
「古民家リフォーム・リノベーションはいくらくらいかかる?」
「古民家リフォーム・リノベーションはどこを優先しておこなうべき?」
「古民家を所有しているけれど、建て替えとフルリフォームどちらがいいの?」
古民家のリフォーム・リノベーションに興味がある方なら、このような点が気になるのではないでしょうか。
古民家はリフォーム・リノベーションすることで昔ながらの風情を残しつつ、機能的にも使いやすい住まいになります。しかし、建て替えるよりも費用がかかる場合があるのも事実です。
この記事では、古民家リフォーム・リノベーションにかかる費用相場や実例を紹介します。また、一級建築士に聞く古民家リフォームで優先するべき箇所や、お得に古民家をリフォームする方法も解説します。
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目次
1.古民家のリフォーム・リノベーションで実現できる3つのこと
「”リノベーション”はオシャレなイメージだけど、どんな施工をするの?」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
リノベーションとは、既存の建物に大規模な工事を行い、新築同然まで作り変え建物自体の価値を高めることを指しています。
古民家リノベーションを行うと、住まいづくりで以下の3つのことが実現できます。
1-1.ライフスタイルや家族構成に応じた自由な間取りが実現できる
古民家のリノベーションでは壁をすべて解体した状態から作り直すことが可能なため、オシャレで使い勝手の良い間取りを実現することができます。
出典:https://www.artreform.com/example/810/
こちらは築52年の古民家をリノベーションした事例です。部屋数が多く住みにくい間取りがお悩みでしたが、和室を撤去し、広々としたLDKに変更しました。水回りも近くにまとめ、動線を意識した住み心地の良い仕上がりになっています。
このように、古民家をリノベーションすることで、古く懐かしい見た目を維持しつつ、現代の暮らしにあった間取りを実現することができます。
1-2.耐震補強や断熱対策など新築同然の機能が実現できる
効果的な耐震補強や断熱対策などが可能になるのは、柱や基礎だけの状態から作り直すことができるリノベーションならではです。古民家であっても過ごしやすく、安全な住まいにすることができます。
また、給排水管も一新するため、古い給排水管から漏水する不安もなくなります。
1-3.柱を残し、風情を残した住居空間も実現できる
長年使われてきた太い柱や梁をそのまま生かせば、日本の伝統的な木造建築が持つ温もりや懐かしさを残すことができます。
出典:https://www.cube-reform.co/kura
建物によってはリノベーション不可、または適さない場合もあるので注意
建物によっては、リノベーションしないほうが良い場合もありますので注意が必要です。
以下では、リノベーションをおすすめしない建物の特徴を解説しています。
○建物の劣化があまりにも激しい物件
建物の劣化があまりにも激しい物件は、リノベーション工事をすることはできません。
建物の構造躯体や柱が大きく損傷していると、建物の倒壊につながる恐れがありますので、大変危険です。
建物の状態は必ずプロに確認してもらい、リノベーションが難しいと判断された物件は避けておきましょう。
○湿気が多く漏水の危険性がある物件
湿気が多く漏水の危険性がある物件も、リノベーションに適していません。
漏水がある物件は追加工事が必要になるため、数百万円の修繕費用がかかることがあります。
また、シロアリ被害の可能性が高く、被害が見つかった場合駆除費用も必要となります。
湿気が多い物件は避けておきましょう。
2.古民家リフォーム・リノベーションにかかる費用相場
ここでは、古民家をリノベーションするのにかかる費用について解説していきます。
2-1.フルリノベーション(スケルトンリフォーム)の費用
古民家のリノベーションは、柱と基礎以外を壊して一から作り直すスケルトンリフォームと呼ばれる工法で行うことが多いです。さらに、築年数が浅い住宅と比較すると、耐震補強や断熱対策を重点的に施工しなければなりません。そのため、どうしても費用が多くかかります。
