
バリアフリーリフォームのなかでも「家の段差をなくしたい」と相談される方は多いもの。年齢を重ねるとちょっとした段差でもつまずきの原因となり、思わぬケガにつながることがあります。老後を元気に過ごすためにも、段差をなくすリフォームをしておくと安心です。
家の中の段差と一口にいっても、風呂やトイレの入口や玄関などさまざまな箇所があります。家の状態や予算によっても工事内容は変わってくるので、今回はさまざまなリフォームの方法や費用をご紹介します。リフォームの進め方や補助金についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.小さな段差ほどリフォームが必要!
玄関の上り框(あがりかまち)のような大きな段差をリフォームしたい、そう考えている方は多いかと思います。もちろん上り框のような大きな段差の上り下りが難しくなってきたら、リフォームが必要です。
しかしリフォームすべきなのは大きな段差だけはありません。特に注意したいのが、あまり存在感がない1〜2cm程度の小さな段差。大きな段差と違って認識しにくいので、うっかりつまずいて転倒し、骨折や寝たきりになってしまうリスクが非常に高いのです。
ご家族に介護が必要な方、高齢の方、車椅子を利用される方などがいる場合、次のような場所の段差のリフォームを検討されるとよいでしょう。
段差解消リフォームを検討するべき場所
2.風呂の入口の段差をなくすリフォーム方法と費用
古い浴室と脱衣所の間には、水の侵入を防ぐため5~20cm程度の段差が見られます。
この段差をなくすのに手軽なのが、洗い場に「すのこ」などを敷いて簡易的にかさ上げする方法です。すのこがずれると危ないので、ぴったり収まるサイズのすのこをオーダーして敷き詰めるのがおすすめ。手すりを併用すると、安定感が高まります。
工事内容 | 費用目安 |
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すのこを設置する | 約5〜10万円 |
手すりを設置する | 約1〜2万円 |
また在来工法の浴室(タイル張りの浴室)を、段差の少ないシステムバスに交換するのも一つの手。脱衣所との間に段差がないフラットな入口にすることができます。またぎの低い浴槽で入浴しやすくなったり、洗い場の床が滑りにくくなったりと、入口の段差解消以外のメリットもあります。
出典:https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=2852
工事内容 | 費用目安 |
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在来浴室→システムバスに交換する | 約70〜130万円 |


3.部屋(敷居)の段差をなくすリフォーム方法と費用
古い和室の床は廊下や洋室よりも高くなっており、入口に段差がついています。そのため和室に上がるときには、敷居部分をまたがなければなりません。また洋室の場合でも、入口にわずかな段差がついていることはあるでしょう。この数センチの段差は視力が落ちてくると認識しにくく、つまずきの原因になりやすいため注意が必要です。
最も手軽なのは、段差部分に小さなスロープを設置して段差を和らげる方法。
工事内容 | 費用目安 |
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段差に小さなスロープを設置する | 1ヶ所あたり約2千円~ |
しかし完全に段差がなくなるわけでなく、なだらかな傾斜をつくってつまずきにくくするだけなので、身体の状態によってはこの方法では不十分なこともあります。
そこでよく実施されるのが、床のかさ上げ・かさ下げというリフォーム方法です。既存の畳やフローリングを撤去して、下地を調整してから新しい床材に張り替えるため、やや大掛かりな工事になりますが、段差のないフラットな床になります。
また段差が少ししかない場合は、既存のフローリングを残したまま上から新しいフローリングなどを重ね張りするのも一つの手。床に厚みがでることで、段差が解消されるケースもあります。床をはがさないため工期が短く、費用も抑えられるのがメリットです。
工事内容 | 費用目安 |
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下地を調整して新しいフローリングを張る | 約27〜40万円 |
フローリングを重ね張りする | 約12〜27万円 |


4.玄関の段差をなくすリフォーム方法と費用
玄関の上り框の段差
玄関ドアを入ると、土間と室内を分けるために「上り框」という大きな段差があります。スロープや段差解消機を設置すると、車椅子でも出入りできるようになります。
工事内容 | 費用目安 |
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スロープを設置する | 約15~20万円 |
段差解消機を設置する | 約20~30万円 |
踏み台と手すりの設置のみで上り下りできる場合は、あわせて2〜4万円程度と費用を抑えられるでしょう。
玄関ドアの段差
また玄関ドアの下部分に、外から水や砂などが入らないために段差が設けられていることも。小さなスロープを設置して段差を緩和すると、つまずきにくくなるでしょう。
工事内容 | 費用目安 |
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玄関ドアに小さなスロープを設置する | 約2~10万円 |
玄関外(屋外)の段差
屋外に階段がある場合、スロープを設置すると車椅子でも安全に出入りできます。スロープが急すぎると危険なため、段差の高さの約6~12倍の長さのスロープが理想的です。
また、玄関ではなく、リビングや寝室から直接出入りできるようにリフォームするのも便利です。リビングと同じ高さのデッキをつくり、そこからスロープで外へつなぐことで車椅子でもスムーズに外出できます。
工事内容 | 費用目安 |
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屋外にスロープを設置する | 約40~60万円 |
ウッドデッキを設置する | 約50〜150万円 |


