
近年、空き家の増加が社会問題化しています。平成30年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家の数は848万9千戸に及び、総住宅数に占める割合(空き家率)は13.6%にも達しています。
その一方、新築住宅は高騰を続け、2022年度フラット35利用者調査によると首都圏の土地付き注文住宅の所要資金は約5,406万円。多くの人にとって、簡単に手が届く価格ではなくなりました。
そう考えると、空き家をリフォームして住むことは、現実的な選択肢の一つとなり得るのではないでしょうか。
この記事では、空き家リフォームにはどのくらいの費用がかかるのか、コストを抑えてのリフォームは可能なのかなどを解説します。空き家をリフォームして住むメリット・デメリットや、リフォームに際しての注意点も紹介します。
目次
1.空き家リフォーム(リノベーション)の費用相場
空き家をリフォームして住もうと思っている場合、気になるのは費用です。空き家リフォームにかかる費用は、空き家の状態やリフォームの規模によって大きく異なります。
たとえば築年数が浅く、空き家になってからの期間が短い場合には、水回りの交換やクロス・床張り替えなどの、部分的なリフォームだけですむ可能性があります。その場合、200万円〜500万円程度ですむでしょう。
一方築年数が古く、長年空き家になっていたケースでは、耐震補強や断熱改修なども含めた大がかりなリフォームが必要になりがちです。そうすると、必要な費用は1,000万円以上かかると考えられます。構造部分の劣化状態によっては2,000万円を超えたり、「リフォームはできない。建て替えが必要」と判断されたりすることもあるでしょう。
どの程度の費用がかかるのかは、物件の状態を見ないとわかりません。リフォーム会社に現状を確認してもらい、見積もりを取るのがおすすめです。




2.空き家リフォーム(リノベーション)で使える補助金や優遇制度
空き家リフォームをおこなうときには、補助金や優遇制度を活用するとコストを抑えることが可能です。ここでは具体的にどのような制度があるのか紹介します。
2-1.空き家リフォーム(リノベーション)で使える国の補助金制度
空き家のリフォームで使える国の補助金制度には、以下のようなものがあります(2024年5月現在)。
制度名 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
長期優良住宅化リフォーム推進事業 | 210万円/戸 | 補助対象経費の3分の1 |
既存住宅における断熱リフォーム支援事業 | 120万円/戸 | 補助対象経費の3分の1以内 |
次世代省エネ建材の実証支援事業 | 400万円/戸 | 補助対象経費の2分の1以内 |
子育てグリーン住宅支援事業 | 40万円〜60万円/戸 | ―(工事内容ごとに補助金額の設定あり) |
先進的窓リノベ事業 | 200万円/戸 | ―(工事内容ごとに補助金額の設定あり) |
2-2.空き家リフォーム(リノベーション)で使える自治体の補助金制度
これから空き家を購入、リフォームして住むことを検討している場合、自治体の空き家リフォームや移住を促進するための補助金が活用できる可能性があります。
[例] 千葉県市原市|空き家バンク事業(リフォーム等補助)
対象工事:市原市空き家バンク登録物件購入後のリフォーム等工事の実施(補助額上限100万円)
[例] 長野県飯山市|飯山市移住支援住宅建設促進事業(改修)
対象工事:市外から市内へ転入し、自ら居住する住宅の改築(補助額上限20万円)
空き家の購入を検討している自治体で同様の制度がないか、確認してみるとよいでしょう。
なお下記のサイトでも自治体の補助金・助成金情報を検索できます。
地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
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2-3.空き家リフォーム(リノベーション)で使える減税制度
空き家リフォームした場合、税金の優遇を受けられる可能性もあります。
税金の種類 | 内容 | 最大控除額 |
---|---|---|
住宅ローン控除 | 住宅ローンを利用してリフォームした場合、年末のローン残高の0.7%が最大で10年間所得税から控除される※制度 | 【認定住宅など】21万円/年 【その他の住宅】14万円/年 |
所得税の減税 | バリアフリー改修や三世代同居対応、省エネ改修などをした場合、内容に応じて所得税が一定額控除される制度 | 80万円 |
固定資産税の減税 | バリアフリー改修や三世代同居対応、省エネ改修などをした場合、内容に応じて固定資産税が一定額控除される制度 | 減額割合: 3分の1 もしくは 2分の1 |
(いずれも令和7年12月31日まで適用)
※一定の要件あり
▼詳しくはこちらの記事にまとめています