古民家リフォームにかかる費用の幅が大きい理由はさまざまですが、大きな理由としては以下の3つが挙げられます。
- もともとの家の劣化具合(柱の腐食度合等)
- 水回りなどの設備や建材のグレード
- 施工業者 ※一般的に地元の工務店は安く、大手リフォーム会社は高い
2-2.部分的なリフォームの費用
部分的にリフォームを行う場合、かかる費用は以下の通りです。
耐震・断熱 | |
---|---|
耐震 | 300万円~ |
断熱 | 床下断熱+床下張替:1~2万円/㎡ |
天井:0.8~1.4万円/㎡ | |
壁(大工施工):約100~150万円(施工面積120㎡) | |
内窓:6~15万円/箇所 | |
外装 | |
屋根 | 葺き替え:106~135万円 |
外壁 |
部分補修:1~5万円/㎡ |
塗装:60~180万円 | |
重ね張り:130~230万円 | |
張替え:150~400万円 | |
水回り | |
キッチン | 約50~150万円 |
トイレ | 約20~50万円 |
浴室 | 約100~150万円 |
洗面所 | 約20~50万円 |
その他 | |
床暖房 | 約3~6万円/㎡※ |
薪ストーブ | 約30~60万円 |
間取り変更 | 18~70万円/箇所 |
手すり設置 | 約3~10万円/箇所 |
段差解消 | 約2~20万円/箇所 |
※温水式の場合は+約25~100万円で熱源機設置も必要(参考:床暖房リフォームで住まいを快適に!費用から注意点まで徹底解説)
劣化が激しい部分の修繕や、現在の耐震基準を満たしていない住宅の耐震リフォームは必須ですが、リフォーム会社が建物の状態を直接見て確認する「現地調査」では、リフォームのプロが実際に建物を見て必要な工事を把握します。現地調査の結果をもとにより精密な費用が見積りとして提案されますので、リフォーム会社の担当者とも相談してリフォームプランを決定しましょう。
3.【プロに聞く!】古民家リフォーム・リノベーションの優先施工箇所
リノベーションにかけられる費用が限られている方や、リノベーションのプランを見直したいという方のために、古民家リノベーションの優先工事箇所について以下で詳しく解説してきます。
※2-2.の部分的なリノベーションの費用の表は工事するべき箇所順に記載していますので、あわせて参考にしてください。
絶対に修繕するべき箇所
①耐震(インスペクション、耐震診断、耐震改修)
古民家リノベーションで必ずやっておくべき工事は、耐震工事です。
建物の劣化状況はもちろん、当時の建築工法によって耐震工事がどれだけ必要かどうかは異なります。築年数に関わらず、耐震工事の前はプロによるチェックを受けるようにしましょう。
②屋根、外壁、サッシ
屋根・外壁・サッシ工事も古民家リノベーションで必ずしておくべき工事です。
築年数の古い建物の場合、屋根や外壁、サッシなどの経年劣化が目立つようになります。劣化を放置していると隙間から雨水が侵入し、柱や構造躯体の腐食につながる恐れがあります。
こちらも耐震工事と同様、どのような工事が適しているか判断するためにプロのチェックを受けましょう。
③断熱改善
築年数の古い建物の場合、断熱効果がないもしくは極端に薄い場合がほとんどです。断熱工事をすることで、古民家であっても暮らしやすさがグッと高まります。
断熱工事は天井・床下・壁など、家全体的な工事になるので、住み始める前に行っておくことをおすすめします。
余裕があれば修繕したい箇所
①水回り
水回りの設備を交換することによって、使い勝手、掃除の楽さなど、快適さが格段にアップします。浴室は、ユニットバスにすることによって冬の寒さも軽減できます。
また、水回り設備を交換することにより、給排水設備も改修でき、今後の水漏れリスクを防ぐこともできます。
②間取り内装
古民家の場合、昔のライフスタイルに合わせた間取りのままでは住みにくいことがあります。
間取り変更や内装の張替えを行うことにより、古く懐かしい雰囲気を残しつつも、快適な住まいを実現できます。
③バリアフリー
古い家は、現代の家に比べて急な階段や大きな段差が多くあることがあります。高齢の方や小さなお子様が住まう場合は、あらかじめバリアフリー工事を行うことで、事故を防ぐことができます。
