
元々地盤が弱い地域では大きな地震がくると、液状化現象により家が傾くことがあります。大きな地震がなくとも、地盤が弱い地域では知らず知らずのうちに地盤沈下を起こし、家が傾いているケースもあります。
家が傾いていると倒壊の心配が出てくると思いますが、そもそも建て直さずに傾きを直せるのか、どれくらい費用がかかるのかと疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は家の傾きを直すための費用と方法を解説し、どれくらいの傾きだと許容範囲になるのか紹介します。傾きを調べるためのセルフチェックも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.家の傾きを直す工事の種類&費用
家の傾きを直す工事は、地盤や傾きの度合いによって適切な工法が変わります。費用は工法によって変わり200~1000万円ほどかかります。
ここではその種類、費用、工期などを表にまとめました。
費用 | 工期 | 対応可能な基礎 | |
---|---|---|---|
土台上げ工法 | 200~300万円 | 2~3週間 | ・ベタ基礎 ・布基礎 |
硬質ウレタン注入工法 | 350~600万円 | 1~3週間 | ・ベタ基礎 |
薬液注入工法 | 300~600万円 | 1~2週間 | ・ベタ基礎 |
耐圧板工法 | 500~700万円 | 2~5週間 | ・ベタ基礎 ・布基礎 |
アンダーピニング工法 | 600~1,000万円 | 3週間~2ヵ月 | ・ベタ基礎 ・布基礎 |
出典:沈下修正・傾斜住宅の補修工法|一般社団法人 地盤安心住宅整備支援機構
ベタ基礎、布基礎とは?
ベタ基礎とは、床一面を覆うように鉄筋コンクリートを施工する方法。大きな面で建物の荷重を分散しながら家を支えます。
布基礎も床一面がコンクリートで覆われていますが、鉄筋が入っているのは壁や柱などの下のみ。線や点で建物を支えます。
阪神淡路大震災以降は、耐震性の観点から多くの住宅でベタ基礎が採用されています。
【土台上げ工法】安価で小さめの傾きを直す
土台上げ工法とは土台を持ち上げて、傾きを直す方法です。ベタ基礎、布基礎両方に対応しています。
費用は約200~300万円と、他の工法よりも安価。工期も2~3週間程度と短く、住みながらの施工が可能なので仮住まいの必要はありません。床下での作業かつ騒音や振動が少ない工法であることから、住む人への影響が少ないのもメリットです。
ただし土台の高さ調整のみで傾きを直すため、地盤がしっかりしていることが前提となります。液状化現象が起こっていたり、現在も傾きが進行しているような状態では応急処置にしかなりません。
また土台の高さを上げて調整するので、10cm以上のひどい傾きには対応ができません。
【硬質ウレタン注入工法】小さい傾きのみ対応
硬質ウレタン注入工法は地面に膨らむ性質のある薬剤を注入し、基礎の下から建物を押し上げて元に戻す方法です。面で支えるベタ基礎のみ対応可能です。
費用は約350~600万円と比較的安価で、工期も1~3週間と短い工法です。住みながらの施工が可能で、重機もあまり使用しないため生活にほとんど影響がありません。
ただし5cm程度の傾きにしか対応できず、地盤の質を変えることはできないため、地震などで液状化した場合は再び傾く恐れがあります。
【薬液注入工法】小さい傾き修正と地盤改良が同時に可能
薬液注入工法は基礎の下に薬剤を注入し、柔らかい地面を固めて建物を持ち上げる工法です。
費用は約300~600万円と比較的安価で、工期は1~2週間と短期間です。こちらも住みながらの施工が可能で、生活へ支障が出にくいのがメリット。
また傾きを直すのと同時に、弱い地盤の改良もできます。その後地震がきても地盤が強くなることで、再び傾く可能性は低くなるでしょう。
ただし対応範囲は5cm程度の傾きで、それより大きな修復には向いていません。施工範囲に薬液が十分浸透せず、固まらない部分ができてしまうと強度低下などの不具合に繋がるため、経験が豊富な業者に頼む必要があるでしょう。
【耐圧板工法】安定した地盤で大きな傾きを直す
