
築年数の古い住宅にお住まいの方の中には「そろそろ屋根のリフォームが必要かも」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
屋根の葺き替えを行えば、瓦のズレや破損、雨漏りなどの問題を解消できるだけでなく、外観も美しくよみがえります。
ただし、屋根工事は規模が大きく費用もかかるため、事前に相場感を把握しておくことが大切。
そこで本記事では、屋根の葺き替え工事の費用相場や安く抑えるためのポイント、施工事例もご紹介します。
ぜひ、屋根リフォームの参考にしてください。
目次
1.屋根の葺き替え工事の費用相場
まずは、屋根の葺き替え工事にかかる費用相場を屋根材別に解説します。
それぞれの工事の内訳費用も紹介していますので、予算を考える際の参考にしてみてください。
1-1.【屋根材別】屋根の葺き替え工事の総費用
一般的な30坪の住宅で屋根面積80㎡の場合、屋根材別の葺き替えの総額の費用相場は以下のとおりです。
既存の屋根材 | 葺き替える屋根材 | 費用相場 |
---|---|---|
瓦 | スレート | 90~200万円 |
ガルバリウム鋼板 | 100~210万円 | |
アスファルトシングル | 100~200万円 | |
瓦 | 100~240万円 | |
スレート | スレート | 70~200万円 |
ガルバリウム鋼板 | 100~200万円 | |
アスファルトシングル | 90~190万円 |
1-2.屋根の葺き替え工事の単価・内訳
ここでは、葺き替え工事の内訳と屋根材の1㎡ごとの単価をご紹介します。
工事内容 | 費用相場 | |
---|---|---|
新しい屋根材の 施工費用 |
スレート | 4,500~8,000円/1㎡ |
ガルバリウム鋼板 | 7,000~15,000円/1㎡ | |
アスファルトシングル | 5,000~10,000円/1㎡ | |
瓦 | 9,000~18,000円/1㎡ | |
既存屋根の撤去及び処分費 | 1,200~2,600円/1㎡ | |
下地補修費用 | 2,000~5,000円 /1㎡ | |
防水シート | 600~1,500円/1㎡ | |
足場費用 | 700~1,000円/1㎡ | |
アスベスト処理費用※ | 2~8.5万円/1㎡ |
(※)一部のスレート瓦、セメント瓦で、アスベスト処理が必要な場合があります。
アスベストに関しては、こちらの記事で詳しく説明しているのでご参照ください。


2.屋根の葺き替え工事の費用を抑える方法
まとまった金額が必要な屋根の葺き替え工事。ここからは、費用を抑える方法をご紹介します。
2-1.外壁改修工事とあわせて行う
屋根の葺き替え工事は、外壁改修工事とあわせて行うことで費用を抑えられます。
屋根と外壁の工事においては、どちらも足場を組む作業が必要です。そのため両工事を同時に行えば足場の設営が一度で済み、その分の費用を削減することができます。
また、屋根のリフォームを検討する時期には外壁もメンテナンスが必要である事が多いため、同時に修繕工事を行っておくのが良いでしょう。
ご予算や外壁の状態に応じて同時にやるかどうか検討しましょう。
2-2.相見積もりをとる
費用を抑えるためのポイントふたつ目は、相見積もりをとること。
複数の業者に相見積もりを依頼することで、費用の相場感を把握し、適正な価格を知ることができます。
そのため、適正価格の中で予算内かつ希望のリフォームができる業者を選ぶことができるようになるでしょう。
また、適正な価格が分かると、極端に安い金額もしくは高い金額の会社を選択肢から省くことができます。
悪徳業者などは極端に安い金額で提示しておいて、後から追加工事などで高額な請求をしてくるケースも多いため、こうした悪徳業者を見抜けることもメリットです。
2-3.補助金を活用する
国や地方自治体では、屋根工事に利用できる補助金や助成金制度を設けています。
対象となるのは、屋根の葺き替えにより断熱性を向上させるリフォームや、瓦から軽量な屋根材への変更により耐震性を高めるリフォームなどです。
これらの制度を活用することで、屋根の葺き替えにかかる費用を軽減することが可能です。
ただし、適用には対象の条件があったり、手続きの手順などが複雑であることもあるため、利用を検討している場合は、あらかじめ該当の窓口やHPなどで情報を確認しておきましょう。
補助金・助成金についてはこちらでも詳しく説明しています。


3.屋根の葺き替え工事が必要な状態とは?
屋根が傷んでいて以下のような症状がみられる場合には、古い屋根材を解体し、新しい屋根材を設置する葺き替え工事を検討しましょう。
〈屋根材の主な症状〉
- スレート系・セメント系:色あせやひび割れが出る
- 粘土系:コケ・雑草が全体的に発生している、瓦がずれる
- 金属系:サビが全体的に出る
〈下地の主な症状〉
- 野地板など下地が腐っている
- 軒が変形している
〈室内の主な症状〉
- 複数箇所で雨漏りが発生している
- 天井に雨染みの跡がある
- 雨の後、室内が湿っぽい
葺き替え工事では、基本的には既存の屋根材だけでなく、下地部分も補修・改修します。防水シートも交換するため、雨漏り対策も万全です。
葺き替え以外の屋根リフォームは?