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4.古民家リフォーム・リノベーション施工事例【ビフォーアフター付き】
先にご説明したとおり、古民家リノベーションは想像以上に費用がかかるリフォームです。
しかし、リノベーションなら、かけた費用に見合う理想の住まいを実現することも可能です。
この章では、実際の古民家リノベーションの施工事例とかかった費用をご紹介します。費用感をつかんでいただくとともに、リノベーションの事例を見ることでやりたい古民家リノベーションのイメージをふくらませてください。
平屋建て古民家をリノベーションした事例(1,680万円)
【LDK・フリースペース】
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【廊下】
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出典:https://www.artreform.com/example/2863/
施工費用 | 1,680万円 |
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工期 | 約4か月半 |
実施工事 | 間取り変更、設備の入れ替え、耐震補強等 |
打合せ当初は古民家の良さを生かしたリノベーションで進めていましたが、施主様が段差の解消、掃除のしやすさ、壁面・フローリング等のメンテナンスのしやすさなど実用的な仕上がりを重視されていたため、それに対応する形で工事を進めたそうです。
既存の梁は塗装して露出させ、風情漂う住居空間が実現できています。
築70年の古民家をリノベーションした事例(3,300万円)
【内装】
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【外観】
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出典:https://www.reform-guide.jp/topics/case/tokyo-m-zenmen/
施工費用 | 3,300万円 |
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工期 | 約8か月 |
実施工事 | フルリノベーション |
築70年の古民家を相続した施主様。両親が大切にしてきた住まいなので、古民家の趣を残しつつ住みやすい空間へのリノベーションを希望されました。
二間続きだった和室のうち、ひとつはフローリングに変更し、和と洋がマッチした快適な空間に。左官職人の技術も取り入れ、積み重なった歴史の味わい深さがにじみ出るリノベーションとなりました。
さらに、魅力が最大限出るように既存のガラスや梁などを再利用することで、趣深い住まいにしています。
築80年の古民家をリノベーションした事例(2,200万円)
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出典:https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=461
施工費用 | 2,200万円 |
---|---|
工期 | 約3か月 |
実施工事 | フルリノベーション |
施主様から「次世帯も使えるように」とのご要望があったため、2階を子ども部屋にした事例です。また、昔ながらの古民家間取りを現在の生活スタイルに合わせた間取り、仕様へ変更しました。
78坪(259㎡)の古民家をリノベーションした事例(3,400万円)
※横にスクロールできます



出典:https://www.artreform.com/example/1666/
施工費用 | 3,400万円 |
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工期 | 約5か月 |
実施工事 | 間取り変更、水回りの交換 |
昔ながらの梁を残しつつ設備に最新のものを導入した事例です。現在のライフスタイルに合う、快適な住居に仕上がっています。


5.古民家リフォーム・リノベーションは業者選びが重要!