耐圧板工法とは建物の下に穴を掘って耐圧板(金属の板)を敷き、その上に設置したジャッキで建物を持ち上げて傾きを直す方法です。家の重さでジャッキが沈まないように、耐圧板を敷きます。基礎の下から持ち上げるため、大きな傾きにも対応できるのが特徴です。
費用は約500~700万円で、工期は2~5週間。住みながらの工事も可能で、大きな傾きもミリ単位で細かく調整できます。
ベタ基礎、布基礎のどちらも対応が可能ですが、土台上げ工法と同じく地盤が安定していることが前提です。さらに強い地盤が2m以内にあることが条件となります。地盤を改良する工法ではないので、地震などで液状化すると再沈下します。
【アンダーピニング工法】地盤沈下による大きな傾きを直す
アンダーピニング工法は長い杭を強い地盤に刺して、家の傾きを直す方法です。杭と地盤の両方で家を支えるので、地震などで再沈下する可能性が低くなります。
大きな傾きも修復でき、ベタ基礎・布基礎ともに施工可能です。大掛かりな工事ですが引っ越しの必要はなく、生活への影響も少ないでしょう。
費用は大掛かりな工事になる分、600~1,000万円と他の工法よりも高くなります。杭の長さや本数によって費用に開きが出るため、目安で提示した費用より高くなることもあるでしょう。
2.こんなときは注意!家の傾きで起きる現象
地震などで明らかに家が傾いたときを除き、普段生活をしていると家が傾いているかどうか分かりにくい場合もあると思います。「自分の家が傾いているのか知りたい」と感じている方に向けた、簡易的なチェック方法をご紹介します。
こんな現象が見られたら要注意!
- ビー玉など丸いものを床に置くと転がる
- 壁と柱の間に隙間がある
- ドアや窓がゆがんで開け閉めしにくい
- 外壁や基礎に大きな亀裂が入っている
- 特定の部屋にいると気分が悪くなったりめまいがする
もしひとつでもチェックが入ったら、家が傾いている恐れがあります。上記の方法以外にも、水平を測る水平器を利用するのもおすすめです。手軽にチェックするなら、水平器アプリもよいでしょう。
傾いている家は本来の耐震性を発揮できない可能性が高く、大きな地震に耐えられないかもしれません。まずは一度専門家に傾きを見てもらうことをおすすめします。
3.どのくらいの家の傾きなら直す必要がある?
結論から言うと、1度以上の傾きがある場合は早急に工事をしたほうがよいでしょう。
1度の傾きは、地震による国の被災者支援策の基準に当てはめると「大規模半壊」に相当する規模です。健康被害や住宅の安全性に不安がある状態なので、早急な対応をおすすめします。
なお、1度以上傾いているかどうか、自分で正確な判断をするのは難しいのですが、住んでいると多くの人が、ふらつきや頭の重さなど体調に異変を感じるようです。
傾きがどれほどなのか正確に知りたい場合は、住宅診断士や家の傾きを直す業者にホームインスペクション(住宅診断)を依頼することもできます。ホームインスペクションの費用相場は簡易的なもので5~7万円、家全体をくまなく診てもらう場合は10~15万円ほどです。
傾きの許容範囲とされる角度は品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によると、3/1000(角度だと0.17度)以内と定められています。この角度以内であれば早急な工事は必要ないと判断されるかもしれません。
ただし診断をして3/1000以内であっても、住まう人が体調不良を訴えているのであれば、工事の必要があると判断される可能性もあります。人によって傾きの感じ方は異なるため、許容範囲の傾きであっても、傾きによる健康被害があれば家の傾きを直す工事を検討したほうがよいでしょう。
4.まとめ
「家が傾いているのかも?」と感じても角度を見た目で判断するのは難しいので、一度専門家へ調査を依頼することをおすすめします。またどの工法が適しているのか、実際に調査をしてみないと分かりません。少しでも家の傾きに対し不安があるのであれば、調査だけでも依頼してみましょう。
ただし、家の傾きを直すには技術が必要です。地盤の強度や基礎の種類によって適切な工法が変わり、工事もミリ単位の正確な作業が求められます。同様の工事実績が豊富な会社を選べば、自宅にぴったりの工事プランを提案してもらえるはずです。
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