
日々、雨風や直射日光にさらされている外壁は、汚れや色褪せがでてきます。特に10年ほど経った外壁は表面の防水性も低下していることが多いため塗装メンテナンスをする必要があります。
通常の外壁塗装は、「色」がついているため、もとの外壁の色合いや質感が変わってしまいます。しかし、既存の外壁を生かして無色透明の塗料で塗装する「クリア塗装」では、今の外壁の質感や模様をそのままに、きれいな状態に戻すことができます。
「新築時にこだわって選んだマイホームの外観を変えたくない」という場合におすすめです。
ここでは外壁クリア塗装の魅力と注意すべきポイント、塗装にかかる費用相場や工期、塗料にどのような種類があるのかを解説します。


目次
1. クリア塗装とは
クリア塗装とは、下地が透けて見える無色透明な塗料を使用した塗装のことです。
無色透明なので、もとのデザインや色合いを維持でき、さらに保護やツヤ出しなどのコーティング機能を持たせられるため、外壁塗装ではよく選ばれる方法の1つです。
外壁塗装の塗料には多くの場合、色を付ける「顔料」が含まれています。顔料入りの塗料を使い塗装する場合、元のデザインや色合いを再現することは難しく、もし現在の外壁の柄や色合いが気に入っていても、上塗りをするのでなくなってしまいます。
例えばレンガ調のサイディングは、レンガ部分と溝部分で色を変えていて、レンガ自体も濃淡をつけていることがあります。しかし一般的な塗料でそのまま塗装してしまうと、全て同じカラーになってしまいます。塗装することで外壁自体の劣化は修復できますが、せっかくの質感も損なわれてしまうでしょう。
しかしクリア塗装なら、今の外壁のデザインを残しながら耐久性を高めることが可能です。石目調・タイル調・レンガ調などの意匠性の高いサイディング柄や、木目などの素材の色や模様を生かしたまま外壁材の表面を保護できるのが魅力です。
2. 外壁をクリア塗装するメリットとデメリット
外壁塗装の塗料を決めるためにも、クリア塗装の特徴を知っておく必要があります。ここでは、外壁をクリア塗装するメリット・デメリットを詳しく解説します。
2-1.外壁をクリア塗装するメリット
外壁をクリア塗装するメリットは4つあります。
- 外壁の色やデザインをそのまま残せる
- 工期が短く費用を抑えられる
- 外壁劣化のサイン「チョーキング現象」が発生しない
- 外壁に光沢を出せる
それぞれを詳しく解説していきます。
外壁の色やデザインをそのまま残せる
クリア塗装は、無色透明の塗料で塗装するため、既存の外壁の色合いやデザインをそのまま生かせるのが魅力です。「サイディングのデザインを残したい」「今の外壁材の色合いが気に入っている」という方には、クリア塗装をおすすめします。
工期が短く費用を抑えられる
クリア塗装は既存の外壁の色合いを残して塗装することから、通常の塗装工事で必要になる「下塗り」を行いません。工程を減らせるため1、2日工期が短くなり、その分費用を安く抑えられる可能性があります。
塗装工事は天候に左右されるため、雨天が続くと作業が止まってしまいます。1つの工程を減らせるだけでも、工事期間の短縮・コストの削減につながるでしょう。
外壁劣化のサイン「チョーキング現象」が発生しない
チョーキング現象とは「白亜現象」ともいい、外壁の塗装面の劣化現象の1つです。外壁は10年ほど経つと塗膜が劣化して、表面を手で触ると白い粉が付くようになります。
白い粉が発生するのは、顔料に含まれる分子同士の結合が失われることが原因です。クリア塗装はそもそも顔料を含まない塗料であるため、表面が劣化してもチョーキング現象は起きません。
外壁に光沢を出せる
クリア塗装は、外壁に光沢を出すことができます。
同じクリア塗装でも、光沢具合は好みによって選べます。ピカピカとツヤのある仕上がりが好きな方は「ツヤありタイプ」、自然な光沢感を好む方は「ツヤなしタイプ」を選びましょう。
なお、光沢感は人によって感じ方が異なります。見本を用意してもらい、実際に目視して選ぶことをおすすめします。
2-2. 外壁をクリア塗装するデメリット
外壁をクリア塗装するデメリットは2つあります。
- 劣化が激しい外壁には向かない
- 特殊塗装が施された外壁には使えない
1つずつ、詳しく解説していきます。
劣化が激しい外壁には向かない
クリア塗装は、ひび割れ(クラック)が発生している、汚れがある、色むらがある外壁にはおすすめできません。
通常外壁のひび割れは、コーキング材で補修し、凸凹をなくしてから塗装します。顔料が含まれた塗料であれば補修跡を隠せますが、クリア塗装では補修した状況が見えてしまい、見栄えが悪くなる可能性があるためです。
