
外壁塗装は、高額な費用がネックとなりDIYを検討される方も多いでしょう。業者に依頼した場合にかかる工事費を、DIYであれば材料費と道具代のみに抑えられます。
しかし、高所作業による危険や適切な施工技術の必要性など、考慮すべき点も多くあります。特に2階建て以上の住宅や、ひび割れなどの補修が必要な場合は、安全性の観点から業者への依頼がおすすめです。
本記事では、外壁塗装をDIYではなく業者に依頼すべきケースや、DIYをする場合にかかる費用、具体的な作業手順、注意点などを解説します。補助金の活用や費用を抑える方法もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。


目次
1.外壁塗装をDIYではなく業者に依頼すべきケース
外壁塗装は、建物の規模や状態、求める仕上がりの品質によって、DIYが向かないケースがあります。
1-1.2階以上の住宅を全面塗装する場合
2階建て以上の住宅の外壁塗装では、作業高が5m以上に及ぶため、一般的な家庭用脚立(高さ3m程度)では安全な作業はできません。足場を設置する必要がありますが、DIYの場合、足場材のレンタル期間が長くなり、かえってコストが膨らむ可能性があります。
高所作業の危険性を考えても、足場の組み立てから塗装作業まで、一貫して専門業者に依頼することが賢明です。仮に足場業者のみに依頼する場合でも、レンタル期間中の天候不順や作業の遅れによって予想以上の費用がかかることもあるでしょう。
1-2.ひび割れなど補修が必要な場合
外壁にひび割れなどの劣化がある場合、その補修には専門的な知識と技術が必要です。特にひび割れの幅が0.3mm以上ある場合は、建物内部にまで問題が及んでいる可能性があり、業者による適切な補修が必要です。
ひび割れを発見したら、業者に診断からお願いしましょう。
1-3.質の高い仕上がりを求める場合
外壁塗装は建物の見た目を大きく左右する重要な工事です。DIYで施工すると、経験不足から塗りムラが発生しやすく、光の当たり方によって表面の凹凸が目立ってしまいます。
また、市販の塗料では十分な厚みを確保できず、早めにはがれてしまうこともあります。
プロが使う専用の塗料は、色調や質感の選択肢も豊富にあり、施工するには技術が必要です。美しい仕上がりと耐久性を両立させるためには、専門業者による施工をおすすめします。
2.DIYで外壁塗装をした場合にかかる費用や工期の目安
外壁塗装をDIYする場合、業者に依頼するよりも費用は半額程度で済むものの、工期は6倍程度かかるとも言われます。
以下では具体的な費用と工期を解説します。
2-1.費用
外壁塗装をDIYで行った場合にかかる費用は30〜50万円程度です。
材料費は10〜25万円、足場費用で15〜20万円が目安となるでしょう。
住宅の外壁面積や使う塗料によって費用は変動しますが、一般的な30坪程度の住宅でしたら上記が目安となるでしょう。
2-2.工期
外壁塗装を1人でDIYする場合の工期は、2カ月〜3カ月程度かかると見込んでおきましょう。外壁塗装の工期は、天候にも左右されるため、思うように進まないことも少なくありません。
またDIYの場合、作業が分からずに確認する時間や、失敗してやり直すことを考えると、人数を増やしたとしても業者と同じように2~3週間で工事をすることは困難です。
ただし、足場をレンタルする場合、レンタル期間が延びる分、費用がかかってしまうことは理解しておきましょう。
3.外壁塗装をDIYでおこなうメリットとデメリット
外壁塗装をDIYで行うメリットとデメリットを把握し、DIYで外壁塗装をするのかどうか、最終判断をしましょう。
3-1.外壁塗装をDIYでおこなうメリット
外壁塗装をDIYでおこなうメリットは以下の2つです。
- 人件費がかからない
- 好きなデザインで塗装ができる
人件費がかからない
外壁塗装をDIYで行う最大のメリットは、何といっても人件費が節約できることです。
道具をそろえる費用や材料費は必要ですが、工事にかかる総額が業者の半額程度ですむでしょう。
ただし、足場の設置と解体はDIYではできません。全面的な外壁塗装の場合は、高所の作業のために、安全性と作業効率を考えて足場が必要です。
足場の設置は15〜20万円程度をかけて、足場業者に依頼する必要があります。
好きなデザインで塗装ができる
外壁塗装をDIYで行うもうひとつのメリットが、デザインを自由にできる点です。
業者に依頼する場合、3色以上を使った外壁塗装は追加費用が必要で、細かいデザインまで指定すると高額な工事費となってしまいます。
DIYであれば自分で塗装するため、例えば「窓の周りは3色で絵画のように塗装しよう」と考えても簡単に実践できます。
3-2.外壁塗装をDIYでおこなうデメリット
