
外壁塗装の塗料選びでは、耐久性とコストのバランスが重要です。アクリル塗料は最も安い塗料として知られていますが、耐用年数は他の塗料と比べて短めである一方で、豊富なカラーバリエーションを持ち、さまざまな色から選べるのが特徴です。
近年では高機能タイプも登場し、従来の課題であった耐久性を改善した製品も見られます。しかし、長期的な耐久性では他の塗料に及びません。
この記事では、アクリル塗料の特徴やメリット・デメリット、他の塗料との違いを具体的に解説します。コストを抑えながら、家の外観をきれいに保つための塗料選びの参考にしてください。
目次
1.アクリル塗料の特徴
アクリル塗料は、アクリル樹脂を主な材料としてつくられた塗料です。1950年ごろに登場した当時は、鮮やかな色合いが出せる画期的な塗料として広く使われていました。その後、ウレタンやシリコンなど、より性能の高い塗料が開発されたため、現在では外壁塗装での使用は減ってきています。
しかし、価格が手頃なことや色の種類が豊富なこと、扱いやすいことから、DIYではよく使われています。また、用途や場所によっては、アクリル塗料が最適な選択となる場合もあります。特に内装用の塗装や、外壁でも短い間だけきれいな状態を保つことが目的の場合には、コストパフォーマンスの良さから選ばれることが多いでしょう。
(豆知識)高機能なアクリル塗料もある
アクリル塗料には、一般的なものの他に、性能を高めた種類もあります。シリコンやウレタンを混ぜることで、それぞれ特徴的な性能が生まれます。例えば、シリコンを配合したタイプは長持ちしやすく、ウレタンを配合したタイプは傷つきにくいというのが特徴です。
最近では、アクリル樹脂の純度を極限まで高めた「ピュアアクリル」と呼ばれる塗料も登場しています。ピュアアクリルは、従来のアクリル塗料の弱点だった「硬くて割れやすい」という問題を改善し、伸び縮みに強く、ひび割れにも強い性質を持っています。
さらに、ポリカーボネート樹脂を配合することで、耐候性(外部環境への耐性)も大きく向上していますが、価格は一般的なアクリル塗料より高くなる点には注意が必要です。
2.アクリル塗料のメリットとデメリット
アクリル塗料で外壁塗装をする前に、メリットとデメリットを理解しておきたいものです。
両方を把握しておけば目的によって塗料の使い分けができるようになるでしょう。
2-1.アクリル塗料のメリット
アクリル塗料のメリットは2つあります。
- 材料費がもっとも安い
- カラーバリエーションや商品が豊富
それぞれ詳しく解説していきましょう。
■材料費がもっとも安い
アクリル塗料は、外壁塗装で使う主な塗料のなかで材料費がもっとも安いです。
詳しい金額は後述しますが、一般的に使用するシリコン塗料に比べると6割程度の材料費ですみます。
工事にかかる費用が安くなるのは大きなメリットと言えるでしょう。
■カラーバリエーションや商品が豊富
発色がよいため他の塗料と比較して色の種類が多いメリットがあります。
また、歴史が長い塗料のため商品数が豊富といった特徴もあるでしょう。
2-2.デメリット
アクリル塗料には以下の3つのデメリットがあります。
- 耐用年数が短い
- ひび割れしやすい
- 光沢が失われるのが早い
詳しくチェックしてみましょう。
■耐用年数が短い
アクリル塗料の耐用年数は後述しますが、他の塗料に比べて最大で10年以上の差が出る場合もあります。そのため長期的に考えると塗装回数が多くなり、メンテナンスコストが高くなるでしょう。
初期費用こそ安いですが、長い目で見ると割高な塗料と言えます。
■ひび割れしやすい
アクリル塗料は塗膜(塗装の膜)が硬いため、ひび割れしやすいデメリットがあります。ひび割れすると、外壁の下地が露出してカビの発生や雨漏りにつながるため、塗り替えが必要となるでしょう。
■光沢が失われるのが早い
劣化しやすいため3年もすれば光沢が徐々に失われていきます。
外壁や屋根の美しさを長く保ちたい人には向いていない塗料と言えるでしょう。
2-3.アクリル塗料が適しているのはどんな場面?
アクリル塗料は耐久性では劣りますが、コスト重視や短い間だけきれいな状態を保つのが目的の場合に適しています。特に、以下のような場面でおすすめの選択肢となります。
■数年で取り壊す予定がある
近い将来に引っ越しや取り壊しを予定している住宅には、アクリル塗料がぴったりです。耐久性は低めですが、初期費用を抑えられるため、一時的な外観の改善には十分な効果が得られるでしょう。
店舗の外装など、定期的なイメージチェンジが必要な建物にも向いています。また、軒天井など、比較的劣化の影響を受けにくい場所での使用もおすすめです。メンテナンスの頻度は高くなりますが、予算を最小限に抑えたい場合の現実的な選択肢といえます。
■頻繁に外壁の色を変えて楽しみたい
アクリル塗料は、鮮やかな発色と豊富なカラーバリエーションが魅力です。色の選択肢が多いため、見た目の印象を大きく変えたい場合に適しています。
他の塗料と比較すると、短い期間での塗り替えが必要になりますが、その機会に新しい色を楽しめるという見方もできます。他の塗料と比べて費用が抑えられるので、デザインの変更を楽しみたい方にとっては、コストパフォーマンスの良い選択といえるでしょう。
3.アクリル塗料と他の塗料の比較
外壁塗装の塗料選びでは、耐用年数と価格のバランスが重要です。
アクリル塗料は最も安いですが、耐用年数も短いです。メンテナンスの頻度を考えながら、各塗料の特徴を比較してください。
塗装の種類 | 耐用年数 | 価格(/㎡) |
---|---|---|
アクリル | 6~8年 | 1,500~2,000円 |
ウレタン | 8~10年 | 2,000~2,500円 |
シリコン | 10~15年 | 2,500~3,000円 |
フッ素 | 15~20年 | 3,000~3,500円 |
無機 | 20~25年 | 4,000~5,500円 |
3-1.ウレタン塗料
以前は外壁塗装でウレタン塗料が主流でしたが、現在はシリコン塗料に代わられています。価格が手頃で、柔軟性があるため割れにくいのが特徴です。雨どいや破風などの付帯部分によく使われ、光沢のある美しい仕上がりが魅力です。
ただし、耐用年数は8~10年と比較的短く、5年程度で光沢が失われ始めます。また、紫外線による劣化で色が変わりやすく、時間がたつとともにほこりが目立つようになってきます。外壁での使用を検討する場合は、耐用年数をしっかり考慮する必要があるでしょう。