ここからは、古民家のリノベーションをする際の業者選びについて解説していきます。
古民家は一般住宅と違い、古い木材を使っているケースが多く、土地環境に応じて工夫が必要ですので、施工できる会社が限られます。
古民家の構造を熟知し、安全かつおしゃれなリノベーションを提案してくれるような実績のある会社に依頼することが重要です。
また、費用に関しては、受注だけしてプランニングや施工を丸ごと下請けに出している会社もあるため、予算内に収めるには、余計なマージンのかからない中小規模の会社が好ましいといえます。
リフォーム業者を選ぶ際は、古民家のリノベーション実績があり、かつプランニングや施工を自社で行っているような技術のある会社を選ぶようにしましょう。
6.古民家リフォーム・リノベーションで活用できる減税や補助金
業者の選び方に加え、減税や補助金を利用すれば、さらにリノベーション費用を抑えられる可能性もあります。
この章では、古民家リノベーションに利用できる減税制度や補助金をご紹介します。
6-1.古民家リフォーム・リノベーションで使える減税制度
古民家リノベーションの際に利用できる減税制度はいくつかありますが、ここではその中でも対象範囲が広く減税額が大きい所得税の減税についてまとめました。
対象工事 | 最大控除額 (対象工事) |
|||
---|---|---|---|---|
対象工事(いずれか実施) | 対象工事限度額 | 控除率 | ||
耐震 | 250万円 | 10%※ | 25万円 | |
バリアフリー | 200万円 | 20万円 | ||
省エネ | 250万円(350万円) | 25万円(35万円) | ||
三世代同居 | 250万円 | 25万円 | ||
長期優良住宅化 | 耐震+省エネ+耐久性 | 500万円(600万円) | 50万円(60万円) | |
耐震or省エネ+耐久性 | 250万円(350万円) | 25万円(35万円) | ||
子育て | 250万円 | 25万円 |
※()内の金額は、太陽光発電設備を設置する場合
※ 対象工事の限度額超過分、およびその他リフォーム工事についても一定の範囲まで控除率5%で控除対象となる
出典:国土交通省「令和6年度 国土交通省税制改正概要(21頁)」
所得税のほか、リフォーム内容によっては固定資産税や贈与税でも減税措置を受けられる場合があります。
各種減税制度の詳細は以下の記事でも取り上げています。ぜひご一読ください。


6-2.古民家リフォーム・リノベーションで使える補助金
減税制度と同様に、補助金制度でも耐震、省エネ、バリアフリーのリフォームで国や自治体の補助金を利用できる場合があります。自治体によっては、古民家のリノベーションにしか適用されないような補助金もあります。
例えば京都市では、景観を保全するために外装工事の施工に対して補助金が出るケースがあります。
また、東京の八王子市では「空き家利活用促進整備補助金」という空き家の活用の促進に対する補助金があります。
補助金制度の詳細や利用条件は各自治体に応じて異なります。まずは、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会のWebサイトで確認しましょう。
その他、全国共通のリフォームに関する補助金はこちらの記事でまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
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7.古民家リフォーム・リノベーションを行う時のローンの組み方
ここでは、古民家リノベーションを行うときのローンの組み方について解説していきます。
住宅ローンは申請が通らない可能性も
古民家の場合、住宅ローンの審査が通らない可能性があります。
築年数が古い古民家は担保評価が低く、評価がつかないこともあるからです。
とはいえ、リノベーション費用とあわせると住宅ローンが通るケースも多くなっています。金融機関によっても異なるため、各金融機関に問い合わせてみると良いでしょう。
古民家リノベーションで利用できるローンは以下の2種類です。
- リフォームローン(高金利、無担保)
- 住宅ローン(低金利、有担保)
1,000万円を超えることも多い古民家リノベーションでは、住宅ローンを活用しましょう。リフォームローンに比べると手続きは煩雑ですが、手間を考慮しても支払額の差は歴然です。
リフォームローン(担保なし) | 住宅ローン(担保あり) | |
---|---|---|
初期費用 | なしの場合が多い | 借り入れ金額の2.2%※2 |
金利相場 | 1.6~4.6% (固定 3.1~4.6%) (変動 1.6~4.5%) |
0.3~2.0% (固定 1.7~2.0%) (変動 0.3~0.7%) |
借入限度 | 500万or1000万円が多い | 1億円が多い |
借入期限 | 最長5年or10年が多い | 最長35年が多い |
団体信用保険※1 | 原則なし | 原則あり |
手続き |
|
|
※1 契約者が死亡した時にローン残高を保険金で賄える保険
※2 事務手数料や保険料
住宅ローンの詳細は、以下の記事でまとめています。あわせてご確認ください。


8.まとめ
古民家リノベーションは、他のリノベーションやリフォームよりも費用がかかります。一方で、現在のライフスタイルに合う形で趣きのある住まいが実現できる点が魅力です。この記事では、費用を抑えて古民家リノベーションを実現するポイントをご紹介しました。
皆さまが本当に良いリノベーション業者を見つけ、満足のいく古民家のリノベーションができるよう、リフォームガイドは皆さまのリノベーション業者選びを誠心誠意お手伝いいたします。