
バリアフリーリフォームを考えているけれど、「どこをどうリフォームすればいいの?」「誰に依頼すればいいの?」とお困りの方も多いのではないでしょうか?
今回はバリアフリー・介護リフォームを専門とする合同会社バリアフリー工房の内間さんにご協力いただき、バリアフリーリフォームの基本や場所別の具体的なバリアフリーリフォームのポイントなどを解説します。
また、バリアフリーリフォームは知識と技術がないと難しく、手すりひとつ設置する場合も下地工事をして、使う人に合った場所に設置しなければ意味がありません。そのためリフォーム会社選びは慎重に行う必要があります。会社の選び方もお伝えしますので、参考にしてみてください。
※「介護する・される」に特化したリフォームは「必ず知っておきたい!介護リフォーム成功のための基礎知識」の記事へお進みください。
目次
1.バリアフリーリフォームの基本
バリアフリーリフォームの目的は居住者の「自立」。
そのために考えるべきバリアフリー工事は、大きく分けて以下の2つです。
- 転倒予防
- 動作の単純化
すべてのバリアフリー工事につながる考え方ですので、最初に理解しておきましょう。
また、バリアフリーリフォームをする際には、今の状態だけでなく将来も見据えたリフォームを心掛けることが大切です。今後身体状況がさらに不自由になることを考慮し、今できることをこの機会に行っておくと良いでしょう。
[ 基本1] 転倒予防
基本の一つ目は、転倒を予防することです。
転倒予防のためのバリアフリーリフォーム例
- 手すりの設置
- 段差の解消
- 滑りにくい床に変更
身体の自由が制限されると、ほんのわずかな段差でもつまずく原因になります。
できるだけ自力で、安全に生活するためには、転倒の危険性がある場所をあらかじめリフォームし、転倒を予防することが大切です。
手すりの設置
階段を上がる時、廊下を歩く時、ちょっとした段差の昇降で壁などに捕まっていませんか?壁をつたって歩くのは安全とは言えません。身体を支える為の手すりの設置をおすすめします。
手すりの設置にあたっては、しっかり壁の下地工事を行い、丈夫な手すりを設置しましょう。また、設置する高さや位置も使う人に合わせてつけることが大切です。
階段や段差などバランスの崩しやすい場所には前もって設置しておくといいでしょう。
手すり設置のポイント
- 下地工事をしっかり行う
- 使う人にとって握りやすい手すり(形・種類)を選ぶ
- 使う人にとって使いやすい位置に設置する
- 上記をしっかり行ってくれる業者を選ぶ
手すりの取り付けの費用例
I型手すり(1本)の取付け費用例:
※L型手すりの場合は4万5千円程度、回り階段に設置した場合は16万円程度です。
段差の解消
ほんのわずかな段差であっても、つまずく原因になり足腰の弱い方にとっては負担になります。できるだけ段差のないようリフォームするよう心掛けましょう。
玄関、廊下などの段差解消は、それぞれの家や生活する人に合わせた適切な方法をとる必要があります。
段差の解消方法は、「踏み台」や「式台」などを設置して段差を小さくする、床のかさを上げる、スロープを設置するなどがあります。
段差解消リフォームのポイント
- 踏み台などは動かないようしっかり固定する
- スロープの勾配は急になりすぎないよう注意する
- スロープは長すぎないこと
- 滑りにくい床材に変更する
段差解消リフォームの価格


滑りにくい床に変更
室内であっても転倒による怪我や骨折は多くあり、滑りにくい床にリフォームすることで未然に防ぎたいものです。
とくに洗面所など水を使用する床だけでもリフォームしておくと安心できます。また、床材は各部屋に適したものを選ぶことが大切です。
床リフォームのポイント
- 【玄関回り】濡れることも考えてノンスリップタイルなどを用いる
- 【階段】滑りにくい木材を選ぶ(ヘリには滑り止めを付けることも大切)
- 【廊下】滑りにくい床材を選ぶ
- 【居間】クッション性や遮音性があるもの、歩行器や車いすで傷つきにくいものにする
- 【浴室内】ノンスリップ加工されたもの、素足で歩くためヒヤッとしない床材にする
- 【トイレ】掃除がしやすい素材、スリッパなしでも清潔感のある色や材質を選ぶ
[ 基本2] 動作の単純化
バリアフリーリフォーム基本の二つ目は、動作を単純化すること。
例えば、下記のようなリフォームが当てはまります。
