
玄関引き戸を長く使っていると、「扉を開け閉めするときにガタつく」「鍵の開閉がしにくい」などの不調が出てくることがあります。また、昔の引き戸は気密性が低いので、隙間風でお悩みの方や、防犯面が気になる方も多いのではないでしょうか。
不調だけならレールの掃除やシリコンスプレーの塗布などで解決できることもありますが、見た目の劣化も目立つのであれば、交換をおすすめします。
引き戸とひとくちに言ってもさまざまな機能があるため、自分の目的や予算に合わせたものを選ぶことが大切です。そこで本記事では、玄関引き戸のリフォームを中心に、方法や費用、リフォームのポイントなどを解説します。
目次
1.【タイプ別】あなたの家に必要な玄関引き戸リフォームは?
冒頭でもお伝えしたように、玄関引き戸のリフォームでは、目的に応じた方法を選ぶことが大切です。今感じている悩みや、希望から考えてみましょう。
1-1.古くなった玄関引き戸を新しくしたい|引き戸の交換

玄関引き戸の耐用年数は、アルミ製が20〜30年、木製が15〜20年ほどです。
ただし丁番(蝶番)や取っ手、鍵といった部品のほとんどは15年ほどで寿命を迎えるため、次のような不具合が出てくることがあります。
- 閉まりが悪く、開閉時に扉が重い
- 鍵が閉まりにくい
- 開閉時に異音がする
- 隙間風が入ってきて寒い
- デザインが古く建物の印象も古く見える
- 扉に腐食や変色がある
このような症状があれば、交換を検討するタイミングです。
ドアのみの交換やカバー工法なら、費用と工期を抑えつつ手軽にリフォームできます。
1-2.玄関の防犯性や気密性を高めたい|高機能引き戸への交換

防犯性・断熱性・気密性を重視したい方におすすめなのが、高機能引き戸への交換です。
昔ながらの家という印象が強い引き戸ですが、近年では以下のように高性能な商品がたくさん登場しています。
- 電子錠やスマートキー対応、2ロック:防犯対策に
- 採光、通風窓付き:採光、通風の確保に
- 高断熱仕様:冷暖房効率の向上に
カードキーや暗証番号、スマートフォンアプリで開閉できるタイプや、割れにくい防犯ガラスを用いた商品もあり、利便性と安全性を両立できます。高断熱仕様の引き戸を選べば、快適性が向上するだけではなく、冷暖房効率の向上によって節約効果も期待できるでしょう。
ただし、構造上引き戸は隙間ができやすいので、気密性と防音性は開き戸にやや劣ります。防音性や光熱費の削減を重視する方は、開き戸への交換をおすすめします。
1-3.将来に備えて玄関をバリアフリー化したい|引き戸のバリアフリー対応

開閉スペースを取らない引き戸は、バリアフリー住宅に最適です。
次のような機能をもつ商品を選べば、高齢者や車いす使用時もスムーズに出入りできます。
- 有効開口幅の広いドア
- 出入りの段差が小さいドア
- ゆっくりと閉まるドア
- リモコンで開閉できるドア
中でも3枚引き戸は間口を広げずに開口幅を確保できるので、車いすでの出入りがとてもスムーズです。他にも、出入りの段差がないものや、扉から手を離すと自動でゆっくりと扉が閉まるものなどは、転倒や怪我の防止につながります。
ただし、バリアフリー目的で引き戸を交換するなら、アプローチ部分の段差解消も必須です。玄関ドアだけでなく、アプローチ全体のバリアフリーリフォームを検討しましょう。
1-4.開き戸だと不便なので引き戸にしたい|開き戸から引き戸への交換

「今は開き戸を使っているけど引き戸にしたい」という希望も増えています。
次のような悩みがあるなら、引き戸にすることで玄関の使い勝手を大きく改善できる可能性があります。
- 玄関前のスペースが狭くて、開き戸を開けると危険
- 荷物を入れにくい
ただし、開き戸から引き戸への交換は、開口部の拡張工事が必要になることも。その場合は工事規模が大きくなり、費用も高額になります。さらに構造上の制約が出る可能性もあるため、リフォーム会社に事前調査をしてもらいましょう。


