
築40年というと、ちょうど「リフォームでいいのか?思い切って建て替えるべきか?」と迷う時期。全体的な劣化や耐震面など心配も多く、リフォームだけで対応できるのだろうかと悩みますよね。
しかし建て替えとなると高額な費用がかかるうえ、そもそも法的に建て替えができない物件も存在します。そこで今回は、築40年の物件をリフォームするべきか、建て替えるべきかの判断基準について解説します。
目次
[判断軸1] まずは建て替えの制約がないかチェックする
最初にチェックしたいのが「そもそも法的に建て替えが可能な物件であるか?」という点です。
今は建物が建っていても、一度解体して更地にしてしまうと新たな建物を建てられない「再建築不可物件」というものが存在します。もし該当する場合、基本的にはリフォームを選ぶことになるでしょう。
1-1.法的に建て替えできない物件がある
代表的な再建築不可物件が、接道義務を満たしていない物件です。そもそも建築基準法では「幅4m以上の道路に2m以上接している土地」にしか建物が建てられません。そのため道路に接していなかったり、道路と接している部分の間口が狭すぎたりすると、建て替えができないのです。
この接道義務のルールが定められたのは、建築基準法ができた1950年のこと。そのため、それ以前の古い物件では、接道義務を満たしていないことが少なくありません。自宅が接道義務を満たしているか、まずは確認してみましょう。
出典:リフォームか建て替えか?どちらがいいか徹底比較|費用・寿命・工事制限など
1-2.建て替えられても、今の家より小さくなる可能性がある
ただし接道義務を満たしていない土地であっても、工夫次第で建て替えを可能にできるケースもあります。その方法の一つが「セットバック」。接している道路幅が4m未満の場合、道路の中心から2mのところまで敷地を後退させることで、建築を可能にするという方法です。
出典:スケルトンリフォームとは?どんな時に選ぶ?費用・事例など徹底解説
しかし、セットバックすることで敷地面積が小さくなるため、新しく建てる家も小さくなる可能性があります。そのままの広さを確保したいなら、リフォームの方が向いているかもしれません。
またセットバック以外にも、隣の土地を購入するなどして接道義務を満たす方法があります。再建築不可物件に詳しい工務店や不動産会社に相談するとよいでしょう。
[判断軸2] このあと何年住みたいのか考える
建て替えの制約がない場合、次に考えたいのは「あと何年その家に住みたいのか?」という点です。
リフォームと建て替えでは、その後の建物の寿命が異なります。そのため家族構成や人生設計によっても、リフォームか建て替えのどちらが適しているかが変わってくるのです。
リフォーム | 建て替え | |
---|---|---|
建物の残り寿命 | 約30〜40年 | 約60〜70年 |
向いている人 | ・30〜40年で解体してもいい ・次世代に引き継ぐ予定なし ・次世代に相続するタイミングで建て替えたい |
・30〜40年以上長く住み続けたい ・次世代に引き継ぐ予定あり |
2-1.リフォームならこの先30〜40年住める
建物の状態にもよりますが、築40年の物件をスケルトンリフォームなどで適切に修繕すると、この先30〜40年程度は安心して暮らせます。そのため子や孫に住まいを引き継ぐ予定がなく、今の家に30〜40年ほどしか住まない場合、リフォームがぴったりです。次世代には土地のみ残して、相続したら自由に新しい家を建ててほしい場合もリフォームが向いています。
2-2.建て替えならこの先60〜70年住める
もちろん定期的なメンテナンスは必要になりますが、新築した木造住宅の寿命は60〜70年ほど。20〜40代で長くその家に住み続ける予定がある方は、建て替えを検討されるとよいかもしれません。また建て替え後も適切にリフォームすることで、将来的に売却したり、子や孫に住まいを引き継いだりしやすくなります。
[判断軸3] リフォームと建て替えの費用を確認する
基本的にコスト面でお得なのはリフォームです。
リフォーム | 建て替え |
---|---|
約2,000〜3,000万円 ※内外装のスケルトンリフォームを実施した場合 |
約2,500〜5,000万円 |
築40年の家を全面的にリフォームしようと思うと、建物の状態にもよりますが、スケルトンリフォーム(内外装を解体して骨組みの状態からつくり直す)をすすめられることも多いです。スケルトンリフォームは耐震や断熱の問題も解消しつつ、普段は見えない構造部分がボロボロになっていたら修繕できるため、安心快適に長く住める家にすることができます。
この規模のリフォームをしても、費用は建坪30坪で2,000〜3,000万円前後が目安。建物の状態が悪くない状態や、過去にメンテナンスをしていれば、もう少し費用が抑えられる可能性も十分にあります。
建て替えは解体費がかかるうえ、ゼロから骨組みをつくり上げるため、リフォームに比べるとどうしてもかかる費用が大きくなります。また不動産取得税や登記費用など、新築と同じような諸費用も発生します。
[判断軸4] 建物の状態からリフォームが向いているかどうかを知る
基本的にはリフォームの方が低コストですが、建物の状態があまりに悪くリフォームで対応しきれない場合は、自ずと建て替えを選ぶことになります。また修繕箇所が多く予算を大幅に超えてしまい、リフォームが現実的ではなくなってしまう場合も。詳しく見ていきましょう。
4-1.老朽化の程度によってはリフォームができないことも
まず注意したいのが構造体の劣化です。築40年の家では雨漏りやシロアリ被害など、家の強度にも関係する問題が見られることが少なくありません。
