
外壁塗装を依頼する前に、外壁用の塗料は種類によって仕上がりや効果が異なることを理解しておきましょう。また塗料によって「持ち」が違ってくるため、見積もりの安さだけで依頼してしまうと、後悔することになりかねません。
今回は外壁塗装に使用する塗料の種類とその特徴、費用相場、耐用年数について解説し、塗装方法による見た目の違いやおすすめのカラー、依頼する際のコツも紹介します。外壁塗装を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
1.外壁塗装で使用する塗料の種類
外壁塗装で使用する塗料にはさまざまな種類があります。
一般にはあまり知られていないことですが、これらを知っていると、よりスムーズにリフォームを進められます。そのために必要な最低限のことをこれから解説します。
[1]外壁塗装の塗料の種類一覧|価格・耐用年数・特徴を解説
耐用年数が長いものほど費用は高くなり、耐用年数が短いものほど費用が安くなる傾向があります。
アクリル、ウレタン塗料は最近あまり流行っておらず、シリコン塗料が主流になっています。
塗料の種類・価格・耐用年数・特徴を以下の表にまとめたのでご覧ください。
上記はあくまでも一般的な相場から算出しているため、実際の価格とは異なることがあります。あらかじめご了承ください。
アクリル塗料
アクリル塗料は1950年頃から販売されていて70年以上の歴史がある、アクリル樹脂を主原料とした塗料です。現在使われている一般的な塗料に比べてコストが安く、発色が良いのが特徴です。またカラーバリエーションは豊富なため、DIYで使う人には使い勝手が良いかもしれません。
しかしひび割れしやすく、耐久性が最も低いため、現在アクリル塗料を使っている業者はほとんどありません。
耐用年数は6~8年と短いですが、近い将来取り壊しが決まっている、数年でまた外壁の色を変えるつもりなどの場合は問題ないでしょう。
ウレタン塗料
ウレタン塗装は10~20年前までは外壁用の塗料として多く使われていましたが、現在はコストパフォーマンスに優れたシリコン塗装にその座を奪われています。
ウレタン塗料はコストが安く、硬化することで弾力性を備えるため、塗膜がひび割れしにくいことがメリットです。また光沢がありその見た目の良さから、雨樋や破風など付帯部分の塗装に利用されています。
しかし比較的耐用年数は短く、外壁に使用する場合8~10年ほどです。また5年から8年ほどで光沢は失われ変色し、ホコリが目立つようになります。外壁に利用する場合は、耐用年数を理解したうえで選択しましょう。
シリコン塗料
シリコン塗料は、現在住宅の外壁塗装に最も多く利用されている仕上げ用塗料です。外壁に利用した場合、耐用年数は10~15年と比較的長く、コストパフォーマンスの高さが魅力です。
多く利用されているため、商品も多く流通しています。外壁塗装で塗料に迷ったら、シリコンを選んでおくと良いでしょう。
ただし重ね塗りが難しい塗料のため、業者の実績が豊富かどうか施工事例などを見て判断するようにしましょう。
また、塗料メーカーによってコストや耐用年数が多少異なります。見積もりを依頼する際は、使用する塗料も確認するようにしてください。
ナノテクノロジー塗料
ナノテクノロジー塗料とは、その名の通りナノテクノロジーによって樹脂をナノレベルまで小さくし、汚れにくいメリットを備えた塗料です。
親水性により雨で汚れを落とすことができ、色褪せにも強く、耐用年数は12~15年です。
石油由来の原料を大幅にカットしているため、エコロジーな塗料ともいえます。外壁のメンテナンスがしやすく、地球環境に配慮した塗料を選びたい方におすすめです。
まだ製造メーカーが少なく、カラーバリエーションが少ないため、希望する外観デザインに合うのか相談してみましょう。
ラジカル塗料
ラジカル塗料とは、塗装を劣化させる要因となる「ラジカル」を制御した塗料のことです。塗装の劣化を遅らせることができるため、耐久性が高く、汚れにくいのが特徴です。
耐用年数は12〜16年といわれているものの、まだ新しい商品のため、2026年以降にならないと正確な寿命について判断することは難しいでしょう。
価格についてはシリコンと比べて大差はありませんが、まだまだ商品としては少なく、選択肢が少ないため、バリエーションを求める人には向いていないかもしれません。
フッ素塗料
フッ素塗料は、他の外壁用塗料に比べて耐久性が高く、メンテナンスに手間がかからないことから、東京スカイツリーをはじめ公共の建物でも多く利用されています。
ウレタンやシリコンに比べると費用は高くなりますが、汚れに強く、次回の塗装までのタイミングを遅らせることができるため、長い目で見るとコストパフォーマンスは高いといえるでしょう。外壁に塗装した場合の耐用年数は、多少商品によって異なりますが、一般的には15~20年といわれています。