劣化によりチョーキング現象が起きている、もしくは色むらや汚れが気になる場合も同様です。
チョーキング現象が起きている状態でクリア塗装をしようとすると、白い粉がクリア塗料の密着性を弱めてしまい、耐久性にも影響が出る恐れがあります。
特殊塗装が施された外壁には使えない
外壁の素材や塗料の種類によっては、クリア塗料が使えないケースがあるため注意が必要です。特殊加工されたサイディングなどの上に塗装しても、はがれてきてしまう可能性があるためです。
特殊加工とは具体的に、光触媒塗料やフッ素塗料、無機塗料などの特殊な塗装が施された外壁で、クリア塗料と相性があまりよくありません。
クリア塗装ができるか否かは、サイディングや塗料の取扱説明書などからわかる場合があります。新築時の図面が残っていない場合や、どのような塗料が使われているか判断が難しいときは、塗装工事店やリフォーム会社に相談してみてください。
一方で、最近では光触媒の上から施工できるクリア塗料も出ています。使用したい場合は、リフォーム会社に取扱いがあるか確認し、施工できるか相談しましょう。
3. 外壁をクリア塗装する場合の費用相場
外壁をクリア塗装する場合、30坪の住宅で70〜120万円程度の費用がかかります。
費用は使う材料のグレードのほか、シーリング(目地の補修材)の打ち替えの可否や住宅の構造による手間賃の増加によっても料金は変わります。
予算や将来的な費用を考慮して、自分に適したクリア塗料を選びましょう。
4. 外壁に使うクリア塗料の種類と耐用年数
一口にクリア塗装といっても、種類によって耐用年数や価格、特徴が異なります。ここでは、クリア塗装の主な種類、以下の5つについて解説します。
種類 | 耐用年数 | 価格(/㎡) | 特徴 |
---|---|---|---|
アクリル | 6〜8年 |
1,500〜2,000円 |
低価格のわりに発色がよい 耐久性が低く頻繁な塗り替えが必要 |
ウレタン | 8〜10年 | 2,000〜2,500円 | 外壁の素材を選ばず塗装ができる 耐久性は比較的低い |
シリコン | 10〜15年 | 2,500~3,000円 | 耐用年数が比較的長く、塗料の選択肢が多い。価格に幅があり、耐久性に比例する |
フッ素 | 15〜20年 | 3,000〜3,500円 | 耐久性が高く、公共の建物に採用されている。費用が比較的高くなる |
無機 | 20〜25年 | 4,000~5,500円 | 耐用年数は20年長ともいわれ、耐用年数が長いのが魅力 |
それぞれの塗料について、詳しく解説していきます。
4-1. アクリル塗料
アクリル塗料は、安価で発色がよく、色のバリエーションが豊富にある塗料です。
しかし、外壁における実用性は低く、ひび割れしやすく耐久性が低いため、近年、アクリル塗料を使用する業者は多くありません。しかし、耐用年数が6〜8年とあまり長くないので、数年で建物を解体する予定だけれど塗装が必要という場合に向いているでしょう。
単価は、1平方メートル当たり1,500〜2,000円程度です。
4-2. ウレタン塗料
ウレタン塗料は弾力性があり、光沢がある仕上がりと低単価が魅力の塗料です。しかし耐久性がやや低く、外壁に使用する場合の耐用年数は8〜10年とそれほど長くありません。
外壁で実用性がある塗料の中では最も安いので、低コストで工事をしたい人に向いています。
単価は、1平方メートル当たり2,000〜3,000円程度です。
4-3. シリコン塗料
シリコン塗料は汚れが付きにくく、価格と耐用年数のバランスがよいため、コストパフォーマンスが高い塗料として人気があります。住宅の外壁の大半がシリコン塗料で塗装されており、商品も多く流通しています。
単価は1平方メートル当たり2,500〜3,000円、耐用年数は10〜15年です。
4-4. フッ素塗料
フッ素塗料は耐久性に優れており、メンテナンスの手間がかからないため、公共の建物にも使用されている塗料です。
防汚性が高く、耐用年数も長いことから、塗装のメンテナンスの回数を少なくしたい人に適しています。
単価は1平方メートル当たり3,000〜3,500円、耐用年数は15〜20年です。
4-5. 無機系クリア塗料
無機系クリア塗料は、セラミックやケイ素などの無機物が主成分です。他の塗料と比べて劣化の速度が遅く、耐用年数が長いのが魅力といえます。
なるべくきれいな状態を長持ちさせたい方や、メンテナンス回数を減らしたい方に向いています。しかし塗料が高価なため、メンテナンス費用が高くなるのがデメリットです。
単価は1平方メートル当たり4,000〜5,500円で、耐用年数は20〜25年が目安です。
5. 外壁をクリア塗装する場合の工期