動作の単純化のためのバリアフリーリフォーム例
- 扉を引き戸にする
- 人感センサーやリモコンタイプの照明器具にする
動作を単純化させることで、自分でできることが増え、居住者の「自立」につながります。
引き戸などへの扉の取り替え
引き戸へのリフォームや、それに伴う開口部を広げるリフォームは、バリアフリー工事では特に重要です。
扉を開け閉めをする際、「開き戸」であると前後の移動が発生します。とくに歩行器を使う方などは、(手前開きの場合)扉を開きながら自分は後ろに下がるという動作をしなければなりません。
そこで「引き戸」にすると、開閉時は歩行器を手放さないといけないので注意が必要なものの、動作が単純化されて移動が楽になります。
ドアの種類は主に、引き戸、開き戸、中折れ戸の3種類あり、バリアフリーリフォームでは引き戸や中折れ戸にすることが一般的です。それぞれのドアに特徴があり、使う人に合わせて選ぶことが大切です。
引き戸などへの扉の取り替えのポイント
- 玄関や部屋の扉などどちら側からも出入りする扉はなるべく「引き戸」にする
- 洗面所やトイレの扉は、緊急時の救出のしやすさを考えて「引き戸」または「外側に開く開き戸」にする
人感センサーやリモコンタイプの照明器具にする
照明器具のスイッチを押すために立ち上がる動作は、人感センサーやリモコンタイプに変更することで解消できます。
照明交換リフォームのポイント
- 人感センサー付き照明など動作の単純化ができるものを選ぶ
- 暗くなりがちな廊下や階段は照明を増やす
- 手元を照らす補助照明(フロアスタンドやデスクスタンド)を組み合わせる
- 光の色を調整できる商品を選ぶ(暖色系の色は眩しさが軽減する)
明るい場所⇔暗い場所の移動時、視力回復の時間がかかったり、明るい場所でも見えづらくなるため、センサー付き照明で暗い場所を作らないようにしてあげると良いでしょう。
2.場所別|バリアフリ―リフォームの内容と費用
ここからは、場所別に行うバリアフリーリフォームについて、費用とともに具体的に解説していきます。
玄関のバリアフリーリフォームの内容・費用
玄関周りは段差の多い場所です。玄関のポーチや階段など段差のあるお宅も多いと思います。また、靴を脱いで家に上がる時の段差(上がり框)があるケースがほとんどです。
玄関のリフォームのポイント、費用などを詳しくお伝えします。
リフォーム項目 | 費用 |
---|---|
スロープの設置(外のアプローチ部分) | 10万円~(1mあたり) |
式台の設置 | 10万円程度 |
踏み台の設置 | 3万円程度 |
手すりの設置 | 3万円~(1本あたり) |
ドアの交換(開き戸から引き戸へ) | 40~60万円(ドアの種類による) |
ドアの交換(開き戸の開く向きを変える) | 20万円程度(ドアの種類による) |
ドアの拡張 | 10~15万円程度(できない場合も) |
照明の設置 | 3万円程度 |
モニター付きインターホンの設置 | 3万円程度 |
電気錠の設置 | 2~3万円程度 |
腰かけ椅子の設置 | 6万円~ |
滑りにくい床材に変更 | 8万円程度 |
※金額については、家の状況や設置する物の内容によって変わってきます。
スロープの設置(外のアプローチ部分)
一般的にスロープの長さは、高さ(段差)の約8倍以上必要だと認識しておきましょう。スロープの長さの理想の目安は以下の通りです。
- 車いすを押してもらう場合…1ⅿの段差に対して12mのスロープ
- 自走の場合…1mの段差に対して15mのスロープ
ただし車いすの種類やスロープ利用者によって、上記の数値が当てはまらないこともあります。目安ですので、実際に使う人に合った勾配や長さを設置しましょう。
式台・踏み台の設置
上がり框に「式台」や「踏み台」を置くことで大きな段差を小さく軽減することができます。手すり付きの式台もあり、段差や玄関の状況にあったものを選ぶことが大切です。
理想の段差は、100㎜〜180㎜程度です。式台と下地をしっかり固定し、転倒等の事故が無いようにしましょう。
手すりの設置
玄関は靴を脱ぐ際や、ちょっとした段差を上がる際など、バランスを崩しやすい場所です。手すりがついていると安心ですし、転倒する危険も回避できます。
手すりは使う人の手の動作に合わせ使いやすい位置につけること、壁の下地をしっかり作ることが何より重要です。