外壁塗装をDIYでおこなうデメリットは以下の4つです。
- 危険が伴う
- 工期がかかる
- 費用が業者よりも高くなるリスクがある
- トラブルが起こりやすい
危険が伴う
外壁塗装のDIYで最も警戒すべきは、高所作業に伴う事故のリスクです。DIYでは費用を抑えるために、はしごや脚立を使用することが多いですが、足場と比べて極めて不安定で、転倒や落下の危険性が高くなります。
実際に、厚生労働省の調査によると、建設業の事故の38%が墜落・転落によるものです。また、エアコンの室外機やボイラーの養生不備による事故など、思わぬリスクも存在します。
命に関わる重大な事故を防ぐためにも、高所作業は必ず専門家に依頼するのがおすすめです。
工期がかかる
前述したように、DIYで外壁塗装を行うと、業者に依頼するよりも塗装期間が延びてしまいます。
さらに工期が長いということは、その分足場を設置している期間も長くなります。足場のレンタル費用もかかるほか、日常生活に支障が出ることがあるため、家族の理解を得る必要があるでしょう。
費用が業者よりも高くなるリスクがある
外壁塗装をDIYする最大のメリットは費用が安くなることですが、場合によっては業者の方が安いケースがあります。原因は外壁塗装の失敗です。
DIYでは十分な技術を持たない人が塗装するため、塗膜がはがれやすくなります。うまく下地処理や下塗り作業ができないと、1年とたたずに剥離してしまい、結局は業者に依頼することも珍しくありません。
最終的に業者に依頼するとなると、DIYの費用や労力がムダになってしまいます。
トラブルが起こりやすい
DIYで外壁塗装をする大きなのデメリットの一つに、近所トラブルがあります。
塗料は小さな飛沫(ひまつ)になるため、風で簡単に飛んでしまいます。塗料が隣家に飛び、住宅や車などに付着してしまうと、近隣住宅のクレームや賠償に発展するリスクがあります。
隣の家と距離が近い場合は、DIYに対して慎重になりましょう。
4.外壁塗装をDIYでするために必要な手順
外壁塗装をDIYで行うために必要な手順は以下の通りです。
- 道具を準備する
- 足場を組み立てる
- 外壁の洗浄・乾燥をする
- 養生する
- 下塗りをする
- 中塗り・上塗りをする
- 付帯部を塗装する
- 足場を解体して清掃する
それぞれの工程を詳しく説明していきます。
4-1.道具を準備する
外壁塗装のDIYに必要な道具には以下があります。
<外壁塗装DIYの道具>
- 洗浄用のホース、高圧洗浄機
- ハケ
- ローラーの柄
- ローラーの毛
- ローラーバケツ
- ローラーネット
- 軍手
- 汚れてもいい服
- 脚立
- ヘルメット
- 作業靴
- マスキングテープ
- ガムテープ
- マスカー
- コーキング材
- コーキングガン
- ケレン用の皮すき
- 地面養生用のブルーシートやビニールシート
- 下塗り塗料
- 中塗りと上塗り用塗料
大規模なホームセンターやネットショップで購入可能です。
4-2.足場を組み立てる
足場の設置は高度な技術と部材が必要になるため自力ではできません。住宅の全面的な外壁塗装の場合は15〜20万円を支払って足場専門の業者に依頼しましょう。
足場専門の業者はインターネットや電話帳から探すことができます。
4-3.外壁の洗浄・乾燥をする
ホースや高圧洗浄機を使って外壁を洗浄します。洗浄後は、皮すきを使ってケレン作業を行います。
ケレンとは、はがれかけている塗装を落として下塗りが付着しやすいようにする作業です。
また、洗浄後は完全に乾くまで、1日以上時間をおきましょう。
4-4.養生する
塗料で汚したくない部分をテープやシートで保護します。
養生が不十分だと隣家に塗料が飛びやすくなったり、想定外の場所を塗ってしまったりすることがあります。
また、ガムテープやマスキングテープの貼り方次第で外壁塗装の仕上がりが変わるため、きれいに貼りましょう。
4-5.下塗りをする
中塗りと上塗り塗料をはがれにくくするために下塗りをします。
下塗りには外壁と塗料を密着させるの役割があります。下塗りをしないと塗装が短期間ではがれてしまうため、必ず行いましょう。
4-6.中塗り・上塗りをする
仕上げ用の塗料を2回塗る作業です。
1回目を中塗り、2回目を上塗りと呼びます。
特に上塗りは外壁の見栄えを決める重要な作業のため、塗りムラに気を付けましょう。
4-7.付帯部を塗装する
付帯部とは、雨樋(あまどい)や軒天井といった外壁の細部をさします。
付帯部は外壁の他の部位よりも劣化しやすいため、忘れずに塗装しましょう。
4-8.足場を解体して清掃する
塗装作業が完了したら最後に業者が足場を解体します。
足場を解体したら清掃を行って工事完了です。
DIYでは工事後に塗装がはがれることが多いため、使用した塗料や道具は保管しておきましょう。
