
屋根のリフォームを検討するとき、屋根材として思い浮かぶのは、金属製のガルバリウム鋼板やスレート、セメント瓦あたりでしょうか?
一口に屋根材といっても種類が豊富なため、どの屋根材を選ぶべきか迷う方は多いかもしれません。
今回の記事では、代表的な屋根材の特徴や費用相場、耐用年数から、目的別におすすめの屋根材や、屋根材を選ぶ際のポイントまで詳しく紹介します。
この機会に屋根材の特徴や費用相場を把握し、屋根材選びにぜひ役立ててください。
目次
1.屋根材の種類から特徴・単価までチェック
どの屋根材を選ぶかによって、リフォームにかかる費用や耐用年数、デザインが異なります。屋根のリフォームを検討するのであれば、まず屋根材の特徴や費用相場、耐用年数を知ることから始めましょう。
住宅用の屋根材として一般的に採用されている屋根材は、以下の9種類と1つの工事があります。それぞれの特徴や1㎡当たりの単価、耐用年数を比較するために、表にまとめてみました。
種類 | 特徴 | 1㎡単価 | 耐用年数 |
---|---|---|---|
化粧スレート | 価格が最も安い屋根材 | 4,500〜8,000円 | 20〜25年 |
天然スレート | スレートとしては耐久性が高い | 9,800円以上 | 20年以上 |
ガルバリウム銅板 | 軽量で耐震性が高い | 6,000〜9,000円 | 30年程度 |
トタン | 金属屋根では最も安い | 5,000〜6,000円 | 10〜20年 |
銅板 | 耐用年数が最も長い屋根材 | 20,000円以上 | 60年以上 |
セメント瓦 | 瓦としては価格が安い | 6,000〜8,000円 | 30〜40年 |
粘土瓦(陶器瓦) | 耐用年数が長い | 8,000〜12,000円 | 50〜100年 |
陶板 | 粘土瓦よりも軽量 | 16,000円~ | 50年以上 |
アスファルトシングル | さまざまな形状に対応できる | 5,000〜7,000円 | 20〜30年 |
屋上防水 | 屋上に必須の工事 | 8,000〜12,000円 | 10〜13年 |
ここからはそれぞれの屋根材を、もう少し詳しく紹介していきます。ぜひ画像を参考に、リフォーム後の屋根のデザインをイメージしてみてください。
1-1.化粧スレート
化粧スレートとは、セメントと繊維素材を混ぜて、薄い板状にした屋根材です。商品名である「カラーベスト」や「コロニアル」と呼ばれることもありますが、基本的には同じ化粧スレートのことを指す名称です。
化粧スレートは軽量なため施工しやすく、耐震性が高いのがメリットです。またカラーバリエーションが豊富で、平板型の他に波型もあります。1㎡当たり4,500〜8,000円と安価で、デザイン性が高いことから広く普及しています。
比較的割れやすく、表面にコケやカビが生えやすい特徴を持っています。また耐久性や防水性が低いため、定期的な塗装メンテナンスが必要でしょう。耐用年数は20〜25年です。
昔はアスベストが含まれた化粧スレートも存在していましたが、現在は製造・使用が禁止されています。既存の屋根が化粧スレートの場合は、年代によってはアスベストが含まれている可能性があるため、撤去時にはアスベスト飛散防止などの対処が必要です。


1-2.天然スレート
天然スレートとは、粘板岩を薄く板状に加工した屋根材で、屋根材以外にも外壁材として使用することがあります。比較的重い素材のため、耐震性は高くありません。
独特な模様と自然の風合いが魅力で、青黒色であるのが特徴です。美しい素材ではありますが、1㎡当たり9,800円以上と高級な素材で、日本国内ではあまり普及していません。
化粧スレートに比べると耐用年数が非常に長く20年以上、場合によっては50年以上もつといわれます。また塗装のメンテナンスは不要で、もしリフォームする場合は葺き直すことになるでしょう。
1-3.ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板とは、鉄板をアルミと亜鉛で保護した構造の屋根材です。さびや腐食に強く、耐用年数が30年程度と長いのが魅力です。