▼玄関のバリアフリーリフォームについて、さらに詳しくはこちらをご覧ください。




廊下・階段のバリアフリーリフォームの内容・費用
廊下や階段は、移動時に通る場所ですので、しっかりとバリアフリー対策を行う必要があります。
リフォーム項目 | 費用 |
---|---|
手すりの設置(廊下) | 6万円~ |
手すりの設置(階段) | 6万円~(階段の形状によって変動) |
段差解消(簡易スロープの設置) | 2万円程度 |
段差解消(床のかさ上げなどでフラットにする) | 6万円~ |
各部屋の入口拡張 | 10万円~(住宅の工法によって拡張できない場合も) |
階段の踏み板幅・勾配の変更 | 100万円~ |
階段の配置変更 | 100万円~(家の状況による) |
階段踏面に滑り止めの取り付け | 3万円程度 |
床材の変更 | 6~10万円程度 |
照明の変更 | 8万円程度(目安2つ) |
※金額については、家の状況や設置する物の内容によって変わってきます。
手すりの設置(もしくは壁の補強工事)
廊下や階段の手すりの設置は必須といっても過言ではありません。足腰が弱ると、少しの移動も辛いと感じますので、身体を支える手すりがあると負担が軽減されます。
また、まだ手すりは必要ないと感じる方も、壁の下地補強だけでも済ませておくと取り付けたい時にすぐ設置でき安心です。
廊下と部屋の間の段差解消・入口の拡張
部屋やトイレと廊下の行き来がしやすいよう、段差の解消や入口の拡張は基本のバリアフリー工事です。
廊下との間の段差は、小さくてもつまずくポイントとなります。小さな段差を解消するために、簡易的なスロープを設置することもできます。
廊下のかさ上げをして敷居を無くし、フラットにすることも可能です。この場合、廊下のフローリングを重ね張りします。
また、歩行器や車いすを使った移動では、廊下から各部屋の入口幅が狭いことがあります。入口を拡張し、同時に扉を開きやすい引き戸に変えると良いでしょう。
▼段差を無くして移動しやすいよう廊下の床をリフォームした事例


階段踏面に滑り止めの取り付け
階段の踏面には滑り止めをつけましょう。階段の昇降の際、滑って転倒することがないようにするためです。
すでに付いている階段も多いと思いますが、無い場合は取り付ける様にしましょう。
▼廊下・階段のバリアフリーリフォームについて、さらに詳しくはこちらをご覧ください。


トイレのバリアフリーリフォームの内容・費用
トイレのリフォームを検討されている方も多いと思います。トイレのバリアフリーとはどのような内容かと費用の相場をお伝えします。
リフォーム項目 | 費用 |
---|---|
手すりの設置 | 2万円~ |
段差解消 | 2千~10万円(工事方法による) |
ドアの変更 | 10~20万円 |
床材の変更 | 2~10万円 |
補助便座の設置 | 2万円~(介護保険の福祉用具購入費支給の対象になる場合も) |
昇降便座の設置(便器のかさ上げ) | 10万円~ |
手洗いコーナーの設置 | 8万~150万円(スペースを広げる場合は高くなる) |
和式トイレを洋式に変更 | 30~50万円 |
押入れなどをトイレにリフォーム | 55万円~(押し入れの位置による) |
※金額については、家の状況や設置する物の内容によって変わってきます。
手すりの設置
トイレは比較的狭いスペースで便座の立ち座りや、衣類の脱ぎ着などの動作を行わねばなりません。そのため、手すりは使う人に合った高さや場所に設置することが大切です。トイレの手すり設置のポイントをお伝えします。
①ドア開閉時、体を支えるための手すり
ドア開閉時もバランスを崩しやすいタイミングです。こちらの手すりは、ドア枠や壁に手垢で汚れている場合があれば、その位置を目安に設置することをおすすめします。
②便座の立ち座り、座った姿勢を安定させるための手すり
I型やL型の手すりが一般的です。写真のようにI型の手すりとペーパーホルダーを組み合わせ、L型の役割を果たしているものもあります。
縦の手すりは、立ち座りの動作を支え、横の手すり(もしくはペーパーホルダー)は座った体勢を支えます。
いずれにしても、利用される方の身体状況を把握してからの取り付けを心がけましょう。
段差の解消