5.トイレの段差をなくすリフォーム方法と費用
トイレの床が廊下より一段下がっている場合
最近のトイレは廊下とフラットにつながっているもの。しかし一昔前のトイレは床がタイル張りで、水漏れや掃除のときに水が廊下へあふれてこないよう、一段下がっていることがあります。この段差を解消すると車椅子でもスムーズに入れるようになり、歩行者もつまずいて便器に顔をぶつけるなどのリスクを軽減できるでしょう。
段差をなくすには、一度便器を外してから床をかさ上げして、再度床を張って便器を取り付ける工事が必要です。これを機にトイレ一式・壁紙・床材を新しくするのもよいでしょう。
工事内容 | 費用目安 |
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下地を調整して新しい床材を張る | 約8~15万円 |
+新しいトイレに交換する | +約15〜50万円 |
+壁紙を張り替える | +約5千〜2.5万円 |
トイレと廊下の敷居の段差を解消したい場合
トイレと廊下の床の高さは同じだけど敷居の段差が気になる場合、敷居を撤去することもできます。ただし敷居を撤去するとドアの下に隙間ができるため、ドアの補修や交換が必要になります。
工事内容 | 費用目安 |
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敷居を撤去して補修する | 約5~7万円 |
ドアを交換する | +約4〜18万円 |
▼バリアフリーリフォームの基本の考え方や、箇所別のポイントについてはこちらの記事でくわしく解説しています。


6.段差をなくすリフォームで使える補助金や減税制度
家のあちこちにある段差をなくそうとすると、まとまった金額が必要になることも。ただしバリアフリーリフォームでは補助金や減税制度をうまく活用して、費用負担を減らせることがあります。ここでは利用できる補助金や減税制度の一部をご紹介しましょう。
6-1.介護保険
要支援・要介護認定を受けている方は、介護保険から住宅改修費を支給されることがあります。支給金額は、工事費のうち自己負担分1〜3割を除いた分。支給限度額は20万円なので、1割負担の場合は18万円が支給される計算です。なお20万円の上限を使い切ったあと、介護区分が重くなったり別の家に引っ越したりすると、再度支給の対象となることがあります。


6-2.市区町村の助成金
市区町村独自の補助金や助成金で、介護保険でカバーできない分を補助してもらえることもあります。お住まいの地域でどのような補助金制度があるか、一般社団法人住宅リフォーム推進業界の「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」で調べてみましょう。
6-3.所得税減税
所得税を納税している方は「リフォーム推進減税」という、所得税が1年間減税される制度も利用できます。ローンの借入がなくても利用できる点もポイントです。
6-4.固定資産税減額
バリアフリーリフォームを行うことで、1年度分固定資産税が減免される制度も。バリアフリーリフォームの場合、固定資産税額の1/3が減免されます。
▼詳しい制度内容や適用要件は、こちらの記事をご確認ください。


