
家の外壁を改修する方法として、外壁塗装や外壁を交換する以外に「外壁カバー工法」があります。
塗装よりもコストはかかりますが、断熱・防音性能がアップし、外壁が新しくなるのが魅力です。また外壁を交換するよりも費用を安く抑えることができ、工期が短いこともメリットといえます。
今回は外壁のカバー工法の特徴や施工事例、工事するのに適したタイミング、費用の目安、費用をなるべく抑える方法を解説します。
目次
1.外壁におけるカバー工法とは
カバー工法とは、既存の外壁に新たな素材を「重ね張り」する工事方法です。
古くなったサイディングやモルタル、ALCなどの外壁で使える工法で、外壁のデザインを一新できます。
カバー工法に使うサイディング材は、主に軽量な金属サイディングが使われます。これは、建物の重量増加によって耐震性が低下するのを防ぐためです。
カバー工法が適する外壁は?
カバー工法の主な工事の流れとしては、まず古い壁に土台となる胴縁(どうぶち)を取付けて、新しい外壁を重ねるように全体に張って改修します。
つまり新しく外壁材を重ねてしまうと、既存の外壁は改修できなくなります。基本的には外壁の下地が劣化していないことや、雨漏りしていないことが条件になるでしょう。
塗装の表面が劣化して粉っぽくなっている状態(チョーキング現象)や幅が3mm程度のひび割れであれば、外壁を重ね張りすることでそれ以上に劣化するのを防げます。
また、外壁を交換するまでではないけれど、塗装工事だけでは修復が難しいときにもカバー工法が向いています。どの工事が向いているか判断が難しいときは、業者に外壁の状態を点検してもらって相談してみましょう。
外壁の状態から適切な施工方法を見分けよう
外壁のリフォームには、カバー工法以外にも「塗装」や「張り替え」という方法があり、外壁の劣化状態によって適切なリフォーム方法が違います。
以下の表でご自身の家の外壁がカバー工法に適しているかを確認してみてください。
検討する際の目安として、30坪の住宅を改修する場合の費用相場も紹介しています。
外壁改修工事 | 費用相場 | 施工が適する外壁の状態 |
---|---|---|
塗装 | 60~120万円 | ・触ると白っぽい粉がつくチョーキング現象が起きている ・幅3mm以下の細かいヒビ割れがある |
カバー工法 (重ね張り) |
150~220万円 | ・全体的に塗装が剥がれて下地まで見えている ・幅3mm以上のひび割れが起きている ・モルタル壁で洗浄で落としきれないコケやカビが出ている ・モルタル壁からサイディング壁にしたい場合 |
張り替え | 200~260万円 | ・ひび割れを放置し、下地まで雨水が浸入している ・構造部まで劣化が進行している |
(※費用は30坪の住宅の場合)
塗装工事は選ぶ塗料の種類、外壁のカバー工法と張り替え工事については外壁材の種類やグレードによって費用は異なります。
注意が必要なのが、カバー工法でリフォームできない場合もある点です。
例えば外壁に大きなひび割れやサイディング材の反り・割れなどがあるまま長く放置している場合は、外壁の下地まで雨水が浸入し、構造部まで劣化が進行している恐れがあるでしょう。
この場合はカバー工法だけでは対処できず、外壁の張り直しが必要となる可能性があります。
適切なリフォーム方法を自分で判断するのは難しいため、本章で紹介した内容を目安にしながらプロの業者に判断を仰ぎましょう。
外壁と合わせて屋根の工事も一緒に行うケースが多い
外壁のリフォームと合わせて実施されるケースが多いのは屋根のリフォームです。
外壁も屋根も改修工事をする際は足場が必要になるため、合わせて行うことで別々でかかる足場台を1回分に抑えることができます。
もし屋根も気になると感じている場合は、同時にリフォームしてみてもよいでしょう。
ただし、屋根リフォームも同時に行う場合は、塗装や葺き替え工事費用も別途かかりますので注意してください。
2.外壁カバー工法の施工事例
ここでは、実際に外壁をカバー工法でリフォームした事例をご紹介します。
カバー工法でリフォームすると家の外観がどれくらい変わるのか、事例を見ながら確かめてみましょう。
①薄暗い印象の外壁が清潔感のある印象に一新
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出典:https://freshhouse.co.jp/case/27538/
既存の外壁の一部に生えたコケや亀裂が気になり外壁のリフォームをした事例です。
軽量な金属サイディングを重ね張りしています。薄暗い印象を与えていた外観が清潔感のある印象に生まれ変わりました。
施工期間 | 約1か月 |
---|---|
費用 | ー |
②シックな色を選ぶことでモダンな外壁に
※横にスクロールできます


出典:https://www.8044.co.jp/gallery/199
外壁の汚れが気になり、カバー工法でリフォームした事例です。