トイレの出入り口の段差は解消することをおすすめします。ドア横に手すりがあったとしても、足腰の弱った高齢者や障害を抱えた方にとっては不便なものです。段差を取り除くには、トイレ床のかさ上げや敷居の撤去が必要です。
ドアの変更
トイレのドアは車いすの方でも自力で開閉しやすいよう、引き戸にすることをおすすめします。また、中で万が一のことがあった場合に備えて、外からも鍵があけられるタイプにしましょう。
更に、ドア(出入り口)の位置も重要です。便座横に設置することで出入口から便座までの移動が楽になります。
便座のかさあげ
便座に腰掛ける動作が辛いと感じる方へのリフォームです。便座の位置を高くすることで、足腰の負担を軽減しながら腰掛けることができるようになります。
便座のかさあげには下記のような方法があります。
- 便座と便器の間に補高部材を挟むことでかさ上げする
- 便座が電動で上下し、立ち座りの動作を補助する装置
- 便座の高いトイレに交換する
▼トイレのバリアフリーリフォームについて、さらに詳しくはこちらをご覧ください。


キッチンのバリアフリーリフォームの内容・費用
キッチンでの立ち仕事は思っている以上に体に負担がかかります。高いところから食材や鍋を出す動作など、辛くはありませんか?
キッチンは、バリアフリー用に開発された機能も多く、リフォームによって無理なくキッチン仕事ができるようになるでしょう。
リフォーム項目 | 費用 |
---|---|
バリアフリーキッチンに入れ替え | 100~150万円(足元にスペースのあるキッチン) |
電動昇降棚の設置 | 15万円~ |
手動昇降棚の設置 | 10万円~ |
食器洗い乾燥機の設置(卓上) | 5~10万円 |
食器洗い乾燥機の設置(ビルトイン) | 25万円~(設置できない場合もある) |
IHクッキングヒーターに変更(ビルトイン型) | 45万円程度 |
IHクッキングヒーターに変更(据え置き型) | 35万円程度 |
照明の設置 | 1万円程度 |
コンロ連動型レンジフードへの交換 | 25~40万円(コンロの交換も含む) |
※金額については、家の状況や設置する物の内容によって変わってきます。
使いやすいキッチンに入れ替え
車いすや椅子に座った状態でキッチン作業ができるよう、足元にスペースのあるキッチンに変更する方法があります。一般的なシンクより浅めなので、座った状態でも足が当たりません。
また、座った状態での作業を想定しているため、座った状態で水栓レバーにも手が届くよう設計されています。
立って作業ができるけれど使いづらい場合は、使いやすい高さのキッチンに交換することも検討しましょう。
IHクッキングヒーターに変更
IHはガスと違い、炎が出ないので安心です。そして掃除がしやすいことも大きな利点です。
しかし、ガスと電気では熱の感覚が異なりますので、初めは料理のしにくさを感じることもあるかもしれません。また、調理後は天板が熱くなりますので、慣れるまでは注意が必要です。
▼キッチンのバリアフリーリフォームについて、さらに詳しくはこちらをご覧ください。


浴室のバリアフリーリフォームの内容・費用
浴室は家の中で最も事故が起こる場所の1つです。事故を未然に防ぎ、安全でストレスのない入浴ができるようリフォームしましょう。
リフォーム項目 | 費用 |
---|---|
段差の解消 | 25万円程度 |
ドアの変更 | 10万円~ |
床材の交換 | 5万円程度 |
手すりの設置 | 3~5万円 |
洗面器台の設置 | 2万円程度 |
入浴台の設置 | 3万円程度 |
浴槽の交換 | 35万円程度 |
浴室全体のリフォーム | 80~150万円(バリアフリーユニットバスへの変更) |
暖房の設置 | 10~15万円程度 |
※金額については、家の状況や設置する物の内容によって変わってきます。
入口の段差の解消
浴室の入り口の段差は転倒の原因にもなりますので、解消することをおすすめします。
浴室の底上げ工事など大掛かりなリフォ―ムもありますが、「浴室すのこ」のように簡単に段差を解消することもできます。
ドアを引き戸か折れ戸に変更
浴室のドアは「折れ戸」か「引き戸」がおすすめです。ただし、引き戸はドアを引き込むスペースが必要であることと、高コストが難点です。
一方、折り戸の中でも「中折れ戸」は、引き戸に比べ低コストかつ、ほとんどの浴室で交換が可能ですので、中折れ戸が選ばれることケースが多いです。
跨ぎやすい浴槽に交換