7.段差をなくすリフォームの実例3選
ここからは段差をなくすリフォームの実例を3つご紹介します。
7-1.段差のある玄関&部屋を車椅子で通れるようリフォーム
自宅と隣接する物件を賃貸として利用していましたが、入院から帰宅されるお母様のお部屋としてリフォーム。お母様が活き活き暮らせるとともに、介護や車椅子での生活を見越してプランニングしました。
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大きな段差があった玄関には、車椅子用のスロープを設置。間口も狭かったため、両開きの親子ドアに交換することで間口を約2倍に広げました。上り框にも段差がありますが、式台という板を置くことで車椅子でも通行できる高さ設定です。
室内も車椅子で移動しやすくするため、介護用のフラットな床材に変更しています。敷居もバリアフリー対応のものに変更し、スムーズな移動を叶えました。
リフォーム費用 | 316万円 |
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リフォーム面積 | 35㎡ |
工事期間 | 1ヶ月 |
築年数 | 40年 |
工事内容 | ・玄関スロープ設置 ・玄関ドアの拡張、交換、土間工事 ・間取り変更、内装工事 ・トイレ交換、拡張工事 ・洗面台取り付けなど |
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/823
7-2.フローリング上張りによる段差解消リフォーム
ご夫婦でお住まいの自宅をリフォーム。設備が古くなってきたことが、リフォームのきっかけです。キッチンや浴室などの設備を新しくするとともに、リビングの段差解消などバリアフリーも考えたリフォームを実施しました。
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リビングの入口にあった小さな段差。既存のフローリングを残したまま、上から新しいフローリングを重ね張りすることで、床が少し高くなり段差が解消されました。
リフォーム費用 | 425万円 |
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リフォーム面積 | 40㎡ |
工事期間 | 15日 |
築年数 | 26年 |
工事内容 | ・LDKの内装工事 ・階段の手すり設置 ・水回り設備の交換(システムキッチン、トイレ、システムバス、給湯器、洗面台)など |
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/438
7-3.排水方式の変更で家全体の段差を解消したリフォーム
子ども達が巣立ったあと、築25年のマンションをご夫婦二人で過ごすためにリフォームされた事例です。家のいたるところに段差がありましたが、水まわりの排水方法を変えることで床を下げて段差をなくすことに成功しました。
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キッチンの床が5cmほど高く、買い物袋や食器を持って出入りするときに段差でつまずきやすいのがお悩みでした。配管スペースを調査して排水方法を変更することで、リビングとフラットにつながるキッチンを実現しました。
トイレの入口にも、10cmほどの大きな段差がありました。床排水を壁排水に変更することで段差を解消。いっしょに便器や内装もリフォームすることで、明るく気持ちのいいトイレに生まれ変わりました。
リフォーム費用 | 587万円 |
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リフォーム面積 | 68㎡ |
工事期間 | 3ヶ月 |
築年数 | 25年 |
工事内容 | ・家全体の間取り変更や内装工事 ・水回り設備の交換(システムキッチン、トイレ) ・給排水管の更新 |
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/1273
8.段差をなくすリフォームの進め方
段差をなくすリフォームをしたいと思ったら、まず何からはじめればよいのでしょうか。ここからはリフォームの進め方を見ていきましょう。
8-1.家族でリフォームについて話し合う
まずは家族で集まって「優先してリフォームすべき箇所や予算」「単に段差をなくすだけでいいのか、家全体をバリアフリー化すべきなのか?」などの話し合いが必要です。要支援・要介護の認定を受けている場合は、ケアマネジャーにも相談しながらリフォームプランを検討します。
8-2.バリアフリーリフォームの経験が豊富な会社を探す
リフォームを依頼する会社は、工務店・リフォーム会社・ハウスメーカーなどさまざま。そのなかでもバリアフリーリフォームの経験が豊富な会社に依頼するのがおすすめです。バリアフリーリフォームで気を付けるべき点や、補助金を申請する流れなどを熟知しており、スムーズに進められます。
バリアフリーリフォームが得意なリフォーム会社をご紹介!
リフォームガイドは、厳しい審査基準をクリアした優良リフォーム会社のなかから、あなたにぴったりの会社を紹介するサービスです。
☑️無料でご相談いただけるので安心です
☑️ご要望をもとに最適なリフォーム会社をお選びします
☑️現地調査や見積もりの手配、キャンセル連絡もコンシェルジュにお任せください
8-3.リフォーム会社による現地調査を受ける
リフォーム会社が見つかったら、現地調査と見積もり作成を依頼。ケアマネジャー同席のもと、家の構造や工事内容を確認してもらいます。現地調査やヒアリング内容をもとに、リフォーム会社が工事図面や見積書を作成。内容の説明を受けながら、問題ないか確認しましょう。
8-4.リフォーム会社と契約して工事を開始する
工事内容や見積もりに納得できたら、リフォーム会社と契約します。介護保険から住宅改修費の支給を受ける場合、工事がはじまる前に自治体への申請が必要です。ケアマネジャーとリフォーム会社の双方に必要書類を揃えてもらいましょう。
市区町村から工事内容が承認されたら、いよいよ工事開始。完了後に領収書などを自治体に提出すると、助成金が還付されます。助成金を受け取る方法は自治体によっても変わるため、役所の窓口にてお問い合わせください。
9.まとめ
介護は長く続くことも多く、安心して暮らせる家にすることは住む人にとっても、家族にとっても大切なこと。段差をなくすリフォームを行って安全に過ごせる家づくりをしませんか。
リフォーム費用に心配があるときは、介護保険や市区町村の助成金を活用して負担が軽減できることもあります。要支援・要介護認定を受けていれば担当のケアマネジャーがつきますので、バリアフリーリフォームについて相談するとよいでしょう。