また軽量で耐震性が高く、比較的加工しやすいことから、カバー工法の屋根材としてよく利用されています。1㎡当たりの単価は、6,000〜9,000円を想定しましょう。
防水性や防火性は高いですが、断熱性や防音性が低いのがデメリットです。断熱材や吸音材を利用し、断熱性能や防音性を高めるような工事が必要になるでしょう。またさびにくい素材とはいえ、金属素材なのでまったくさびないわけではありません。また傷やへこみには弱いため、定期的に塗装することをおすすめします。
特に海の近くなどでは潮風によって白さびが発生することがあるので、注意してください。


1-4.トタン
トタンとは、波型の鉄板の表面を亜鉛でメッキした屋根材です。以前は屋根材としてよく利用されていましたが、耐用年数が10〜20年と非常に短く、断熱性や遮音性が低いため、現在は住宅の屋根材としてはほとんど使われていません。
金属製の屋根材であるガルバリウム鋼板が普及したことも、トタンが使われなくなった理由の1つでしょう。
軽量で扱いやすく、㎡当たりの単価も5,000〜6,000円と安いのがメリットです。そのため、現在でもDIYで使われるケースがあります。ただしさびやへこみに弱いので、劣化が見られたら早めに塗装するようにしましょう。
1-5.銅板
銅板の屋根は、神社仏閣や日本家屋などで見られる、伝統的な屋根材です。経年により赤褐色から褐色に変化し、さらに年月がたつと緑青色になります。
銅板は高価なこともあって現在は住宅の屋根材として採用するケースは少なく、施工できる業者も限られていることから施工費も高くなる傾向があります。
神社仏閣で採用されることからも分かるように、非常に耐久性が高く、耐用年数は60年以上といわれています。また非常に薄くて軽いため耐震性が高く、地震の多い日本に向いている屋根材といえます。
注意点としては、熱伝導率が高く、室内まで熱が伝わりやすいことが挙げられます。銅板屋根にする場合は、屋根裏や天井の断熱対策が必要でしょう。
1-6.セメント瓦
セメント瓦とは、セメントと砂を混ぜて瓦状に固めた屋根材のことで、モニエル瓦やコンクリート瓦、プレスセメント瓦と呼ばれることもあります。
1㎡当たり6,000〜8,000円と瓦としてはコストが安く、一方で耐用年数は30〜40年と比較的長いため、以前はよく採用されていた屋根材の1つです。形状も和風なタイプから洋風なタイプまであり、デザインが豊富なため、好みに合わせて採用できます。
砂とセメントからできていて耐火性に優れていますが、衝撃に弱く割れやすいのがデメリットです。割れた瓦を放置することで、雨漏りや屋根内部の腐食の原因になることがあるので、定期的なメンテナンスを怠らないようにしましょう。
1-7.粘土瓦(陶器瓦)
粘土瓦とは、粘土を練って整形し、焼き上げてつくる屋根材です。仕上げのタイプによって、素焼き瓦やいぶし瓦、陶器瓦(釉薬瓦)とも呼ばれます。
粘土を焼いてつくられており耐久性が非常に高く、耐用年数は50〜100年といわれています。耐火性や耐水性が高く、断熱性・防音性も高いため、理想的な屋根材です。
1㎡当たりの単価は8,000〜12,000円ですが、風害などによって割れなければ長く使えるので、総合的に考えればそれほど高いわけでもありません。
最大ともいえるデメリットは、非常に重く、耐震性が低いことです。耐震性を重視する場合は、屋根の葺き替えを検討しましょう。
1-8.陶板
陶板とは、陶器瓦を軽量化した屋根材のことで、陶器瓦と同じ素材でできています。陶器瓦よりも軽いため、屋根の建物に対する耐荷重が理由で陶器瓦を採用できないときなどに選ばれています。
陶板は非常に耐久性が高く、再塗装も不要です。耐用年数は50年以上といわれています。ただし、瓦にズレや破損が見られたら、放置せず補修や交換を依頼しましょう。
1㎡当たりの単価は16,000円〜と高く、耐用年数を重視する場合でも、粘土瓦が採用されるケースが多いようです。採用を検討する場合は、陶板を扱っている業者に相談してみてください。
1-9.アスファルトシングル