浴槽を跨ぎやすい高さのものに交換することで、入浴のハードルが下がります。
昔ながらのタイル張りの浴室(在来浴室)の場合、洗い場の床より浴槽の底が深い「落とし込みタイプ(埋め込みタイプ)」の浴槽であれば、跨ぎが低いため跨ぎやすいです。
最近はバリアフリーに配慮したユニットバスが登場しており、浴槽の跨ぎが低い、かつ浴槽と洗い場の高低差が小さい設計です。このようなユニットバスに変更することもおすすめです。
浴槽の深さが50cmとした場合、跨ぎの高さは40~45cm、洗い場と浴槽底の高低差は5~10cmが理想と言われています(国際福祉機器展 2023 福祉機器の選び方・使い方 副読本/住宅改修編 より)。
▼浴室のバリアフリーリフォームについて、さらに詳しくはこちらをご覧ください。


洗面所・脱衣所のバリアフリーリフォームの内容・費用
毎日の生活で使う洗面所や脱衣所も使い易いものにしたいですね。どのようなリフォームができるのか詳しくお伝えします。
リフォーム項目 | 費用 |
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バリアフリー洗面台への交換 | 45万円~ |
段差の解消 | 1万円~ |
出入り口の拡張 | 20万円程度 |
引き戸の設置 | 3万円程度 |
床材の変更 | 5万円程度(広さによる) |
※金額については、家の状況や設置する物の内容によって変わってきます。
洗面台の交換

一般的な洗面台では車いすの方は不便ですし、高さが合っていない、水栓に手をかけることが困難などのお悩みがあると思います。
これらの悩みを解決してくれるバリアフリー専用の洗面台や、足元にスペースがあり座りながら使用できる洗面台があります。特長は下記のとおりです。
- 足元に空間があり、車いすや椅子に座った状態でも利用可能
- 水栓位置への配慮
- スイッチやコンセントの位置も座った状態から届きやすい
- 自動水栓機能も取り付け可能
- 座っていても映る鏡の設置
段差の解消
廊下と洗面台の境に段差があると不便ですし危険です。転倒の恐れもありますが、車いすの通行の妨げにもなります。
出入り口を広くし、引き戸にする
出入り口の開口部は歩行器や車いすが通ることを考慮して最低でも80~85cmは必要です。
また、歩行器や車いすでも開けられるよう、引き戸への変更もおすすめします。引き戸はドアを引き込むスペースが必要ですが、開閉の際でもスペースを要しないので洗面所スペースを最大限に使えます。
ただし、家の構造によっては引き戸にするのが難しいことも。その場合は開き戸を外開きにすることで、中で倒れてしまった場合の救護がしやすくなります。
床材の変更
洗面所や脱衣所は水を頻繁に使う場所ですので耐水性に優れた素材を選びましょう。また、水で濡れても滑りにくい素材を選ぶ事も大切です。
さらに、お風呂あがりに素足で歩いても心地良い素材であることもポイントです。
具体的な例として、クッションフロアやコルクがおすすめです。この2つの特徴は以下の通りです。
- クッションフロア(CFシート):耐水性に優れ、汚れが落としやすい。弾力性もあり、バリアフリーにおすすめ
- コルク:水や汚れに強いタイプもある。耐久性が強く、断熱性も高いため床暖房に対応した種類もある。また、弾力性があるので転倒の際の衝撃も吸収してくれる
トイレと同空間にする
洗面所をトイレと同空間に設置することを検討してみても良いでしょう。
トイレと洗面所が同じ空間にあると、それぞれのスペースが広がり、小さい段差でつまずくことや、狭い空間で衣服の着脱をすることもありません。
トイレ⇔洗面所の移動時、ドアの数も減るため、動作の単純化にもつながります。
寝室のバリアフリーリフォームの内容・費用
最後に寝室のバリアフリーリフォームです。寝室でも快適に過ごせるようにするためのリフォームをお伝えします。
リフォーム項目 | 費用 |
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スイッチ・コンセントの移設 | 1万5千円~ |
手すりの設置 | 1万円~ |
※金額については、家の状況や設置する物の内容によって変わってきます。
十分な部屋の広さを確保する
バリアフリーの寝室として必要な広さの目安は以下の通りです。
一人部屋の場合…6~8畳
二人部屋の場合…8~12畳
