外壁のひび割れ(クラック)を補修する方法と費用の目安|DIYと業者の選び方も解説

築年数が経過した住宅では、外壁のひび割れ(クラック)が起こることもあります。どれくらいの規模や範囲の補修になるのか、補修費用はどうなるのか不安に思うこともあるでしょう。

外壁のひび割れは、放置すると雨水の浸入により建物の構造に悪影響を及ぼす可能性があります。しかし、ひび割れの程度によって対応の緊急度は変わります。

そこでこの記事では、外壁のひび割れの種類と緊急度、適切な補修方法、補修にかかる費用の目安を解説していきます。家族の安全を守るためにも、ひび割れの状況に応じた最適な対処法を見つけてください。


1.外壁のひび割れ(クラック)補修の緊急度を解説

「クラック」と呼ばれる外壁のひび割れは、どの程度なのかによって緊急度が変わります。自宅の外壁の症状と見比べて、緊急度を確認しましょう。

1-1.外壁のひび割れの症状の種類と緊急度

ひび割れが目立つ「クラック」

外壁のひび割れは、その種類によって対処の緊急度が異なります。主に「ヘアークラック」「乾燥クラック」「構造クラック」「縁切りクラック」の4種類があり、それぞれ発生原因や対処方法が異なります。

ひび割れの種類 緊急度 原因 対応
ヘアークラック 経年劣化、ゆがみ 経過観察、予防的な補修
乾燥クラック 外壁材の乾燥による収縮 経過観察、予防的な補修
構造クラック

高地盤沈下、地震

部分補修、外壁全体の改修
縁切りクラック 塗装工事の中断、塗膜の乾燥収縮 補修

ヘアークラック

ヘアークラックは、髪の毛のように細い幅のひび割れで、目視での確認が難しい場合もあります。主な原因は経年劣化や、地震・台風による建物のわずかなゆがみです。建物に微細な動きが生じた結果、外壁に細かな亀裂が発生します。

ヘアークラックは、建物の構造に直接的な影響を与えることは少なく、緊急の補修を必要としない場合がほとんどです。ただし、放置すると徐々に拡大する可能性があるため、定期的な経過観察は必要です。気になる場合は、予防的な補修を検討してもよいでしょう。

乾燥クラック

乾燥クラックは、外壁材の乾燥による収縮が原因で発生するひび割れです。特にモルタルやコンクリートなど、水を使用する外壁材で発生しやすい現象です。経年による材料の劣化と乾燥の繰り返しで、乾燥クラックが増加することもあります。

通常、乾燥クラックは構造上の問題には直結しませんが、放置すると雨水の浸入経路となる可能性があります。特に梅雨時期や台風シーズン前には、念入りにチェックするのがおすすめです。気候条件や外壁材の種類によっては、予防的な補修を検討してください。

構造クラック

構造クラックは、幅が0.3mmを超えるひび割れで、外壁の深部にまで及ぶ深刻な症状です。地震や地盤沈下や、建物の構造的な欠陥が原因で起こります。

建物の構造に直接影響を与える可能性が高く、早急な対応が必要です。放置すると雨水が内部に浸入し、建物の構造体を劣化させる原因となります。

構造クラックが見つかった場合は、速やかに専門家による診断を受けましょう。原因によっては、部分的な補修だけではなく、外壁全体の改修が必要となる場合もあります。

縁切りクラック

縁切りクラックは、外壁塗装の継ぎ目に発生する特殊なタイプのひび割れです。塗装工事の中断や、時間経過による塗膜の乾燥収縮が主な原因です。前回の外壁塗装から年数が経過している場合や、塗装の施工品質に問題があった場合に発生しやすくなります。

縁切りクラックは、見た目の問題だけではなく、雨水の浸入経路となる可能性があるため、発見次第、補修を検討してください。原因となった施工上の問題を解決しないと再発する可能性が高いため、専門家による適切な診断と対策が重要です。

1-2.外壁のひび割れが発生する主な要因

外壁のひび割れには、いくつかの主要な発生要因があります。築20年以上の住宅では、いくつかの要因が複合的に作用してひび割れが発生することも少なくありません。

外壁のひび割れが発生する主な原因

  1. 経年劣化や乾燥(モルタル外壁に多い)
  2. 地震や地盤沈下
  3. 施工不良

1つ目の要因は、乾燥の影響と経年劣化です。外壁材や塗膜は、時間の経過とともに劣化し、気温や湿度の変化による収縮と膨張を繰り返します。特にモルタル外壁では、この収縮と膨張によってひび割れが発生しやすいという特徴があります。経年劣化は避けられませんが、定期的に塗装をメンテナンスすることで、進行を遅らせることは可能です。

2つ目は、地震や地盤沈下などの外的要因です。築20年以上の住宅では、これまでに何度も地震を経験していることから、建物にゆがみが蓄積している可能性があります。特に構造クラックの場合、建物の安全性に直接関わるため、専門家に診断してもらいましょう。