2.玄関引き戸のリフォーム方法と費用
玄関引き戸の交換にかかる費用は方法とドアの種類によって大きく異なるため、リフォーム費用は総額30〜50万円ほどです。
ただしこの費用は、扉の本体価格や工事内容によって大きく変わってきます。
2-1.玄関引き戸の本体価格
扉の種類別の価格目安は、以下のとおりです。
扉の種類 | 本体価格目安(1枚あたり) |
---|---|
アルミ製引き戸 | 5~10万円 |
木製引き戸 | 10~20万円 |
強化ガラス引き戸 | 15~30万円 |
アルミ製は比較的安価ですが、防犯性に優れた強化ガラスの引き戸は、扉だけで15万円を超えることがほとんど。そのほかも高機能なものやデザイン性に優れたものを選ぶと、価格はさらに上がる傾向があります。
リフォーム方法別の費用目安は、以下に見ていきましょう。
2-2.玄関引き戸の交換
引き戸から引き戸への交換費用は、方法によって大きく異なります。
リフォーム方法 | 費用目安(施工費のみ) |
---|---|
ドア交換 | 3万円前後 |
カバー工法 | 5万円前後 |
はつり工法 | 6.8~9万円 |
間口変更 | 15~30万円 |
既存ドアを撤去して新しいドアを取り付ける方法や、既存ドア枠に新しい枠を被せる『カバー工法』なら、少ない工程で終わるため費用を抑えられます。
一方、既存ドアとドア枠を両方新しくする『はつり工法』になると、施工費用は高額です。
さらに、間口変更もともなう場合は撤去や解体も必要になるため、施工費用は15〜30万円と、大きく跳ね上がります。玄関ドアを一新して開口部を広げられるというメリットはありますが、外壁部分にも手を加えるため、雨漏りのリスクがある点にも注意が必要です。
2-3.玄関引き戸のバリアフリー対応
バリアフリーを目的に引き戸を交換するなら、あわせて次のようなリフォームも検討しましょう。費用目安は以下のとおりです。
リフォーム箇所 | 費用目安 |
---|---|
スロープの設置(1mあたり) | 10万円~ |
手すりの設置(1か所あたり) | 3万円~ |
間口変更 | 15~30万円 |
床材の変更 | 8万円程度 |
せっかくバリアフリー対応の玄関ドアに交換しても、アプローチ部分に段差や傾斜があっては意味がありません。スロープや手すりの設置、段差の解消などを行い、玄関まで安全にたどり着けるようリフォームしましょう。
車いすでも出入りがしやすいように間口を広げ、玄関土間を滑りにくい床材へと交換すると、より安全性が高まります。


2-4.開き戸から引き戸への交換
開き戸から引き戸への交換は、ここまで紹介した中でもっとも大がかりなリフォームになります。施工費用は18~20万円が目安ですが、間口の拡張や壁の補強などをともなう工事になると、追加費用がかかる可能性があります。
玄関ドアのリフォーム費用を詳しく説明した記事がありますので、ぜひこちらも参考にしてください。


3.玄関引き戸のリフォーム費用を抑える方法
玄関引き戸のリフォーム費用は30〜50万円が目安と、とても高額です。
できるだけ家計の負担を減らしたい方のために、ここでは費用を抑える方法を紹介します。
3-1.補助金・助成金の活用を検討する
もっとも確実かつ大きく費用が抑えられるのが、補助金や助成金の活用です。
玄関引き戸をリフォームしたときには、次のような制度が利用できる可能性があります。
- 子育てグリーン住宅支援事業
- 先進的窓リノベ事業
- 次世代省エネ建材支援事業
- 断熱リフォーム支援事業
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
- 介護保険の高齢者住宅改修費用助成制度
- 各自治体の補助金・助成金制度
ただし、補助金制度は住宅の省エネ性の向上を目的としたものが多く、玄関ドアのみの交換だと対象外になる場合がほとんど。介護保険に関してはドアのみの改修でも可能ですが、対象となるのは要支援・要介護認定を受けている方と、限定的です。
まずは補助金に詳しいリフォームに相談して、対象となる制度があるか確認してみるとよいでしょう。
玄関ドアのリフォームで活用できる補助金制度について詳しく説明した記事がありますので、ぜひこちらにも目を通してみてください。


3-2.叶えたいことの優先順位を決めて商品を選ぶ
希望をすべて叶えようとすると、どうしても費用はかさんでしまいます。
予算内で抑えつつも快適性を高めるためには、希望の優先順位を決めておきましょう。
たとえば防犯性を優先するのなら性能面に予算を集中し、バリアフリー目的なら間口の拡張やアプローチ部分の工事に費用を充てるなど、メリハリが重要です。
最適な提案を受けるためにも、リフォーム会社への相談時には希望とその優先順位をしっかりと伝えましょう。
3-3.相見積もりを取る
3-3.相見積もりを取る
同じように玄関引き戸のリフォームを依頼しても、依頼先によって費用に差が出ることは少なくありません。予算内でリフォームをするためには、相見積もりを取り、自分たちが納得できる内容を提示してくれた会社に依頼しましょう。
とくに意識して確認したいのは、次のようなポイントです。
- 料金の内訳
- 保証内容
- アフターフォローの有無
全体の料金だけでなく、商品グレードや工事範囲などが記載されているのかもしっかり確認してください。保証内容やアフターフォローの有無まで確認しておくと安心です。


4.【目的別】玄関引き戸リフォームの施工事例
実際に玄関引き戸を交換した人は、どのくらいの費用がかかり、どのような仕上がりになったのかも気になるところです。ここからは、リフォーム事例を紹介します。
4-1.【デザイン性重視】モダンな横格子の玄関に
※横にスクロールできます


