
立地の良さや手頃な物件価格から、あえて古い団地を購入して現代のライフスタイルに合わせてリノベーションする方が増えています。
しかし、古い建物だけに「一体いくら費用がかかるのか」「あと何年住めるのか」といった不安は尽きないものです。
この記事では、団地リノベーションの費用相場を予算別に詳しく解説します。団地特有の事情による費用の落とし穴や将来の建て替えリスク、ライフプランに合わせた投資の考え方などを、専門家の視点から詳しくお伝えします。
目次
1.団地リノベーションの費用相場はいくら?
団地リノベーションの費用は、平米(㎡)単価 10万円〜20万円程度が一般的です。
50㎡〜60㎡程度の標準的な団地であれば、フルリノベーションで600万円〜1,000万円がボリュームゾーンとなります。
ただし、採用する建材や設備のグレード、建物の構造、そして見えない部分である配線や配管の状況によって、最終的な見積もりは大きく変動します。

1-1.ハイグレード(15~20万円/㎡)のイメージ
ハイグレード仕様にすると平米単価が上がる要因は、大きく分けて以下の3つに集約されます。
- デザイン性の高い水まわり設備
高機能な海外製食洗機を備えたキッチンや、ユニットバスではなくタイルをあしらった造作浴室などを導入した場合です。 - こだわりの自然素材
床に無垢材、壁に珪藻土や漆喰などの塗り壁、あるいは輸入クロスなどの高級建材を使用すると費用がアップします。 - 特注の造作家具
壁一面の収納棚や、ワークスペースのデスクなどを空間に合わせてオーダーメイドで作る場合です。
ハイグレードの水まわり設備
- 高機能タイプやデザイン性の高いハイグレードの設備
- 既製品ではない特注の設備(ユニットバスではなく造作浴室など)
なお、グレードによって水まわり設備にどのような違いが生じるのかについては、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひご一読ください。(マンションの水回りリフォームについての記事ですが、団地のリフォームも基本的に同じです。)


ハイグレードの床材や壁材を導入した場合
- 無垢材など自然素材の床材
- 天然木の壁材や塗り壁
- 意匠性の高いデザインクロス
なお、自然素材の床材やハイグレードの壁紙の詳細を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。