葺き替え以外に、屋根を修復する方法としては、「塗装」と「重ね葺き(カバー工法)」があります。
- 塗装:軽微なひび割れや、表面のコーティング補修であれば、塗装することで修復できる場合もあります。
- 重ね葺き(カバー工法):既存の屋根材の上に、新しく屋根材をかぶせる方法です。瓦には適していませんが、凹凸のない屋根材であれば施工が可能です。
これらの工事は、葺き替え工事よりも費用が安く、工期が短いのがメリット。
ただし、補修するのは屋根の表面だけのため、内部の劣化が見逃されるリスクがあります。
せっかく工事をしても、後から内部の劣化が見つかり、大規模な修理が必要になるケースもあるため、既存の屋根の劣化状況を十分に確認したうえで、最適な工事方法を選びましょう。
今の自宅の屋根に適したリフォームを提案してくれます。
屋根塗装、カバー工法について、詳しくはこちらをご覧ください。




4.屋根材別の特徴と耐用年数
葺き替え後の新しい屋根は、どれくらい長持ちするのでしょうか。
素材によっては、耐久性が高くメンテナンスの頻度を減らすことができるため、ランニングコストを抑えられるものもあります。
ここでは、それぞれの屋根材の特徴と耐用年数をご紹介します。
屋根材 | 耐用年数 | 特徴 |
---|---|---|
瓦 | 30~50年 |
|
ガルバリウム鋼板 | 20~30年 |
|
スレート | 20~30年 |
|
アスファルトシングル | 10〜30年 |
|
4-1.瓦
一般的な和瓦は、耐久性・耐候性・防水性に優れ、50年以上使用できるといわれています。
また再塗装の必要がなく、他の屋根材に比べてメンテナンスの手間がかかりません。中には80年〜100年と持つものもあります。
セメント瓦の場合は、耐用年数は30〜40年が目安で、10〜20年ごとに塗装メンテナンスが必要です。セメントの性質上、割れやすい一面もあります。
耐久性に優れた瓦ですが、地震や風災などで、ズレや割れが発生するおそれも。
放置すると、雨漏りや瓦の落下につながるため注意が必要です。
また、地震には弱く、瓦から瓦への葺き替えには、耐震性を高める補強工事が必要になることがあります。
スレートなど軽量な屋根材から瓦への葺き替えは、建物への負担が大きいため基本的にはできません。
4-2.ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、アルミニウムと亜鉛の合金メッキが施された軽量の金属屋根材です。
耐久性や防錆性が高く、耐用年数は20〜30年程度が目安です。
ガルバリウム鋼板は、同じ面積で比較すると瓦屋根の約1/10の軽さ。屋根の軽量化は地震時の揺れを抑え、建物の耐震性を向上させます。
金属製ながらサビに強い一方で、熱を伝えやすく、断熱性が他の屋根材に比べて劣る面も。対策として、断熱材を下地の下に敷くことで、暑さや寒さを防ぐことができます。
メンテナンスの頻度も少なめですが、10〜20年に1度は業者に点検を依頼すると安心です。
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4-3.スレート(コロニアル)
スレートは、セメントに繊維材料を加え、厚さ5mm程度に成形した薄型の屋根材です。
「コロニアル」とはスレートの代表的な商品名で、スレートの代名詞ともいえます。
スレートの特徴は、軽量で比較的安価なこと。デザインや色も豊富なうえ、施工できる業者が多いこともメリットです。
一方で、経年劣化によるひび割れや剥がれが発生しやすいことがデメリット。耐用年数は20〜30年程度で、定期的な塗装や点検などのメンテナンスが欠かせません。
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スレートとガルバリウム銅板はどちらを選んだらいい?