シックな色を選択したことでリフォーム前と比べるとぐっと大人っぽい落ち着いた印象になっています。壁を剥がす工程が不要な分、費用も押さえることができました。
施工期間 | 約1か月 |
---|---|
費用 | 299万円 |
3.外壁カバー工法を行うタイミング
外壁カバー工法を検討する場合、築何年程度が好ましいのでしょうか。家の築年数を目安に、カバー工法を検討すべきタイミングについて解説します。
建物の築年数 | 外壁の状態 | 改修工事 |
---|---|---|
築5年未満 | ・外壁にチョーキング現象は見られず、きれいな状態 ・近年のサイディングは厚みもあり、比較的長持ちする |
・基本的にカバー工法も塗装工事も不要 |
築5年以上20年未満 | ・築10年以降にチョーキング現象が見られ始める ・外壁の表面的な劣化であれば雨漏りのリスクは低い |
・外壁の劣化を防ぐために、築10~15年で塗装工事を検討 ・外観デザインをリフレッシュしたい場合は、外壁のカバー工法により改修 |
築20年以上39年未満 | ・外壁にひび割れが複数の箇所で見られる ・外壁から下地に雨漏りしている形跡はない |
・外壁のさらなる劣化を防ぐために、カバー工法で改修 |
築40年以上 | ・外壁から下地まで雨漏りしている可能性がある ・外壁内部が腐食している |
・外壁の張り替えと下地の補修を検討 ・下地の腐食具合によっては、建て替えも視野に入れる |
4.外壁カバー工法のメリット・デメリット
外壁リフォームをカバー工法で行うメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット |
---|
・張り替えより費用が安い ・張り替えより工事期間が短い ・断熱性と遮音性が高い |
デメリット |
・新しく張るサイディング材の種類が限られる ・外壁が重くなり耐震性が若干低下する ・劣化が激しい外壁には使えない |
カバー工法のメリットとデメリットについて、もう少し詳しく解説します。
外壁カバー工法のメリット
①張り替えより安い
外壁をカバー工法で行う場合、張り替えよりも50~100万円ほどリフォーム価格が安くなります。
外壁を張り替える場合、カバー工法と同じ外壁材を選んだとしても、既存の外壁材の撤去作業費と外壁の処分代がかかるため、その分高くなるというわけです。
もし既存の外壁材の撤去が極端に難しい、もしくは撤去した外壁材の運搬に非常に時間がかかるような条件の場合は、さらに差が出る可能性もあるでしょう。
外壁の張り替えとカバー工法で迷ったら両方の見積もりを依頼して、実際に比較することをおすすめします。
②張り替えより工事期間が短い
また、カバー工法のメリットとして張り替えよりも工事期間が短いことがあげられるでしょう。カバー工法、張り替えにおける工事期間の目安は以下となります。
- カバー工法 2~3週間程度
- 張り替え 3〜4週間程度
張り替えと比べると、約1〜2週間ほど期間は短くなります。
③断熱性・遮音性に優れている
さらに、カバー工法は他のリフォーム方法に比べて断熱性と遮音性に優れています。
カバー工法では既存外壁に加えて外壁素材を張るため塗装や張り替えよりも厚みがあり、熱や音を通しにくくするのです。
外壁カバー工法のデメリット
①新しくするサイディング材の種類が限られる
カバー工法の大きなデメリットとして、使える外壁素材が限られるというものがあります。既存外壁に新しい素材を張るため、カバー工法では重い外壁素材を張ることができません。
軽量の素材は多くが金属サイディングに限られるため、デザインが豊富な窯業系(ようぎょうけい)サイディングに比べ、デザインのバリエーションが少なくなってしまいます。窯業系サイディングの重厚感のある質感を好む場合は、希望のサイディング材を施工できない可能性がありるでしょう。
ただ、最近は金属サイディングでも「木目調」や「レンガ調」などのデザインも出てきています。
②外壁が重くなり耐震性が若干低下する
外壁が重くなる点もカバー工法のデメリットです。
どれほど軽い金属サイディングを利用したとしても、現在より外壁の重さが増すことは間違いありません。外壁の重量が増すと耐震性が低下し、地震の際に破損しやすくなります。
カバー工法でリフォームする際は耐震面の安全も確保できるかどうか、必ず施工をする前に業者に相談するようにしましょう。
③劣化が激しい外壁には使えない
大きなひび割れ、サイディング材の反り・割れなどを長期間放置している状態の場合、外壁の下地まで雨水が浸入し、劣化が激しく進んでいる恐れがあります。
こうした外壁の場合は、カバー工法で新しい外壁を重ね張りしてしまうと内部の劣化部分の修繕ができなくなったり、新しい外壁材の重さに耐えられず崩れてしまう可能性があるなど住まいのリスクを高める恐れにつながります。
劣化がひどく進んでいる外壁に対しては、カバー工法ではなく張り替えが必要となるでしょう。
外壁のカバー工法はこんな人におすすめ!