部分的な修繕で済めばいいのですが、なかには「損傷があまりに激しくリフォームできない」「できなくはないが補修箇所が多すぎて費用が現実的ではない」といったケースもあります。
築40年の家でよく見られる症状
・家が大きく傾いている
地盤調査が義務付けられたのは2000年の法改正以降。築40年の家が傾いている場合、地盤に大きな問題を抱えている可能性もあります。建て替えずに地盤改良工事もできますが、費用が高額になります。
・雨漏りやシロアリ被害がひどい
雨漏りで天井裏が腐ったり、床下の木材がシロアリに食べられたりして、建物強度ががくっと落ちていることも。傷んだところをその都度補修していれば被害は抑えられますが、長い間放置されていると補修費用がかさみがちです。
・基礎が大きくひび割れている
築40年の住宅だと基礎に鉄筋が入っていなかったり、大きなひび割れが生じていたりする場合があります。基礎の強度が足りない場合は、ひび割れの修復や、鉄筋コンクリートの打ち増しなどが必要です。
リフォームの可否や、リフォームにかかる金額を知るには、建物の状態を詳しく見てもらう必要があります。住宅診断(インスペクション)やリフォーム会社の現場調査を受けましょう。
4-2.耐震・断熱の程度が低いとリフォーム費用が予算オーバーすることも
築40年の家は、耐震や断熱が不足しがち。内装や水回り交換などの表層リフォームのみで費用を抑えたいと考えていても、耐震補強や断熱リフォームのために予算オーバーしてしまうケースがあります。
[参考] 築40年の家の耐震性
築40年の家は旧耐震基準という古いルールで建てられており、震度5強程度しか想定されていません。太い柱や梁を使って頑丈に建てられた家も存在しますが、耐震補強が必要なケースが多く見られます。基礎を強くする、柱を金物で固定するなどさまざまな補強を組み合わせますが、補修箇所が多いとリフォーム費用が予算オーバーすることもあります。
耐震診断費用の目安 | 一般診断:約10万円 精密診断:約20万円 |
---|---|
耐震補強工事平均額 | 180万9,074円 |


[参考] 築40年の家の断熱性
日本の住宅で断熱材が普及しはじめたのは約30年前。築40年の家では断熱材が入っていなかったり、気密処理がされておらず隙間だらけだったりして、ひどく底冷えすることが珍しくありません。断熱リフォームにはさまざまな種類があり、箇所ごとに費用も異なります。
リフォーム方法 | 費用の目安 | |
---|---|---|
内窓設置 | 約6〜15万円 | |
断熱材を入れる | 床 | 約20〜30万円 |
天井 | 約15〜50万円 | |
壁 | 約80〜500万円 | |
屋根 | 約10〜60万円 |
4-3.リフォームにおける間取り変更に制約がある場合も
リフォームと建て替えで差が大きいポイントとしては、間取りの自由度も挙げられます。
リフォーム | 建て替え |
---|---|
・柱や筋交いなど重要な構造物は移動・撤去できないケースがある ・間取りの制限が出る可能性がある |
・建築基準法や構造以外の制限はない ・間取りの自由度が高い ・駐車場の位置、家の形や大きさなども変更可能 |
リフォームでも工夫次第で理想の間取りが叶うこともありますが、不可能であれば建て替え検討したほうがいいこともあるでしょう。


リフォームと建て替えの流れ
業者探しからリフォームが完工するまでにかかる期間は半年〜1年程度、建て替えの場合は1年〜1年半程度かかります。
出典:リフォームか建て替えか?どちらがいいか徹底比較|費用・寿命・工事制限など
いずれの場合も、まず始めるのは業者探しです。工事内容や費用を比べるためにも、3社ほどに見積もり依頼をするとよいでしょう。
リフォームと建て替えで迷っている場合も、それぞれの具体的な費用感がわかり、複数のプロに話を聞くことで、どちらを選ぶべきか判断しやすくなります。
リフォームか建て替えか迷ったらリフォームガイドへご相談を!
「リフォームが適しているのかわからない」「建て替えが可能なのかわからない」そんなときは、リフォームガイドにご相談ください。築古物件のリフォームに強い会社をご紹介いたしますので、建物の状態や敷地条件など具体的にご相談いただけます。
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まとめ
築40年の家でリフォームか建て替えか迷ったときの判断基準は次のとおりです。
リフォーム | 建て替え | |
---|---|---|
(1)法的な制約 | ー | 接道義務を満たさず建て替え不可/面積が小さくなるケースがある |
(2)建物の残り寿命 | 約30〜40年 | 約60〜70年 |
(3)費用 | 約1,500~3,000万円 | 約2,500〜5,000万円 |
(4)建物の状態 | ・建物の状態によってはリフォーム不可/費用がかさむ ・構造による間取りの制約あり |
・建築基準法や構造以外の制限なし ・間取りの自由度が高い ・駐車場の位置、家の形や大きさなども変更可能 |
最終的に迷ったときは、今の家に思い入れがあるかなども重要なポイント。「次世代に残したい立派な大黒柱があるから」「家族の思い出を残したいから」といった理由でリフォームを選ばれる方もいます。今の家の思い出や趣を残しながら、不具合や悩みを解消できるのはリフォームならではのメリットです。
リフォームにも建て替えにも、一長一短あります。さまざまな判断材料をそろえて、慎重に選びましょう。