現在、布団で寝ている方も、加齢や体力の衰えとともに布団の出し入れや、寝床の出入りが負担になってきます。
そうなった場合、ベッドでの就寝に切り替える可能性があります。ベッドを置いても十分な広さを確保するためには最低限、上記の広さが必要となります。
また、車いすの場合はベッドを置いても車いすを自由に動かせるための十分な広さが必要になります。車いすの方の寝室の広さは一人部屋でも最低8畳は必要です。
8畳でも十分とは言えませんので、家具やベッドの配置、車いすの導線などを十分に考慮する必要があります。
スイッチやコンセントの位置を移動させる
スイッチやコンセントの位置が合わない場合、調節しましょう。
スイッチは、リモコン式のものがありますので、こちらも検討してみると良いでしょう。
手すりの設置
寝室でも手すりは大変重要です。ベッドからの立ち上がり、移動の際のつたい歩きなど体勢を保つためです。
手すり使用者の動きをサポートできるよう、適切な場所に設置しましょう。
3.住宅全面リフォーム時の間取りのポイント
バリアフリーリフォームを考えた際に、住まい全体のリフォ―ムをお考えの方もいらっしゃると思います。その際、ぜひ考えて頂きたいポイントをお伝えします。
バリアフリーリフォームを成功させるために、ぜひ参考にしてみてください。
生活スペースを一階にまとめる
二階建て、三階建ての戸建て住宅では、将来階段の昇降ができなくなった際のことを考え、一階で生活が完結できるように間取りを設計することをおすすめします。具体的にいうと、寝室・トイレ・洗面・キッチンが一階にまとまっていると良いでしょう。
生活スペースをできるだけ近くにまとめることで、バリアフリーリフォームの基本の一つ「動作の単純化」が図れます。
また、一つの案として、減築して平屋にすることも可能です。上階に上がれない、手入れができないなどの状態でしたら、平屋が住みやすいということもあります。


ヒートショックを防ぐよう配慮した導線にする
ヒートショックとは急激な温度差がもたらす身体への悪影響のことです。主な症状として、失神、心筋梗塞、脳梗塞など血圧が大きく変動して起こるものです。
特に、冬場は寒い廊下と暖かい部屋の温度差からこの事故が起こりやすいと言われています。
このような事故を未然に防ぐために、浴室(脱衣所)と寝室、トイレの配置は十分考える必要があります。これら3つの導線はなるべく短いことが理想です。
寒い廊下を長時間通らずに、トイレに行けることを目指しましょう。
また、寒い廊下や脱衣所を経由して暖かい浴室に入ることも極めて危険です。こちらも未然に防げるよう、十分考慮しましょう。
心疾患をお持ちの方は特に注意が必要です。
歩行器や車いす移動を考慮した廊下幅と部屋の広さにする
将来、歩行器や車いすを使うことを考慮して、余裕をもった廊下幅や部屋の広さを確保しておくと良いでしょう。
歩行器や車いす移動では、特に方向転換の際に広さが必要になります。そのため方向転換のため回転できるか確かめることが大切です。
寝室を例にすると、ベッドなどの家具を置いた状態で回転できるだけのスペースがあると良いでしょう。回転スペースがないと前向きで入室して、後退しながら退出することになり、危険を伴います。
車いすからベッドへの移動も人によって体勢が異なります。ベッドと車いすを平行にする方もいれば垂直にする方もいます。その時にならないと適切なベッドや家具の配置が分からないため、広さを確保しておくことが大切です。
以下では、箇所別のバリアフリーリフォームを解説します。
4.介護保険や市区町村の助成金・補助金制度を使ってお得にリフォームする
バリアフリーリフォームをお考えの方はぜひこれらの制度を活用してお得にリフォームしましょう。
介護やバリアフリー目的の住宅リフォームに用意されている補助・助成金制度は以下の2つです
- 介護保険の住宅改修費支給
- 市区町村の助成金制度
それぞれ解説していきます。
介護保険の住宅改修費制度を活用する
介護保険制度は平成12年(2007年)4月から始まりました。40歳以上はこれに加入し、保険料を払わねばなりません。そして、この保険料を財源として介護保険サービスを市区町村が運営します。
そのサービスのひとつに、住宅改修費の支給があります。こちらを活用して、バリアフリーリフォームを行うことができます。
以下で詳しくお伝えしますので参考にしてください。