3.空き家をリフォーム(リノベーション)するメリット・デメリット
空き家をリフォームして住むことには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
3-1.空き家をリフォーム(リノベーション)するメリット
まずはメリットから解説します。
安心・快適に暮らせるようになる
空き家をリフォームすると、住宅性能が向上し、暮らしやすくなることがもっとも大きなメリットです。とくに築年数が古い空き家は、耐震性能や断熱性能が低いケースが少なくありません。そこまで古くなくても、水回り設備が旧式だと快適性は劣るでしょう。
その点現代のライフスタイルに合わせてリフォームすれば、快適な生活ができるようになります。
新築よりも安く家を手に入れられる可能性がある
空き家を購入してリフォームする場合、家を新築するよりも安くマイホームを手に入れられる可能性があります。
2022年度フラット35利用者調査によると、新築注文住宅が約5,406万円であるのに対し、空き家を含む中古戸建ての平均購入価格は約2,614万円です。リフォームに1,000万円かけても、新築するよりも安くなる計算です。空き家を視野に入れれば、あきらめていた一戸建てに住める可能性が高まります。
新築には出せない味が出る
住宅は年代によって建てられる家の特徴が違うため、リフォームすれば新築とは違った味がある家に住めるようになります。
いわゆる古民家と呼ばれるような家に住みたいと考えている人は、リフォームできる空き家を探してみるとよいでしょう。


補助金が受けられる場合がある
「2.空き家リフォームで使える補助金や優遇制度」で紹介したように、既存住宅のリフォームや空き家の活用にはさまざまな補助金制度が用意されています。うまく活用すれば、コストを抑えてリフォームし、快適に暮らせるマイホームを手に入れられるかもしれません。
3-2.空き家をリフォーム(リノベーション)するデメリット
空き家をリフォームすることには、デメリットもあるので理解しておきましょう。
状態が悪いと建て替えたほうが安い場合がある
空き家と一口にいっても状態はさまざまです。建物自体には大きな問題がなく、内装や水回り設備を変える程度のリフォームで済めばよいのですが、構造が劣化していたり、あるいはシロアリ被害にあっていたりする場合、建て替えたほうが安くつく可能性があります。あるいはそもそもリフォームができないこともあり得ます。


有担保ローンが組めない可能性がある
空き家の状態によっては担保とするだけの価値がないと評価され、住宅ローンを組めない可能性があります。とくに1981年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震基準で建てられた家だと、住宅ローンを借り入れるのはかなり困難です。その場合、希望の空き家は現金で購入しなければなりません。
なお、リフォーム費用だけであるなら無担保のリフォームローンもあるので、検討してみるとよいでしょう。


間取りが希望のものにできない場合もある
空き家をリフォームして住むときには、現代のライフスタイルにあわせ、広々としたLDKにするなど間取りの変更を検討するのが一般的です。
しかし木造住宅は耐震性を担保するために抜けない柱や壁があるので、希望の間取りを実現できない可能性があります。


4.空き家をリフォーム(リノベーション)する注意点
空き家をリフォームするときには、どのような注意点があるのでしょうか?
4-1.築が古い物件は耐震診断をしてもらう
1981年5月31日以前に建築確認を受けた家は、旧耐震基準で建てられています。旧耐震基準は、震度6程度の大地震が想定されていないため、今後起こると考えられている南海トラフのような大地震には耐えられない可能性があります。
また木造住宅については、2000年の建築基準法改正でも、耐震性に関する規定が見直されました。これから安全に暮らすことを考えるのであれば、2000年以前に建てられた空き家は、リフォーム前に耐震診断を受けることをおすすめします。