外壁塗装にかかる期間は、通常10~14日程度です。前述した通り、クリア塗装は通常の塗装よりも工程が少ないため、施工期間は1、2日短くなる可能性があります。
しかし、天候や時期によっても工期は変わります。あくまでも上記は目安とし、実際の工期やスケジュールは依頼する業者に確認しましょう。
6. 外壁をクリア塗装した事例
クリア塗装を検討している方のために、外壁をクリア塗装した事例を3つ紹介します。ここでは、屋根のメンテナンスを同時に行った事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
6-1. デザインは変えずに耐久性アップ
出典:https://freshhouse.co.jp/case/12523/
タイル調のサイディングと明るいブラウン系の色合いが気に入っていたため、既存の外観イメージを変えずに塗装できる、クリア塗装を選択した事例です。
サイディングのつなぎ目の劣化もシーリング補修し、防水面も安心です。
6-2. 新築のようなツヤを取り戻したクリア塗装
出典:https://freshhouse.co.jp/case/14006/
屋根と外壁の劣化が気になり、メンテナンスを実施した事例です。屋根は劣化が進んでいたため塗装は諦めて、金属製で耐久性があるガルバリウム鋼板で重ねぶきしています。
外壁はクリア塗装を施し、以前の雰囲気を変えずにきれいになりました。玄関まわりのタイル張り外壁はとくにツヤが出て、メリハリのある外壁に生まれ変わっています。
屋根の重ねぶきに費用がかかりましたが、外壁をクリア塗装にしたことで、一部節約できました。
6-3. 外壁と同時に屋根の耐久性も向上
出典:https://home-life.co/2024/07/18/h%E6%A7%98%E5%A4%96%E8%A3%85%E6%96%BD%E5%B7%A5%E4%BA%8B%E4%BE%8B-2/
この事例では、レンガ調のサイディングを生かすため、クリア塗料で塗装しています。
耐久性・超低汚染性のあるクリア塗料で、新築時の風合で、かつ長く持つ外壁になりました。
屋根にも防藻・防カビ性のある塗料で塗り替え、メンテナンスをしました。
7. クリア塗装を外壁業者に依頼する場合の注意点
クリア塗装をするときには、以下の3つのポイントに注意してください。
- クリア塗装ができる外壁の状態か事前チェックする
- クリア塗装ができる外壁か業者にも確認してもらう
- 相見積もりで適正料金の業者を選ぶ
それぞれについて、詳しく解説していきます。
7-1.クリア塗装ができる外壁の状態か事前にチェックする
前述のようにひび割れの補修をした跡や、チョーキング現象で白っぽくなった状態が目立ってしまうため、劣化が進んだ外壁にクリア塗装はおすすめできません。
業者に現地調査してもらう前に、外壁にひび割れがないかできる範囲で確認しておくとよいでしょう。チョーキング現象は、外壁に優しく触れて、手に白い粉が付かないかどうかで判断できます。
ただし、あまり強く触れてしまうと、手の跡が残ってしまうので気をつけてください。
7-2.クリア塗装ができる外壁か業者にも確認してもらう
光触媒コーティングのサイディングや、すでにフッ素・無機・光触媒など特殊な塗料で塗装された外壁にはクリア塗装できないことがあります。
また、塗料同士の相性が悪いと塗料が定着せず、塗膜がはがれやすくなる恐れがあるため注意が必要です。
取扱説明書などでクリア塗装ができるかどうか確認できることもありますが、判断は難しいため、業者に相談することをおすすめします。
7-3.相見積もりで適正料金の業者を選ぶ
複数の業者に同じ工事で見積もりを出してもらう方法が相見積もりです。2、3社の見積もりを比較して、安過ぎず高過ぎない業者を選ぶことで適正な料金で工事が行えます。
見積もりで業者を選ぶポイントとしては、金額と具体性の2つがあります。他の会社よりも費用が離れ過ぎている場合は手抜きや詐欺が疑われるため、依頼を避けましょう。
また、工事の工程や材料名が具体的に記載されていない場合にも注意が必要です。詳細な工程や塗料の種類など不明な点は質問し、明確な回答が得られる業者であるかを見極めてください。
8.まとめ
クリア塗装はその名の通り、無色透明の塗料で塗装するため、外壁のデザインや色合いを生かせるのが特徴です。例えば、れんがやタイル調の柄を残せるため、外壁の印象を変えたくない方に向いています。
また顔料を含む塗料で塗装する場合は下塗りが必要ですが、クリア塗装は下塗りがいらないため、その分工期は短くなり、費用も安く抑えられます。
クリア塗装ができるかどうか、リフォーム会社にまずは相談してみましょう。