アスファルトシングルとは、ガラス繊維の基材にアスファルトを浸透させた屋根材です。表面に石粒を付着させて着色するため、カラーバリエーションが豊富です。洋風の家だけでなく、和風の家にも合う素材です。
軽量で耐震性が高く、カバー工法でも採用されることがあります。1㎡当たりの単価は5,000〜7,000円と比較的低コストで施工できるので、最近は日本国内でも見かけるようになりました。しかし施工できる業者はまだまだ少なく、施工費は割高になる可能性があります。
防水性や防音性が高いのが特徴ですが、強風に弱くはがれやすいため、定期的な点検とメンテナンスは必要です。


1-10.屋上防水
屋根材というわけではありませんが、屋上がある家には必須の防水加工についても解説します。
屋上がある家の屋根となる部分は、雨水の浸入を防ぐために屋上防水が施されています。一般の住宅の屋上防水は、塩ビシート防水、もしくはアスファルト防水が用いられていることがほとんどで、防水効果は10〜13年と短く、耐久性が高いとはいえません。
経年により割れが生じたり、つなぎ目から雨が侵入したりしやすく、定期的な点検やメンテナンスが必要です。
ちなみに1㎡当たりの単価は8,000〜12,000円です。屋上についてはカバー工法や葺き替えでメンテナンスすることは難しく、また屋上として利用できなくなるため、基本的には同じ工法(屋上防水)でメンテナンスをすることになるでしょう。


2.あなたに適した屋根材を目的ごとにチェック!
屋根をメンテナンスする場合、いくつかの方法や屋根材が考えられます。目的を明確にし、目的に合った屋根材やメンテナンス方法を採用してください。
ここでは「価格」「メンテナンス性」「デザイン性」「耐震性」の目的別に、適した屋根材を紹介します。
2-1.価格を重視
適した素材
- 化粧スレート
屋根のメンテナンスで価格を重視する場合は、コストや施工費が安い屋根材の採用を検討しましょう。例えばコストの安さだけを優先するのであれば、化粧スレートやトタンが選べます。
ただしコストが安い屋根材は、耐久性が低い傾向があります。メンテナンスの頻度が多くなれば、長い目で見るとかえって割高になることも考えられるので、注意してください。
先に挙げた屋根材のうち、トタンは断熱性や遮音性が低いため、現在ではあまり現実的な選択肢ではないでしょう。
「家にあと何年住むのか」を考え、耐用年数やメンテナンス頻度も考慮した上で、屋根のメンテナンスを考えましょう。
2-2.メンテナンス性を重視
適した素材
- 粘土瓦(陶器瓦)
屋根材のメンテナンスを怠ると、破損した箇所などから雨漏りし、構造部分を腐食させてしまう恐れがあります。屋根は普段見えないため、破損やズレに気が付かず放置してしまうことがないように、定期的なメンテナンスは欠かせません。
点検やメンテナンスに労力をかけたくない場合は、例えば粘土瓦などの、耐用年数が長い屋根材を選ぶようにしましょう。銅板も耐用年数を考えると選択肢に入りますが、施工業者が限られることから現実的ではないかもしれません。
2-3.デザイン性を重視
適した素材
- アスファルトシングル
- 粘土瓦(陶器瓦)
- ガルバリウム鋼板
- 化粧スレート
屋根材のデザイン性を重視したい場合は、カラーバリエーションが豊富で、洋風の家や和風の家にも合うアスファルトシングルがおすすめです。
シンプルな外観が映える和モダンや、伝統的な日本家屋のような風情を好む場合は、粘土瓦もすてきです。粘土瓦は、素焼き瓦やいぶし瓦、陶器瓦(釉薬瓦)など、仕上げによって雰囲気も変わります。イメージする外観に合わせて、粘土瓦のタイプを選んでください。
スタイリッシュな外観を好む場合は、ガルバリウム鋼板や化粧スレートも検討してみましょう。デザイン性を重視したい場合は、リフォーム会社に相談して、施工事例も参考にしてみてください。
2-4.耐震性を重視
適した素材
- ガルバリウム鋼板
- アスファルトシングル
地震による倒壊など、家の耐震性が心配な場合は、屋根の重量を軽くするための対策が必要です。例えば既存の屋根が粘土瓦などで重い場合は、ガルバリウム鋼板やアスファルトシングルなど、なるべく軽い素材を選んで葺き替えてください。