最後に、施工品質の問題です。基礎工事の不備や、塗装技術の不足、不適切な工法の選択などが原因でひび割れが発生することがあります。特に塗装の継ぎ目に発生する縁切れクラックは、施工時の中断や不適切な塗り継ぎが主な原因となっています。

1-3.外壁のひび割れを放置することで起きてしまう実害

外壁のひび割れを放置すると、以下3つの深刻な問題が発生する可能性があります。

  1. 雨水の浸入による建物内部の腐食
  2. カビやシロアリの発生
  3. 建物全体の性能低下

特に築20年以上の住宅では、これらの問題が複合的に発生するリスクが高くなるでしょう。一つずつ詳しく見ていきます。

[1] 雨水の浸入による内部構造の腐食

ひび割れから雨水が浸入してしまうと、建物の内部に被害が出る可能性があります。特に木造住宅の場合、柱や梁などの構造材が、水分を吸収することで腐り、強度が落ちていきます。構造材の腐食は外部からは見えにくいため、発見しにくいことも理解しておかなければなりません。

外壁のひび割れは、わずかな亀裂だったとしても、継続的な雨水の浸入により、徐々に被害が拡大していきます。特に雨の多い季節や台風時期には、大量の雨水が浸入する可能性もあるので、早期の対処が重要です。

[2] カビやシロアリ被害の発生

雨水の浸入は、建物内部の「湿度」を上昇させ、カビの発生やシロアリの繁殖も引き起こします。カビは家族の健康に悪影響を及ぼすだけではなく、建材の劣化も進めます。シロアリは木材を食害し、建物の構造的な強度を低下させる原因となります。

[3] 断熱性能や耐久性の低下

外壁のひび割れは、建物の断熱性能や耐久性も著しく低下させます。ひび割れから外気が建物内に入り込むことで、断熱材の性能が損なわれ、冷暖房効率が悪化します。これは光熱費が増えるだけでなく、建物全体の快適性にも影響を及ぼします。

また、外壁の耐久性も低下します。ひび割れを放置すると、そこからさらなる劣化が進行し、より大きな損傷につながる可能性があります。特に築20年以上の住宅では、外壁材自体の経年劣化も進んでいるため、ひび割れの放置は建物の寿命を大きく縮める原因となりかねません。早期発見と適切な補修が大事です。


2.外壁のひび割れ補修の方法と費用

外壁のひび割れ補修には、主に「シール充填(じゅうてん)工法」と「Uカットシーリング充填工法」の2種類があります。ひび割れの幅や深さによって適切な工法を選択する必要があり、それぞれ費用も異なります。補修方法の選択は、建物の状態や予算に応じて検討してください。

方法 対応しているひび割れ 費用相場
シール充填工法 幅0.2mm以下 1m当たり約700円
Uカットシーリング充填工法 幅0.3mm以上 1平方メートル当たり約4,900円

2-1.シール充填工法

シール充填工法は、幅0.2mm以下の比較的軽度なひび割れに適した補修方法です。シーリング材をひび割れに直接充填し、その後外壁と同色で塗装して仕上げます。作業が比較的シンプルなため、費用が抑えられます。

業者に依頼する場合、施工長1m当たり約700円が相場で、出張費や経費を含めると2〜5万円程度になります。ただし、広範囲の補修や外壁全体の塗装が必要な場合は、さらに費用が発生するため、見積もりをもらってから判断しましょう。

2-2.Uカットシーリング充填工法

Uカットシーリング充填工法は、幅0.3mm以上の比較的大きなひび割れに適した工法です。ひび割れ部分をU字型にカットして、プライマー(下地)塗布後にシーリング材を充填し、最後に外壁と同色で塗装して仕上げます。クラックの再発を防ぐ効果が高い工法です。

業者に依頼する場合、施工面積1平方メートル当たり約4,900円が相場で、出張費や経費を含めると8〜15万円程度になります。

作業が専門的で、適切な工具や技術が必要なため、一般的にはDIYではなく、専門業者への依頼をおすすめします。外壁全体の状態によっては、同時に塗装工事も検討しましょう。


3.外壁塗り替えのサインが出ているときには全面塗装がおすすめ

築10年以上の住宅で外壁のひび割れが発生している場合、チョーキング(白亜化)現象も同時に見られることが多くあります。このような状態では、部分的な補修だけではなく、外壁全体の塗り替えを検討してください

外壁のチョーキング現象

チョーキング現象は外壁が本来持つ防水性能の低下を示すサインです。、放置すると外壁材の劣化が進み、張り替えや全体的なリフォームをしなければいけなくなるので、そうなる前に塗装をしましょう。

また部分的な補修だけを行うと、補修箇所と既存の外壁との間に色ムラが生じやすいため、全面塗装をすることで美観を保つこともできます。
さらに、部分補修と全面塗装を同時に行うことで、足場代などの費用を節約できる可能性もあります。