塗料によって悪臭を放つため、保管場所はできるだけ住居から離れた場所にすることをおすすめします。
5.外壁塗装でDIYする際の注意点
外壁塗装のDIYをするにあたり、注意しておきたいことを3点解説します。
5-1.下地処理を確実に行う
外壁塗装の最も重要な工程と言っても過言でないのが「下地処理」です。
高圧洗浄機やブラシを使用して、外壁に付着したほこり、油脂、コケ、カビなどの汚れを徹底的に除去する必要があります。これらが残っていると、新しい塗膜が剥離する原因となります。
また、ひび割れがある場合は適切な補修が必要で、幅が大きい場合はUカットシール材充填(じゅうてん)工法などの特殊な処理をします。金属系サイディングの場合は、さびの除去も重要な作業です。これらの下地処理を怠ると、見た目は良くても耐久性の低い仕上がりとなってしまいます。
サビや劣化が広範囲にわたる場合には、業者に依頼するのが安心です。
5-2.安全対策を行う
外壁塗装は高所作業や有機溶剤の使用など、多くの危険を伴う工事です。
必要な安全装備として、ヘルメット、ゴーグル、防毒マスク、滑り止め付きの安全靴、作業着(ニッカポッカやタイベックヤッケ)、専用手袋、安全ベルトを必ず用意しましょう。特に防毒マスクは簡易タイプを避け、有機溶剤に対応した本格的なものを選ぶ必要があります。
また足場には、手すりや親綱(安全フックを取り付けるロープ)を必ず設置してください。暑さや作業性を理由に安全装備の着用を怠ると、重大な事故につながる可能性があります。
5-3.近所トラブルを防止する
外壁塗装のDIYで近所トラブルを回避するために、以下の3つを必ず行うようにしましょう。
- 工事前にあいさつする
- 悪臭や騒音が発生する作業の日は事前に告知する
- 塗料が飛散しないよう徹底的に対策していることを説明する
工事前のあいさつをしなかったばかりにクレームが発生することも少なくありません。事前のあいさつはしっかり行いましょう。
足場を組み立てる日や、塗料を使用する日は、騒音や騒音が発生します。あいさつと合わせ、塗装日や足場の設置・解体日を近隣住民に伝えておくことが大切です。
塗料が飛散しないよう、足場をメッシュシートで覆った上で、塗料の扱いにも気をつけるといった説明を、事前に近隣住民にしておきましょう。
6.外壁塗装をDIYせずに費用を抑える方法
外壁塗装を業者に頼む場合でも、費用を抑える方法はいくつかあります。ここでは下記3つの方法を解説します。
- 補助金や助成金を利用する
- 相見積もりを取る
- 閑散期に工事する
6-1.補助金や助成金を利用する
外壁塗装では地方自治体の補助金や助成金を受けられるケースがあります。
例としては、リフォーム全般の改修工事に補助金を出している自治体で、100万円の工事に対して10〜20万円程度の補助金や助成金が受け取れることもあります。
お住まいの自治体のホームページや窓口で確認してください。
▼外壁塗装の助成金・補助金に関して、詳しい情報はこちらの記事をご確認いただけます。


6-2.相見積もりを取る
外壁塗装の費用は業者によって大きく異なるため、3社ほどから見積もりを取ることが重要です。その際、業者に相見積もりを取っていることを明確に伝えることで、より競争力のある価格を引き出せる可能性があります。
見積もりの比較では、単に総額だけではなく、使用する塗料の種類や品質、足場の仕様、養生の方法など、細かな内容まで確認することが大切です。


6-2.閑散期に工事する
外壁塗装は気温や湿度が安定する春・秋が繁忙期となり、料金も高めに設定される傾向があります。一方、夏季や冬季は比較的閑散期となるため、業者によっては割安な価格で工事を請け負うことがあります。
近年では、高温や低温でも施工できる塗料が開発されており、技術の進歩によって季節を問わず施工が可能です。
ただし、梅雨時期や大雪が予想される時期は避けるべきで、また予期せぬ天候不良による工期の延長も考慮に入れる必要があります。
閑散期の工事を検討する際は、使用する塗料の特性や天候リスクについても、業者とよく相談することをおすすめします。


7.まとめ
外壁塗装のDIYは、工事費用を大幅に抑えられる可能性がある一方で、安全面や品質面で重大なリスクを伴います。特に2階建て以上の住宅や、補修が必要な箇所がある場合は、専門業者への依頼を強くおすすめします。
ただし、業者に依頼する場合でも、費用を抑える方法はいくつかあります。夏季・冬季の閑散期に工事する、3社以上から見積もりを取って比較する、補助金制度を活用するといった方法を検討してみてください。
外壁塗装は、住宅の資産価値を左右する重要な工事です。安全性と品質を最優先に考え、必要に応じて専門家の力を借りながら、計画的に進めましょう。