壁面収納などこだわりの造作を採用した場合
- 壁面収納やオーダーメイドの特注家具
- リビング横に琉球畳を使用したモダン和室を併設
1-2.団地リノベーションの費用が大きく変動するその他の要因
同じような広さとグレードでも、見積もりに数百万円の差が出ることがあります。団地特有の事情を理解しておくことが、予算オーバーを防ぐカギとなります。
配管と配線の更新
築30〜50年の団地では、目に見えない部分が最大のコスト要因になります。
- 給排水配管
老朽化した配管の更新は必須です。特に水回りの位置を大幅に変える場合、床を高くして配管スペースを確保する「床上げ」が必要になり、その分費用がかさみます。 - 電気配線
団地全体の受電容量には限界があるため、戸別の容量アップが難しいケースがあります。しかし、30年以上経過した電線ケーブルは劣化しているため、安全のために全やり替えが必要になることも少なくありません。
搬入コスト
エレベーターがない団地の4階・5階物件は要注意です。資材の運搬(荷揚げ)や廃材の搬出をすべて人力で行う必要があり、この人件費だけで数十万円の差が出ることがあります。
過去の修繕履歴
以前のオーナーが一度リフォームしている場合、そのまま使える部分がある一方で、ずさんな工事がなされていると解体後に余計な補修費用がかかるリスクもあります。
2.古い団地はあと何年住める?リノベにおけるライフプランの重要性
「せっかく大金をかけてリノベーションしても、すぐに住めなくなったらどうしよう」という不安は、誰もが抱くものです。
2-1.RC造(鉄筋コンクリート)の寿命は100年以上
多くの団地は耐久性の高いRC造(鉄筋コンクリート造)で造られています。物理的な寿命だけで言えば、適切にメンテナンスされているRC造の建物は100年以上持つと言われています。
管理状態が良い団地であれば、あと30年〜40年住むことは現実的に可能です。
2-2.重要なのは「あと何年住む想定か」という視点
費用の考え方は、あなたのライフプランによって変わります。
- 15年〜20年住んで、子供が独立したら売却or住み替える
子供の成長に合わせて住み替えや売却を検討しているなら、今の住み心地を優先した投資が正解です。
団地は好立地に多いため、内装が綺麗であれば将来的に賃貸に出すという選択肢も残ります。 - 終の棲家(ついのすみか)として40年以上住む
長く住み続けるためには、見た目の綺麗さだけでなく、断熱性能などの機能向上や配線配管の更新などにしっかりコストをかけるリノベーションが必須です。
2-3.建て替えの可能性とリスク
最近では、住民の合意形成が難しい「建て替え」よりも、耐震補強や外壁改修を行う「長寿命化(団地再生)」が主流となっています。
対象物件がどちらの方向性で動いているか、管理組合の議事録や長期修繕計画を必ず確認しましょう。
3.【予算別】団地リノベーションでできること
ご自身の予算でどこまで理想に近づけるのか、目安を確認してみましょう。
3-1.【予算100~200万円】表面リフォームとピンポイント補修
100万円の場合、間取り変更や水回り設備の全交換は困難です。表面的な見た目を綺麗にするリフォームが中心になるでしょう。
- できること
クロス(壁紙)張り替え、畳をクッションフロアへ変更、古くなったガスコンロやレンジフードの交換、トイレの交換など - 向いている人
建物は古くても清潔感があればOKという方
3-2.【予算200~300万円】水回りの一部更新と内装リフレッシュ
予算が200万円以上あれば、ユニットバスの交換など費用の掛かる水回りリフォームが可能になります。特に傷みの激しい場所を優先的に更新しましょう。
- できること
キッチンとユニットバスの交換、主要な居室のフローリング重ね貼り、一部の照明器具更新など - 向いている人
基本的な居住性能を確保し、見える部分を綺麗にしたい方
3-3.【予算300~500万円】LDKを中心としたプチ改修
水回りに加えて、家族が集まるLDKをリノベーションできます。
- できること
LDKを一つの広い空間にする、キッチンを対面式に近づける、洗面台の交換など - 向いている人
共働きで家族の時間を大切にしたい、LDKだけはこだわりたい方
3-4.【予算500万〜1,000万円】部分的な間取り変更と設備一新
家全体は難しいですが、部分的に間取りを変更したり、水回り設備を一式更新する「準フルリノベーション」が可能になります。
- できること
水回りの完全交換、和室を洋室へ変更、収納スペースの拡張、一部の二重サッシ設置(断熱対策) - 向いている人
生活動線を改善し、現代的な間取りで暮らしたい方
3-5.【予算1,000万円以上】スケルトンからのフルリノベーション
内装を剥がし、スケルトン状態にしてからのフルリノベーションが可能です。ご自身の理想のイメージに近い改装ができる可能性が高まります。
- できること
配管・配線の全面更新、床・壁・天井の全撤去(スケルトン化)、自由な間取り変更、無垢材や漆喰などの自然素材、ハイエンドなキッチン設置など - 向いている人
団地の立地を活かしつつ、中身は注文住宅のようなこだわりを実現したい方
DIYで費用を抑えることはできる?
壁紙の上張りや塗装といった表面的な作業はDIYで実施可能ですが、保証の問題もあるため、事前にリフォーム会社とDIYを行う範囲について協議する必要があります。
また、漏水や漏電は重大な事故につながりかねないため、水回りや電気工事は必ずプロに任せましょう。特に電気配線工事には国家資格が必要ですのでご注意ください。
4.団地リノベーションの費用を抑えつつ、失敗しないための秘訣
リノベーションの検討では、実現したいことが多過ぎて予算をオーバーしてしまうことも多くあります。工事が始まってから追加の費用が発生することも避けなければなりません。
ここでは、費用を抑えながらも納得の行くリノベーションを実現するコツをお伝えします。
4-1.団地リノベーションの実績が豊富な会社を選ぶ
団地のリノベーションは、一般的な戸建て住宅とは全く異なる設計・施工のノウハウが求められる特殊な分野です。
もし実績の少ない会社に依頼してしまうと、解体した後に初めて不具合が見つかるなど、想定外の追加費用が発生して予算オーバーを招くリスクもあります。
賢く費用を抑えつつ理想を叶えるなら、ぜひ地元の工務店やリフォーム会社という選択肢を検討してみてください。
大手企業のような莫大な広告宣伝費や営業コストをカットしている分、同じ予算であってもその余剰分を建材や設備のグレードアップに直接充てることが可能です。
地域に根ざした職人の確かな技術が、限られた予算内でワンランク上の暮らしを実現する力強い味方になってくれるはずです。