新築から10年以上経過している場合や、前回の塗装から年数がたっている場合は、この機会に外壁全体のメンテナンスを検討することをおすすめします。

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4.DIYで外壁のひび割れを補修するときの注意点

外壁のひび割れをDIYで補修する場合、いくつかの重要な注意点があります。技術不足による補修の質の問題、作業時の安全性の問題、そして見落としのリスクなど、DIYはあくまでも応急処置として考えましょう。

4-1.すぐにはがれてしまうことがある

DIYでの補修は、技術や経験の不足により、補修箇所がすぐにはがれてしまう可能性があります。特に幅0.3mmを超えるひび割れの場合は外壁内部まで影響が及んでいる可能性が高く、表面的な補修だけでは修復しきれないこともあります。

誤った補修方法や不適切な材料の使用は、外壁の防水層を傷つけるリスクもあるでしょう。かえって建物の劣化を早める可能性もあるため、注意してください。

特に築20年以上の住宅では、外壁内部の状態を正確に判断する必要があるので、専門家による診断と補修をおすすめします。

4-2.高所作業は危険が伴う

外壁補修の多くは高所での作業となり、DIYでは重大な事故につながる危険性があります。専門業者は適切な足場を組み、安全帯を使用して作業しますが、一般の方が同様の安全対策をとることは困難でしょう。

脚立やはしごを使用しての作業は転落事故のリスクが非常に高い上、特に築年数のたった住宅では、外壁の状態を確認しながらの慎重な作業が必要です。

また、高所での作業は体勢が不安定になりがちで、補修作業を十分に行うことは簡単ではありません。安全性を考慮すると、高所での補修作業は専門業者に依頼するのが賢明です。

4-3.時間と手間がかかる

業者が行えば2週間で終わる作業が、DIYではその2、3倍の時間がかかります。業者は3人程度で行いますが、DIYだと1人ということが多いですし、慣れている職人と一般人では作業速度に差が生まれるためです。

また、外壁の補修工事は非常に重労働で手間がかかる作業です。自分で可能かどうかは、慎重に検討してください。


5.外壁のひび割れ補修をするときのポイント

外壁補修をするときには、以下の3つの注意したいポイントがあります。

  • 保険などが使える確認する
  • 業者の見積もりは詳細を確認する
  • 優良な業者を選ぶ

それぞれ、詳しく解説します。

5-1.保険などが使えるか確認する

外壁のひび割れ補修の際は、火災保険の適用可能性を必ず確認しましょう。特定の条件下では、補修費用の一部または全額が保険でカバーされる場合があります。ただし、経年劣化による損傷は保険の対象外となるため、損傷の原因を正確に判断することが重要です。

保険が適用されるケースとしては、台風による飛来物の衝突、雹(ひょう)の衝撃、豪雨や土砂崩れによる被害などが挙げられます。自然災害による損傷の場合、損害発生から3年以内に申請し、補修費用が免責金額を超えることを証明できれば、保険の適用対象となるでしょう。

ただし、自然災害による損傷と経年劣化の区別は素人判断では難しいケースも多いため、専門家に依頼してください。

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5-2.業者の見積もりは詳細を確認する

外壁のひび割れ補修は、3社以上から見積もりをもらって比較検討してください。工事内容の各項目をしっかりと確認することが大切です。

例えば、見積もりは数量や面積に応じて、材料費や工事費を細かく計算する必要がありますが、数量の部分に「一式」とまとめて金額が書かれている場合は注意が必要です。適正な料金かどうかが分からないため、何の作業が含まれているかを確認しましょう。

5-3. 優良な業者を選ぶ

外壁の業者を選ぶときには、まずは下記の点を重視してください。

  1. 経営基盤がしっかりしている
  2. 実績が豊富にある
  3. 自社施工である
  4. アフターフォロー体制が整っている

下記の記事では、より詳しく優良業者の見極め方を解説しているので、参考にしてください。

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6.まとめ

外壁のひび割れは、築年数が経過した住宅でよく見られる症状で、状況によって対処法は大きく異なります。幅0.3mm以下のヘアークラックや乾燥クラックは経過観察で対応できる場合もありますが、それ以上の幅がある構造クラックは建物の安全性に関わるため、早急な対応が必要です。

補修方法は、シール充填工法やUカットシーリング充填工法など、ひび割れの状態に応じて選択しましょう。DIYでの補修も方法の1つですが、高所作業の危険性や不適切な補修によるリスクを考慮すると、専門業者への依頼をおすすめします。

特に築20年以上の住宅では、外壁全体の状態を考慮し、部分補修だけではなく全面塗装も検討する価値があります。

また、補修費用の負担を軽減するために、火災保険を適用できるかも確認してください。台風や雹害などの自然災害が原因の場合は、保険が適用される可能性があります。建物の長寿命化と家族の安全な暮らしを目指すためにも、適切な対応を検討しましょう。

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