フッ素はその素材的な特徴から、ツヤ無しタイプの塗料がありません。ツヤがなく落ち着いた雰囲気を好む方には向いていないでしょう。
光触媒塗料
光触媒塗料には、紫外線が当たることで汚れを分解する「セルフクリーニング機能」があります。紫外線によって分解された汚れが雨によって流れ落ちるため、綺麗な状態を保ちたい人に向いています。光触媒塗料には、空気を浄化する機能もあり、環境にも優しい塗料といえます。
しかし太陽光が当たらない場所は光触媒が機能せず、すべての汚れが落とせるわけではありません。またセルフクリーニング機能があったとしても、劣化しないわけではありません。耐用年数は15~20年です。また施工できる業者は少なく、コストが高くなることがデメリットです。
遮・断熱塗料(セラミック塗料)
遮熱や断熱効果を期待する人には、遮熱・断熱塗料をおすすめします。性能はメーカーや商品によって異なります。見積もりを依頼する際は、商品名やメーカーを確認し、その性能を確認するようにしてください。
遮熱や断熱効果のある塗料は、セラミックを含んでいるケースが一般的です。セラミックや天然石を含有する塗料は、塗装することで石材のようなまだら模様を表現でき、美しい仕上がりが魅力です。
耐用年数が15〜20年と比較的長いことが特徴ですが、コストは他の塗装に比べてやや高くなります。 費用対効果や優先順位を考えて、選択するようにしましょう。
ピュアアクリル塗料
ピュアアクリル塗料とは、従来のアクリル塗料から不純物を取り除き、耐久性や耐水性を高めた塗料です。耐用年数は15~20年と長く、弾性もあるのでひび割れに強いことがメリットです。モルタルなど、ひび割れが目立ちやすい外壁におすすめです。
ただしピュアアクリルを扱っている業者が少なく、どこに依頼しても利用できる塗料というわけではありません。相見積もり(複数の業者の見積もりを取って比較すること)しにくく、コストも高くなる傾向があります。もしピュアアクリルを希望する場合は、依頼する際に確認しておきましょう。
無機塗料
無機塗料とは、成分に有機物をほぼ含まない塗料です。他の塗料に比べて劣化の速度が非常に遅く、寿命が長いことがメリットです。
耐用年数は20年~25年ともいわれており、塗り替えの回数を減らしたい方に向いています。しかし耐用年数が長いためたとえば雨樋や屋根の張り替えなど他の部分とメンテナンス周期が合わず、その都度足場代がかかってしまうと、かえってコストパフォーマンスが下がる恐れがあります。
[2]水性塗料と油性塗料
外壁に使われる塗料には、水性塗料(水を使って薄める)と油性塗料(シンナーを使って薄める)の2種類があります。
2つの塗料の違いをまとめました。
- 価格:水性塗料はリーズナブルですが、油性塗料の場合は高くなります。
- 扱いやすさ:DIYを検討している人のみに関係することですが、油性塗料は保管時に注意が必要です。
- 耐久性:耐久性において油性塗料のほうが優れていること間違いなしです。
- 臭わない:油性塗料のほうが臭いが強いです。臭いが強い塗料を使う場合は、近隣住民への配慮を忘れないようにしましょう。
- 光沢:油性は塗料の密着度が良いです。
- 環境面:油性塗料にはシックハウス症候群の原因とされているVOCが、水性塗料より多く含まれます。
このように水性塗料と油性塗料それぞれにメリットがあります。どちらがいいか一概には言えませんが、油性塗料は耐久性が良く密着性も高いです。しかし、最近は水性塗料も耐久性が良くなっており以前よりも使われています。
[3]1液型と2液型
先ほどの水性・油性塗料からまたさらに細分化したのが1液型と2液型です。
1液・2液どちらが使われるかは塗装する素材によって異なるため、基本的には業者に任しておけばいいですが、ここでは知識として違いを説明しておきます。
- 1液型(1つの液だけでそのまま使用できる)
- 2液型(主剤と硬化剤という2種類の液を混ぜて使う)
1液型・2液型のメリットデメリット
1液型は2液型に比べて塗料が安価なため、コストを抑えて塗装したい方に向いています。単価の違いはそれほど異なるわけではありませんが、家全体を塗装することを考えると、大きな違いになる可能性があります。
2液型は使用用途が広く、外壁だけでなくコンクリート部分や金属の部分を塗装できます。外壁と合わせて外構のコンクリート部分や手すりも一緒に塗装したい場合に向いているでしょう。
ただしすべての素材を塗れるわけではなく、塗料との相性によっては塗装できないこともあります。
[4]塗料の艶あり・なし
さらに塗料には、艶なし・3分艶・5分艶・7分艶・艶ありの5種類があります。
外壁を塗り替える際に業者に相談すると、艶あり・なしにするかは好みの問題と言われることが多いので結局どれがいいのか・・・と迷ってしまう人もいるでしょう。艶のタイプについて詳しく説明します。
艶あり・なしのメリットデメリット