3-2.シリコン塗料
現在の外壁塗装で最も使われている塗料です。10~15年と比較的長持ちし、価格も手頃なため、人気があります。商品の種類も豊富で、初めての外壁塗装では無難な選択といえるでしょう。
ただし、重ね塗りが難しいため、業者選びが重要です。多くの施工実績がある業者に依頼することで、きれいな仕上がりと長持ちする塗装が期待できます。また、メーカーによって価格や耐用年数に差があるので、見積時には使用する塗料の確認も大切です。


3-3.フッ素塗料
東京スカイツリーなど、大規模建築物でも採用される高性能な塗料です。価格は高めですが15~20年と長持ちするため、長期的に見るとコストパフォーマンスが良いでしょう。汚れにも強く、メンテナンスの手間も少なくて済みます。
ただし、素材の特性上、艶のない仕上がりは選べません。落ち着いた見た目が好みの方には向いていないかもしれません。また、施工時には専門的な技術が必要なので、経験豊富な業者を選ぶことが重要です。


3-4.無機塗料
有機物をほとんど含まない塗料で、20~25年という最長の耐用年数を誇ります。劣化の進行が非常に遅く、塗り替えの回数を最小限に抑えられるでしょう。高額な初期投資が必要ですが、メンテナンス頻度の低さを考えると、長期的には経済的な選択となります。
ただし、他の部分(雨どいや屋根など)の工事とタイミングが合わないと、足場代が余計にかかってしまう可能性があります。また、施工には高度な技術が必要で、対応できる業者も限られます。建物全体のメンテナンス計画を考慮した上で、選択を検討しましょう。