4-2.金額が同じでも業者によって見積もり前提が異なる場合も!
同じ物件で、かつ建材のグレードを揃えて見積もりを依頼したとしても、会社によって見積もり金額に数百万円の差が出ることがあります。
リノベーションは、解体、配管、木工事、内装仕上げといった数多くの工程が積み重なってできています。各工程で発生する1〜2割程度のわずかな費用差が、一軒分すべて合算されることで、最終的に数百万円という大きな差となって現れるのです。
また、たとえ見積額が同程度だったとしても、安易に「内容も同じだろう」と判断するのは禁物です。会社によって得意とするメーカーが異なるだけでなく、細かい仕様が微妙に異なっているケースが多々あります

4-3.リフォーム会社による「提案の質」の違いを見極める
さらに重要なのが、「提案の質」の違いです。お客様に言われた項目だけを淡々と積み上げる業者もいれば、プロの視点から「この動線ならこちらの方が使いやすいですよ」と、住んだ後の利便性まで考慮した提案を見積もりに含めてくれる業者もいます。
見積書を比較する際は、単なる数字の大小だけを追うのではなく、その内訳にある仕様の細部や、自分たちの暮らしをどれだけ真剣に考えてくれているかという「提案の深さ」まで見極めることが、後悔しないリノベーションを叶えるための重要な鍵となります。
4-4.優先順位をつけてリフォームする範囲を絞る
団地のリノベーションでは、どうしても「あれもこれも直したい」と希望が膨らみがちです。しかし、すべての要望を詰め込むと見積もり金額は一気に跳ね上がってしまいます。
限られた予算内で満足度の高い住まいを実現するためには、リフォーム範囲を絞り込み、明確な優先順位をつけることが欠かせません。
特に注意したいのが、クロス(壁紙)や床の張り替えです。これらは一部屋あたりの単価はそれほど高く見えなくても、施工面積に比例して費用が積み上がるため、家全体で見ると意外に大きな出費となります。
まずは「見た目」よりも「機能」を優先するのもひとつの手です。
毎日の家事効率や快適性に直結する水まわりのリフォームに予算を集中させ、クロスや床などの内装は、今の状態を活かしたり、後から少しずつ手を加えたりといった柔軟な検討をしてみましょう。
4-5.メーカーにはこだわらない
設備機器には定価がありますが、実は定価通りに購入することはほとんどありません。実際には定価から何割引きといった形で提供されますが、この割引率がメーカーによって大きく異なるという点が重要なポイントです。
例えば、あるリフォーム会社で「LIXIL」と「TOTO」の同等グレードの製品で見積もりを取った際、一方は40%引き、もう一方は20%引きといった具合に、最終的な支払い金額に大きな差が出ることが珍しくありません。
以下は、あるリフォーム会社にLIXILとTOTOの両方で見積もりを出してもらった一例です。