昔ながらの縦格子の引き戸を、横格子の引き戸へと交換した事例です。
格子を縦から横デザインのものに変更し、マットな質感なものを選んだだけで、落ち着きのあるモダンな雰囲気になりました。
出典:https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=59
4-2.【デザイン性重視】カバー工法で工期も短縮
※横にスクロールできます


費用 | 59.9万円 |
---|---|
工期 | 1日 |
劣化が目立つ玄関引き戸を、現代風の引き戸へとカバー工法で交換した事例です。
既存のドア枠の上から新しい枠を取り付けたので、印象を大きく変えつつも費用と工期を抑えられています。タッチキー搭載で、鍵の施錠開錠も楽になりました。
出典:https://www.yonekurasyouten.com/works/works-12294/
4-3.【機能性向上】タッチキーで楽々開錠
※横にスクロールできます


店舗の入口になっていた部分を解体し、引き違いの引き戸を取り付けた事例です。
壁の解体や塗装をともなう大がかりな工事になりましたが、玄関ドアとその周辺も一新し、建物の印象が大きく変わりました。
タッチキー搭載の商品を選んだので、鍵の施錠開錠も簡単です。
出典:https://www.yonekurasyouten.com/works/works-8805/
4-4.【機能性向上】建付けの悪い引き戸の隙間を解消
※横にスクロールできます


費用 | 42万円 |
---|---|
工期 | 1日 |
劣化によって建付けが悪く、隙間ができていた引き戸を交換した事例です。
2重ロックで防犯性が高い引き戸を採用しましたが、カバー工法を選んだため、費用は抑えられています。施主さまの「和風な雰囲気は残したい」という希望を叶えつつも、悩みを解消できるリフォームになりました。
出典:https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=2797
4-5.【バリアフリー対応】3枚引き戸で車いすでもスムーズに出入り
※横にスクロールできます


費用 | 約50万円 |
---|
車いすやベビーカーが出入りしやすいように、3枚引き戸に交換した事例です。
扉1枚あたりの大きさがコンパクトな3枚扉を選ぶことで、間口を変えずとも十分な開口幅を確保できました。
出典:https://freshhouse.co.jp/case/refo301213/
5.玄関引き戸リフォーム前に確認しておきたい3つのポイント
玄関引き戸を交換するときには、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
これらを事前に把握しておくことで、満足度が高いリフォームが実現できます。
5-1.今の玄関の改善したい点をまとめておく
『3-2.叶えたいことの優先順位を決めて商品を選ぶ』では優先順位を決めることを説明しましたが、その前に改善点もまとめておきましょう。
玄関引き戸でよくあるのが、次のような悩みです。
- 開閉:ドアが重い、動きにくいなど
- 気密性:隙間風が入ってくる、音が漏れる
- 防犯性:鍵が古い、施錠開錠がしにくい
- デザイン性:見た目が古い、汚れや傷が目立つ
- 使い勝手:開口幅が狭い、段差がある
これらの課題をまとめておくことで、リフォーム会社に希望が伝わりやすくなるので、より適切な方法と商品を提案してもらえるでしょう。
5-2.現在の玄関の開口幅や玄関前に段差があったりしないか
玄関の間口や段差の有無は、リフォーム前に必ず確認しておきたいポイントです。
たとえば、玄関の間口が狭いと希望の引き戸が設置できない可能性があり、段差がある場合は、床レベルの調整が必要になるケースがあるからです。
また、周辺の構造によっては、間口を拡張できない可能性もあります。
より実現性のある提案を受けるために、寸法を測る、図面を用意する、写真を撮るなどして、周辺環境がわかる資料を提出しましょう。
5-3.将来の使い勝手を考えておく
玄関引き戸は、リフォームから15~30年ほど使い続けることになります。
その間に子どもの成長や独立、高齢家族の介護、自分たちの高齢化などによって、ライフスタイルが大きく変わる可能性が高いです。そのような変化にも対応できるように、今だけではなく、10年後、20年後の暮らしをイメージしたリフォームを行いましょう。
6.まとめ
玄関引き戸のリフォームは、見た目の印象を変えるだけではなく、「暮らしの質」を高めることにつながります。しかし引き戸とひとくちに言ってもさまざまな商品があるため、自分たちの悩みとリフォームの目的を明確にし、予算に合う商品を選ぶことが大切です。
必要に応じて、間口の拡張やアプローチ部分のバリアフリーリフォームも検討しましょう。
また、引き戸の交換は大がかりな工事になることもあるので、業者選びがとても重要です。豊富な実績と高い提案を強みにするリフォーム会社を探しましょう。
業者選びの際には、ぜひリフォームガイドをご活用ください。専属のコンシェルジュがお客さまの希望や予算をもとに、優良業者のみを複数社まで絞り、相見積もりまでサポートいたします。