- 塗装では工事ができないけれど費用を抑えたい
- できるだけ安く新しいサイディングにしたい
- 保温や防音を重視したい
- 築年数が浅く下地などに問題がない
5.外壁カバー工法にかかる費用
外壁のカバー工法にかかる費用は、30坪程度の住宅で150~220万円程度が相場です。
費用の相場に幅があるのは、住宅の形や外壁の種類・グレード、工事のしやすさによって価格が変動するからです。家の形に凹凸が多い、曲線がある、3階建てなどの場合は、費用が高くなる傾向にあります。
カバー工法に必要な費用の内訳
カバー工法にかかる費用の内訳としては、以下のようなものがあります。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
足場設置 | 15〜20万円 |
シート養生 | 8〜12万円 |
防水シート | 4〜6万円 |
下地設置 | 20〜25万円 |
水切り設置 | 5〜7万円 |
サイディング材 | 55〜70万円 |
重ね張り作業 | 30〜45万円 |
シーリング | 25〜35万円 |
諸経費 | 工事費の5~10%程度 |
上記内訳は、あくまでもカバー工法の一般的な相場です。業者によっては見積もりの項目や内訳が異なることもあります。
実際にかかる費用については、業者に相談して、見積もりを出してもらうようにしてください。
6.外壁カバー工法の費用を抑えるポイント
外壁のカバー工法で費用を抑える方法には「安価な素材を選ぶ」、「優良業者に依頼する」、「補助金・助成金を活用する」の3つがあります。
①安価な素材を選ぶ
比較的安価な素材を選ぶことで、費用を抑えることができる可能性があります。
たとえば、カバー工法でよく使われる金属サイディングの中にも、種類がいくつかありますが、当然、材料費が安いほどトータルの費用は抑えることができます。
ただし、今後のメンテナンス費用も考え、耐久性の観点も意識しましょう。「ガルバリウム鋼板」は、コストパフォーマンスが高いサイディング材として人気があります。
窯業系サイディングは金属サイディングに比べ安価ですが、外壁の荷重が大きくなることには注意が必要です。また、劣化状況によっては施工できないこともあるため、専門業者に相談することをおすすめします。
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②優良業者に依頼する
外壁のカバー工法は、下地の状態を見て「張り替えでなくても大丈夫かどうか」や、建物の状態を見て「カバー工法で耐震性に影響はないか」「どんな外壁材を施工できるか」など、正しい判断をする必要があります。
正しい判断をするには、実績がある業者、その道のプロに依頼することが重要です。
最近は不必要な工事を勧めて高額な費用を請求したり、安い金額で手抜き工事をするような悪徳業者も増えていますので、優良業者を見抜くために複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」を行いましょう。
見積もりを比較することで自宅に適した費用が把握できるため、最適な工事業者を選べます。
相見積もりの際には、極端に安い、あるいは高い業者は避けてください。相場から大きく外れた金額を提示してくる業者は、手抜き工事をしたり詐欺を目的としていたりする可能性があります。
リフォームガイドから紹介する業者は、審査を通過した優良な業者のみです。
その中からお住まいや要望に合った業者をピックアップし、同時に複数社から見積もりを取ることができますので、お気軽にお問い合わせください。
③補助金・助成金を活用する
外壁カバー工法など、住宅の改修工事費用に対して自治体から補助金や助成金を利用できるケースがあります。
ただし要件や補助額は各自治体によって異なり、工事完了後に申請しても補助金の対象にならないことがほとんどです。
まずはカバー工法が補助金の対象になるのか、工事を依頼する前に自治体のホームページや担当窓口で確認するようにしましょう。
ここでは参考として、2つの自治体の補助金制度を紹介します。
東京都渋谷区|【住宅簡易改修支援事業】 |
---|
<対象> <助成金額> <公式ページ> |
千葉県銚子市|【住宅リフォーム助成事業】 |
<対象> <補助金額> <公式ページ> |