4-2.状態が悪ければリフォームしないほうがいい
空き家の劣化が構造部分にまで及んでいるほど悪ければ、リフォームは避け建て直すのが無難です。状態があまりに悪いと、リフォームにかける費用が膨大になり、建て直すのと変わらなくなるケースがあるためです。
とはいえ空き家の状態がどの程度悪いのか、どの規模のリフォームが必要なのかは、ご自身で判断するのは不可能です。空き家の状態を知りたい場合は、リフォーム会社に見てもらうのが確実です。リフォームをするかどうか分からない場合でも、見積もりは無料の会社がほとんどですので相談してみましょう。
4-3.2025年の法改正によりリフォームができなくなる可能性がある
2025年4月に建築基準法が改正されることが発表され、今まで可能だったリフォームができなくなる可能性が予想されています。
リフォームができなくなる可能性が高いのが「再建築不可物件」です。再建築不可物件とは、今の建物を解体して更地にした後、新たな建物が建てられない物件のこと。現在の建築基準に満たしていないことが理由です。
そのため、再建築不可物件は建て替えではなく、大規模リフォームをすることで住み続けることも多かったのですが、今回の法改正により、これらの物件をリフォームするにあたっても、行政への「建築確認申請」をしなければならない可能性が出てきました。
現行の法律をクリアしていない再建築不可物件では、確認申請が通らず、希望のリフォームができなくなる可能性があるのです。


4-4.依頼するリフォーム会社は「耐震リフォーム」が得意な会社にする
お伝えしたように、空き家のリフォームを検討するときには、よほどの築浅でない限り、まずは耐震診断を受けることをおすすめしています。そのためリフォームを依頼するときには、耐震診断・耐震リフォームに対応している会社を選ぶことが大切です。
耐震リフォームが得意な会社であれば、建て替えすべきかどうかの判断もしてもらえます。
リフォームガイドでは、「耐震診断士」など耐震診断・耐震リフォームをする上で必要な資格を持つ会社をご紹介しています。「どのリフォーム会社に依頼すればいいか分からない」という場合は、まずはリフォームガイドにご相談ください。
5.空き家をリフォーム(リノベーション)した事例
ここからは、実際に空き家をリフォームした事例を紹介します。
5-1.退職後のセカンドライフのため空き家をリフォーム
定年退職後に移り住むため、築27年の空き家をリフォームした事例です。外壁と屋根の塗装と、水回りの交換を実施しました。キッチン、ユニットバス、トイレ、洗面化粧台を入れ替えたので、使い勝手がよくなりました。
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出典:http://www.8044.co.jp/gallery/261
費用 | 413万円 |
---|---|
リフォーム箇所 | キッチン、浴室、トイレ、洗面台、外壁・屋根塗装 |
面積 | 92㎡ |
築年数 | 27年 |
5-2.空き家だった実家に転居するためのリフォーム
結婚・出産を機に、長く空き家となっていた築30年の実家に移り住むためリフォームした事例です。耐震性の心配もあったため、インナースケルトンにして基礎を補強。2階建てを1階建てへと減築し、家族の人数にあったサイズにすると同時に耐震性を高めました。細かく区切られていた間取りも見直し、今どきの広々としたLDKを実現しています。
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出典:http://www.8044.co.jp/gallery/1012
費用 | 2,400万円 |
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リフォーム箇所 | 家全体 |
面積 | 133㎡ |
築年数 | 30年 |


5-3.築50年、3階建て戸建ての空き家をリフォーム
空き家になっていた築50年の住居を、1階にカフェがある3階建ての店舗付き住宅へリフォームした事例です。玄関は住居用と店舗用に分け、外装も一新。仕事も生活も趣味も、すべてをかなえる空間を実現しました。
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出典:https://www.artreform.com/example/845/
費用 | 1,900万円 |
---|---|
リフォーム箇所 | 家全体 |
面積 | 95㎡ |
築年数 | 50年 |
6.まとめ
新築一戸建ての価格が高騰している今、空き家リフォームは一戸建てのマイホームを手に入れる有力な方法の一つです。しかし空き家の状態によっては新築するより費用がかかる可能性があるため、どの規模のリフォームが必要になるのかを慎重に見極めることが重要です。
空き家リフォームを検討するときには、耐震リフォームが得意な会社に依頼すると、構造から詳しく見てもらえます。リフォームガイドでは、お客様のご希望に沿える優良なリフォーム会社のご紹介が可能です。無料で利用いただけるので、まずはお気軽にお問い合わせしてみてくださいね。