリウム鋼板 | アスファルトシングル | |
---|---|---|
費用 | 6,000~9,000円/㎡ | 6,000~8,000円/㎡ |
耐用年数 | 30年程度 | 10~30年 |
メンテナンス頻度 | 10~15年 | 5~10年 |
メリット | ・さびにくい ・カビが生えにくい ・防水性・耐久性が高い ・メンテナンスしやすい |
・防音性が高い ・割れにくい ・さびない |
デメリット | ・防音性が低い ・傷がつきやすい ・比較的コストが高い |
・風で吹き飛びやすい ・耐久性が低い ・施工業者が少ない ・表面の石がはがれ落ちやすい |
メンテナンス頻度が低い軽量の屋根材を求める人にはガルバリウム鋼板が向いています。
3-3.瓦との比較
瓦とは、粘土やセメントからつくられる波形を中心とした厚みのある屋根材です。
以下では一般的な瓦である「粘土瓦」を解説します。
瓦にはアスファルトシングルと比べて以下の特徴があります。
瓦(粘土瓦) | アスファルトシングル | |
---|---|---|
費用 | 9,000~1万2,000円/㎡ | 6,000~8,000円/㎡ |
耐用年数 | 30年程度 | 10~30年 |
メンテナンス頻度 | 10~15年 | 5~10年 |
メリット | ・耐用年数が長い ・耐久性が高い ・断熱性が高い ・メンテナンスしやすい |
・コストが安い ・軽量で耐震性が高い ・割れにくい ・さびない |
デメリット | ・初期コストが高い ・重量があり耐震性が低い ・割れに弱い |
・風で吹き飛びやすい ・耐久性が低い ・施工業者が少ない ・表面の石がはがれ落ちやすい |
4.アスファルトシングル屋根にする場合の費用相場
30坪程度の住宅の場合、アスファルトシングルの屋根に交換する場合の費用相場は140〜240万円程度です。
また、既存屋根に新しい屋根材をかぶせる「カバー工法」なら、120〜220万円程度で工事ができるでしょう。
このほか、アスファルトシングルの屋根を塗装するメンテナンスを行うのなら40〜80万円程度が必要となります。
施工費用が変動する要素には以下があります。
- 材料の種類
- 下地の劣化状況
- 住宅構造や周辺環境による工事の難しさ
- 屋根の勾配(屋根足場の設置の有無に影響)
グレードの高い材料を使ったり、屋根の勾配がきついほど費用は高くなるでしょう。
5.アスファルトシングルを屋根に張る方法
アスファルトシングル屋根の、施工手順を4つのステップで紹介します。
アスファルトシングル屋根の基本的な施工工程を知り、業者にこの工程で進めるのか、抜けている作業項目がないか確認してみてください。
- 屋根用の防水シートを張る
- アスファルトシングルの裏に接着剤を塗る
- 屋根の軒先側から、アスファルトシングルを専用のくぎで打ち込んで張る
- アスファルトシングルの上半分が重なるように、アスファルトシングルを重ねる
アスファルトシングルのつなぎ目が重ならないようにし、最後の棟の部分はくぎを打てないため、接着剤を多めに塗るのがポイントです。
業者によっては作業工程を撮影し、写真を提示しながら工事の様子を説明してくれることもあります。
施工写真があれば見せてもらい、工事を依頼する際の判断材料にしましょう。
6.屋根にアスファルトシングルを使う場合の注意点
屋根材にアスファルトシングルを使う場合、2つの注意点があります。
6-1.アスファルトシングルの施工実績が豊富な業者に依頼する
実績が少ない業者に依頼すると、工事後に施工不良といったトラブルが起こる危険があります。
トラブルを防ぐためにも、依頼する際には、アスファルトシングルの施工実績が豊富な業者に依頼することが大切です。
6-2.相見積もりで業者を比較する
業者を選定する際は相見積もりをしましょう。相見積もりとは、同じ工事条件で複数の業者に見積もり依頼をすることです。
複数者の見積もりから費用感をつかみ、相場と大きく変わりないかをチェックしましょう。極端に安過ぎる場合は、後から追加費用が発生するリスクもあるため、追加費用がかかる可能性があるかどうか確認しましょう。
また、見積書に工事内容や費用が詳細に記載されているかどうかを確認し、不明点があれば納得できるまで質問することも大切です。そして、アフターサービスが充実している業者は、工事後のメンテナンスや万が一のトラブル時にも安心です。
担当者が丁寧に対応してくれる業者であることも、信頼性の目安になります。
7.アスファルトシングル屋根の耐久性・劣化のサイン
アスファルトシングルは比較的耐久性が低いといわれていますが、一般的にどのくらい持つものなのでしょうか。
ここではアスファルトシングル屋根の耐用年数と、劣化のサインについて解説します。
7-1.アスファルトシングルの耐用年数
アスファルトシーリングの耐用年数は、製品によって多少異なりますが、10~30年が目安です。以前は10〜20年ともいわれていましたが、近年は製品開発が進み、品質が向上しているため、30年近く状態を保っている屋根もあります。
ただし、アスファルトシングルの下に張る防水シート自体の耐用年数は20年程度です。また立地や気候の影響によって劣化の速度が異なるため、20年程度で屋根の点検を依頼し、必要に応じて葺き替えやカバー工法による改修を考えてみてください。
7-2.アスファルトシングルの劣化のサイン
アスファルトシングルに浮きやはがれ、隙間が発生していたら劣化のサインです。隙間から雨水が浸み込むと、雨漏りの原因になります。
屋根の下地を腐食させてしまうことになるため、早めに改修を検討しましょう。
8.アスファルトシングル屋根のメンテナンス方法
屋根をアスファルトシングルで葺き替える際には、将来的なメンテナンス方法についても理解しておきましょう。
一般的に、施工後10〜15年程度でメンテナンスが必要です。
アスファルトシングルの屋根には3つのメンテナンス方法があります。
- 塗装
- カバー工法
- 葺き替え
それぞれどのような工事なのかを解説していきます。
8-1.塗装
アスファルトシングルの色あせや汚れ、石粒のはがれが気になる場合は、上から塗装して美観を保つ方法があります。
ただし屋根材の劣化が進んでいる場合は、塗装だけでは改善できない場合もあり、高圧洗浄で石粒がはがれてしまうこともあります。塗装は、あくまでも劣化が進む前のメンテナンスとして理解しておきましょう。
アスファルトシングル屋根を塗装できるかどうかは、業者に判断してもらうことをおすすめします。
8-2.カバー工法
現在のアスファルトシングル屋根の上に金属屋根などの軽量素材を重ねる工法です。
費用は塗装より高くなりますが、屋根材の軽度の劣化ならカバー工法が可能です。
8-3.葺き替え
現在のアスファルトシングル屋根を解体してから新しい屋根材を重ねる工法です。
費用は最も高くなりますが、塗装やカバー工法で対処できない重度の劣化がみられた際に行います。


9.まとめ
アスファルトシングル屋根は軽量で耐震性が高く、低コストで施工できるのが魅力です。またカラーバリエーションが豊富で意匠性もあるため、洋風の家だけでなく和風の家にもマッチします。
葺き替えだけでなく、カバー工法による改修も可能で、予算や劣化具合に応じてメンテナンス方法を選択できることもメリットといえるでしょう。
しかし、他の屋根材に比べて耐用年数が短いのがデメリットです。施工にかかるコストとメンテナンス頻度のどちらを優先するのか、よく検討した上でリフォームを実施してください。