青森県三沢市|【令和6年度住宅リフォーム事業費補助金】 |
<対象> <助成金額> <公式ページ> |
7.外壁カバー工法の工事期間
外壁のカバー工法の工事は、トータルで1か月程かかります。
カバー工事は2~3週間で終わることが多いですが、同時に軒天(のきてん)・破風(はふ)・雨どいなどの細かい部分の塗装工事を行うことが多いです。
また、せっかく足場があるため、屋根も同時にリフォームする方も多いです。屋根工事もする場合は1か月~1か月半の日数を見積もっておきましょう。
【同時に塗装を行う部分】
8.外壁のカバー工法に使えるの外壁(サイディング)材
ここでは、外壁のカバー工法で選べる外壁材をご紹介します。
①金属系サイディング(ガルバリウム鋼板、アルミニウムなど)
金属系サイディングとは、ガルバリウム鋼板やアルミニウム合金などの金属板と、断熱効果のある板材を組み合わせた外壁材です。他の建材に比べて軽量で施工しやすいため、カバー工法に向いています。
断熱性能も高く、ひび割れしにくいことも人気の秘密でしょう。
しかし表面の細かな傷から錆びやすく、定期的な塗装によるメンテナンスは必要です。錆び以外にもチョーキングや塗膜の剥がれを確認したら、早めに塗装を検討することをおすすめします。
また、人気な素材のためメーカーも様々なデザインを手掛けており、「スパン柄」と呼ばれる金属系特有のスタイリッシュな印象の柄以外にも、「石積み調」「レンガ調」「木目調」「塗り壁調」などバリエーションが増えています。
②窯業系サイディング
窯業系(ようぎょうけい)サイディングとは、セメントに繊維質原料を混ぜて板状に成型した建材です。
機能性とデザイン性に優れているため、多くの住宅で採用されており、色やデザインのバリエーションも豊富です。たとえば「タイル調」や「レンガ調」「石目調」などがあります。
比較的安価なため初期費用を抑えることができ、施工期間も短いのが魅力です。また耐火性に優れ、防火外壁材と呼ばれることもあります。
しかし素材に防水機能はなく、10年に一度程度塗装をする必要があります。メンテナンスを怠るとひび割れやはがれが生じて劣化しやすくなるため、こまめな修繕が必要になるでしょう。
③木質系サイディング
木質系サイディングは、天然の木材が主原料です。断熱性に優れており、省エネ効果も期待できます。
工場製品では表現できない、木材が持つ独特な風合いを好む人におすすめです。経年により劣化しますが、その色褪せも味わいとして楽しむことができるでしょう。
木質系サイディングは天然素材のため、コストは比較的高めです。とくに上質な木材を採用した場合は、建築コストは高額になります。
木材のため防火性は低く、腐食にも弱い素材です。雨水の浸み込みを防ぐためにも、3~10年に一度は、塗装工事を行う必要があるでしょう。
④樹脂系サイディング
樹脂系サイディングとは、塩化ビニル樹脂を主原料とした建材です。日本でのシェア率は1%程度と低いものの、耐久性の高さと凍害や塩害に強い特徴から、北米でのシェア率は50%を占めるといわれています。
北海道や新潟、秋田など寒冷地ではリフォーム工事に採用されていることがありますが、その他の地域では施工できる業者を探すのに苦労するかもしれません。
樹脂系サイディングは素材に顔料が練り込まれているため、色褪せに強く再塗装が不要です。また防水性・撥水性に優れ、衝撃に強い割に軽量な素材のため、カバー工法にも向いています。
9.まとめ
外壁のカバー工法は、張り替えに比べて「費用が安い」「工事期間が短い」「断熱性と遮音性が高い」というメリットがあります。
一方で、「利用できる材料がかぎられる」「外壁の耐震性が低下する」「劣化が激しい外壁には使えない」といったデメリットがあることも把握しておきましょう。
カバー工法にかかる費用は150~220万円程度です。費用を抑えるためには、安価な外壁材を選んだり、自治体が設けている補助金や助成制度の活用を検討するといった方法があります。
また、ご自宅の外壁がカバー工法でリフォームできるかどうかを自分で判断するのは難しいため、必ずプロの業者に判断してもらいましょう。
どの業者に依頼すれば良いのかわからない方はぜひリフォームガイドをご活用ください。
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