一般的に、知名度の高い業界最大手メーカーの製品は、ブランド力やサポート体制が充実している分、見積もり金額が割高になる傾向にあります。
施工業者からは「やはり大手は作りがしっかりしている」「メンテナンス性が高い」といった、プロの視点でのメリットを説かれることもあるでしょう。
安さだけで選んで後悔しないためには、カタログや見積書の数字だけで判断せず、必ずショールームに足を運ぶことをおすすめします。
実際に見て、触れて、使い勝手を確かめることで、その価格差に見合う価値があるのかを納得感を持って判断できるようになります。
4-6.補助金と減税制度をフル活用する
団地リノベーションは「省エネ」「バリアフリー」などの観点から、国や自治体の補助金を受けやすいのが特徴です。また、規模の大きいリフォームの場合は減税の特典を得られることもあります。
これらを活用することで、自己負担を数十万円単位で減らせる可能性がありますので、積極的に活用すべきです。
- リフォーム補助金
「子育てグリーン住宅支援事業(2026年度は「みらいエコ住宅2026事業」として実施予定)などの国の補助金は、窓の断熱改修や高効率給湯器の設置、バリアフリー改修などが対象になります。
特に団地は冬の寒さが厳しいため、「窓のインナーサッシ(二重窓)」の設置は費用対効果が非常に高く、補助金も出やすいため優先的に検討しましょう。
▼参考記事


- 自治体独自の補助金
多くの自治体で「耐震」「省エネ」「バリアフリー」を対象とした独自補助金を実施しています。
補助金の内容や条件は各自治体によって異なるため、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会のWebサイトをご覧ください
地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
- リフォーム減税
一定の要件を満たすリフォームを行った場合、所得税の控除や固定資産税の減額措置を受けることができます。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼詳しくはこちら


冬とても寒い団地の断熱対策は?
冬に暖房で暖めた熱の約6割が、窓などの開口部から逃げていくと言われています。
この熱の流出を食い止める最も効果的な方法が、「インナーサッシ(二重窓)」の設置です。既存の窓の内側にもう一つ窓を取り付けるだけの比較的シンプルな工事でありながら、費用のわりに得られる断熱効果は非常に大きく、住まいの快適性を劇的に向上させてくれます。
国や自治体の補助金制度を活用することで、自己負担を抑えつつ、夏は涼しく冬は暖かい理想の住環境を手に入れることができますので、積極的に検討してみてはいかがでしょうか。


5.団地リノベーションの事例と実際にかかった費用
ここでは、団地リノベーションの成功事例をいくつかご紹介します。
実際の成功事例を見て、理想の暮らしと費用のイメージを膨らませてみましょう。
5-1.【費用300万円】団地リノベーション事例
既に間取り変更が行われていた物件を購入し、住み替えに伴うリフォームを実施した事例です。
既に洋室化されていた和室にはエアコン設置のみを行うなど、改修範囲を限定することで費用を抑えました。

出典:アートリフォーム
5-2.【88㎡・費用434万円】団地リノベーション事例
築45年の団地をリノベーションした事例です。
収納スペースを造作で設置し、広々とした空間を常に維持できるよう配慮しました。天井にも木質パネルを貼り、上品で落ち着きのある内装です。

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出典:アートリフォーム
5-3.【44㎡・費用636万円】団地リノベーション事例
押し入れや物入れの間仕切り壁を撤去し、広々としたLDK一体型の空間を実現しています。
構造上抜けない壁以外を全て取り払い、従来の団地の間取りを現代的に一新しました。窓枠などの細部も新しくなり、新築のような仕上がりです。

出典:アートリフォーム
5-4.【66㎡・費用800万円】団地リノベーション事例
相続した築51年の団地を若夫婦の新生活のためにリノベーションしました。
これから産まれてくる子供との生活を見据え、子育てに最適な間取りと設備を導入しています。

出典:フレッシュハウス
6.まとめ
団地リノベーションは、内装や設備に自分たちのこだわりを詰め込める素晴らしい選択肢です。しかし、古い建物ゆえの制約や隠れた劣化への対策は欠かせません。
一番の失敗は、「安いから」という理由だけで実績のない会社を選んでしまうことです。
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