ただし、耐震性は屋根材の重量だけでなく、建物の構造バランスも影響します。必要に応じて耐震診断を受けることも大切です。
耐震診断とは、大きな地震が発生しても、倒壊しない耐震性があるか診断することです。自治体によっては、耐震診断や耐震改修工事にかかる費用の一部を助成していることがあります。役所のホームページで確認するか、窓口へ問い合わせてみましょう。


目的 | 適した屋根材 |
---|---|
価格を安く | ・化粧スレート (・トタン) |
メンテナンスを手軽に | (・銅板) ・粘土瓦(陶器瓦) ・陶板 |
デザインを良く | ・粘土瓦(陶器瓦) ・アスファルトシングル |
耐震性を高く | ・ガルバリウム鋼板 ・アスファルトシングル |
3.屋根材を選ぶ3つのポイント
屋根材を選ぶ際には以下の3つのポイントがあります。
- 屋根材で重視する要素を明確にする
- 短期ではなく長期的なコストパフォーマンスで考える
- 相見積もりを取る
ポイントを意識するだけで屋根材選びに失敗する危険性が格段に減ります。ぜひ意識してみましょう。
3-1.屋根材で重視する要素を明確にする
屋根材を選ぶ際は、重視する目的と優先順位を明確にします。
耐久性が高い屋根材は、コストが高い傾向があり、耐久性と安さを両立することは難しいでしょう。
メンテナンス頻度が少なければ、結果的にはコストを抑えることにつながります。目先のコストだけでなく、ランニングコストも考慮しなくてはなりません。
どのポイントを最も重視するかを整理して、リフォーム会社に屋根材選びを相談しましょう。
また、屋根は日々雨風にさらされているため、お住まいの地域の特性によって適した屋根材が変わる可能性もあります。例えば豪雪地であれば軽い屋根材を選び、海が近い場合はさびにくい屋根材を選ぶことも重要です。地元のリフォーム会社であれば、地域の特性もよく把握しているので、提案に盛り込んでもらいましょう。
3-2.短期ではなく長期的なコストパフォーマンスで考える
屋根のリフォームには比較的コストがかかるため、なるべく安く済ませたいと考える方が多いでしょう。しかしコストの安さだけを優先させてしまうと、結果的に耐久性が低い屋根材を選ぶことになり、長い目で見るとコストパフォーマンスは悪くなるかもしれません。
つまり、耐久性が高い屋根材を選ぶことが、長い目で見ればコストを抑えることにつながるでしょう。
屋根のリフォームは短期的なコストで考えるのではなく、メンテナンス頻度も考慮し、長期的なコストパフォーマンスで検討するようにしてください。
3-3.相見積もりをとる
屋根工事をする上で最も重要なのが業者選びです。
業者選びの際には、相見積もりを取りましょう。相見積もりとは、複数の業者に同じ工事内容で見積もりを依頼することです。
複数社の見積もりを比較することで、価格が高過ぎないか、工事内容が抽象的過ぎないかなどを比較できるでしょう。
例えば、「屋根工事一式」としか記載されていない場合には、どの材料をどこまで施工するのかが把握できません。
屋根工事の工程ごとの費用単価や、使う商品名・メーカー名が記載されていない場合は、業者に確認を取りましょう。
また、極端な値引きをする業者や、自宅にいきなり訪問営業をしてくる会社はおすすめできません。
悪徳業者に依頼しないためにも、丁寧に説明してくれる業者か、不当な取引を持ちかけてくるような業者ではないかを見極めましょう。


4.まとめ
今回は、代表的な屋根材の特徴と費用相場、耐用年数について解説してきました。
屋根材は価格を優先するのか、それとも耐久性を重視するのかなど、目的を明確にして選んでください。採用する屋根材によってリフォームにかかる費用が異なり、耐用年数によってメンテナンス頻度が多くなります。
ただしコストの安さだけを優先してしまうと、結果的に耐久性が低い屋根材を選ぶことになり、長い目で見ると割高になる可能性があります。コスト面については、長期的な視点で考えるようにしましょう。
「リフォームガイド」では、優良なリフォーム会社や塗装会社を無料で紹介しています。ぜひ気軽にご相談ください。