給付額は原則ひとり最大14~18万円
介護認定のレベルに関係なく、リフォーム費用20万円のうち7割~9割(14~18万円)が支給されます。言い換えると、20万円までのリフォームを1割~3割負担でできるということです。
また、工事費用の合計が20万円になるまで何度も活用することができます。
基本的には一人、生涯一度きりの制度です。しかし、以下の場合はリセットされ、再度支給限度額20万円のうち7~9割の給付を受けることができます。
- 転居した場合
- 「介護の必要の程度」の段階が3段階以上上がった場合
3つの支給条件
- 要介護認定で「要支援」または「要介護」の認定がされていること
- 福祉施設に入所しておらず、病院にも入院していないこと
- 改修する家の住所が被保険証の住所と同一で、本人が実際に居住していること
以上3点をすべて満たす必要があります。
支給対象リフォーム
すべてのバリアフリーリフォームが支給対象になるわけではありません。以下のリフォームが対象ですのでこちらで確認してみてください。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑り防止及び移動の円滑化のための床材変更
- 扉の変更
- 洋式便器への便器の取り替え
- 上記5つの住宅改修に付帯して必要な工事
市区町村別の住宅改修費制度を活用して介護リフォームする
介護保険とは別に各市区町村が独自に行う住宅改修費制度があります。こちらの内容はお住まいの市区町村のホームページや役所の窓口でご確認ください。
以下では市区町村の助成金について、詳しくまとめてあります。併せてご活用ください。


また、介護目的のリフォームをした場合は、税金の控除も受けられる可能性があります。詳しくは以下のリンクにお進みください。


5.バリアフリーリフォームの業者の選び方
バリアフリーリフォームを行う際にどのようなリフォーム会社に相談するか悩む方も多いと思います。そういった方へ、業者の選び方をお伝えします。
業者選びはリフォーム成功のカギを握る大事なアクションですのでこちらで確認してみてください。
介護やバリアフリーの知識・実績のある業者を選ぶ
バリアフリーリフォームは一般的なリフォームとは異なる特殊なリフォームです。従って、リフォームの知識だけでなく、介護やバリアフリーの知識も必要になります。
中には、バリアフリーリフォームの専門知識がない業者もいますので、そういった業者に依頼することはおすすめできません。
バリアフリーリフォームを得意とする、実績のあるリフォーム会社を選ぶ方法の一例を紹介します。どこの業者も同じと思わず、しっかり比較してから選びましょう。
- 会社のホームページや広告などから、実績や得意分野を確認する
- 評判などを確認する
- 実際にバリアフリーリフォームした知人等がいれば、そういった人に聞いてみる
2〜4社程の複数の業者から見積をとる
信頼できる業者を探すためにも複数社から見積もりをとりましょう。
見積もりでは、もちろん料金の比較等も行いますが、実際に現場を見て見積を出してもらうため、業者と接する機会でもあります。その際に、この業者に頼みたいなどと感じたら、そういった直観も大切にすることで満足のいくリフォームができます。
また、見積書は業者によって書き方が異なるため、見てもよくわからないことが多いはずです。しかし分からないからといって任せきりにするのでなく、リフォーム会社にしっかり確認することが大切です。


ケアマネージャーに相談する
介護認定を受けている方は、それぞれ担当のケアマネージャーがいらっしゃると思います。
バリアフリーや介護リフォームができる業者に伝手がある場合が多いため、業者を探す手助けとなるでしょう。
また介護保険の住宅改修費を申請する場合は、ケアマネージャーの協力が必須になります。
6.まとめ
バリアフリーリフォームの内容・費用を中心に詳しく見てきました。家の各場所それぞれに使う人に合ったバリアフリーリフォームを行うことで、より快適な暮らしができるはずと思います。
また介護保険など活用できる制度は活用するとお得にリフォームができます。その際には、注意事項や手順をよく確認するようにしましょう。
さらに業者は慎重に選びましょう。予算や費用面だけで選ぶ事はおすすめしません。信頼できる業者に納得したリフォームをお願いしましょう。