この表をみると、「艶なし」より「艶あり」のほうが機能性に優れていることがわかります。 ただし、「100%艶あり」は安っぽく見えてしまう可能性があるため、「5分艶」・「7分艶」程度がおすすめです。
「艶なし」は落ち着いた雰囲気となるため、和風住宅にお住まいの人に選ばれることが多いです。
2.おすすめの塗料の色
外壁塗装は10〜15年に1度程度のサイクルで行うことが多く、イメージと異なる色を選んでしまったとしても10年以上住まなくてはなりません。塗装してから後悔しないためにも、よく検討した上で塗装の色を選ぶようにしましょう。
周辺の景観や植栽になじみやすく、年齢層に関係なく人気があるのは以下のカラーです。主張が強すぎない温かみのある色や、汚れが目立ちにくい落ち着いたカラーが人気です。
- ベージュ
- 白
- ブラウン(モカ)
- グレー
- クリーム
- 黒
比較的白っぽい色が選ばれることが多いものの、スタイリッシュな外観を好む方は、グレーや黒を選ぶ傾向があります。
特に既存のカラーと異なる色を選ぶ際は、カラーシミュレーションなどを利用してイメージするとよいでしょう。
なお、色選びについては以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。


3.外壁塗装の塗装方法|刷毛・ローラー・吹き付け
外壁塗装を業者に依頼する人には関係のない話ですが、もしもDIYを視野に入れている場合は塗装方法も頭に入れておきましょう。ただし塗料は臭気が発生し、高所での作業は危険をともないます。基本的には塗装業者に 依頼することをおすすめします。
外壁を塗装する一般的な方法として、刷毛・ローラー・吹き付けの3種類があります。外壁の素材や特徴、隣地との距離などを考慮して、塗装方法を決めることになります。それぞれにメリットがあり、どの塗装方法が正解というわけではありません。
刷毛塗り
刷毛を使って塗る方法で、細かい部分や凹凸がある部分を塗装するのに向いています。広い面積を塗る場合が時間がかかるため、通常は塗る場所に応じて使い分けることになります。
ローラー塗り
ローラー状の道具を転がしながら、塗装する方法です。広い面を塗装しやすく、外壁塗装で多く使われている手法です。
吹き付け塗装
スプレーガン(吹き付け用の道具)に塗料を充填し、塗装面に吹き付けて塗装する方法です。刷毛やローラーに比べて塗装にかかる時間が短いのがメリットです。しかし塗料が飛び散り音も発生するため、住宅密集地での施工は難しいことがあります。
4.外壁塗装リフォームを失敗しないために
最後に、外壁塗装リフォームを行う際の注意点について解説します。リフォーム業者を探す前や後に確認してくださいね。
4-1.相見積もりを2社~3社から取る
外壁塗装に限らずどのリフォームでも共通することですが、2社~3社から見積りを取ると業者や金額の比較ができます。
「早くリフォームをしたい」「面倒くさい」などを理由に1社しか見積もりを取らない方もいるかもしれませんが、業者によって金額はもちろんサービス内容、スタッフの対応なども異なります。
4-2.塗り替えサイクルをどうするか決めておく
数年で気軽に外壁の色を変えてイメージチェンジを図りたい、と思う場合はアクリル塗料などが安くおすすめですが、とにかく耐久性を重視したいなら耐用年数の長いシリコン・フッ素などが適しているといえます。
ご自身の希望に合わせて塗り替えサイクルを決めた上で、塗料を選ぶと良いでしょう。
4-3.依頼する業者の施工事例を見せてもらう
実際に塗装工事を依頼をする前に、業者の良し悪しを判断するためにも、施工事例の写真や資料を見せてもらいましょう。塗装の仕上がりをイメージすることができ、塗装する色をオーダーする際にも役立つでしょう。
塗装色を小さな見本だけで判断してしまうと、外壁に塗ったときと想定していたカラーと違って見えることがあります。可能であれば施工現場を紹介してもらい、実際に足を運ぶこともおすすめします。
4-3.優先順位を決めておく
依頼先や工事内容を決めるときは、費用と耐久性のどちらを優先するのか順位を決めておきましょう。そのうえで好みのデザインになるのか、希望する日程で工事できるのかについても確認しておくようにします。
今回塗料別にかかる費用の目安をご紹介しましたが、耐久性が高い塗料を選択することがかならずしも正解ではありません。
耐久性については、その家にあとどれぐらい住むかによって、優先度合いが変わります。他にもデザインを優先するのか、短期間で仕上げたいのかによっても変わってくるでしょう。
例えば以下の項目について、優先順位を考えてみてください。
- 費用
- 耐久性
- 業者の実績
- 塗装色のバリエーション
- 塗装工事を着工できる時期・かかる期間
5.まとめ
いかがでしたか?この記事を読む前よりは外壁塗装の種類について理解できたのではないでしょうか。外壁リフォームは高額になりがちですが、今後も快適な暮らしをするためには欠かせないものです。みなさんが少しでも良いリフォームができたら幸いです。