4.アクリル塗料の費用相場と耐用年数
アクリル塗料の費用相場と耐用年数を以下で解説していきます。
4-1.アクリル塗料の費用相場
アクリル塗料の材料費は、1平方メートル当たり1,500〜2,000円程度です。
30坪の住宅だと70万円程度かかるでしょう。
費用は外壁の面積の他、色分けをするかどうかなどで変わります。
4-2.アクリル塗料の耐用年数
アクリル塗料の耐用年数は外壁で6〜8年です。一般的なシリコン塗料であれば外壁で10〜15年はもつため、半分程度の耐用年数しかありません。
塗り替えまでの期間が短くコストパフォーマンスが悪いといった理由で、業者はアクリル塗料を屋根に使わないことが一般的です。
また、大手塗料メーカーは屋根用のアクリル塗料をほとんど扱っていません。
5.アクリル塗料を使う際の注意点と業者の選び方
アクリル塗料を使う際は以下の3つの注意点と業者の選び方を意識しておきましょう。知らずに工事を始めると、塗装に失敗して無駄な費用がかかります。
5-1.外壁塗装には向かない
アクリル塗料は外壁塗装には不向きとされています。耐候性が低く、紫外線や雨の影響で劣化が早いためです。
劣化が起こると早めに塗り替えをする必要があり、長い目で見るとコストがかかってしまいます。外壁塗装にはあまり適していない塗料といえるでしょう。
5-2.契約を急かしてくる業者は避ける
「今日中に契約してください」など、せかす業者には要注意です。こうした業者の多くは、考える時間を与えず、無理やり契約を結ばせようとする可能性があります。
信頼できる業者は、顧客に十分な時間を用意して、他社との比較も快く認めてくれます。また、工事内容や見積もりについて、分かりやすく丁寧に説明してくれるはずです。
実績が豊富で、施工例を写真や動画で確認できる業者は、安心して任せられる可能性が高いでしょう。特に塗装技能士1級や外壁診断士などの資格を持つ業者は、技術力の証明にもなります。
見積時の対応が丁寧で、質問にも親切に答えてくれる業者を選ぶと安心です。
また、事務所や施工現場の見学を勧めてくれる業者も信頼できるでしょう。決して急かされることなく、じっくりと検討できる業者を選んでください。
5-3.見積もりを複数の会社から取る
工事の見積もりは複数の会社から取ることが大切です。1社だけに依頼すると、費用や内容が適正かどうの判断が難しくなります。できれば、2、3社程度に見積もりを依頼するのがおすすめです。
見積もりを確認する際には、塗料の詳細が記載されているかをチェックしましょう。具体的な商品名やメーカーが明記されていない場合、トラブルが起こった場合にも言い逃れをされてしまう可能性があります。
また、外壁や屋根の塗装面積が「平方メートル」で具体的に記載されていることも重要です。「一式」という曖昧な表記がされている場合も注意してください。
工事工程には、下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが記載されていることや、写真撮影などで施工内容を証明してもらえるかも確認しておくとよいでしょう。


6.まとめ
アクリル塗料は、外壁塗装の中で最も手頃な価格の塗料です。耐用年数は6~8年と短めですが、発色が良く、色の選択肢も豊富です。ただし、劣化が早く、ひび割れしやすいため、長い目で耐久性を求める場合は他の塗料を検討する必要があるでしょう。
近い将来に取り壊しや売却を予定している住宅や、見た目の印象を頻繁に変えたい場合には、コストを抑えられるアクリル塗料が適しています。また、最近では高機能タイプも登場し、性能が向上していますが、やはり耐久性では他の塗料に及びません。
塗料選びでは、予算と希望する耐用年数のバランスを考慮し、建物の状況や将来の計画に合わせて判断することが大切です。
自宅がサイディング外壁の場合は、下記の記事もご覧ください。アクリル塗料以外を使った塗装の費用を具体的に解説しています。