近年葺き替えの主流になっている、軽量な屋根材を代表するスレートとガルバリウム鋼板。どちらが良いか迷う方もいるのではないでしょうか。
二つの屋根材でよく比較される項目を以下の表にまとめました。
スレート | ガルバリウム鋼板 | |
---|---|---|
重さ(約30坪) | 約2000kg (瓦屋根の3分の1) |
約600kg (瓦屋根の10分の1) |
メンテナンス頻度 | 定期的な塗装・点検が必要 | 頻度は少なめ |
初期コスト | 4,500~8,000円/㎡ | 7,000~15,000円/㎡ |
耐用年数 | 20~30年 | 20~30年 |
結論、初期コストがかかってもより軽く耐震性が高い方が良い、ランニングコストを抑えたいと考える方には「ガルバリウム鋼板」、とにかく初期コストを抑えたい方には「スレート」がおすすめです。
ぜひ屋根材選びの参考にしてみてください。
4-4.アスファルトシングル
出典:https://www.reform-guide.jp/topics/yanezai/#1
アスファルトシングルは、北米で広く使われている定番の屋根材。ガラス繊維にアスファルトを浸透させたシート状の材料で、軽量かつ防水性に優れています。
表面には石粒が施され、天然素材のような質感を演出できます。また、曲面や複雑な形状にも施工しやすく、デザイン性の高さも特徴です。
シート状のため割れやサビには強い一方で、紫外線による劣化が起きやすいことや、風による剥がれが起きやすく、表面の石粒が落ちてくることもあります。
また、日本では普及し始めてまだ歴史が浅いため、施工できる業者が少ないこともデメリットです。
耐用年数は10〜30年程度とやや短めな場合もあるため、選ぶ際は注意しましょう。
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5.屋根の葺き替え工事の流れと工期
一般的な戸建て住宅の屋根の葺き替え工事にかかる期間は、7〜10日程度が目安です。
ただし、家の大きさ、施工する屋根材の種類により変動します。
加えて、悪天候などで前後することもあるため、余裕を持った計画を立てることが大切です。
6.【費用・工期付き】屋根の葺き替え工事の施工事例
ここでは、実際の葺き替えの施工事例を4つご紹介します。
最近の事例では、耐震性やコストパフォーマンスを重視し、ガルバリウム鋼板のような金属屋根の選択が増えています。
事例①:築60年、雨漏りをきっかけに葺き替え
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出典:https://www.8044.co.jp/gallery/131
雨漏りがあるため屋根の改修工事を検討した事例です。
当初は屋根の部分修理を考えていましたが、屋根の面積があまり広くなく、葺き替え費用と大差がなかったため、全面の葺き替え工事を行いました。
費用 | 74万円 |
---|---|
工期 | 1週間 |
事例②:瓦屋根を葺き替えて軽量化・断熱性向上
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出典:https://www.8044.co.jp/gallery/107
雨漏りをきっかけにリフォームを検討した事例です。
新しい屋根材には、耐久性の高いガルバリウム鋼板と断熱材が一体化された「ガルテクト」を採用。金属屋根材でありながら遮熱性に優れているため、住まいの快適さも保つことができました。
また、建物に負担のかかる瓦屋根から軽い屋根材に葺き替えたことで、耐震性の向上も期待できます。
費用 | 105万円 |
---|---|
工期 | 2日 |
事例③:地震で瓦が落下!軽量屋根にリニューアルし雨漏りも解消
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出典:https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=1247
築40年の住居の事例です。地震によって瓦が落下し、雨漏りにも悩まれていました。
そのため、瓦をすべて撤去し軽量な屋根に葺き替えるリフォームを施工。
今後の地震対策にもなり、以前よりも安心できる屋根になりました。
費用 | 150万円 |
---|---|
工期 | 3日 |
事例④:劣化した瓦屋根を葺き替えて見た目もスッキリ
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劣化の進んだ瓦屋根を解体し、葺き替えた事例です。
瓦や下地をすべて撤去。屋根材だけでなく、野地板・防水シートもすべて新しいものに交換しました。
<解体中・施工中>
<施工中>
すべてを葺き替えて、雨漏り対策も万全です。
費用 | 189万円 |
---|---|
工期 | 14日 |
7.屋根の葺き替え工事には「建築確認申請」が必要
2025年4月に建築基準法が改正され、これまで不要だった住宅リフォームにも、一部で建築確認の申請が必要になりました。
屋根の葺き替えで確認申請が必要なのは、主に以下の場合です。
- 屋根の下地(野地板や垂木など下地の構造部分)を取り替える場合
- 屋根の葺き替え工事が、建物の主要構造部の50%以上の修繕にあたる場合
さらに、古い建物でそもそも現行の建築基準法に適合していない場合、申請の過程で屋根以外にも基準を満たしていない部分が見つかると、その部分も改修しなければなりません。
また、再建築不可物件に該当する建物の場合、そもそも大掛かりな屋根リフォームはできません。
通常、確認申請は建築業者が代行しますので、まずは信頼できる業者に相談してみましょう。
詳しくは以下の記事でご確認ください。


8.まとめ
屋根の葺き替え工事の費用相場は、一般的な住宅の規模でおよそ90万〜240万円です。
家の大きさや使用する屋根材などによって費用は変わりますが、屋根の葺き替えは大掛かりなため費用も高額になりがちです。
費用を抑えるためには以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 外壁改修工事とあわせて行う
- 相見積もりをとる
- 補助金を活用する
いずれのポイントも屋根や外壁のリフォームに詳しい業者と相談しながら進めると安心です。
業者選びにお困りの際には、経験豊富な業者を複数ご紹介できる、リフォームガイドをぜひご活用ください。